デスギドラ
| デスギドラ | |
|---|---|
| 平成モスラシリーズのキャラクター | |
| 初登場 | 『モスラ』（1996年版） |
| 作者 | 吉田譲 |
| 演 | 吉田瑞穂 |
デスギドラは、東宝の特撮怪獣映画『モスラ』（1996年）に登場する架空の怪獣である。
概要[編集]
| デスギドラ DESGHIDORAH[出典 1][注釈 1] | |
|---|---|
| 別名 | 宇宙超魔獣[出典 2][注釈 2] |
| 体高 | 50 m[出典 3] |
| 全長 | 100 m[出典 4] |
| 体重 | 7万5千 t[出典 5] |
| 最大歩行速度 | 時速180 km[出典 6] |
| 出身地 | 宇宙[11][4][注釈 3] |
| 出現地 | 北海道紋別の地底[8][注釈 4] |
| デスギドラ最終形態[15][13][注釈 5] | |
| 最高飛行速度 | |
姿はキングギドラに似ているが、体表にはうろこがなく、体色は黒で四足歩行[16]。マグマを自在に操る。残忍な性格で惑星の生命、特に植物の生命エネルギーを好んで吸収し、自然を枯死させることで生きている宇宙怪獣である[10][17][注釈 6]。6,500万年前に火星の文明を荒廃させて不毛の星にしたあと[17]、地球の植物に壊滅的な打撃を与えて恐竜を全滅させるが[13][10]、モスラ一族に敗れて現代の北海道紋別郡の森林奥地の地下にある岩城に封印されていた[5]。地面に埋まっているエリアスの盾が封印の役割をしていたが、人間たちの森林伐採工事が原因で岩城が地上に露出し、何も知らない人間・後藤裕一がエリアスの盾を剥がしてしまい、岩城が大爆発したことで復活する。
復活したばかりの不完全体では、翼が短過ぎてまだ飛べないため、4足で歩く。武器は口から吐く体内の火砕流をエネルギーにした光線や火炎。序盤は成虫モスラの多彩な攻撃技に苦戦するも次第に圧倒して返り討ちに追い込み、幼虫モスラが援護に来て2対1という不利な状況になってからもなお、互角以上に戦う。また、噛みつきや踏みつけも得意で、逃げ出したモスラ幼虫の尻尾を踏みつけて尻尾や胴体に噛みつき出血させるほどの威力である。
モスラ親子の挑発に乗り、ダムを破壊して濁流に呑み込まれるが生存し、寿命が尽きた成虫モスラが海底深く沈んだあと、エネルギーを補充してかつて地球を滅ぼそうとした際の翼を広げた完全な最終形態となる[5][注釈 7]。その後、黒雲状の力場で北海道全域の植物エネルギーを搾取し、その地域の酸素濃度の低下を招いて森林を死滅させる[5]。最終的には、幼虫が変態した新生モスラに敵わず敗れ、エリアスの盾で再封印された。
公開当時に扶桑社から刊行された波多野鷹のノベライズ版では、宇宙のエントロピーを増やす傾向から生まれた、生命の存在しない宇宙を構築するための負の生命とされており、神に等しいその存在に死はないとされ、その設定にもとづき﹁負の生命﹂と記述する書籍[要文献特定詳細情報]もある。
その正体は不定形のマグマ状生命体であり[11]、﹃モスラ超全集﹄やノベライズ版によれば、その姿はかつて交戦したキングギドラや、中生代の恐竜や爬虫類の外観をコピーしたものとされている[18]。
武器[編集]
制作[編集]
創作経緯 プロデューサーの富山省吾は、主役のモスラが優しい守る怪獣であることから、その対戦相手にふさわしい悪くてかっこよい怪獣としてキングギドラを発想した[19]。一方、特技監督の川北紘一は、四足歩行怪獣にすることを要望し、最終的にこれらを合わせた新怪獣となった[19]。脚本を担当した末谷真澄は、ふわふわしたモスラに対し、固くて尖った岩のような姿として小説﹃幼年期の終り﹄に登場する宇宙人をイメージしていた[20]。 富山は、ネーミングの時点ではギドラ一族の一種と想定していた[19]。植物のエネルギーを吸い取るという設定は、末谷が1ヶ月ほど入院して退院した際に自宅の観葉植物が縮んでいたという経験から発想したものである[20]。 富山によれば、デスギドラのキャラクターを脚本に定着させるのが難しく、決定稿の完成に時間がかかったという[19]。川北は、脚本でデスギドラそのものの性格が表現されておらずわからなかったため、地球をだめにする得体の知れない存在としてイメージしたという[21]。 デザイン デザインは吉田譲[出典 14]。キングギドラとの差別化のため、顔を長く、首は短くする方向性となり、四本足の怪獣としてデザインされた[24][25]。川北は、キングギドラやデストロイアを思わせる名前であることから、デザインに苦悩したと述べている[21][24]。 検討稿では、西洋のドラゴンのような顔の3つの体が合体したものや、前面に骨の意匠を押し出したもの、2足歩行のものや2本腕と4本脚のものなどが存在した[22][25]。また、岡本英郎による検討案では、1本首から3本首に成長するというものもあった[22]。 体色は、モスラとの対比でモノトーンとなった[26][27]。 1つ首と光線を発射する器官が3つにしたものや、P-38をモチーフにした尻尾が2本のものも描かれ、後者は﹃モスラ2海底の大決戦﹄のダガーラへと発展した[28][25]。また、4足歩行のデザインは、﹁のちのカイザーギドラに近い﹂とも評されている[29]。 造型 造型はモンスターズ[出典 15]。チーフの若狭新一の下、リーダー兼頭部原型担当の伊藤成昭[31][23][注釈 8]、八木文彦[27]をはじめ、寒河江弘[27][32]、山岡英則[27][33]、渡辺勉[27]、そしてメカニカル製作のレプリカの江久保暢宏[27][32]がそれぞれ担当。デザインが難航したため、造型での決定マケットは制作されなかった[27]。 動きやすさを重視するため、粘土原型は頭部と首のみが作られ、ボディはスーツアクターから型を取りウレタンの直付けで作られた[出典 16]。着ぐるみの前足には杖が入れられ、後足が膝をつかないようにしている[出典 17]。 着ぐるみの翼は付け根の部分で着脱が可能となっている[34][35]。翼の造形は、デストロイアと同じ方式で行われた[33]。 造形物は着ぐるみのほか、25分の1スケールの飛行用と首の可動ギミックを内蔵した小型のものの3種類が造られた[出典 18]。若狭は、そのほかにも映画﹃ヤマトタケル﹄のヤマタノオロチの首を改造した一本首、ギニョール、落とし用もあったと証言している[27]。 一本首は出現シーンの撮影に用いられ、スーツの首よりも1.5倍の長さがあり、ワイヤーで操演しているが、操作担当は爆炎でほとんど首が見えず勘で動かしていたという[37]。 ギニョールは、モスラの翼に噛みつくシーンなどに用いられた[37]。 パンフレットによれば、3つの首は操演時の区別のため、右からそれぞれ﹁のぞみ・かなえ・たまえ﹂と呼ばれていた。 撮影・演出 スーツアクターは吉田瑞穂[出典 19]。吉田は中腰の姿勢で演じるため、全身をワイヤーで吊って負担を軽減していたが、演技中にワイヤーに引っ張られてしまうこともあり、合成で消すワイヤーの量も多かったという[21][27]。 スーツは後ろ足で立ち上がれるなど機動性が高く、川北もこの着ぐるみを気に入っていたという[出典 20]。伊藤によれば、川北は造型中のテストでスーツを着用した吉田が立ち上がっていたのを見て、撮影にも取り入れていたという[27]。一方、機動性の高さゆえにきつい演技を要求されることも多かったといい、伊藤はモスラを噛んで放り投げるシーンの撮影後に顎がガタガタになっていたと証言している[27]。また、首が長いため吊る際のしなりで操演には苦労があったといい、内部にパイプが追加された[27]。使用する火薬の量も多かったため、防煙塗料を吹き付けるなどの安全対策がとられた[27]。 出現シーンの撮影では、スーツからは足元が見えないうえにセットが斜面になっているため、吉田はほとんど何も見えない状態で演じなければならず、火薬の仕掛けもあるためルートを間違えるわけにもいかず、テストを繰り返して体で覚えるしかなかったという[37]。 川北は、デスギドラの能力として溶岩の弾を吐くことを考えたが、迫力に欠けたため火炎や光線を使い分けるかたちとした[21]。また、マグマのエネルギーを用いるという設定から、地殻変動を能力に取り入れた[21]。 スーツの配色は、造型段階ではグリーンがかっていたが、撮影が進むにつれて黒くなっていったという[27]。そのため、後半の撮影で用いられたギニョールは、スーツにあわせて黒く塗り直されることとなった[27]。 地割れの描写は、移動用の平台を2つあわせてその上を飾りこみ、これを逆方向に引っ張り、間に仕掛けられた火薬を爆発させて表現している[37]。 デスギドラがダムの濁流にのまれるシーンでは、実際にダムのセットを破壊して水を流しているが、流れる水量が想定よりも少なく、デスギドラが濁流よりも前に流されているようにも見えてしまったため、合成で水を足しており、顔のアップに水がかかるカットも追加された[37][38]。川北は、デスギドラが後ろ向きの画しかなかったため迫力がなかったとも述べている[38]。 デスギドラの最期は、何度か上昇と落下を繰り返すという描写が撮影されたが、完成作品では省略され1回のみとなった[38]。編集で各カットを織り交ぜているため、オープン撮影とセット撮影が混在しており、カットごとにスケール感が異なっている[38]。 鳴き声はゾウの声をベースとしている[39]。脚注[編集]
注釈[編集]
(一)^ 書籍﹃ゴジラ全怪獣大図鑑﹄では、DEATHGHIDORAHと表記している[5]。
(二)^ 資料によっては、宇宙怪獣'[3][11]、負の生命体[12]と記述している。
(三)^ 資料によっては、﹁出生地﹂として記述している[3]。書籍﹃動画王特別編集ゴジラ大図鑑﹄では、﹁北海道紋別﹂と記述している[13]。
(四)^ 書籍﹃ゴジラ来襲!!﹄では、﹁封印の地 北海道紋別﹂と記述している[12]。
(五)^ 資料によっては、成獣と記述している[6][5]。
(六)^ 動物が持つエネルギーは植物と比べて効率が悪いため、利用しない。人間を直接襲わないのも、このためである。
(七)^ 翼を使って空を飛べるようになる。
(八)^ 書籍﹃東宝SF特撮映画シリーズVOL.11 モスラ﹄では、造型デザインと紹介している[27]。
出典[編集]
(一)^ abcdefghijモスラ超全集 1996, pp. 20–22, ﹁モスラ キャラクター図鑑 デスギドラ﹂
(二)^ 東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, p. 77, ﹁DESIGN WORKS﹂
(三)^ abcdefgゴジラ画報 1999, p. 34, ﹁東宝怪獣紳士録﹂
(四)^ abcdefghijkオール東宝怪獣大図鑑 2014, pp. 264–265, ﹁﹃モスラ﹄デスギドラ﹂
(五)^ abcdefghijkl全怪獣大図鑑 2021, pp. 248–249, ﹁世界をゆるがすパワフル怪獣﹂
(六)^ abキャラクター大全 2014, pp. 146–147, ﹁ヤマトタケル、モスラ﹂
(七)^ abcdefg東宝特撮全怪獣図鑑 2014, pp. 98–99, ﹁モスラ﹂
(八)^ abcdef超常識 2016, pp. 294–297, ﹁新たな設定のモスラ映画誕生！ モスラ﹂
(九)^ abcdefghijklバトル・オブ・キングギドラ 2020, pp. 124–129, ﹁登場作品別 キングギドラ比較﹂
(十)^ abcGTOM vol.0 2022, p. 34, ﹁モスラ︵1996︶﹂
(11)^ abcdefghi東宝特撮映画大全集 2012, p. 254, ﹁﹃モスラ﹄︵1996年版︶怪獣図鑑/資料館﹂
(12)^ abcdゴジラ来襲 1998, p. 217, ﹁第7章 特選！東宝怪獣名鑑'98﹂
(13)^ abcde動画王特別編集ゴジラ大図鑑 2000, p. 189, ﹁1990年代 モスラ﹂
(14)^ 宇宙船YB 1997, p. 9
(15)^ abcモスラ超全集 1996, p. 23, ﹁モスラ キャラクター図鑑 デスギドラ最終形態﹂
(16)^ バトル・オブ・キングギドラ 2020, pp. 122–123, ﹁キングギドラの亜種 ギドラ族登場作品 モスラ﹂
(17)^ ab超解体全書 2023, p. 52, ﹁写真で見る歴代キングギドラデザイン﹂
(18)^ abcdeモスラ超全集 1996, pp. 50–51, ﹁デスギドラ大解剖﹂
(19)^ abcd東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, pp. 34–35, ﹁インタビュー 富山省吾﹂
(20)^ ab東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, pp. 40–41, ﹁インタビュー 末谷真澄﹂
(21)^ abcde東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, pp. 46–49, ﹁インタビュー 川北紘一﹂
(22)^ abcモスラ超全集 1996, pp. 54–55, ﹁メイキング オブ モスラ1﹂
(23)^ abcdeバトル・オブ・キングギドラ 2020, p. 121, ﹁キングギドラの亜種 ギドラ族登場作品 デスギドラ﹂
(24)^ abcdef東宝特撮映画大全集 2012, p. 255, ﹁﹃モスラ﹄︵1996年版︶撮影秘話/川北監督に訊く﹂
(25)^ abcゴジラ画集 2016, pp. 128–130, ﹁モスラ︵1996年︶﹂
(26)^ abcモスラ超全集 1996, p. 60, ﹁メイキング オブ モスラ2デスギドラの造形﹂
(27)^ abcdefghijklmnopqrst東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, p. 85, ﹁MONSTER MAKERS デスギドラ造型 モンスターズ 若狭新一・伊藤成昭﹂
(28)^ 東宝SF特撮映画シリーズ13 1998, p. 84, ﹁デザインワークス 西川伸司﹂
(29)^ 薗部真一ほか 編﹁写真で見る歴代キングギドラデザイン﹂﹃ゴジラ完全解読﹄宝島社︿別冊宝島2207号﹀、50頁。ISBN 978-4-8002-2896-3。
(30)^ 若狭新一 2017, p. 91, ﹁﹃モスラ﹄﹂
(31)^ 若狭新一 2017, p. 96, ﹁﹃モスラ﹄﹂
(32)^ ab若狭新一 2017, pp. 94–95, ﹁﹃モスラ﹄﹂
(33)^ abcd若狭新一 2017, p. 97, ﹁﹃モスラ﹄﹂
(34)^ abc宇宙船YB 1997, pp. 4–7, 撮影‥飯塚康行﹁SFX FACTORY RETURNS!! in MOTHRA﹂
(35)^ 若狭新一 2017, p. 103, ﹁﹃モスラ﹄﹂
(36)^ モスラ超全集 1996, pp. 61–63, ﹁メイキング オブ モスラ2撮影﹂
(37)^ abcdef東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, pp. 89–96, 助監督 鈴木健二﹁特撮撮影日誌﹂
(38)^ abcd東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, pp. 101–104, ﹁川北カッティングの秘密﹂
(39)^ 東宝SF特撮映画シリーズ11 1996, pp. 36–39, ﹁インタビュー 米田興弘﹂
出典（リンク）[編集]
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