遺伝子組換え食品(読み)イデンシクミカエショクヒン(英語表記)genetically modified food

デジタル大辞泉 「遺伝子組換え食品」の意味・読み・例文・類語

いでんしくみかえ‐しょくひん〔ヰデンシくみかへ‐〕【遺伝子組(み)換え食品】

 
GMGMOGM  

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遺伝子組換え食品」の意味・わかりやすい解説

遺伝子組換え食品
いでんしくみかえしょくひん


genetically modified foodGM2015271112830321

 2016519

沿革

世界で初めて商品化された遺伝子組換え作物(GM作物)は、1994年にアメリカで発売されたフレーバー・セーバー・トマトFlavr Savr tomatoである。トマトは熟すると果皮が柔らかくなりやすく長持ちしないが、過熟の遅い日持ちのよいトマトができれば生産者にはメリットが大きく、また消費者も完熟した新鮮なトマトが食べられる。これが遺伝子組換え作物の商品化の背景である。このフレーバー・セーバー・トマトは、果実が崩れにくく完熟した状態で収穫・流通ができ、アメリカのほかカナダメキシコなどでも認可されたが、日本では販売されなかった。このトマトに代表されるように、初期の組換え食品としての組換え作物では、生産者側のニーズにこたえる技術開発が中心であった。一方、世界の人口が増大するなか、食料不足への対応策が必要であるという大きな命題が絶えず存在しており、その要求はますます高まっている。そして、食料生産性向上のための方法の一つとしてGM作物の研究開発が進められている。

[飯野和美 2016年5月19日]

作物への遺伝子導入方法




 2016519

安全性の審査


20014200322233

 2016519

安全性と表示

情報を把握したうえで商品を選択したいという消費者の要求にこたえて、2001年4月から遺伝子組換え食品の表示制度がスタートした。組成などが従来の食品と同等でない組換え農産物、たとえば高オレイン酸ダイズや、同等であっても一定の条件に該当するものについて表示が義務づけられた。さらに2015年4月、食品全般の表示を統一的に管理する「食品表示法」(平成25年法律第70号)が新たに施行された。遺伝子組換え食品もこの食品表示制度のもとに属するが、具体的な表示の基準は従来の表示に関するルールと同様であり、消費者庁(2009年設立)が担当する。

[飯野和美 2016年5月19日]

組換え食品の課題




 2016519

1999BSE2003GMO2011

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百科事典マイペディア 「遺伝子組換え食品」の意味・わかりやすい解説

遺伝子組換え食品【いでんしくみかえしょくひん】

ある生物の遺伝子の一部を種の異なる生物の遺伝子に組み込んで,本来持っていない性質を持たせた作物を原材料とする食品。ウイルス耐性,除草剤耐性,害虫に対する毒素の生産能力,日持ちのよさ,草丈の短縮などの性質を付与することで,栽培コストの削減を図るのが目的。1994年米国で開発されたトマト〈フレーバー・セーバー〉が遺伝子組換え作物の実用化第1号。実が熟しても軟らかくなりにくいため,輸送しやすく店頭での日持ちもよい。以後,米国やカナダなどで開発が相次ぎ,米国では1997年−1998年度のダイズの全作付面積の10%以上を遺伝子組換えダイズが占める。 日本では1996年,厚生省が〈組み換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全評価指針〉を作成し,食品としての安全性や生態系への影響などをチェックすることになった。この結果,欧米のバイオ企業から申請のあった除草剤耐性ダイズ・ナタネ,害虫抵抗性バレイショ・トウモロコシなど4作物7品目の安全性を認め,同年から輸入が始まっている。国内でも開発が進み,輸入物とあわせて徐々に増えている。現在市場に出回っている遺伝子組換え作物の多くは食用油,豆腐,醤油,ビール,ポテトチップスなどの加工用原料に用いられるため,遺伝子組換え作物を原料にしている食品の表示義務化を求める要望が多く出されており,安全性は確認済みとして表示義務化には消極的だった厚生省も1999年8月,ダイズ,トウモロコシ,ジャガイモなどの関連28品目につき表示義務化を決めた(2001年4月から実施)。 米国,カナダでも表示義務はないが,EUでは一部にラベル表示を義務づけることが1998年に決まった。また,オーストラリアニュージーランドでは明確なガイドラインを作成しているほか,オーストリアやルクセンブルクのように遺伝子組換え作物の輸入を禁止している国もある。このように各国で対応がわかれている事態に対して,安全性確保の面から遺伝子組換え食品の国際取引ルールの取決めを求める声が出ており,生物多様性条約加盟国の専門家会議などが検討,2000年1月バイオセーフティ議定書が採択された。
→関連項目JAS世界食糧サミット品種改良

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知恵蔵 「遺伝子組換え食品」の解説

遺伝子組み換え食品

特定の遺伝子を作物に組み込んで、農薬耐性、害虫抵抗性などの機能を付与された農産物、及びその加工品。生産性の向上や多収穫が見込めるので北米を中心に栽培が拡大している。しかし日本では、2006年1月に規制条例が施行された北海道を皮切りに、GM作物の栽培規制や交雑防止措置を定める条例が各地の自治体に広がりつつある。背後には消費者やNGOの指摘する環境・生態系への悪影響や安全性への不安がある。実際、00年10月のスターリンク(GMトウモロコシ、食料・飼料ともに未認可)混入問題以降も、05年6月に米国産輸入トウモロコシから遺伝子組み換えのBt10の混入が発見され、改めて分別流通の難しさを浮き彫りにした。また04年に晴海ふ頭でGMナタネの自生が初めて確認され、その後も各地で発見が相次ぎ、遺伝子拡散が現実化している。

(池上甲一 近畿大学農学部教授 / 2007年)

 

 
%JAS5%便  
(      2007)
 

遺伝子組み換え食品

遺伝子組み換え(GM)作物を用いて製造された食品。除草剤に強い大豆、トウモロコシ、ナタネ、害虫に強いトウモロコシ、ジャガイモなどがあり、日本では1996年から輸入されている。安全性に疑問があるという消費者などの声を受け、農林水産省は2001年4月から、日本農林規格(JAS)法の改正でGM農産物及びそれを原料にした食品に表示義務(例えば「大豆(遺伝子組み換え)」等)を実施。しかし、しょうゆ、食用油脂、マッシュポテト、ジャガイモ澱粉などは、加工工程で「遺伝子組み換えで生じたDNAやたんぱく質」が除去・分解されるとの理由から表示義務はない。海外ではGM作物の栽培が増加しているが、日本では06年の時点で食用作物は栽培されていない。

(的場輝佳 関西福祉科学大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遺伝子組換え食品」の意味・わかりやすい解説

遺伝子組換え食品
いでんしくみかえしょくひん
food developed through gene recombination

遺伝子組換え技術を応用し自然にはない性質をもたせた食品をいう。害虫や除草剤に強い性質や長期保存がきく性質をもたせた食物など,組換え体そのものを直接食べる食品のほか,チーズ生産用の酵素や食品添加物など,直接口にはしないものに組換え技術を利用した食品などがある。1994年アメリカ合衆国では長期間変質しないトマトをはじめ十数種の品種が認可され,日本では 1996年に,ダイズ,トウモロコシ,ナタネ,ジャガイモの 4種類 7品種の遺伝子組換え食品の安全性が認められ,販売が許可された。2018年までに,8種類 300品種以上が認められている。遺伝子組換え食品の表示については,食品表示基準に基づき,表示ルールが定められている。

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