デジタル大辞泉 「垂れる」の意味・読み・例文・類語 た・れる【垂れる】 ﹇動ラ下一﹈﹇文﹈た・る﹇ラ下二﹈ 1 ㋐ひと続きのものの端が下の方へ低く、力なく下がる。また、一部分が下がった状態で位置する。﹁電線が―・れる﹂﹁雲が低く―・れる﹂﹁目じりが―・れている﹂ ㋑水などが何かをつたって少しずつ落ちる。しずくとなって下に落ちる。したたり落ちる。﹁水が―・れる﹂﹁よだれが―・れる﹂ 2 ㋐ひと続きのものの端を下の方へだらりと下げる。たらす。﹁釣り糸を―・れる﹂﹁首を―・れる﹂ ㋑目上の者が目下の者に示したり、与えたりする。﹁教えを―・れる﹂﹁恵みを―・れたもう﹂ ㋒のちのちまで残す。﹁名を後世に―・れる﹂ ㋓︵﹁放れる﹂とも書く︶大小便や屁(へ)などをする。排(はい)泄(せつ)する。﹁寝小便を―・れる﹂ ㋔﹁言う﹂を卑しめていう語。﹁文句を―・れる﹂ 3 ﹁剃る﹂の忌み詞。また、刃物がよく切れる。 ﹁あんまりよい月影に額―・れうと思うて﹂︿浄・重井筒﹀ ﹁鋏(はさみ)をくれる筈ぢゃが、―・るるかしらぬ﹂︿浮・一代男・一﹀ [類語]︵1㋐︶下がる・しだれる・垂れ下がる・ぶら下がる/︵1㋑︶滴る・垂らす・零(こぼ)れる・零れ落ちる・伝う・流れる・ぼとぼと・ぼたぼた・ぽたぽた・ほろほろ・ぽろぽろ・ぽとぽと・ぼろぼろ・たらたら・だらだら・はらはら・ぽつぽつ・ぱらぱら・ばらばら・ぽろり・ほたほた・ぽつり・ぽつりぽつり・ぽつん・はらり・ぱらり・ほろり・ぽたり・どくどく・たらり・ちょろちょろ・ちょろり・とくとく・したたり・だくだく・ぽとり・滴り落ちる・こぼれる・ほとばしる・あふれる し‐だ・れる【▽垂れる/枝垂れる】 [動ラ下一][文]しだ・る[ラ下二]《「しだる」(四段)の下二段化》細い枝などが、長くたれ下がる。「暗い空に赤い光が柳のように―・れた」〈万太郎・露芝〉[類語]下がる・垂れる・垂れ下がる・ぶら下がる・吊るす・垂らす・ぶら下げる・吊る・吊り下げる 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「垂れる」の意味・読み・例文・類語 た・れる【垂】 (一)[1] 〘 他動詞 ラ行下一段活用 〙 [ 文語形 ]た・る 〘 他動詞 ラ行下二段活用 〙 (一)① ものの一端を支えて、他端が下にさがるようにする。 (一)(イ) かけてつるす。ぶらさげる。 (一)[初出の実例]﹁大太刀を 多黎(タレ)佩き立ちて 抜かずとも 末果しても 闘(あ)はむとぞ思ふ﹂(出典‥日本書紀︵720︶武烈即位前・歌謡) (二)﹁優(ゆたか)は此容貌で洋服を著け、時計の金鎖を胸前に垂(タ)れてゐた﹂(出典‥渋江抽斎︵1916︶︿森鴎外﹀九五) (二)(ロ) 物やからだの一部の端を下げる。 (一)[初出の実例]﹁袖垂(たれ)ていざ吾が苑に鶯の木伝ひ散らす梅の花見に﹂(出典‥万葉集︵8C後︶一九・四二七七) (二)﹁丹治只頭(かしら)を低(タレ)て言(ことば)なし﹂(出典‥読本・雨月物語︵1776︶菊花の約) (三)﹁そこへ真白い犬が一匹、向うからぼんやり尾を垂(タ)れて来た﹂(出典‥蜃気楼︵1927︶︿芥川龍之介﹀一) (二)② 液体を流し落とす。したたらす。 (一)[初出の実例]﹁わくらばに問ふ人あらばすまの浦にもしほたれつつわぶとこたへよ︿在原行平﹀﹂(出典‥古今和歌集︵905‐914︶雑下・九六二) (三)③ 上位の者が下位の者に何かを与えたり示したり教えたりする。 (一)(イ) 神仏が加護や恵みなどをあらわし示す。→跡(あと)を垂(た)る。 (一)[初出の実例]﹁譬ひ前世の悪業拙しと云ふとも、仏慈悲を垂れ給へ﹂(出典‥今昔物語集︵1120頃か︶一二) (二)(ロ) 手本、教え、戒めなどを示す。 (一)[初出の実例]﹁家大人種々の教示を垂(タレ)賜ふ﹂(出典‥春迺屋漫筆︵1891︶︿坪内逍遙﹀政界叢話) (四)④ 後の時代にまで残し伝える。 (一)[初出の実例]﹁このシェークスピアが何によって不朽の名声を垂れたかと言へば﹂(出典‥シェークスピアの本体︵1933︶︿菊池寛﹀六) (五)⑤ 大小便や屁(へ)を体外に出す。 (一)[初出の実例]﹁ダイベンヲ taruru(タルル)﹂(出典‥日葡辞書︵1603‐04︶) (六)⑥ ﹁述べる﹂﹁言う﹂をけなしていった語。こく。 (一)[初出の実例]﹁エエうるせへやつらだ。何でもはなしが出ると自惚(タレル)のだ﹂(出典‥滑稽本・続々膝栗毛︵1831‐36︶三) (七)⑦ 欲しがる。ねだる。 (一)[初出の実例]﹁去年のよふな土産はいりんせんから草ざうしをもって来ておくんなんしといふ︿略﹀あめをたれる子供とはきつい違なり﹂(出典‥洒落本・格子戯語︵1790︶) (八)⑧ ﹁剃る﹂を忌みきらっていう語。また、刃物がよく切れるの意。 (一)[初出の実例]﹁カミヲ taruru(タルル)︿訳﹀子供の髪を剃る﹂(出典‥日葡辞書︵1603‐04︶) (二)[2] 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙 [ 文語形 ]た・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 (一)① ものの一端が支えられて、他端が下方にさがる。ぶらさがる。また、物やからだの一部の端がさがる。 (一)[初出の実例]﹁左へひぢたをれば、荒菰が垂れてある﹂(出典‥虎寛本狂言・仏師︵室町末‐近世初︶) (二)﹁たっぷり一握(ひとつか)みある濃い褐色のお下げが重げに垂(タ)れてゐる﹂(出典‥青年︵1910‐11︶︿森鴎外﹀一四) (二)② 雲などが低くおおうように広がる。 (一)[初出の実例]﹁山峡は日陰となるのが早く、もう寒々と夕暮色が垂れてゐた﹂(出典‥雪国︵1935‐47︶︿川端康成﹀) (三)③ 液体が糸を引くように、また粒のようになって流れ落ちる。したたる。︹浪花聞書︵1819頃︶︺ (一)[初出の実例]﹁口髭にも、鼻の先にも、︿略﹀汗が玉になって、垂れてゐる﹂(出典‥芋粥︵1916︶︿芥川龍之介﹀) (三)[3] 〘 接尾語 〙 性質・状態を示す体言に付けて嫌悪の気持を表わす。﹁あまったれる﹂﹁なまたれる﹂など。 垂れるの語誌 上代には下二段活用が他動詞、四段活用が自動詞という区別があったが、中世以降、﹁生かす﹂﹁伸ばす﹂などの他動詞形の影響を受け、﹁たらす﹂という他動詞が派生したため、他動詞の﹁たれる﹂は﹁頭(こうべ)をたれる﹂﹁訓戒をたれる﹂のような慣用的用法に限られ、次第に自動詞化した。 し‐だ・れる【垂】 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙 [ 文語形 ]しだ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 ( 四段活用の「しだる」から変化したもの ) 長くたれ下がる。下にたれる。[初出の実例]「山ふかみ岩にしだるる水溜めんかつがつ落つる橡(とち)拾ふ程」(出典:山家集(12C後)下)「五分ほどの幅のその長い紙切れは丁度花火の火の尾のやうに長々としだれて舞ひ乍ら」(出典:竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の人生観) しず・れるしづれる【垂】 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙 [ 文語形 ]しづ・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙 木の枝などから、積もっていた雪がすべり落ちる。[初出の実例]「朝まだき松のうは葉の雪は見ん日影さしこばしつれもぞする〈源仲正〉」(出典:丹後守為忠百首(1134頃か)冬) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例