破産債権者が破産財団に属する債権の債務者でもある場合に,その債権と自己の債権とを相殺することができる地位をいう。破産債権を自働債権とし,破産財団所属債権を受働債権とする場合に限って認められる。本来,破産債権者は破産手続によってのみその債権を行使できるが(破産法16条),破産財団にも破産債権者に対する債権が存在する場合にもこの原則を貫いて相殺を認めないと,破産債権者は自己の債権については破産手続において他の債権者と平等の比例配分した弁済しか受けられないのに対して,自己の債務については破産財団に対して全額弁済しなければならず,不均衡が生ずる。しかし,相殺を認めれば,特定の破産債権者のみに優先的に弁済したのと同じ結果になる。破産法が相殺権という地位を認め(98,99条),一方で民法の相殺の要件(民法505条以下)を緩和し,他方でこれを厳格にしている理由がそこにある。すなわち,破産債権は金銭化・現実化されるので,民法の相殺と異なり,自働債権の範囲が拡大され(破産法99条前段,100条,102条2項),受働債権も条件・期限の付されたものでよい(99条後段)とされる一方,相殺適状は破産宣告のとき(場合によっては支払停止や破産申立ての前から)に備わっていなければならないとされる。相殺権を行使するためには,不足額について配当を求めるのでない限り,破産債権としての届出等の手続は不要である。
執筆者:西澤 宗英
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
※「相殺権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
国または地方公共団体が個々の候補者の選挙費用の一部または全額を負担すること。選挙に金がかかりすぎ,政治腐敗の原因になっていることや,候補者の個人的な財力によって選挙に不公平が生じないようにという目的で...
6/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
5/20 小学館の図鑑NEO[新版]昆虫を追加
5/14 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
4/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
4/12 デジタル大辞泉を更新