デジタル大辞泉
「撰集抄」の意味・読み・例文・類語
せんじゅうしょう〔センジフセウ〕【撰集抄】
詳。文永年間︵1264~1275︶ごろまでに成立。神仏の霊験、高僧の法徳・発心談など百余話を収める。
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せんじゅうしょうセンジフセウ【撰集抄】
(一)鎌倉後期の仏教説話集。九巻。編者未詳。西行作に仮託して、跋文では寿永二年︵一一八三︶擱筆とするが、虚構。建長二年︵一二五〇︶頃の成立か。近世では西行自記と考えられていたが、現在では西行仮託の書とされる。神仏の霊験談・高僧の法徳談・霊魂談・発心話・遁世談など一二一話を収めるが、これより説話の少ない略本も伝わる。佯狂・隠徳の聖の話が多い。随筆・評論的な部分と感傷的な筆致が目立つ。
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撰集抄
せんじゅうしょう
鎌倉時代の仏教説話集。九巻。著者未詳。13世紀なかばころの成立か。序文には、寿永(じゅえい)2年︵1183︶讃岐(さぬき)国善通寺で記したと書いてあり、作中に語り手が自ら西行(さいぎょう)と名のる場面などもあって、古くから西行の自作と考えられてきたが、仮託であることは明らか。内容は、西行が諸国行脚(あんぎゃ)の途上に見聞した﹁心澄む﹂理想の遁世(とんせい)者たちのおもかげを書き留め、感想、批評、教訓などを付したという体裁をとる。理想の遁世者として登場する人物は、玄賓(げんぴん)、増賀をはじめとする著名な人物や、行賀(ぎょうが)、真誉、永玄、真範、覚英などといった有名無名の僧侶(そうりょ)や官人、武士、遊女などで、種々の階層にわたるが、大部分は、なんらかの伝承を核にして話を膨らませた創作説話であると思われる。本書に大きな影響を与えた﹃閑居友(かんきょのとも)﹄︵慶政上人(けいせいしょうにん)著か︶とともに、鎌倉中期遁世思想のあり方を知る手掛りとなるほか、漂泊の歌人西行のイメージを形成するうえで後代に与えた影響は大きい。
﹇小島孝之﹈
﹃西尾光一校注﹃撰集抄﹄︵岩波文庫︶﹄▽﹃安田孝子他編﹃撰集抄 校本篇﹄︵1979・笠間書院︶﹄
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撰集抄 (せんじゅうしょう)
鎌倉時代の説話集。編者未詳。13世紀後半の成立か。9巻。序に︿新旧のかしこきあとを撰︵えら︶びもとめける言の葉を書き集め,撰集抄と名づけて,座の右に置いて,一筋に知識とたのまむとなり﹀とあり,生き方の指針となる書として編まれた。編者による説話の批評・評論的な部分が多く,法語あるいは随筆のような印象を読者に与えている。全体としては仏教書というべきであろう。世の無常をさとって仏道に入れ,と説き,出家遁世者の中に見いだした“心澄む”人々の行いを描いている。収録説話には仏教的なものが多いが,和歌,漢詩,芸能に関するものもある。本書は長いあいだ西行の著であると信ぜられ,享受されてきた。︿遁世者﹀として,︿漂泊の歌人﹀としての西行像の形成にはたした役割は大きい。しかし実際には西行の著ではなく,西行がみずからの体験,見聞を記録したという体裁は虚構である。
執筆者‥出雲路 修
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撰集抄【せんじゅうしょう】
鎌倉前期の仏教説話集。9巻。13世紀半ばころの成立か。約100話を収める。西行作と伝えられ,西行関係の説話が多い。実際には西行作ではないが,長くそう信じられ,遁世・漂泊の歌人としての西行像の形成に大きく関与したと思われる。神仏霊験談,発心遁世(とんせい)談が中心で,和歌や芸能に関する説話もあるが,全体として法語的性格が強い。
→関連項目宝物集
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撰集抄
せんじゅうしょう
鎌倉時代の仏教説話集。著者,成立年未詳。9巻。 121話。神仏の霊験,高僧の法徳,発心遁世話などの説話を掲げて,著者の感想を記し,仏道をすすめる。寿永2 (1183) 年1月讃岐の善通寺で記したという跋文をおくなど,西行の著作の体裁をとり,諸国旅行中に見聞したことの回想記の形をとった記事を多数収めている。西行の実作が核になって発展した作品とも考えられ,見聞談には西行の事跡と合致するものもあるが,全体としては西行に仮託された創作とみるべきである。中世以来広く流布した,漂泊の歌僧としての西行像は本書に由来するところが大きく,﹃西行物語﹄や能の﹁西行物﹂など数多くの文学,芸能の源流となった。
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世界大百科事典(旧版)内の撰集抄の言及
【西行】より
… 西行は若いときに公家社会から出離して,山里に閑居し,聖︵ひじり︶として各地を旅したために,その動静を記したものは,貴族歌人たちにとって早くから伝説化の芽をもっていた。旅の歌僧,遁世聖,西行に関する説話は︽古今著聞集︾︽古事談︾︽沙石集︾︽源平盛衰記︾などに記されておびただしい数にのぼり,︽吾妻鏡︾などにも採録されたが,とくに︽[撰集抄]︾は,鎌倉時代の各地の説話を旅する西行の見聞としてまとめたもので,西行の伝説化に大きな役割を果たした。他方西行の伝記を書いた︽[西行物語]︾︽西行物語絵巻︾も,中世の人々の間で,無常である現世を捨てて,孤独な旅の生活のなか花や月にあこがれる数寄の心を和歌に託すという,人間の生き方の理想をあらわすものとして読まれ,さまざまな西行伝説の原形となった。…
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