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﹃範疇論﹄︵はんちゅうろん、希: Κατηγορίαι、羅: Categoriae, 英: Categories︶とは、アリストテレスの著作であり、﹃オルガノン﹄の中の一冊。﹃カテゴリー論﹄とも。
文字通り、様々な概念・言葉の﹁分類﹂について述べられている。
本書の題名は、以下のように、古代の註釈家たちによって様々な名で呼ばれてきた[1]。﹁十のカテゴリー﹂といった呼称が散見されるのは、第4章にて10の分類が挙げられていることに因む。
●﹃諸カテゴリーについて﹄
●﹃十のカテゴリー﹄
●﹃十のカテゴリーについて﹄
●﹃十の類について﹄
●﹃あるものの類について﹄
●﹃諸カテゴリー、あるいは十の最も類的な類について﹄
●﹃普遍的な言葉について﹄
15の章から成り、それらは内容上、
●1章 - 後で用いられる﹁同名異義的﹂﹁同名同義的﹂﹁派生名的﹂が説明される。
●2章-9章 - 本編。
●10章-15章 - ﹁対立﹂﹁反対﹂﹁より先﹂﹁運動﹂﹁同時に﹂﹁持つ﹂といった詞が使われる色々な場合の区別。
の3つに分けることができる[2]。
この内、﹁post-praedicamenta﹂と総称される3番目の10章-15章は、アリストテレスの作でなく、後世の挿入︵ただし、紀元前200年以前のわりと早い時期︶ということが、定説となっている[3]。
第1章
●同名異義的︵ホモーニュモン、希: ὁμώνυμον, homōnymon︶ - 名称だけが共通で、本質的定義が異なるもの。︵例‥﹁動物﹂という名称で呼ばれる﹁人間﹂と﹁像﹂[4]︶
●同名同義的︵シュノーニュモン、希: συνώνυμον, synōnymon︶ - 名称も本質的義も同じもの。︵例‥﹁動物﹂という名称で呼ばれる﹁人間﹂と﹁牛﹂︶
●派生名的︵パローニュモン、希: παρώνυμον, parōnymon︶ - 語尾変化によって生じたもの。︵例‥﹁文法学﹂︵希: γραμματική︶から﹁文法家﹂︵希: γραμματικός︶、﹁勇気﹂︵希: ανδρεία︶から﹁勇者﹂︵希: ανδρείος︶︶
第2章
表現方法には、
●結合無し︵単語︶による表現 ︵例‥﹁人間﹂﹁牛﹂﹁走る﹂﹁勝つ﹂︶
●結合︵文︶による表現 ︵例‥﹁人間は走る﹂﹁人間は勝つ﹂︶
の2種類がある。
概念の内、あるものは、
(一)ある﹁基体﹂︵主語︶についての述語になるが、いかなる﹁基体﹂︵主語︶の内にも無い。︵例‥﹁人間﹂は、﹁特定の人間﹂︵基体︶の述語となるが、どの﹁基体﹂の内にも無い︶
(二)ある﹁基体﹂︵主語︶についての述語にはならないが、﹁基体﹂︵主語︶の内にある。︵例1‥﹁特定の文法知識﹂は、﹁霊魂﹂︵基体︶の内にあるが、いかなる﹁基体﹂︵主語︶の述語にもならない、例2‥﹁ある特定の白﹂は、﹁物体﹂︵基体︶の内にあるが、いかなる﹁基体﹂︵主語︶の述語にもならない︶
(三)ある﹁基体﹂︵主語︶についての述語になると共に、﹁基体﹂︵主語︶の内にある。︵例‥﹁知識﹂は、﹁霊魂﹂︵基体︶の内にあり、﹁文法的知識﹂︵基体︶の述語となる︶
(四)ある﹁基体﹂︵主語︶についての述語にならず、﹁基体﹂の内にも無い。︵例‥﹁特定の人間﹂﹁特定の馬﹂︶
︵なお、上記の話は要するに、
●﹁ある﹁基体﹂の述語になるか否か﹂によって、﹁種・類﹂と﹁個﹂が、
●﹁なんからの﹁基体﹂の内にあるか否か﹂によって、﹁実体﹂と﹁非実体﹂︵性質・量︶が、
それぞれ振り分けられ、その組み合わせで作られた4分類であり、分かりやすくまとめると、
(一)﹁実体﹂のカテゴリーにおける﹁種・類﹂
(二)﹁実体﹂以外のカテゴリーにおける﹁個﹂
(三)﹁実体﹂以外のカテゴリーにおける﹁種・類﹂
(四)﹁実体﹂のカテゴリーにおける﹁個﹂
ということになる[5]。︶
第3章
●﹁あるもの︵A︶が、基体︵主語︶としてのあるもの︵B︶についての述語となる関係にある﹂場合、その述語となるあるもの︵A︶について言われるものは、全て基体︵B︶に対してもあてはまる。︵例‥﹁特定の人間﹂︵基体・主語、A︶と﹁人間﹂︵述語、B︶の場合、﹁動物﹂は﹁人間﹂︵述語、B︶の述語となるので、﹁特定の人間﹂︵基体・主語、A︶の述語ともなる。︶
●﹁異なった﹁類﹂で、互いに他の下に配されない関係にある﹂場合、その﹁種差﹂も異なっている。︵例‥﹁動物﹂と﹁知識﹂の場合、﹁動物﹂の﹁種差﹂は、﹁陸棲的﹂﹁有翼的﹂﹁水棲的﹂﹁二足的﹂などによって表されるが、それらは﹁知識﹂の﹁種差﹂とはならない。︶
第4章
単語表現が意味するものは、
(一)﹁実体﹂︵例‥人間、馬︶
(二)﹁量﹂︵例‥2ペーキュス、3ペーキュス︶
(三)﹁質﹂︵例‥白い、文法的︶
(四)﹁関係﹂︵例‥二倍、半分、より大きい︶
(五)﹁場所﹂︵例‥リュケイオン、市場︶
(六)﹁時﹂︵例‥昨日、昨年︶
(七)﹁体位﹂︵例‥横たわっている、坐っている︶
(八)﹁所持﹂︵例‥靴を履いている、武装している︶
(九)﹁能動﹂︵例‥切る、焼く︶
(十)﹁受動﹂︵例‥切られる、焼かれる︶
のいずれかである。
第5章
﹁実体﹂について。
●﹁第一実体﹂ - ︵第2章の4︶ ︵例‥﹁特定の人間﹂、﹁特定の馬﹂︶
●﹁第二実体﹂ - ︵第2章の1︶ ︵例‥﹁人間﹂﹁馬﹂︶
第6章
﹁量﹂について。
第7章
﹁関係﹂について。
第8章
﹁質﹂について。
第9章
﹁能動﹂﹁受動﹂について。
脚注・出典[編集]
- ^ 『アリストテレス全集1』岩波書店 p152
- ^ 『アリストテレス全集』岩波書店 p153
- ^ 『アリストテレス全集』岩波書店 pp153-156
- ^ 「銅像」「偶像」「画像」の「像」。ギリシア語ではそれらも「ゾーオン」(希: ζῶον, zōon、動物)と呼ばれた。
- ^ 『アリストテレス全集1』岩波書店 p61
関連項目[編集]