新生児呼吸窮迫症候群
新生児呼吸窮迫症候群 | |
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新生児呼吸窮迫症候群の胸部レントゲン画像(網状顆粒状陰影、気管支透亮像、ベル型胸郭) | |
概要 | |
診療科 | 小児科学, 産科学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | P22 |
ICD-9-CM | 769 |
OMIM | 267450 |
DiseasesDB | 6087 |
MedlinePlus | 001563 |
eMedicine | emerg/15 |
Patient UK | 新生児呼吸窮迫症候群 |
MeSH | D012127 |
新生児呼吸窮迫症候群︵しんせいじこきゅうきゅうはくしょうこうぐん、英語: (Infant) Respiratory Distress Syndrome: (I) RDS︶は、新生児呼吸不全の一つ。
概要[編集]
病態・臨床像[編集]
肺の未成熟によって肺サーファクタントが欠乏し、肺コンプライアンスの低下から肺胞虚脱、肺血管抵抗増大の病態を呈する。発症は生後2〜3時間後であり、リスク・ファクターとして下記のようなものがある。 ●早産児︵とくに出生時在胎週数32週未満; 肺サーファクタントの産生はおおむね在胎34週以後︶ ●出生体重1,500g未満の極低出生体重児 ●母体糖尿病 ●帝王切開児 また、動脈管開存症︵PDA︶の併存が高頻度で見られることも知られている。検査・所見[編集]
呻吟、多呼吸や努力性呼吸が見られ、チアノーゼを呈する。血液ガス分析では、PaO2の低下とPaCO2の増大とアシドーシスが見られる。胸部X線写真ではびまん性細網顆粒状陰影が特徴とされるほか、Bomsel 分類II型以降では気管支内の空気による透亮像︵air bronchogram︶、Bomsel分類IV型ではすりガラス状陰影が見られる。 また、特徴的な検査として、羊水の小泡沫安定性試験︵マイクロバブルテスト︶がある。これは、サーファクタントが直径15μm以下のマイクロバブルを安定させることを利用したもので、100倍の顕微鏡下において、羊水では5/mm2未満,胃液では10/mm2未満のweakであれば、ほぼ確定診断となる。治療[編集]
治療は、人工サーファクタントの投与と呼吸管理による。この人工サーファクタントとしては、田辺三菱製薬のサーファクテンが多用されている。 サーファクテン1V︵120mg︶あたり生理食塩液4mLでよく懸濁し、120mg/kg︵体重1kgあたり1V︶を生後8時間以内に気管内に投与する。 肺内に行きわたるように、投与は4,5回に分けて行ない、1回ごとに体位変換する。 サーファクテンにおいて副作用は報告されていない。 また、動脈管開存症︵patent ductus arteriosus, PDA︶が併存している場合は、これに対する標準的な治療であるシクロオキシゲナーゼ阻害剤︵インドメタシンなど︶投与が行なわれる。 PDA 併存例の場合、RDS が治療によって改善すると肺血管抵抗が低下するため、動脈管を介しての左→右シャントが増大して心不全を来たす恐れがあることから、PDA の治療を並行して進めることが重要である。新生児一過性多呼吸[編集]
詳細は「新生児一過性多呼吸」を参照
新生児一過性多呼吸︵Transient tachypnea of the newborn: TTN︶は、wet lung, II型RDSと呼ばれていたもので、出生直後において、肺胞液や羊水の吸収遅延からRDS様の症状を呈する。帝王切開での出生児に多く見られる。
診断は、生後6時間以内に出現する多呼吸︵60回/分︶を伴う呼吸障害について、除外診断によって行なわれる。多くの場合は多呼吸を主訴とし、呼吸音は清明、胸部単純X線像では肺門部血管陰影の増強と末梢肺野でのair trappingが認められる。小泡沫安定性試験は通常は陽性である。
症状こそRDSに似ているものの病態はまったく異なり、通常は30〜40%の酸素投与によって後遺症なく治癒する。また、5cmH2O程度の持続気道陽圧︵CPAP︶を加えることも有効である。ただし、肺胞からの血清成分漏出で二次的にサーファクタント欠乏を起こして重症化することがあり、この場合はRDSと同様のサーファクタント補充療法が行なわれる。