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咽頭︵いんとう、pharynx︶は、脊索動物門固有の器官で、消化管の前部で口腔と食道の中間にあり、胚の時期には、両側壁にいくつかの咽頭嚢が前後に並んで発生する部分のことである。咽頭と食道または喉頭の境界は第6頸椎である。
ヒトの咽頭は気管の入口にあって発声や誤嚥の防止といった機能を有する[1]。
発生学[編集]
咽頭嚢は、消化管の内壁が側方へ向かってポケット状にくぼんだもので、尾索動物亜門や頭索動物亜門、また脊椎動物亜門の魚類・両生類幼生および一部の両生類成体では、外界へ開通して﹁えら穴﹂︵鰓裂‥さいれつ︶となり、その前後の残存部、つまり鰓弓︵さいきゅう︶の壁にガス交換面としての﹁えら﹂︵鰓弁‥さいべん︶を生ずるものである。本来これらの祖先的な脊索動物において、口から飲み込んだ水を鰓裂に通してガス交換すると共に、ここの腹側にある内柱から分泌される粘液と鰓弁によってプランクトンやデトリタスを濾過補足して摂食するかご状の器官であった。今日でも尾索動物のホヤやサルパ、頭索動物のナメクジウオ、脊椎動物のヤツメウナギの幼生アンモシーテスではこの本来の形態や機能をよく維持している。硬骨魚綱や軟骨魚綱の魚類にも咽頭で濾過摂食するものが多く知られているが、これらでは濾過の主役は鰓弁ではなく鰓弓から伸びた鰓耙︵さいは︶と呼ばれる突起となり、また内柱からの粘液シートも失われている。
空気呼吸をするようになった脊椎動物のうち、幼形成熟しない両生類や有羊膜類では咽頭嚢は原則として外通せず、また、鰓弁も発生せずに、成長にともなって退化消失するが、その付近の組織からは種々の鰓性︵さいせい︶器官が分化する。また、脊椎動物では内柱は内分泌器官である甲状腺に変化し、代謝調節を担っている。
この点では爬虫類や鳥類でもほぼ同様だが、哺乳類の咽頭は、鼻腔、口腔と喉頭の間にあって、呼吸ならびに食物の通路として十字路のような大切な部分であり、ヒトでは抗体をつくって生体を防御する扁桃などのリンパ組織が杯状に配置︵ワルダイエル扁桃輪︶され、神経の分布は緻密である。また、種々の筋肉の協調により嚥下をもつかさどる。
解剖学[編集]
咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭の三つの部分に分けられる。
上咽頭[編集]
鼻腔に続く口蓋のレベルより上の部分を上咽頭︵epipharynx︶、鼻咽腔︵びいんこう/びいんくう︶、あるいは咽頭鼻腔部︵nasopharynx︶と呼ぶ。呼吸器︵上気道︶の一部を構成している。ここには中耳腔︵ちゅうじこう/ちゅうじくう︶に通じる耳管の開口部がある。
ここにアデノイド︵英語版︶があり、アデノイドが増殖すると耳管を圧迫して狭窄︵きょうさく︶を起こして難聴の原因となる。
また風邪などで鼻炎、扁桃炎に引き続いて上咽頭炎を起こすと、炎症が耳管や中耳に波及して中耳炎を起こす。
ここにできる腫瘍には、上咽頭癌や肉腫があるが、これは中国南東岸一帯、台湾、香港、シンガポールの中国人に多く見られる。
中咽頭[編集]
咽頭の第2の部分は口を開けると見える中咽頭︵mesopharynx︶であり、咽頭口腔部︵oropharynx︶ともいう。ここは︵口腔の一部でもあるため︶消化管であると同時に上気道でもある。この両側に扁桃がひかえる。この部分は風邪などの炎症でよく咽頭炎ならびに扁桃炎を起こす。
咽頭炎には、急性と慢性の別があり、急性咽頭炎では、発熱、咽頭痛、咳、痰などを訴え、口を開けると咽頭が赤く見える。慢性咽頭炎は、過度の飲酒、喫煙、炎症の慢性化などによっておこり、痛みを訴えることはなく、むしろ咽頭異物感あるいは違和感に悩まされるものである。
治療としては、原因となる疾患、例えば慢性鼻炎、副鼻腔炎などの除去に努め、慢性の場合、抗生物質は使わず、もっぱら吸入、うがいなどの局所治療に専念する。
下咽頭[編集]
最下部の下咽頭︵hypopharynx︶は咽頭喉頭部︵laryngopharynx︶ともいい、喉頭の後方から両側方にかけて存在する腔で、ここから気道より分かれた消化管となる。炎症が慢性化しやすい部分である。また、大人の場合、舌根にある舌扁桃の増殖が加わって違和感がさらにひどくなる。
食道の直上に位置する1対の空間を梨状窩︵英語版︶︵英: piriform fossa︶という。梨状陥凹︵英: sinus pyriformis︶、Recessus Piriformisとも[2]。
ここにも悪性腫瘍ができやすく、喉頭の癌と区別しにくいことが多い。
また、ここは下咽頭痛のほか、嚥下障害などを訴える部分であり、魚骨などの異物のひっかかりやすい場所でもある。
最近は少なくなったが、咽頭結核もみられることがある。これは、たいてい肺結核から二次的に感染したもので、咽頭痛、嚥下痛、微熱、喉の違和感、嚥下困難などを訴えるものであり、咽頭粘膜あるいは軟口蓋に粟粒︵ぞくりゅう︶状発疹か、潰瘍が見られる。
なお、昔多かった咽頭梅毒は、現在ではほとんどみられなくなった。代わりに、オーラルセックスによる性感染症︵STD︶としては淋菌性咽頭炎などが増加傾向にある。
- ^ 池田勝久編『目でみる耳鼻咽喉科疾患』文光堂、2017年、180頁
- ^ グレイ解剖学. p.992.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]