「千夜一夜物語」の版間の差分
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[[ファイル:Sultan Pardons Scheherazade.jpg|thumb|170px|シャフリヤールに物語を話すシャハラザード(シェヘラザード)شهرزاد ]] |
[[ファイル:Sultan Pardons Scheherazade.jpg|thumb|170px|シャフリヤールに物語を話すシャハラザード(シェヘラザード)شهرزاد ]] |
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'''千夜一夜物語'''(せんやいちやものがたり、{{lang-ar-short|ألف ليلة وليلة}},{{lang-fa|هزار و یک شب}} )は、中世[[イスラム世界]]で[[アラビア語]]でまとめられた[[説話]]集である。 |
﹃'''千夜一夜物語'''﹄︵せんやいちやものがたり、{{lang-ar-short|ألف ليلة وليلة}},{{lang-fa|هزار و یک شب}} ︶は、中世[[イスラム世界]]で[[アラビア語]]でまとめられた[[説話]]集である。
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千夜一夜物語は、日本語では'''千一夜物語'''、'''アラビアンナイト'''とも呼ばれている。初期の翻訳においては、[[永峯秀樹]]訳『開巻驚奇 暴夜(あらびや)物語』や、[[日夏耿之介]]訳『壹阡壹夜譚』の題名も見られた。 |
『千夜一夜物語』は、日本語では『'''千一夜物語'''』、『'''アラビアンナイト'''』とも呼ばれている。初期の翻訳においては、[[永峯秀樹]]訳『開巻驚奇 暴夜(あらびや)物語』や、[[日夏耿之介]]訳『壹阡壹夜譚』の題名も見られた。 |
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== 名称 == |
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;実在した登場人物 |
;実在した登場人物 |
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* [[ハールーン・アッ=ラシード]] |
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* [[ズバイダ]] |
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* [[ジャアファル|ジャアファル・アル・バルマキー]] |
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* [[アミーン|アル・アミーン]] |
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* [[アブー・ヌワース]] |
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== 本来の夜数と物語数 == |
== 本来の夜数と物語数 == |
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[[エマニュエル・ジョルジュ・コスカン]]([[:fr:Emmanuel Cosquin|Emmanuel Cosquin]])(1909)は、全体の枠となる物語を分析し、次の3つの説話が原型になっているとした。 |
[[エマニュエル・ジョルジュ・コスカン]]([[:fr:Emmanuel Cosquin|Emmanuel Cosquin]])(1909)は、全体の枠となる物語を分析し、次の3つの説話が原型になっているとした。 |
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# 妻の裏切りに絶望したある男が、他の高貴な人物が自分と同様に不幸であったことを知って、心の悩みから免れる話 |
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である<ref>『アラビアン・ナイト(1)』、[[前嶋信次]]訳、 [[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1966年、訳者あとがき、p.260</ref>。このような構成には、他にも『[[屍鬼二十五話]]』、『{{仮リンク|ヒトーパデーシャ|en|Hitopadesha}}』、『[[パンチャタントラ]]』などインドの説話集({{仮リンク|サンスクリット文学|en|Sanskrit literature}})が知られており、インド起源の説話がまずペルシアに伝わって風土化し、のちにアラブ人に伝わって成立したとする。また、成立後も様々な作家によって新たに挿話が付け加えられ、原典であっても複数のテキストが存在する<ref>『アラビアン・ナイト(1)』、[[前嶋信次]]訳、 [[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1966年、訳者あとがき、pp.260-261</ref>。 |
である<ref>『アラビアン・ナイト(1)』、[[前嶋信次]]訳、 [[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1966年、訳者あとがき、p.260</ref>。このような構成には、他にも『[[屍鬼二十五話]]』、『{{仮リンク|ヒトーパデーシャ|en|Hitopadesha}}』、『[[パンチャタントラ]]』などインドの説話集({{仮リンク|サンスクリット文学|en|Sanskrit literature}})が知られており、インド起源の説話がまずペルシアに伝わって風土化し、のちにアラブ人に伝わって成立したとする。また、成立後も様々な作家によって新たに挿話が付け加えられ、原典であっても複数のテキストが存在する<ref>『アラビアン・ナイト(1)』、[[前嶋信次]]訳、 [[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1966年、訳者あとがき、pp.260-261</ref>。 |
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日本では[[1875年]]に[[英語]]版からの翻訳が行われ、以来英語・フランス語などのさまざまなバージョンからの重訳が行われた。また、有名な説話は[[児童文学]]に翻案され親しまれている<ref>これらには「[[アラジンと魔法のランプ]]」、「[[アリババと40人の盗賊]]」のように本来『アラビアン・ナイト』に含まれない別系統の物語もある。</ref>。アラビア語(カルカッタ第二版)からの翻訳には、[[前嶋信次]]・[[池田修 (文学者)|池田修]]による『アラビアン・ナイト』がある。この他の日本語訳に、[[ジョゼフ=シャルル・マルドリュス|マルドリュス]]版(仏語)からの『完訳 千一夜物語』(岩波文庫)、[[リチャード・フランシス・バートン|バートン]]版(英語)からの『バートン版 千夜一夜物語』などがある。 |
日本では[[1875年]]に[[英語]]版からの翻訳が行われ、以来英語・フランス語などのさまざまなバージョンからの重訳が行われた。また、有名な説話は[[児童文学]]に翻案され親しまれている<ref>これらには「[[アラジンと魔法のランプ]]」、「[[アリババと40人の盗賊]]」のように本来『アラビアン・ナイト』に含まれない別系統の物語もある。</ref>。アラビア語(カルカッタ第二版)からの翻訳には、[[前嶋信次]]・[[池田修 (文学者)|池田修]]による『アラビアン・ナイト』がある。この他の日本語訳に、[[ジョゼフ=シャルル・マルドリュス|マルドリュス]]版(仏語)からの『完訳 千一夜物語』(岩波文庫)、[[リチャード・フランシス・バートン|バートン]]版(英語)からの『バートン版 千夜一夜物語』などがある。 |
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== 原典 |
== 原典および翻訳 == |
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[[画像:ManuscriptAbbasid.jpg|thumb|250px|アラビア語の写本]] |
[[画像:ManuscriptAbbasid.jpg|thumb|250px|アラビア語の写本]] |
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===アラビア語写本=== |
===アラビア語写本=== |
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;マイエ写本 |
;マイエ写本 |
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:17世紀後半に成立したと考えられている写本。冒頭部分から905夜までが収録されている。1702年にフランスのエジプト総領事ベノワ・ド・マイエ([[:en:Benoît de Maillet|Benoît de Maillet]])が購入したものである。<ref name=nishio2007>p.48</ref> |
:17世紀後半に成立したと考えられている写本。冒頭部分から905夜までが収録されている。1702年にフランスのエジプト総領事ベノワ・ド・マイエ([[:en:Benoît de Maillet|Benoît de Maillet]])が購入したものである。<ref name=nishio2007>p.48</ref> |
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====1704年以降の写本==== |
====1704年以降の写本==== |
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ガラン版が1704年にヨーロッパで発行され大きな反響を生んだ時以後に作られた写本の主なものには以下のものがある。これらの新しい写本は数が多く、ヨーロッパの影響を受けているものもあるとされる。 |
ガラン版が1704年にヨーロッパで発行され大きな反響を生んだ時以後に作られた写本の主なものには以下のものがある。これらの新しい写本は数が多く、ヨーロッパの影響を受けているものもあるとされる。 |
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:1704年から1717年にかけて[[アントワーヌ・ガラン]](Antoine Galland、1646年-1715年)の翻訳によりフランス語で出版された。全12巻。第1巻から第7巻はガラン写本を元に翻訳され、第8巻以降は別の写本を元に翻訳されている。この版により初めてヨーロッパに千夜一夜物語が紹介され、大きな反響を呼んだ。<ref name=nishio2010></ref> |
:1704年から1717年にかけて[[アントワーヌ・ガラン]](Antoine Galland、1646年-1715年)の翻訳によりフランス語で出版された。全12巻。第1巻から第7巻はガラン写本を元に翻訳され、第8巻以降は別の写本を元に翻訳されている。この版により初めてヨーロッパに千夜一夜物語が紹介され、大きな反響を呼んだ。<ref name=nishio2010></ref> |
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ヘンリー・リーヴの評言:「ガランは子ども部屋に」。 |
ヘンリー・リーヴの評言:「ガランは子ども部屋に」。 |
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;レイン版(英語) |
;レイン版(英語) |
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:1838年から1840年にかかて[[エドワード・ウィリアム・レイン]]([[:en:Edward William Lane|Edward William Lane]]、1801年-1876年)の翻訳により英語で出版された。家庭向け、児童向けとしての配慮から省略、改定された部分がある。ブーラーク版を元に翻訳されている。<ref name=nishio2010></ref> 同時代のエジプトを知るための社会資料として千夜一夜物語を見ており、200枚を超える挿絵、膨大な注釈を附した。<ref name=nishio2011></ref>
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:1838年から1840年にかかて[[エドワード・ウィリアム・レイン]]([[:en:Edward William Lane|Edward William Lane]]、1801年-1876年)の翻訳により英語で出版された。家庭向け、児童向けとしての配慮から省略、改定された部分がある。ブーラーク版を元に翻訳されている。<ref name=nishio2010></ref> 同時代のエジプトを知るための社会資料として千夜一夜物語を見ており、200枚を超える挿絵、膨大な注釈を附した。<ref name=nishio2011></ref>
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ヘンリー・リーヴの評言:「レインは図書館に」。 |
ヘンリー・リーヴの評言:「レインは図書館に」。 |
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;ペイン版(英語) |
;ペイン版(英語) |
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:1882年から1884年にかけてジョン・ペイン([[:en:John Payne (poet)|John Payne]]、1842年–1917年)の翻訳により英語で出版された。全12巻。カルカッタ第二版を元に翻訳されている。<ref name=nishio2010></ref>
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:1882年から1884年にかけてジョン・ペイン([[:en:John Payne (poet)|John Payne]]、1842年–1917年)の翻訳により英語で出版された。全12巻。カルカッタ第二版を元に翻訳されている。<ref name=nishio2010></ref>
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ヘンリー・リーヴの評言:「ペインは書斎に」。 |
ヘンリー・リーヴの評言:「ペインは書斎に」。 |
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;バートン版(英語) |
;バートン版(英語) |
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{{wikisourcelang|en|The Book of the Thousand Nights and a Night|{{PAGENAME}}バートン版}} |
{{wikisourcelang|en|The Book of the Thousand Nights and a Night|{{PAGENAME}}バートン版}} |
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:1885年から1888年にかけて[[リチャード・フランシス・バートン|リチャード・バートン]]により英語に翻訳され出版された。本編10巻と補遺6巻から成る。本編10巻は「カルカッタ第二版」を底本としているが、「ブレスラウ版」(アラビア語、欧州で印刷された唯一の原典版、[[チュニス]]から出た写本に基くとしている)「カルカッタ第一版」「ブーラーク版」や他の英訳本等で補足されており、バートンによる脚色を含んでいる。「カルカッタ第二版」に含まれない物語(「アラジン」など)は補遺6巻に収録されている。バートン版は、特に性風俗に関して充実している詳細な訳注に特徴がある。また、他のどの版よりも収録物語数が多く、「もっとも完備している」と言われる。<ref name=nishio2011></ref> |
:1885年から1888年にかけて[[リチャード・フランシス・バートン|リチャード・バートン]]により英語に翻訳され出版された。本編10巻と補遺6巻から成る。本編10巻は「カルカッタ第二版」を底本としているが、「ブレスラウ版」(アラビア語、欧州で印刷された唯一の原典版、[[チュニス]]から出た写本に基くとしている)「カルカッタ第一版」「ブーラーク版」や他の英訳本等で補足されており、バートンによる脚色を含んでいる。「カルカッタ第二版」に含まれない物語(「アラジン」など)は補遺6巻に収録されている。バートン版は、特に性風俗に関して充実している詳細な訳注に特徴がある。また、他のどの版よりも収録物語数が多く、「もっとも完備している」と言われる。<ref name=nishio2011></ref> |
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ヘンリー・リーヴの評言:「バートンはドブに」。 |
ヘンリー・リーヴの評言:「バートンはドブに」。 |
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;マルドリュス版(フランス語) |
;マルドリュス版(フランス語) |
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:1899年から1904年にかけて[[ジョゼフ=シャルル・マルドリュス]]により仏訳され出版された。全16巻。﹁完訳﹂﹁逐語訳﹂を謳うが、そもそも特定の本を訳したものではなく、既存の版をベースにマルドリュスが独自に編纂し大幅に加筆したもの。バートン版とは方向性が異なるものの官能性を強調している傾向が強い。[[マラルメ]]や[[ジッド]]などのフランスの文学者から高い評価を受けた。子供向けにリライトされたガラン版を除けば、バートン版と共に世界で最も読まれている千夜一夜物語。<ref name=nishio2011></ref>
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:1899年から1904年にかけて[[ジョゼフ=シャルル・マルドリュス]]により仏訳され出版された。全16巻。﹁完訳﹂﹁逐語訳﹂を謳うが、そもそも特定の本を訳したものではなく、既存の版をベースにマルドリュスが独自に編纂し大幅に加筆したもの。バートン版とは方向性が異なるものの官能性を強調している傾向が強い。[[マラルメ]]や[[ジッド]]などのフランスの文学者から高い評価を受けた。子供向けにリライトされたガラン版を除けば、バートン版と共に世界で最も読まれている千夜一夜物語。<ref name=nishio2011></ref>
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=== 主な日本語訳 === |
=== 主な日本語訳 === |
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*『アラビアン・ナイト (全18巻及び別巻)』 [[前嶋信次]]・[[池田修 (学者)|池田修]]訳 |
*『アラビアン・ナイト (全18巻及び別巻)』 [[前嶋信次]]・[[池田修 (学者)|池田修]]訳 |
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: [[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1966年-1992年、ISBN 4-582-80071-8 - アラビア語(カルカッタ第二版)からの直接の翻訳 |
*: [[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1966年-1992年、ISBN 4-582-80071-8 - アラビア語(カルカッタ第二版)からの直接の翻訳 |
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*『完訳 千一夜物語 (全13巻)』 [[豊島与志雄]]・[[佐藤正彰]]・[[渡辺一夫]]・[[岡部正孝]]訳 |
*『完訳 千一夜物語 (全13巻)』 [[豊島与志雄]]・[[佐藤正彰]]・[[渡辺一夫]]・[[岡部正孝]]訳 |
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:[[岩波書店]] 1982年/[[岩波文庫]]、1988年。ISBN 4-00-327801-1 - マルドリュス版仏訳からの重訳 |
*: [[岩波書店]] 1982年/[[岩波文庫]]、1988年。ISBN 4-00-327801-1 - マルドリュス版仏訳からの重訳 |
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*『千一夜物語』 佐藤正彰訳、[[ちくま文庫]]全10巻、1988年 |
*『千一夜物語』 佐藤正彰訳、[[ちくま文庫]]全10巻、1988年 |
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: [[筑摩書房]]全8巻、1974年の文庫化。 - マルドリュス版仏訳からの重訳 |
*: [[筑摩書房]]全8巻、1974年の文庫化。 - マルドリュス版仏訳からの重訳 |
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*『バートン版 千夜一夜物語 (全11巻)』 [[大場正史]]訳 |
*『バートン版 千夜一夜物語 (全11巻)』 [[大場正史]]訳 |
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:筑摩書房〈ちくま文庫〉、2003年。ISBN 4-480-03841-8 - バートン版英訳からの重訳。イラストは[[古沢岩美]] |
*: 筑摩書房〈ちくま文庫〉、2003年。ISBN 4-480-03841-8 - バートン版英訳からの重訳。イラストは[[古沢岩美]] |
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* [[ホルヘ・ルイス・ボルヘス]]編、『千夜一夜物語 ガラン版』 [[井上輝夫]]訳 |
* [[ホルヘ・ルイス・ボルヘス]]編、『千夜一夜物語 ガラン版』 [[井上輝夫]]訳 |
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: [[国書刊行会]]〈バベルの図書館 24〉、1990年。 - ガラン版、バートン版英訳の抄訳 |
*: [[国書刊行会]]〈バベルの図書館 24〉、1990年。 - ガラン版、バートン版英訳の抄訳 |
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* ケイト・D・ウィギン、ノラ・A・スミス編 『アラビアン・ナイト』 [[坂井晴彦]]訳、 |
* ケイト・D・ウィギン、ノラ・A・スミス編 『アラビアン・ナイト』 [[坂井晴彦]]訳、 |
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: W・ハーヴェイ他画、[[福音館書店]]〈[[福音館古典童話シリーズ]]〉、1997年。 - 児童書 |
*: W・ハーヴェイ他画、[[福音館書店]]〈[[福音館古典童話シリーズ]]〉、1997年。 - 児童書 |
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*『アラビアン・ナイト(上下)』 ディクソン編、[[中野好夫]]訳、岩波書店、2001年。 - 児童書 |
*『アラビアン・ナイト(上下)』 ディクソン編、[[中野好夫]]訳、岩波書店、2001年。 - 児童書 |
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*『アラビアンナイト』 [[川真田純子]]訳、[[講談社]]〈[[青い鳥文庫]]〉、1987-92年。 - 児童書 |
*『アラビアンナイト』 [[川真田純子]]訳、[[講談社]]〈[[青い鳥文庫]]〉、1987-92年。 - 児童書 |
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[[画像:1716 Tales 20.jpg|thumb|170px|飛翔する「黒檀の馬」([[千夜一夜物語のあらすじ#黒檀の馬奇談(第414夜 - 第432夜)]])を描いたハンガリーの切手]] |
[[画像:1716 Tales 20.jpg|thumb|170px|飛翔する「黒檀の馬」([[千夜一夜物語のあらすじ#黒檀の馬奇談(第414夜 - 第432夜)]])を描いたハンガリーの切手]] |
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=== アニメ === |
=== アニメ === |
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==== 『千夜一夜物語』 ==== |
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[[手塚治虫]]のプロデュース・構成・脚本により、[[1969年]][[6月14日]]に公開された。大人のためのアニメ(アニメラマと称した)としてアレンジが加えられ、大胆な性描写、実写映像の合成など、実験的な要素が強い作品となっている。当時の大物文化人やコメディアンを声の出演に多数起用しており、アニメとしては異例の豪華なキャスティングでも話題となった。 |
[[手塚治虫]]のプロデュース・構成・脚本により、[[1969年]][[6月14日]]に公開された。大人のためのアニメ(アニメラマと称した)としてアレンジが加えられ、大胆な性描写、実写映像の合成など、実験的な要素が強い作品となっている。当時の大物文化人やコメディアンを声の出演に多数起用しており、アニメとしては異例の豪華なキャスティングでも話題となった。 |
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==== その他のアニメ ==== |
==== その他のアニメ ==== |
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* [[船乗りシンドバッドの冒険]] - [[ポパイ]]シリーズ |
* 『[[船乗りシンドバッドの冒険]]』 - [[ポパイ]]シリーズ |
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* [[アラビアンナイト シンドバットの冒険]] - 日本のテレビアニメ |
* 『[[アラビアンナイト シンドバットの冒険]]』 - 日本のテレビアニメ |
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* [[アラビアンナイト・シンドバッドの冒険 (映画)]] |
* 『[[アラビアンナイト・シンドバッドの冒険 (映画)]]』 |
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* [[アラジン (映画)|アラジン]] |
* 『[[アラジン (映画)|アラジン]]』 |
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* [[アラジン ジャファーの逆襲]] |
* 『[[アラジン ジャファーの逆襲]]』 |
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* [[アラジン完結編 盗賊王の伝説]] |
* 『[[アラジン完結編 盗賊王の伝説]]』 |
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* [[シンドバッド 7つの海の伝説]] |
* 『[[シンドバッド 7つの海の伝説]]』 |
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=== 実写映画 === |
=== 実写映画 === |
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* [[シエラザード]] |
* 『[[シエラザード]]』 |
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* [[シンドバッド七回目の冒険]] |
* 『[[シンドバッド七回目の冒険]]』 |
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* [[アラビアン・ナイト~千一夜物語]]([[アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー|ABC]]) 2000年版 |
* 『[[アラビアン・ナイト~千一夜物語]]』([[アメリカン・ブロードキャスティング・カンパニー|ABC]]) 2000年版 - シェヘラザードが王に好意と同情を寄せる幼馴染である、反乱が勃発しており王国が危機状態にある、などの改変がなされている。 |
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=== 楽曲 === |
=== 楽曲 === |
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* [[シェヘラザード (リムスキー=コルサコフ)]] |
* 『[[シェヘラザード (リムスキー=コルサコフ)|シェヘラザード]]』 - [[ニコライ・リムスキー=コルサコフ]]作曲 |
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* [[シェヘラザード (ラヴェル)]] |
* 『[[シェヘラザード (ラヴェル)|シェヘラザード]]』 - [[モーリス・ラヴェル]]作曲 |
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* [[アリフ・ライラ・ウィ・ライラ 〜千夜一夜物語〜]] - 日本の歌手、[[沢田研二]]の楽曲 |
* 『[[アリフ・ライラ・ウィ・ライラ 〜千夜一夜物語〜]]』 - 日本の歌手、[[沢田研二]]の楽曲 |
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* Ultimate 歌・ReeSya 作詞・杉崎智介 作曲・佐藤あけみ |
* 『Ultimate』 - 歌・ReeSya 作詞・杉崎智介 作曲・佐藤あけみ |
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=== 小説 === |
=== 小説 === |
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* [[ナギーブ・マフフーズ]]『シェヘラザードの憂愁』日本語訳での副題はアラビアンナイト後日譚 |
* [[ナギーブ・マフフーズ]]『シェヘラザードの憂愁』 - 日本語訳での副題は「アラビアンナイト後日譚」 |
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* [[シェーラひめのぼうけん]]アラビアンナイトの世界を舞台にした児童文学 |
* 『[[シェーラひめのぼうけん]]』 - アラビアンナイトの世界を舞台にした児童文学 |
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=== 漫画 === |
=== 漫画 === |
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* [[アラビアン狂想曲]] |
* 『[[アラビアン狂想曲]]』 |
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* [[マギ (漫画)]] |
* 『[[マギ (漫画)|マギ]]』 - 登場人物のモデルになっているが、物語の流れを踏襲したものではない。 |
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* InterFMラジオドラマ「[[杉崎智介のle Salon]]」で『異説千夜一夜物語』を放送、脚本・杉崎智介 |
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=== ゲーム === |
=== ゲーム === |
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* [[プリンス・オブ・ペルシャ]] - [[ブローダーバンド]]によるビデオゲーム。アラビアン・ナイトをモチーフとしている。 |
* 『[[プリンス・オブ・ペルシャ]]』 - [[ブローダーバンド]]によるビデオゲーム。アラビアン・ナイトをモチーフとしている。 |
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* [[ソニックと秘密のリング]] - [[セガ]]によるビデオゲーム。こちらもアラビアン・ナイトをモチーフとしている。 |
* 『[[ソニックと秘密のリング]]』 - [[セガ]]によるビデオゲーム。こちらもアラビアン・ナイトをモチーフとしている。 |
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* [[アラビアンナイト (マジック:ザ・ギャザリング)]] - [[トレーディングカードゲーム]]の拡張カードセット。 |
* 『[[アラビアンナイト (マジック:ザ・ギャザリング)|アラビアンナイト]]』 - [[トレーディングカードゲーム]]の拡張カードセット。 |
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* [[アラビアンナイト 砂漠の精霊王]] - [[タカラ (玩具メーカー)|タカラ]]から発売されたロールプレイングゲーム。 |
* 『[[アラビアンナイト 砂漠の精霊王]]』 - [[タカラ (玩具メーカー)|タカラ]]から発売されたロールプレイングゲーム。 |
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== 出典・参考文献 == |
== 出典・参考文献 == |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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* [[枠物語]] |
* [[枠物語]] |
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* [[ジン |
* [[ジン (アラブ)]] |
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* [[イフリート]] |
* [[イフリート]] |
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* [[魔法の絨毯]] |
* [[魔法の絨毯]] |
2014年4月16日 (水) 12:07時点における版
名称
アラビア語: ألف ليلة وليلة はラテン文字化で alfu lailatin wa lailatun もしくは Alf Laylah wa Laylah ︵﹃アルフ・ライラ・ワ・ライラ﹄︶、 ペルシャ語: هزار و یک شب はラテン文字化で Hezār-o yek šab となる。アラビア語名の﹃アルフ・ライラ・ワ・ライラ﹄は、alfが﹁千﹂、laylahが﹁夜﹂の意味で、waが接続詞﹁と﹂であるから、一見すると﹁千夜と一夜﹂となる。ただしアラビア語の数の数え方を考慮すると、訳としてはむしろ﹁千一夜﹂の方が適切であるが、日本では﹁千夜一夜物語﹂の名称が普及している。 通称の﹁アラビアン・ナイト﹂の訳は、この物語が初めてイギリスに紹介されたときの題名が Arabian Nights Entertainments であったこと、また明治初期に本作がアラビア物語などとして翻訳されたことに由来している︵﹃暴夜物語﹄︵1875年︶、﹃全世界一大貴書︵アラビアンナイト︶﹄︵1883年︶など︶。 ﹁千一夜﹂︵または﹁千夜﹂︶というのは、数が多いということから付けられた題名であって、その原型となる写本では、ずっと少ない夜数の物語であった︵後述︶。内容
- 実在した登場人物
本来の夜数と物語数
沿革
サーサーン朝時代に中世ペルシア語であるパフラヴィー語で記された﹁ハザール・アフサーナ﹂︵هزارافسانه, Hazār-Afsāna︶が、イスラームのアッバース朝時代に翻訳されたものとされる。現存する最古のアラビア語写本は、9世紀の﹃千夜物語﹄︵アルフ・ライラ︶である。 もっとも初期の物語の1つは船乗りシンドバードの物語で10世紀以前のものであり、これに対してもっとも後期の物語はカマールと達者なハリマの物語、マアルフの物語︵蜂蜜入りの乱れ髪菓子と靴直しの禍いをまきちらす女房との物語︶は16世紀のものらしい。そして大多数の物語はこの二群の中間、すなわち10世紀から16世紀の間のものと推定されている[5]。 アレクサンドル・ウラール︵Alexandre Ular︶はそれぞれの物語を銃器の使用有無やぶどう酒・蒸留酒・コーヒーの出現有無、たった1回だけ煙草が登場すること、多くの病気が登場するにもかかわらず梅毒が登場しないことなどから千夜一夜物語の下限を15世紀から16世紀と結論している[6]。 以上を総合すると、おそらくは9世紀もしくは10世紀のバグダードで原型がつくられ、徐々に物語がつけ足されてゆき、15世紀ごろのカイロで最終的なかたちにまとめられたのではないかと思われる。ただし、9世紀頃に出現した﹁アルフ・ライラ﹂の原写本はみつかっておらず、初期の物語群がどのような経緯で現在のようなかたちになってきたかについては、いまだに不明確なままである[7]。 ヨーロッパでは、18世紀初頭にフランスのアントワーヌ・ガランが﹁発見﹂し、シリア系写本を使ってフランス語訳を行い、広く紹介した。以来、さまざまな翻訳と翻案が積み重ねられ、アラブ文芸の枠に留まらない大きな文学ジャンルと言えるほどの作品となっている。 エマニュエル・ジョルジュ・コスカン︵Emmanuel Cosquin︶(1909)は、全体の枠となる物語を分析し、次の3つの説話が原型になっているとした。 (一)妻の裏切りに絶望したある男が、他の高貴な人物が自分と同様に不幸であったことを知って、心の悩みから免れる話 (二)超人的存在でも女の裏切りはふせぎ得なかったという話 (三)説話の名人がその妙技をもって自分やその父の危機を脱する話 である[8]。このような構成には、他にも﹃屍鬼二十五話﹄、﹃ヒトーパデーシャ﹄、﹃パンチャタントラ﹄などインドの説話集︵サンスクリット文学︶が知られており、インド起源の説話がまずペルシアに伝わって風土化し、のちにアラブ人に伝わって成立したとする。また、成立後も様々な作家によって新たに挿話が付け加えられ、原典であっても複数のテキストが存在する[9]。 日本では1875年に英語版からの翻訳が行われ、以来英語・フランス語などのさまざまなバージョンからの重訳が行われた。また、有名な説話は児童文学に翻案され親しまれている[10]。アラビア語︵カルカッタ第二版︶からの翻訳には、前嶋信次・池田修による﹃アラビアン・ナイト﹄がある。この他の日本語訳に、マルドリュス版︵仏語︶からの﹃完訳 千一夜物語﹄︵岩波文庫︶、バートン版︵英語︶からの﹃バートン版 千夜一夜物語﹄などがある。原典および翻訳
アラビア語写本
アラビア語の写本(手書きの本)には、ガラン写本︵シリア写本、15世紀半ば︶、トルコ写本︵16世紀︶、エジプト系写本などが知られているが、内容がそれぞれ異なっている。1704年以前の写本
ガラン版が1704年にヨーロッパで発行され大きな反響を生んだ時以前に作られた写本の主なものには以下のものがある。これらの古い写本にはヨーロッパの影響を受けていない千夜一夜物語の本来の姿があるとされる。 ガラン写本 千夜一夜物語を最初にヨーロッパに紹介したアントワーヌ・ガラン(Antoine Galland、1646年-1715年)が原典とした写本。15世紀半ばに書かれたもので、現存する写本のなかで最古である。全3冊で282夜︵物語の数は40話︶である。ガランが1701年ごろにシリア人の友人から入手したものであり、現在、フランス国立図書館の所蔵となっている。[11][12] チュービンゲン写本 15世紀初期に書かれた可能性があるとされる写本。283夜から542夜の部分が残っている。[13] トルコ写本︵カイセリ写本︶ トルコのカイセリに伝わる写本で、16世紀に作られたとされる。カイセリ写本とも言われる。枠物語の結末が書かれた最古のものとされ、それによれば、シャハラザードに子は生まれておらず、ブーラーク版、カルカッタ第二版とこの点において異なっている。[13] マンチェスター写本 イギリスのマンチェスター大学ジョン・ライランズ図書館が所蔵する写本で16世紀前半に作られたとされる。255夜から始まっている。[13] マイエ写本 17世紀後半に成立したと考えられている写本。冒頭部分から905夜までが収録されている。1702年にフランスのエジプト総領事ベノワ・ド・マイエ(Benoît de Maillet)が購入したものである。[13]1704年以降の写本
ガラン版が1704年にヨーロッパで発行され大きな反響を生んだ時以後に作られた写本の主なものには以下のものがある。これらの新しい写本は数が多く、ヨーロッパの影響を受けているものもあるとされる。 マカン写本 アレクサンドリアのイギリス総領事ヘンリー・ソルト(Henry Salt 1780年-1827年)が所持していたもので、彼の死後にターナー・マカン少佐(1792年-1836年)に渡り、最終的にはカルカッタ第二版の作成に使用された。しかし、現在、マカン写本の所在は確認されていない。[14] ゾータンベールのエジプト系写本(ZER) 1704年以後にエジプトで多数作成された写本群で互いに良く似た内容となっている。写本研究者エルマン・ゾータンベール(Hermann Zotenberg 1836年–1894年)により分類されZER(Zotenberg Egyptian Recension)と呼ばれている。ブーラーク版の主な典拠となった。[13] ラインハルト写本 1831年から1832年に作成された写本で、ドイツのエジプト副領事ラインハルトがエジプトからもたらしたものである[15]。この写本の結末では、シェヘラザードが意図的に冒頭の枠物語を語り始め、途中でシャフリヤール王が自分たちの話なのだと気づき、すべてを悟って前非を悔いるいう構造になっている[16]。偽写本
ヨーロッパで有名になったガラン版千夜一夜物語は、当初は1001夜に満たない形で刊行されたため、1001夜まである完全な形の写本探しが熱狂的に行われた。また、原典となる写本が存在しない有名な話﹁アラジンと魔法のランプ﹂﹁アリババと40人の盗賊﹂の写本探しも行われた。これに伴い偽写本が作られるようになった。偽写本で主なものには次のものがある。アラビア語刊本
欧州言語の翻訳本
英語またはフランス語に翻訳発行されたものでは、次のものが著名である。なお、ヘンリー・リーヴ︵Henry Reeve︶は、1886年に﹃エディンバラ・レヴュー﹄︵en:Edinburgh Review︶誌で﹁ガランは子ども部屋に、レインは図書館に、ペインは書斎に、そしてバートンはドブに﹂と特徴づけている。[19][20][21][22]- ガラン版(フランス語)
- バートン版(英語)
主な日本語訳
●﹃アラビアン・ナイト ︵全18巻及び別巻︶﹄ 前嶋信次・池田修訳 平凡社︿平凡社東洋文庫﹀、1966年-1992年、ISBN 4-582-80071-8 - アラビア語︵カルカッタ第二版︶からの直接の翻訳 ●﹃完訳 千一夜物語 ︵全13巻︶﹄ 豊島与志雄・佐藤正彰・渡辺一夫・岡部正孝訳 岩波書店 1982年/岩波文庫、1988年。ISBN 4-00-327801-1 - マルドリュス版仏訳からの重訳 ●﹃千一夜物語﹄ 佐藤正彰訳、ちくま文庫全10巻、1988年 筑摩書房全8巻、1974年の文庫化。 - マルドリュス版仏訳からの重訳 ●﹃バートン版 千夜一夜物語 ︵全11巻︶﹄ 大場正史訳 筑摩書房︿ちくま文庫﹀、2003年。ISBN 4-480-03841-8 - バートン版英訳からの重訳。イラストは古沢岩美 ●ホルヘ・ルイス・ボルヘス編、﹃千夜一夜物語 ガラン版﹄ 井上輝夫訳 国書刊行会︿バベルの図書館24﹀、1990年。 - ガラン版、バートン版英訳の抄訳 ●ケイト・D・ウィギン、ノラ・A・スミス編 ﹃アラビアン・ナイト﹄ 坂井晴彦訳、 W・ハーヴェイ他画、福音館書店︿福音館古典童話シリーズ﹀、1997年。 - 児童書 ●﹃アラビアン・ナイト︵上下︶﹄ ディクソン編、中野好夫訳、岩波書店、2001年。 - 児童書 ●﹃アラビアンナイト﹄ 川真田純子訳、講談社︿青い鳥文庫﹀、1987-92年。 - 児童書千夜一夜物語に関する事件
2010年4月21日、エジプトの弁護士団体﹁制限なき弁護士団﹂が﹁公序良俗に反する﹂として出版者の逮捕と同書の押収を当局に要求し、これに対して作家や人権団体などの反発が起こった。同説話には性的表現も含まれるため、﹁反イスラム的﹂として標的にされたと言われている[23][24]。派生作品
︵千夜一夜物語のあらすじ#黒檀の馬奇談︵第414夜 - 第432夜︶︶を描いたハンガリーの切手アニメ
﹃千夜一夜物語﹄
手塚治虫のプロデュース・構成・脚本により、1969年6月14日に公開された。大人のためのアニメ︵アニメラマと称した︶としてアレンジが加えられ、大胆な性描写、実写映像の合成など、実験的な要素が強い作品となっている。当時の大物文化人やコメディアンを声の出演に多数起用しており、アニメとしては異例の豪華なキャスティングでも話題となった。 スタッフ ●原案・製作総指揮‥手塚治虫 ●監督‥山本暎一 ●脚本・構成‥手塚治虫、深沢一夫、熊井宏之 ●構成協力‥大宅壮一、北杜夫、小松左京 ●キャラクターデザイン・美術監督‥やなせたかし ●作画監督‥宮本貞雄 ●撮影監督‥土屋旭 ●音響監督‥田代敦巳︵グループ・タック︶ ●音楽‥冨田勲 ●テーマ曲‥アルディンのテーマ ●演奏:ザ・ヘルプフル・ソウル ●歌‥チャールズ・チェー、ジュニオ・ナカハラ ●製作‥虫プロダクション ●配給‥日本ヘラルド映画 声の出演 ●アルディン‥青島幸男 ●ミリアム、ジャリス‥岸田今日子 ●バドリー‥芥川比呂志 ●マーディア‥伊藤幸子 ●ジニー‥加藤治子 ●カマーキム‥小池朝雄 ●アスラーン‥橋爪功 ●ジン‥三谷昇 ●女奴隷市の野次馬‥遠藤周作︵友情出演︶ ●女奴隷市の野次馬‥吉行淳之介︵友情出演︶ ●女奴隷市の野次馬‥北杜夫︵友情出演︶ ●女奴隷市の野次馬‥小松左京︵友情出演︶ ●女奴隷市の野次馬‥筒井康隆︵友情出演︶ ●元老院議員‥大宅壮一︵友情出演︶[25] ●元老院議員‥佐賀潜︵友情出演︶ ●元老院議員‥大森実︵友情出演︶ ●競馬シーンのダフ屋‥大橋巨泉︵友情出演︶ ●競馬シーンの観客‥前田武彦︵友情出演︶ ●競馬シーンの観客‥立川談志︵友情出演︶ ●競馬シーンの観客‥野末陳平︵友情出演︶ ●ヤブ医者‥木崎国嘉︵友情出演︶ ●女護が島の女‥安藤孝子︵友情出演︶ ●文野朋子 ●高木均 ●名古屋章 ●有馬昌彦 ●渥美国泰 ●内田稔 ●新村礼子 ●スマイリー小原その他のアニメ
●﹃船乗りシンドバッドの冒険﹄ - ポパイシリーズ ●﹃アラビアンナイト シンドバットの冒険﹄ - 日本のテレビアニメ ●﹃アラビアンナイト・シンドバッドの冒険 (映画)﹄ ●﹃アラジン﹄ ●﹃アラジン ジャファーの逆襲﹄ ●﹃アラジン完結編 盗賊王の伝説﹄ ●﹃シンドバッド7つの海の伝説﹄実写映画
●﹃シエラザード﹄ ●﹃シンドバッド七回目の冒険﹄ ●﹃アラビアン・ナイト~千一夜物語﹄(ABC) 2000年版 - シェヘラザードが王に好意と同情を寄せる幼馴染である、反乱が勃発しており王国が危機状態にある、などの改変がなされている。楽曲
●﹃シェヘラザード﹄ - ニコライ・リムスキー=コルサコフ作曲 ●﹃シェヘラザード﹄ - モーリス・ラヴェル作曲 ●﹃アリフ・ライラ・ウィ・ライラ 〜千夜一夜物語〜﹄ - 日本の歌手、沢田研二の楽曲 ●﹃Ultimate﹄ - 歌・ReeSya 作詞・杉崎智介 作曲・佐藤あけみ小説
●ナギーブ・マフフーズ﹃シェヘラザードの憂愁﹄ - 日本語訳での副題は﹁アラビアンナイト後日譚﹂ ●﹃シェーラひめのぼうけん﹄ - アラビアンナイトの世界を舞台にした児童文学漫画
●﹃アラビアン狂想曲﹄ ●﹃マギ﹄ - 登場人物のモデルになっているが、物語の流れを踏襲したものではない。ゲーム
●﹃プリンス・オブ・ペルシャ﹄ - ブローダーバンドによるビデオゲーム。アラビアン・ナイトをモチーフとしている。 ●﹃ソニックと秘密のリング﹄ - セガによるビデオゲーム。こちらもアラビアン・ナイトをモチーフとしている。 ●﹃アラビアンナイト﹄ - トレーディングカードゲームの拡張カードセット。 ●﹃アラビアンナイト 砂漠の精霊王﹄ - タカラから発売されたロールプレイングゲーム。出典・参考文献
●平凡社東洋文庫版﹃アラビアン・ナイト﹄、訳者︵前嶋信次、池田修︶あとがき ●前嶋信次 ﹃アラビアン・ナイトの世界﹄ 平凡社ライブラリー、1995年。 ●前嶋信次、杉田英明編 ﹃千夜一夜物語と中東文化﹄ 平凡社東洋文庫、2000年。第1章﹁千夜一夜物語の世界﹂ ●ロバート・アーウィン、 西尾哲夫訳 ﹃必携アラビアン・ナイト 物語の迷宮へ﹄ 平凡社、1998年1月、 ISBN 4-582-30803-1。 ●西尾哲夫編著 ﹃図説 アラビアンナイト﹄ 河出書房新社、2004年。 ●西尾哲夫、国立民族学博物館編著 ﹃アラビアンナイト博物館﹄ 東方出版、2004年 ISBN 4-88591-910-x。 ●西尾哲夫 ﹃アラビアンナイト 文明のはざまに生まれた物語﹄ 岩波新書1071、2007年 ISBN 978-4-00-431071-6。 ●西尾哲夫﹃アラビアンナイト ---﹁物語﹂に終わりはない﹄、100分de名著、NHK出版、2013年11月。脚注
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(14)^ 西尾哲夫﹃アラビアンナイト 文明のはざまに生まれた物語﹄ 岩波新書、2007年、pp.52-53,p.64
(15)^ 西尾哲夫﹃アラビアンナイト 文明のはざまに生まれた物語﹄ 岩波新書、2007年、p.53
(16)^ 西尾哲夫﹃アラビアンナイト 文明のはざまに生まれた物語﹄ 岩波新書、2007年、pp.115-116
(17)^ 西尾哲夫 ﹃アラビアンナイト 文明のはざまに生まれた物語﹄ 岩波新書、2007年、p.64,p.81
(18)^ これらの物語やよく知られている﹁空飛ぶ絨毯﹂︵ガラン版﹁アフマッド王子と妖精パリ・バヌー﹂︵L'histoire du Prince Ahmed et de la fée Pari-Banou︶、マルドリュス版﹁ヌレンナハール姫と美しい魔女の物語﹂、カルカッタ第二版には無い︶はアラビア語・ペルシャ語の原本は発見されていない。フランスの東洋学者エルマン・ゾータンベールによる発見︵アラジンと魔法のランプ︶、スコットランド出身のダンカン・B・マクドナルドによる発見︵アリババと40人の盗賊︶は共に否定されている︵ロバート・アーウィン、 西尾哲夫訳 ﹃必携アラビアン・ナイト 物語の迷宮へ﹄ 平凡社、1998年︶。なお、シンドバッドも、アラビアンナイトとは別系統の物語群に属している︵西尾哲夫/ 国立民族学博物館編著 ﹃アラビアンナイト博物館﹄ 東方出版、2004年︶。
(19)^ Henry Reeve,"The Arabian Nights", Edinburgh Review, 164(1886),p.184
(20)^ ロバート・アーウィン、 西尾哲夫訳 ﹃必携アラビアン・ナイト 物語の迷宮へ﹄ 平凡社、1998年1月、p.53
(21)^ abcd西尾哲夫 ﹃世界史の中のアラビアンナイト﹄ NHK出版、2011年
(22)^ 西尾哲夫﹃アラビアンナイト ---﹁物語﹂に終わりはない﹄、100分de名著、NHK出版、2013年11月、p.26
(23)^ [1]
千夜一夜物語‥エジプトの弁護士団体が押収要求 反発拡大、2010年5月6日
(24)^ ﹃毎日新聞﹄2010年5月6日 [2] 千夜一夜物語‥エジプトの弁護士団体が押収要求 反発拡大︵リンク切れ︶
(25)^ バートン版アラビアンナイト︵英文︶の翻訳を手がけたことがある。