2019年-2020年香港民主化デモ︵2019ねん-2020ねんホンコンみんしゅかデモ、中国語: 反對︽逃犯條例修訂草案︾運動、英語: Anti-Extradition Law Amendment Bill Movement、2019–2020 Hong Kong protests︶は、2019年3月から2021年8月まで香港で行われていた一連のデモ活動の総称である。このデモは﹁逃亡犯条例改正案の完全撤回﹂や﹁普通選挙の実現﹂などを含む五つの目標﹁五大要求﹂の達成を目的としている。この﹁五大要求﹂の一つである﹁逃亡犯条例改正案の完全撤回﹂は既に達成された[21]。
デモ参加者はデモの目標として、少なくとも2019年6月から﹁五大要求︵中国語: 五大訴求︶﹂を掲げている[23]。このうち、政府は逃亡犯条例改正案の撤廃は受け入れたが、他四つに対してはほぼ応じていない。デモ参加者は引き続き、他四つの要求の達成を求めている[34]。
また、一部では﹁五大要求﹂に﹁警察組織の解体﹂を加えた﹁六大要求﹂も唱えられている[35]。
そもそもこのデモはもともと逃亡犯条例の改正に対するものであり、五大要求はここから発展したものである[36][37][38]。
デモを受けて林鄭月娥行政長官は7月9日に﹁改正案は死んだ、完全な失敗だった﹂と発言し[39]、9月4日には正式撤回を表明[40]、10月23日には正式撤回されたが[41]、抗議側は﹁五大要求は一つも欠くことができない﹂[注1]として、デモを継続している[34]。
指導者の政策が市民から支持されないのは普通選挙・直接選挙の不実現によるものだとし、﹁諸悪の根源﹂であるとデモ隊は主張している[42]。
これに対して雨傘運動のリーダーだった周庭は、﹁中国政府の影響力が香港で非常に強い、普通選挙を求めることはもともと難しい﹂としながらも、﹁運動により、政治に無関心だった人たちが関心を持ち始めるなど、一定の効果があった﹂と発言している[43]。
2019年9月2日の時点で逮捕されたデモ参加者は1,000人を超えており[48]、デモ参加者は逮捕されたデモ参加者の逮捕の取り下げを五大要求の一つとしている[45]。
行政長官はデモを「組織的な暴動である」と非難しており[49]、デモ参加者はこの暴動であるという認定の取り消しを五大要求の一つとしている[45]。
2014年の雨傘運動に影響を与えた『ウォール街を占拠せよ』などと共通して、デモ参加者たちはTwitter等の一般的なSNSを活用し、他にもポケモンGOのようなゲームアプリやデートアプリのTinder[69]を使用し、また場合によっては「HKmap.live」のようなサービスをデモ参加者自身が開発する場合もある。
2014年の雨傘運動の失敗から、この運動には明確なリーダーや組織が存在しないことも特徴となっている。リーダーが逮捕されたり、意見対立で内紛が発生し、組織や運動が瓦解することがないようにするためだといわれている。デモは、平和的な行進を行う「和理非派」と、警察と衝突し破壊行為を行う「勇武派」に分かれているが、思想や手法が異なる相手でも批判せず、互いに干渉しないことが暗黙のルールとなっている[18]。こういったデモ戦術は南米から欧州や中東など世界各地の抗議活動に影響を与えた[70][71]。
この節の 加筆が望まれています。 (2019年10月) |
2018年2月17日、台湾で発生した潘暁穎殺人事件においてその犯人が事件後香港に逃走し、香港で香港警察が犯人を逮捕したが、台湾と香港の間には犯罪人引渡し条約の様なものがなく︵逃亡犯条例を香港と﹁中華人民共和国のその他の部分[注2]﹂の間の犯罪人引き渡しに適用できなかったことにより︶、犯人を台湾に送還することができなかった[76][77][78]。
これに対して香港政府は2019年2月、逃亡犯条例の改正案提出を発表した[79]が、この改正案が成立した場合、香港と中国本土の犯罪人受渡しが可能になるため、香港市民が中国当局の取り締まり対象になる可能性が発生し、香港の自治を保証する﹁一国二制度﹂が揺らぐのではないかという恐れから、改正案に対する反対運動が勃発した[80]。
国際連合 - アントニオ・グテーレス事務総長の報道官は10月1日、﹁我々は常にデモ行動が平和になされるよう呼びかけており、保安機関には自制を求めている﹂と述べた[327]。また、OHCHRの報道官は覆面を禁止した香港政府に対し、﹁集会の自由は守られるべきだ﹂と指摘した[328]。
欧州連合 - 2019年10月1日の激しい衝突を受け、政府と市民の双方に、事態の﹁沈静化と抑制﹂を呼びかけた[329]。
アメリカ合衆国 - アメリカ合衆国下院は10月15日・アメリカ合衆国上院は11月19日、﹁香港人権・民主主義法案﹂を全会一致で可決し、デモを支持した[330][331][170][171][172]。
イギリス - ドミニク・ラーブ外務・英連邦大臣は2019年10月1日、デモ隊に対し実弾を発砲し負傷者を出した香港政府に対し、﹁実弾の使用は不相応であり状況を悪化させるだけだ﹂と非難する声明を発表した[327]。2020年5月22日、オーストラリア、カナダとの3カ国共同声明で﹁中国政府が香港へ国家安全法を導入すれば香港の一国二制度を明らかに損なう﹂という深い懸念を示した[227][228]。
イスラエル - イスラエル外務省は、安全を確保するために、デモに参加しないようにする事を香港に住んでいるイスラエル国民に要請した[332]。
イタリア - イタリア議会は外交および人権聴聞会は黄之鋒に対し、11月28日にビデオを通じて香港の状況について議会のメンバーと話すよう要請した。イタリアの中国大使館の報道官は翌日、強い不満と反対を表明したが、イタリア首相ジュゼッペ・コンテは30日に中国大使館の発言を容認できないものだとし、中国はイタリアの議会を尊重すべきだと述べた。また、外務大臣ルイジ・ディマヨは﹁中国とイタリアは経済貿易協定に署名しましたが、それは決して中国がイタリアのシステム、議会と政府について口出しができるという意味ではありません﹂と指摘した[333]。その後、外務委員会は12月3日に香港でのデモと連帯して決議を可決し、香港警察による武力虐待の調査を要求し、デモ参加者を釈放するようを求めた[334]。
イラン - イラン外務省は抗議デモを非難した[335][336][337]。
ウガンダ - ウガンダ外務省は﹁一国二制度﹂への支持を表明し、香港は中国の一部であると信じ、香港の問題は中国の内政であり、外国は干渉すべきではないと表明した[338]。
オーストラリア - 2020年5月22日、イギリス、カナダとの3カ国共同声明で﹁中国政府が香港へ国家安全法を導入すれば香港の一国二制度を明らかに損なう﹂という深い懸念を示した[227][228]。
カナダ - 2020年5月22日、トルドー首相は香港に国家安全法を課す中国政府の提案に懸念を示し、真の対話と緊張緩和を今後も求め続け、状況を注視すると述べた[227][228]。
北朝鮮 - 朝鮮労働党の機関紙労働新聞がデモ隊を﹁不純勢力が西側にそそのかされて繰り広げている暴動﹂と主張し[339]、中国政府の対応を全面的に支持すると表明した[17]。また、北朝鮮外務省の報道官も﹁中国の党と政府が取る立場と措置を全面的に支持する﹂と表明した[340]。
シンガポール - リー・シェンロン首相は2019年10月10日、﹁︵長引くデモが引き起こす︶香港の不安定と信認の欠如は地域全体に悪影響を及ぼす﹂との懸念を表明した。デモの主因は、香港社会の分断や住民の不満にあるとして状況は深刻だとの認識を示した[341]。
大韓民国 - 過去に光州事件などの民主化運動弾圧を経験している韓国においても、香港で激しくなっている抗議活動に関して、市民、社会諸団体の間で連帯と支持を表明する動きが広がっている[342][343]。一方で文在寅大統領ははっきりした意見表明を避けた[344]。
ドイツ - メルケル首相のスポークスマンは、デモは主要な行進者にとっての平和のしるしであると述べ、﹁我々はすべての利害関係者に香港が平和を継続することを保証するよう要請すると表明した[345]。本人自身は8月に友好的な対話を通して紛争を止めることを望んでいると言った。また、憲法︵基本法︶と住民の自由の保護についても言及しており、対話の中心にならなければならないと表明した[346]。
日本 - 2019年10月23日、内閣総理大臣の安倍晋三は中国の国家副主席である王岐山との会談で、香港情勢について﹁大変憂慮している﹂と懸念を示した[347][348]。
ニュージーランド - 副首相兼外務大臣ウィンストン・ピーターズは6月に香港のデモ参加者の勇気を称賛し、一国二制度を尊重する必要があると述べた[349]。ジャシンダ・アーダーン首相は、8月に地元の大学で香港でのデモを支持したデモ参加者の表現の自由を支持した[350]。
フィリピン - 8月のデモ参加の疑いでフィリピンのメイドが逮捕された後、労働大臣は、必要に応じて香港への外国の国内ヘルパーの渡航を停止すると述べた[351]。
フランス - レドリオン外相は、デモ参加者との対話を再開し、現在の社会的危機を平和的に解決し、暴力の拡大を防ぐよう香港政府に求めた[352]。
ロシア - 外務省報道官マリア・ザハロワは8月初旬、中露関係を破壊する目的で暴動を起すことにより、西側の外国勢力が香港の問題に介入したと述べた[353]。
ベトナム - ベトナム外務省は、香港の抗議運動は中国の内政問題であり、一国二制度を支持すると表明した[354]。
NBAのアダム・シルバーコミッショナーは2019年10月9日、ダリル・モリーゼネラルマネジャーが謝罪に追い込まれる原因となったTwitterでの10月4日の香港デモ支持ツイートについて表現の自由を理由に容認した[355][356]。これに対し中国政府はこの発言を非難し、中国で行われるNBAエキシビジョンゲームの放映を取りやめると発表した[357]。
アジア太平洋ろう者スポーツ連合(APDSC)および2019香港アジア太平洋ろう者競技大会組織委員会は、2019年10月10日、選手の安全確保などに影響を及ぼす可能性が払拭できないとして、第9回アジア太平洋ろう者競技大会の開催中止を決定した[358]。
Appleは10月9日、人民日報の批判を受け、App Storeで配信していた警察の動きや催涙ガスの使用を追跡できる地図アプリ「HKmap.live」を、「香港警察や住民を危険にさらすような使い方をされていた」としてオンラインストアから削除した[359][360][361][362]。
Twitterは8月19日、中国政府がTwitter上で香港デモの抗議者側の正当性を弱めることを狙った情報操作を行っている指摘し、情報操作に関わった936件のアカウントを削除し、約20万件のアカウントのうちほとんどを凍結したと発表した[363]。
FacebookはTwitterの発表と同じく8月19日、「中国のネットワークが発信した香港に関する」7個のページ、3個のグループ、5個のアカウントがポリシーに違反したため削除したと発表した[363]。
SEKAI NO OWARIは、「The Colors」ASIAの香港公演を中止したことを2019年11月3日、オフィシャルTwitterで発表した[368][369]。
ブラックジョークアニメとして知られる﹃サウスパーク﹄は、中国の刑務所における強制労働等の問題に触れたエピソード﹁Band in China[370]﹂を公開し、中国では検閲されているくまのプーさん等も登場、中国はこれを検閲して中国国内で閲覧できなくした︵中国のインターネット検閲システムについてはGFWを参照︶。これに対するサウスパーク作成者の﹁公式な謝罪﹂は、NBAの対応等を絡ませたブラックジョークと皮肉に満ちた内容だった[371]。
米スポーツシューズ大手Vans︵ヴァンズ︶が開催するスニーカーのデザインコンテストで、香港のデモを題材にした応募作が取り下げられる事態が発生した。
カナダの応募者による香港の旗のバウヒニアの花、2014年の民主化デモでシンボルとなった黄色い傘、側面にはガスマスクやゴーグル、ヘルメットを着けたデモ参加者が描かれていたデザインが投票でトップに立っていた。このデザインは投票開始から1週間余りで数万票を獲得していたとされるが、2019年10月5日にコンテストサイトから削除された。同社はフェイスブック上で、コンテストの趣旨に合わない﹁少数の応募作﹂を取り下げたと説明するが、デモ支持者はVansのボイコットを主張するなど強く反発した。
これを受け、SNS上ではVansのスニーカーをごみ箱に捨てたり、火を付けたりする動画が投稿された。Vansのフランチャイズ店を香港で展開するスニーカーチェーン﹁ダフード﹂は10月6日、3店舗の営業を休止すると発表した[372]。
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