無料送迎バス
日本の事例
編集概要
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1955年︵昭和30年︶9月5日に青森県八戸市にあった﹃シネコン専用劇場﹁中央劇場﹂﹄が市内鮫町 - 中央劇場間に無料送迎バスを運行した。同年9月4日付﹃デーリー東北﹄3面の﹁中央劇場﹂広告記事では﹁さあ出た!日本最初のサービス!どしどし御利用ください!﹂のキャッチコピーが掲載されており、同施設ではこれを日本初の無料送迎バスであると宣伝していた。
駅、バス停留所、空港、港等から施設までの距離が、徒歩での到達では時間、労力を要する場合に運行されることが多い。また施設最寄りの交通機関が極端に少ない場合︵郊外の結婚式場、宴会場、斎場、ホテル、工場、物流倉庫など︶、交通の便がよい遠方の駅までの送迎バスが運行されることもある。
自動車教習所、フィットネスクラブ、病院などが定期的に地域を巡る送迎バスを出して来所の便宜を図る例や、ショッピングセンター、病院、宿泊施設、健康ランドなどが集客の一環として最寄り駅や近隣で乗降客数の多い駅まで送迎バスや送迎車を運行する例がある。宿泊施設によっては特急または新幹線停車駅まで運行する例や都市部まで運行する例︵東京 - 軽井沢、東京 - 白樺湖、東京 - スパリゾートハワイアンズ他︶、宿泊者の便宜を図りテーマパークやスキー場などの娯楽施設への送迎バスを運行する例も見られる。
競馬場や競輪場、競艇場、オートレース場といった公営競技の競技場で、来場者の利便性を向上させるため最寄り駅や近郊の主要都市との間で無料送迎バス︵﹁ファンバス﹂と呼ぶケースもあり︶を運行する例がある。原則として往復での運行だが、一部の競技場では往路のみの運行︵片道運行︶や往路のみ無料・復路は有料、としている事例もある。また、サテライト阪神など一部の遠隔地の競輪場外車券売場などでも運行するケースがある。
一部のスーパーマーケットでは、公共交通機関が通っていない地域で、高齢者など交通弱者向けに買い物バスとして運行している例もある。また、自治体が高齢者や障害者向けの福祉バスとしての性格を有する送迎バスの例もある[1]。
運行形態
編集自家用バス
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送迎バスに用いられる車種は多種多様であるが、施設自らが運行を行う場合はマイクロバスが用いられることが多い。小規模な旅館などの場合、ミニバンやワンボックスカーなどの普通乗用車を﹁送迎バス﹂と称して利用することもある。
このような運行形態の場合、あくまでも施設に付随するサービスの一環であるとして運賃収受を行わないことを理由に、道路運送法の旅客自動車運送事業と見なされず、使用される自動車は自家用自動車︵自家用バス、白ナンバー︶となっており、運転者の運転免許証も第一種運転免許しか持たない場合が多い。
特定バス・貸切バス
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施設がバス事業者と輸送契約を結び、特定バス︵特定旅客自動車運送事業︶あるいは貸切バスとして、専用の無料送迎バスを運行する事例も多くみられる。この場合は旅客自動車運送事業となるため、使用する車両は事業用自動車︵緑ナンバー︶となり、運行には国土交通省︵地方運輸局︶の許可が必要になるとともに、運転にも第二種運転免許が必要となる。
乗合バス
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また一般の乗合バス︵路線バス︶において、特定施設の最寄りバス停で乗降する場合に限り運賃を収受しないという方法で、無料送迎バスとしての機能を果たす事例もある。
都営バス 品93系統︵目黒駅 - 品川駅 - 大井競馬場︶では、通常は運賃先払い方式であるが、大井競馬場での競馬開催日および場外発売日の特定時間に、大井競馬場バス停から乗車する場合に限り先払いの運賃を支払わずに乗車できる。先払い方式につき往路では無料にはならない。
他にも2010年︵平成22年︶9月まで、大阪府堺市内 - 堺浜シーサイドステージを運行する南海バスの路線バスが、平日朝を除き堺浜シーサイドステージバス停で乗降する場合に往復とも運賃が無料となっていた。同年10月以降は施設利用者に復路のバス利用券を配布するという方式に変更された︵※バス利用券の出典‥[2]︶。
バス利用券を配布する形態は京都京阪バスも行っており、京都府城陽市のスーパー銭湯﹁一休﹂利用者が、新田辺駅と宇治田原町を結ぶ62系統︵派生系統含む︶の﹁一休温泉前﹂停留所を乗降する場合を対象としている[3]。利用券は﹁一休﹂のウェブサイトから印刷して持参する[3]。
他の運行例
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●大久保駅と京都岡本記念病院を結ぶ直通20系統︵京都京阪バス︶は車内と病院に備え置きの直通専用バス利用券を使用する[4]。
●大阪府富田林市のPL病院では、病院玄関前に発着する富田林駅からの近鉄バス、金剛駅からの南海バス︵金剛東団地経由︶の一般路線で運賃無料とする取り扱いを行っている。玄関前で降車する際に運賃を徴収せず、病院玄関前から乗車する場合は無料乗車証をもらい、降車時に乗車証をバスの回収箱に入れる[5]。
●兵庫県尼崎市の尼崎ドライブスクールでは、近隣で路線バスを運行する阪神バスと提携し、一部の無料送迎バスを同社の路線バスで置き換えている︵教習生には同校負担で阪神バスのフリー乗車券を発行、単発での来校時には乗車証明書で返金︶[6]。
ギャラリー
編集シンガポールの事例
編集シンガポールでは恒例の年中行事となっているショッピングフェスティバル「シンガポール大セール」が開催される際、自動車による無料送迎サービスが実施されている[7]。
脚注
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(一)^ ﹁上方温泉 一休﹂の送迎バスが、春日出南地域周辺を運行し、そのバスに地域の高齢者などが乗車できるようになります。, 大阪市此花区
(二)^ “南海バス利用についての注意事項” (PDF). 堺浜えんため館. 2022年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月7日閲覧。
(三)^ ab“上方温泉一休 京都本館ご利用のお客様に、バス利用券を進呈!”. 上方温泉一休 京都本館. 2023年3月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月7日閲覧。
(四)^ “京都岡本記念病院への直通バス・送迎バスのご案内”. 京都岡本記念病院. 2022年12月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月7日閲覧。 “﹁京都京阪バス﹂は、当院およびバス車内備え置きの﹁直通専用バス利用券﹂にて無料でご利用いただけます。︵原文ママ︶”
(五)^ “交通のご案内”. PL病院. 2020年12月21日閲覧。
(六)^ “沿線企業の送迎を路線バスで代替 ~地域社会と連携した輸送資源の効率的な活用への新たな取組み~” (PDF). 阪神バス (2021年6月28日). 2022年9月22日閲覧。
(七)^ “大ショッピングセール、26日から開催 - シンガポール”. AFP (2006年5月27日). 2017年5月1日閲覧。