出世（読み）シュッセ

デジタル大辞泉 「出世」の意味・読み・例文・類語

しゅっ‐せ【出世】

 
﹇名﹈(スル)
1 社会的に高い身分・地位を得ること。﹁出世して親を喜ばす﹂﹁立身出世﹂
2 この世に生まれ出ること。
﹁先づ老子―し、次孔子出﹂︿雑談集・九﹀
3 仏語。
㋐仏が衆(しゅ)生(じょう)を救うためこの世に現れること。しゅっせい。
㋑俗世間を離れて仏道に入ること。また、その人。出家。
㋒比叡山で、公卿の子弟の出家したもの。
㋓禅寺の住持となること。特に、紫衣を賜り、師号を受け、あるいは勅宣を蒙って官寺の住持となること。
[類語]利達・立身・功名・立身出世・成り上がり・成り上がる・栄進・昇進・昇格・昇任・栄達・昇級・昇段・栄転・累進・特進・格上げ・進む・身を立てる  

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精選版 日本国語大辞典 「出世」の意味・読み・例文・類語

しゅっ‐せ【出世】

 

(一)〘 名詞 〙
 (二)① 仏語。仏が衆生を救うために仮にこの世に現われ出ること。しゅっせい。
(一)[初出の実例]﹁於レ是衆生。歴レ年累レ月。蒙レ教修行。漸漸益レ解。至下於二王城一始発中一大乗機上、称二会如来出世之大意一﹂(出典‥法華義疏︵7Ｃ前︶一)
 (二)﹁近くは慈尊の出世(シュッセ)を待ち遠くは三世に動転なしとかや﹂(出典‥源平盛衰記︵14Ｃ前︶二八)
 (三)② ＝しゅっせけん︵出世間︶①
(一)[初出の実例]﹁皇帝皇太后、如二日月之照臨一並治二万国一。若二天地之覆載一長育二兆民一。遂使下為二出世之良因一成中菩提之妙果上﹂(出典‥続日本紀‐天平宝字元年︵757︶一一月壬寅)
 (二)[その他の文献]︹摩訶止観‐三・下︺
 (四)③ 叡山や興福寺などで、堂上貴族の子息の出家して、妻帯しないもの、または僧侶の高位に昇ったもの。出世者。
(一)[初出の実例]﹁中納言僧都経超、二位寺主浄勝二人より外は、供奉仕りたる出世・坊官一人も候はず﹂(出典‥太平記︵14Ｃ後︶九)
 (五)④ 門跡などの貴種に近侍し教学を支える僧。出世者。
(一)[初出の実例]﹁貞和二年︿略﹀十一日早旦入堂。出世等々相伴了﹂(出典‥醍醐寺新要録︵1620︶)
 (六)⑤ ( ━する ) 世の中に生まれ出ること。世に現われること。
(一)[初出の実例]﹁先老子出世(シュッせ)し、次孔子出﹂(出典‥雑談集︵1305︶九)
 (七)⑥ 仏語。禅宗寺院の制度で、首座(しゅそ)から西堂(せいどう)に転ずることをいう。
(一)[初出の実例]﹁大方西堂は出世して嗣法の定た事ぞ。︿略﹀出世の時こそ嗣法は定れぞ﹂(出典‥百丈清規抄︵1462︶三)
 (八)⑦ 仏語。禅宗寺院の住持となること。また、特に公家の奏達によって、紫衣を賜わり、師号を受け、あるいは勅宣を蒙って官寺の住持となることをいう。立身出世の観念はここから生まれたもの。
(一)[初出の実例]﹁つひに発心して、園頭をつとむること始終三年なり。のちに出世せりしとき、衆にしめしていはく﹂(出典‥正法眼蔵︵1231‐53︶礼拝得髄)
 (九)⑧ ( ━する ) 世に出て立派な身分になること。世に栄えること。立身。栄進。しゅっせい。
(一)[初出の実例]﹁故殿の御時も、余に入目に御座候て、御出世も遅々候﹂(出典‥不審条々︵1403︶)
 (二)﹁しかも次第に出世(シュッセ)の侍なれば﹂(出典‥浮世草子・武家義理物語︵1688︶一)
 (十)⑨ 女郎が一本立ちして張り見世に出ること。遊郭の勤めに初めて出ること。
(一)[初出の実例]﹁太夫の新艘、出世(シュッセ)の日より三ケ日の間、さげ髪にて後帯する法也﹂(出典‥評判記・色道大鏡︵1678︶三)
  
 

しゅっ‐せい︻出世︼

 

(一)〘 名詞 〙 ( ﹁せい﹂は﹁世﹂の漢音 )
 (二)① ＝しゅっせ︵出世︶①
(一)[初出の実例]﹁釈尊御入滅既に後五百歳に及び、慈尊彌勒の出世(シュッセイ)未遠しといへども、仏法を尋ぬるに﹂(出典‥仮名草子・夫婦宗論物語︵1644‐46頃︶)
 (三)② ＝しゅっせ︵出世︶⑧︹和英語林集成︵初版︶︵1867︶︺
(一)[初出の実例]﹁渡って聞いた耳学問、按摩取りから出世(シュッセイ)して、それから仕出した風薬﹂(出典‥落語・孝行娘︵1898︶︿六代目桂文治﹀)
 (二)[その他の文献]︹李白‐竄夜郎於烏江留別宗璟詩︺
 (四)③ 世にぬきんでること。人よりはるかにすぐれていること。︹長恨歌伝︺
  

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普及版 字通 「出世」の読み・字形・画数・意味

【出世】しゆつせい・しゆつせ

 
世に出る。立身する。また、俗世間をはなれる。︹顔氏家訓、養生︺之れを︵道教︶に考ふるに、縱(たと)ひ仙を得とも、(つひ)に當(まさ)に死るべし。世を出づること能はず。
字通﹁出﹂の項目を見る。
  

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世界大百科事典（旧版）内の出世の言及

【住職】より


…古くからある住持職(住持)の略称。住職になることを出世︵しゆつせ︶といい，住職として実際にその寺に入ることを入院︵じゆいん︶，あるいは晋住︵しんじゆう︶，また晋山︵しんざん︶という。住職という呼称は，今日では宗派を問わず多く用いられているが，歴史的にみると，寺院最高位の僧職の呼称は時代により宗派により，またそれぞれの寺院によって，さまざまの異称や尊称がある。…

【上人】より


…その綸旨を受けると，香衣を着ることができた。浄土宗では上人号を受けることを出世といった。浄土系諸宗や日蓮宗では僧の通号となっている。…

※「出世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」

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