下妻物語
表示
文学 |
---|
![]() |
ポータル |
各国の文学 記事総覧 出版社・文芸雑誌 文学賞 |
作家 |
詩人・小説家 その他作家 |
下妻物語 | |
---|---|
監督 | 中島哲也 |
脚本 | 中島哲也 |
製作 | 近藤邦勝 |
製作総指揮 | 大里洋吉 |
出演者 |
深田恭子 土屋アンナ 宮迫博之 篠原涼子 樹木希林 |
音楽 |
菅野よう子 Tommy heavenly6 |
撮影 | 阿藤正一 |
編集 | 遠山千秋 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2004年5月29日 |
上映時間 | 102分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 6.2億円 |
﹃下妻物語﹄︵しもつまものがたり、作品英称: Kamikaze Girls︵直訳すると﹁神風の女の子﹂。意を汲んで訳せば﹁特攻少女﹂というような意味︶は、嶽本野ばらによる小説、およびその小説を原作とした映画などの諸作品のことである。物語は、茨城県下妻市︵しもつま-︶を舞台にしており、タイトルもそこから採っている。
概要
下妻物語は、ロリータとヤンキーという意外な組み合わせの2人の女子高生が主人公であり、この2人の間に芽生えていく友情を描いている。小説・映画のほかには、かねさだ雪緒による漫画もある。
小説の初巻については、深田恭子と、土屋アンナというキャストで映画化され、2004年︵平成16年︶5月29日より公開された。当初はシャンテ シネ︵現‥TOHOシネマズシャンテ︶を筆頭とした40館規模の公開予定であったが、評判を呼び156館での公開に拡大された。また、2004年︵平成16年︶5月にカンヌ国際映画祭に併設されたフィルム・マーケットで、﹁Kamikaze Girls﹂︵神風ガールズ︶と題して上映されると評判になり、7カ国で上映が決定し、公開された。この後、多くの映画祭に招待され、2006年、カンヌ国際映画祭と平行して行われたカンヌJr.フェスティバル︵青少年向け映画のコンペ︶にて邦画初となるグランプリを獲得。フランスで邦画としては過去最大となる約100館での上映が決定した。なお、主役の2人は多くの映画賞を受賞した。この映画には、ロリータ・ファッションで来館した者には、特別割引になる特典があり、話題になった。
また、映画版では、メーカー名のベルサーチを﹁ベル○ーチ﹂などと音声を加工しているシーンがいくつか散見されるが、これは権利関係の問題によりこのような修正がされている。許可を得ている ジャスコ などはそのまま ジャスコ として放映されている。
原色を強調、パステルカラーのトーンを多用し、人物へのサイドからのライティングや、コミックのアニメーションを挿入するなどの新奇手法によって、アン・リアルでオリジナルな映画空間を創出している。
映画DVDには、映画を見ながら撮影秘話を語る音声コメンタリートラックが用意されており、主演の深田恭子・土屋アンナをはじめ、監督・スタッフなどにより、多くの撮影エピソードが語られている。
あらすじ
注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。
映画版あらすじ
茨城県の下妻市に住む竜ヶ崎桃子は、ロリータ・ファッションをこよなく愛する孤高の高校生である。もう1人の主人公・白百合イチゴは、レディース︵暴走族︶の一員であり、桃子の父親の作ったベルサーチの偽物を買いに来たことをきっかけに、桃子の家に出入りするようになる。イチゴは、自分が所属する暴走族の総長が引退する時、代官山にいるらしい有名な伝説の刺繍家に﹁ありがとう﹂と入れてもらった特攻服を着たいと願い、資金を稼ぐために桃子を引き連れパチンコ屋に繰り出す。桃子は初めてのパチンコであったが、偶然連チャンし、易々と自分の服代とイチゴの刺繍のための資金を稼ぎ出す。イチゴは代官山に詳しい桃子を伴い伝説の刺繍家を探しに行くが、その刺繍家は噂だけで実際には存在しなかった。それを知ったイチゴは深く落ち込む。見かねた桃子は自分が刺繍を請け負う。不眠不休で刺繍をし、見事な刺繍入りの特攻服が仕上がった。その素晴らしさを見て、イチゴは感動を覚え、素直に感謝をする。その言葉を聞いて桃子は今までに感じたことのない不思議な感覚を感じ、これをきっかけに、2人の間に友情が芽生え始める。
ある日、桃子は、お気に入りのボンネットをネズミにかじられてしまい、それを誤魔化すために刺繍を入れる。このボンネットをつけて、代官山にあるロリータ・ファッションのショップである﹁BABY, THE STARS SHINE BRIGHT﹂を訪れたことが桃子に幸運をもたらす。そこで社長の磯部に刺繍の腕を認められ、やがて次の新作ワンピースの試作品の刺繍をすることになったのだ。天にも昇る気持ちで、刺繍を入れるが、迷いがありなかなか仕上げられない。迷いの中、桃子はどうしてもイチゴに会いたくなりイチゴを呼び出す。イチゴは、暴走族のレディースの集会に行く予定であったが、友達として必要としてくれた桃子と会うことを優先する。集会に穴をあけたイチゴはレディース仲間集団と対立、族としての﹁ケジメ﹂をつけるために呼び出される。 家に帰り、﹁ケジメ﹂がなんであるかを知った桃子は意を決し、乗ったこともない 原チャリで暴走し、途中、八百屋のトラックに衝突するが奇跡的に無傷で済み、牛久大仏のイチゴの元へ駆けつける。そこには“ボコボコ”にされているイチゴがいた。 助けたい一心の、桃子の暴走によりレディース集団たちは怖気づき、イチゴを救い出す。 やがて、イチゴは暴走族から足を洗い、新作ワンピースの撮影現場で気に入られモデルとしてデビューする。なお、その撮影の際に暴れて、カメラ2台を破損、撮影スタッフ5名に青あざを作ってしまう。しかし予想外にイチゴの ポスターは出来栄えがよく、評判になりモデルの仕事が舞い込むようになったが、イチゴにはモデル業を本職にする気はなく、土浦市のモータースで相変わらずバイク整備のバイトを続けている。
映画版と小説版の違い
映画は、嶽本野ばらの原作のストーリーをほぼ踏襲しているが、少し違いがある。大きな違いは、イチゴがレディース仲間と対立するきっかけである。原作では、桃子が刺繍をいれた新作ワンピースの撮影のためのモデルが使えなくなって、イチゴが代わりにモデルを務めたことにより、集会に行けなかった出来事が対立のきっかけになっている。このエピソードを省略していることで、エンディングでのイチゴのモデルデビューが唐突で不自然なものになってしまっている。この他、映画版に付け加わったこととしては、刺繍をいれた新作ワンピースを﹁BABY, THE STARS SHINE BRIGHT﹂に届けに行く日に、桃子がイチゴの窮地に駆けつけなくてはならなくなり、磯部社長に電話をかけるシーンがある。
登場人物と映画キャスト
竜ヶ崎桃子 - 深田恭子 ︵福田麻由子 少女時代︶
主人公の一人。下妻に住むロリータ・ファッションを愛する女子高生。洋服のためであれば、父親をだますことも決していとわない。冷静で、自分がロリータであることを誇り、理論武装をしている。学業成績は良い方で、高校は進学校に通っている。天才的な刺繍の才能を持っている。二回連続でパチンコ屋で大連チャンしたため、博才もあるものと思われる︵ただし本人は博打に興味なし︶。徹底した個人主義者で模範的な生き方には全く興味を持たず、両親の離婚の際には再婚先が裕福な母親よりも、﹁いっしょにいた方がきっと面白い﹂という理由だけで父親についていくことを決めている。人は1人ぼっちで生きていくものであり、友達は必要ないと言い切っていたが、イチゴと出会うことで、微妙に心境が変わっていく。
白百合イチゴ - 土屋アンナ
主人公の一人。バイクで疾走することをこよなく愛する女子高生。﹁イチゴ﹂という名前にコンプレックスがあり、﹁イチコ﹂と名乗っている。愛車は原動機付き自転車を強引に族仕様に改造したものである。見かけはヤンキーで怖く、言葉遣いも品がなくて結構お馬鹿。しかし、どこか筋が通っているところがあり、友達思いの熱くてイイ奴。実は良家の一人娘。両親に不満はないので、家ではおとなしくしている。得意技は頭突き︵映画版のみの設定︶で、何度か桃子に食らわして気絶させている。偽ヴェルサーチがきっかけで桃子と知り合い、徐々に友情を深めていく。
桃子の父 - 宮迫博之︵雨上がり決死隊︶
典型的なダメ親父。桃子の父親である。娘にはわりと優しい。尼崎で偽ブランド屋をやっていた下っ端のヤクザだったが、版権元に目を付けられ、娘の桃子と共に下妻に移ってきた。今はテキ屋になり、ヨーヨー釣りの屋台を開くための準備をしている。
桃子の母 - 篠原涼子
桃子の母親。本名、西園寺みどり。桃子の父親とは別れ、桃子の出産に立ち会った産婦人科医︵阿部サダヲ/二役︶と再婚している。
桃子の祖母 - 樹木希林
桃子の祖母。昔はヤンキーだったらしい。得意技は空中の虫などを素手でつぶすこと。資金は豊富であるようだ。年代物の原動機付き自転車を持っており、これは後に桃子のために役立つ。映画版では眼帯を付けている。
磯部明徳 - 岡田義徳
代官山に本店を持つロリータ・ファッションのショップ﹁BABY, THE STARS SHINE BRIGHT﹂の社長。桃子の刺繍の才能を見込み、新作に入れる刺繍を依頼する。
亜樹美 - 小池栄子
イチゴが所属する暴走族のレディース﹁舗爾威帝劉﹂︵﹁ポニーテール﹂と読む︶の頭。イチゴは彼女に恩があり、彼女の引退式のために何かしたいと考えている。彼女が在籍当時、メンバーはイチゴを含め7人。
産婦人科医/一角獣の龍二 - 阿部サダヲ
自称、下っ端の極道。パチンコ屋で桃子達を助けたことにより、イチゴに好意を持たれる。亜樹美の恋人。
八百屋 - 荒川良々
下妻によくトラックで移動販売に来る。原チャリに乗った桃子と正面衝突してしまう。
ミコ - 矢沢心
舗爾威帝劉2代目頭。﹁全国制覇をヒミコに命じられた﹂と各地のレディースを潰し、同士を増やしていこうとした。イチゴのタイマンで押されてしまうと、メンバーを扇動してリンチを実行させた卑怯者。イチゴを助けるために殴り込みをかけた桃子に怖気づき、最終的にイチゴを手放した。
パチンコ屋店長 - 生瀬勝久
組の兄貴分 - 本田博太郎
その他
入絵加奈子、水野晴郎、まちゃまちゃ、真木よう子、スピードワゴン、木村祐一、三浦香、太田美恵、加藤美月、岩崎征実︵声の出演︶、前田剛︵声の出演︶など
映画版のスタッフなど
●脚本・監督‥中島哲也
●原作‥嶽本野ばら︵﹃下妻物語﹄小学館、小学館文庫︶
●企画‥宮下昌幸、濱名一哉
●プロデューサー‥石田雄治、平野隆、小椋悟
●キャスティング‥おおずさわこ
●キャスティングコーディネート‥ネルケプランニング
●音楽‥菅野よう子
●音楽プロデューサー‥金橋豊彦
●主題歌
●オープニング
●﹁Roller coaster ride→﹂︵Tommy heavenly6︶
●エンディング
●﹁super "shomin" car﹂︵CECIL︶
●﹁タイムマシンにおねがい﹂︵browny circus︶ #サディスティックミカバンドの曲をカヴァーしている。
●﹁Hey my friend﹂︵Tommy heavenly6︶
●アクション指導‥山田一善
●企画・制作プロダクション‥小椋事務所
「下妻物語」製作委員会
物語の舞台
この物語は、下妻と代官山、桃子の生まれ故郷としての尼崎が舞台となっている。全編を通し、かなりデフォルメ気味な桃子視点の描写がなされている。以下に、桃子視点での舞台を説明する。現実の町の様子については、各リンク先を参照。
桃子の祖母が住んでおり、桃子の父親が桃子と共に移り住んだ街。﹁東京から電車で2時間半もかかる田舎﹂であると描かれている︵現在は下妻~東京︵秋葉原︶間はつくばエクスプレス経由でおよそ1時間20分と映画公開時より近くなった。また、関東鉄道常総線は非電化のため電車は走っておらず気動車である︶。
桃子の家は横根という所にあり下妻駅からさらに歩いて30分かかる。この街に移ってきた桃子は、下妻にもヤンキーは沢山いることに気がつく。しかし、下妻のヤンキーは尼崎にいたような現代風のヤンキーではなく、やや時代遅れのヤンキーであった。また、下妻には尼崎のような活気のある商店街はないが、郊外に巨大なジャスコがあり、安い値段で買い物をすることが出来る。人々は桃子のように東京に買い物し行く事など思いもよらず、品揃えのよいこのジャスコを誇りに思い、そこで買い物をする。そして、安いものを手に入れられたことを喜ぶ。因みに当然ではあるが、ジャスコ下妻店に特攻服は売っていない。
桃子の生まれ故郷であると同時に、父親の生まれ育った街である。なお、尼崎市民の気持ちを考慮してか、映画版では尼崎のすぐそばの街とされた。桃子の父はこの街でヤンキーとなり、高等学校を中途退学し、ヤクザになり、チンピラとして働くうちに桃子の母親と出会って結婚。娘の桃子が生まれたが、後に離婚。この街の住民のほとんどはヤンキーか元ヤンキーと記述されている。また、商店街は活気があるがコピー商品の店が多く、どの店も価格破壊で頑張っており、消費者は安い事以外には関心がないとされている。桃子の父もベルサーチのコピー商品を企画し、製作を工場に依頼し、それを販売することを生業にしていた。
桃子が着ているロリータ・ファッションの服のショップである「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の本店がある街である。このブランドは実在し、映画制作にも協力している。桃子が代官山に詳しいことを知ったイチゴは、桃子を伴い代官山へ行く。代官山には特攻服に素晴らしい刺繍を刺すことで評判の伝説の刺繍家がいるとされており、イチゴはレディースの総長が引退する際に着ていく特攻服に刺繍をして欲しいと思っていたからである。二人で共に代官山に行った出来事が、この二人を結びつける契機になった。
映画賞の受賞
2004年度の日本の映画賞において以下の賞を受賞した。
この年度の主な映画祭︵報知、日刊スポーツ、ヨコハマ、キネマ旬報、毎日、東スポ、ブルーリボン、日本アカデミー︶において、各分野の賞を受賞した数を足し合わせた時に、主演女優賞においては深田恭子の3賞︵2位は、宮沢りえの2賞︶、新人賞においては土屋アンナの5賞︵2位は、柳楽優弥の4賞︶が最大であった。
作品賞
第26回ヨコハマ映画祭
監督賞︵中島哲也︶
第26回ヨコハマ映画祭
主演女優賞︵深田恭子︶
第26回ヨコハマ映画祭、第59回毎日映画コンクール、第14回東京スポーツ映画大賞
助演女優賞︵土屋アンナ︶
第26回ヨコハマ映画祭
新人賞︵土屋アンナ︶
第29回報知映画賞、第78回キネマ旬報ベストテン、第59回毎日映画コンクール、第47回ブルーリボン賞、第28回日本アカデミー賞
発行物一覧
小説
- 嶽本野ばら 著、『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』、小学館、2002年(上製本)、ISBN 4-09-386112-9
- 嶽本野ばら 著、『下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん』、小学館、2004年(文庫本)、ISBN 4-09-408023-6
- 嶽本野ばら 著、『下妻物語 完 ヤンキーちゃんとロリータちゃんと殺人事件』、2005年(上製本)、ISBN 4-09-386153-6
- Akemi Wegmuller 訳、Kamikaze Girls Novel (英訳版)、Viz Communications、2006年、 ISBN 1421502690
コミック
- 嶽本野ばら 原作、かねさだ雪緒 著、『下妻物語』(フラワーコミックス)、小学館、2004年、ISBN 4-09-130009-X
- Kamikaze Girls (英訳版)、Viz Communications、2006年、ISBN 1421502682
映画DVD
- 中島哲也 監督、『下妻物語 スタンダード★エディション』、小学館、2004年、SDV-3247D
- 中島哲也 監督、『下妻物語 スペシャル★エディション』、小学館、2004年、SDV-3246D
サウンドトラック
- 菅野よう子 他、『下妻物語 オリジナル・サウンドトラック』、Defstar Records、2004年、DFCL-1205
- Tommy heavenly6、『Hey my friend』、DefSTAR RECORDS、2004年、DFCL-1136、(主題歌)
写真集・映像集
- 吉村春海 撮影、『深田恭子in下妻物語』、ぴあ、2004年、ISBN 4-8356-0937-9
- 深田恭子、『深田恭子 in 下妻物語』、アミューズソフトエンタテインメント、2004年、ASBY-2490
地元への影響
映画の公開時、当時の茨城県下妻市には合併話があり、その結果によっては下妻市は消滅する可能性があった。しかし、この映画が反響が大きかったこと、茨城県立下妻第二高等学校の甲子園への出場、アテネオリンピックでの塚田真希の金メダルの獲得などによって、下妻市の知名度が2004年に一気に上昇した。こういった経緯は、合併に反対する署名活動にも影響があったようで、下妻市は市町村合併協議会から脱退した。その後、筑波サーキットがある千代川村と合併したが、﹁下妻市﹂という名称は現在も残っている。また、舞台になったジャスコ下妻店はその後拡張され、現在はイオン下妻ショッピングセンターの一部となっている。
関連項目
- 嶽本野ばら
- ロリータ・ファッション
- アメリ - 直接の関連性はないが、ストーリーやキャラクターなどから比較されることが多い作品。
外部リンク
- 映画 『下妻物語』 - DVD紹介サイト
- Kamikaze Girls (英語) - 映画の英語圏向け広報用のウェブサイト
- BABY, THE STARS SHINE BRIGHT(株式会社) - 作品中に登場する実在のブランドで、作品とも連携関係である。