裁判所手続によらず関係人の話合いによって倒産処理を行うこと。内整理(ないせいり),任意整理ともいう。実際には,破産,和議,会社更生等の裁判所手続によるよりも私的整理による倒産処理が圧倒的多数を占める。成功すれば安価・迅速の点で優れているが,悪質な整理屋が介入する危険も大きい。私的整理について特別の立法はなく,民法など一般私法の規律に服する。倒産企業を清算する場合と再建を目ざす場合があるが,いずれにせよ整理計画の成立のため全債権者の同意が必要であるため,債権者間に対立の激しいときや倒産者に対する信頼がまったく失われているときは成功の可能性は少ない。逸失した財産を否認によって回復する必要があるときは破産宣告を求めねばならない。
私的整理の手続については決まったものはないが,一般には債権者集会が開かれて数名の債権者委員と委員長が選ばれ,債権者委員長が帳簿類や印鑑等を保管して倒産者の財産を管理しつつ整理案を策定する。倒産経営者の私財提供や,担保権者に権利放棄を要請したりもするが,強制力はないからすべて納得ずくで進められなければならない。少額債権者には他の債権者の同意のもとに全額支払って債権者数を減らすこともよく行われる。整理案は債権の一部免除と延払いを主要な内容とするが,これについて全債権者の同意をとりつけると私的整理は成功する。裁判所の関与はないが,弁護士がなんらかの資格で関与することが多い。
→倒産
執筆者:谷口 安平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
※「私的整理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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