エイプリルフール
エイプリルフール︵April Fools' Day︶とは、毎年の4月1日、悪戯や嘘をついても良いという風習のことである[1]。イギリスではオークアップルデーに倣い、嘘をつける期限を正午までとする風習があるが[2]、それ以外の地域では一日中行われる[3]。
エイプリルフールは、日本語では直訳で﹁四月馬鹿﹂[1]、漢語的表現では﹁万愚節﹂、中国語では﹁愚人節﹂、フランス語では﹁プワソン・ダヴリル﹂︵Poisson d'avril, 四月の魚︶と呼ばれる。
エープリルフールと表記されることがある。
起源[編集]
この節のほとんどまたは全てが唯一の出典にのみ基づいています。(2018年3月) |
エイプリルフールの起源は全く不明である。すなわち、いつ、どこでエイプリルフールの習慣が始まったかはわかっていない。有力とされる起源説を以下に挙げるが、いずれも確証がないことから、仮説の域を出ていない。以下に挙げるのは、その例である。
その昔、ヨーロッパでは3月25日を新年とし、4月1日まで春の祭りを開催していたが1564年にフランスのシャルル9世が1月1日を新年とする暦を採用した。これに反発した人々が、4月1日を﹁嘘の新年﹂とし、馬鹿騒ぎをはじめた[4]。この説を利用し、さらに﹁嘘の嘘の新年﹂なる説まで登場したが、これは2006年に意図的に本項目に書き込まれたデマ情報である︵嘘の嘘の新年を参照︶[5]。
インドで悟りの修行は、春分から3月末まで行われていたが、すぐに迷いが生じることから、4月1日を﹁揶揄節﹂と呼んでからかったことによるとする説もある[4][6]。この説によれば、インドの﹁揶揄節﹂が西洋に伝わったものがエイプリルフール、中国に伝わったものが﹁万愚節﹂になったという[6]。
イングランドの王政復古の記念祭であるオークアップルデー(en:Oak Apple Day)に由来を求める説がある。
フランスではエイプリルフールを Poisson d’avril︵4月の魚︶といい、子供達が紙に書いた魚の絵を人の背中にこっそり張り付けるいたずらをする。この﹃4月の魚﹄とはサバのことを指すと言われ、ちょうどこの頃にサバがよく釣れるためこう呼ばれるとされる。
日本には大正時代に欧米のエイプリルフールが伝わったが、前述の中国の﹁万愚節﹂が江戸時代の日本に伝わり﹁不義理の日﹂と呼ばれていたという説もある[6]。
東京新聞は﹁東京タワーが傾く。原因は足元の“おなら”﹂と嘘報道し た︵2006年︶
﹁多摩地区だけはやたらと詳しい3D地球儀ソフト﹂という偽記事も登 場した︵2005年︶[7]
4月1日には、世界中で新聞が嘘の内容のニュース記事を掲載したり、報道番組でジョークニュースを報道したりといったことが広く行われている。インターネットが普及してからは、実用性のない冗談RFCが公開されたり、ウェブサイトではジョークコンテンツを公開するといったことも行われている。
ジョークのスケールは簡易なものから大きな労力をつぎ込んだものまでがあり、サイトは個人発から大手企業発までがある。ときには、閲覧者から嘘の情報の内容についての問合せが来ることもある︵BBCの﹁ビッグ・ベンのデジタル化、その時計針のプレゼント﹂︵1980年、2008年︶、﹁ペンギンが空を飛ぶ﹂︵2008年︶[8]など︶。
かつては通信社が配信した嘘記事を、日本の新聞社が本当のニュースとして掲載したことがあった。1995年には﹁ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスが初の小説﹃山々の彼方に﹄を出版する﹂という記事が朝日新聞にニュースとして掲載された[9]。しかし、出典のフランクフルター・アルゲマイネの記事がエイプリルフールの冗談であったとして、後に記事を撤回した[10]。2005年に日本の東京新聞が掲載した﹁スマトラ沖地震の余波で沖縄南端に新島が出現﹂という記事を、韓国の京郷新聞がニュースとして掲載するなど、別のメディアが情報元を真に受けてしまった事例もある。
東京新聞の﹁こちら特報部﹂では、2001年︵平成13年︶から4月1日にエイプリルフールの記事を紙面に掲載するとともに、エイプリルフール連動広告を組んでいる[11]。
4月1日は月初め︵日本では会計年度が4月を基準︶でもあり、同時に情報として公開するインパクトが強い日でもあるため、企業の中にはエイプリルフールネタとして公開されるものの中で本当の記事や発表も紛れ込ませ、当日や後日に本当であることを公表して印象付けることもある。また、企業がエイプリルフールネタの冗談として発表したものの、SNSなどで話題となり、後に商品化︵現実化︶したケースもある[12][13]。
中華人民共和国では、新華社が2016年4月1日にエイプリルフールについて﹁中国の特色ある文化や社会主義の核心的価値に合わない。便乗して参加せず、嘘をつかない、嘘を伝え広げない、嘘に惑わされないように。﹂と新浪微博で呼びかけた。しかし、中国のインターネットユーザーは﹁国営メディアは毎日が嘘情報﹂、﹁中国人民は67年間も嘘を付かれ続けてきた﹂、﹁西洋諸国ではエイプリルフールは4月1日が過ぎれば終わりだが、中国では年中エイプリルフールだからな﹂、﹁冗談も言えないような民族は悲しいものだよ﹂とブラックジョークとして皮肉った。イギリスのガーディアンやアメリカ合衆国のニューヨーク・タイムズは、﹁2016年のベストジョーク﹂として報道した[14][15]。
2016年アメリカ合衆国大統領選挙で、いわゆる偽ニュース︵フェイクニュース︶が社会問題化すると、北欧メディアなどでは伝統となっていたエイプリルフール記事を2017年から自粛するようになった[16]。
エイプリルフールとメディア[編集]
エイプリルフールを題材にした作品[編集]
●恐ろしき四月馬鹿︵エイプリル・フール︶︵推理小説、1921年、日本︶横溝正史のデビュー作 ●四月の魚︵映画、1986年、日本︶ ●史上最低の遊園地。TOSHIMAEN︵1990年4月1日、新聞全面広告。岡田卓也と大貫卓也を主軸とする博報堂のチーム︵当時︶が作成したキャッチコピー。広告画像︶ ●今夜はエイプリルフール︵歌、1991年、早乙女乱馬=山口勝平︶ ●帰ってきたドラえもん︵漫画、1974年﹃小学四年生﹄4月号、映画、1998年、日本、﹃ドラえもん﹄ではエイプリルフールにジャイアンとスネ夫がのび太を騙すのが定番で、嘘に関する数多くのひみつ道具が使われる︶ ●エイプリルフールの唄︵ゲーム音楽、2004年[注釈 1]﹃Pop'n music 12 いろは﹄、AKIRA YAMAOKA名義︶ ●血のエイプリルフール︵映画、2008年、アメリカ︶ ●エイプリルフールズ︵映画、2015年、日本︶ ●年刊AhSKI! ●真夏のエイプリルフール︵本、2021年、日本︶参照[編集]
●Request for Comments - 毎年エイプリルフールにジョーク的内容を含むRFCが公開される。 ●Scratch (プログラミング言語) - 毎年エイプリルフール行事が行われている。[17]脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 2004年に稼働し、2005年にこの曲が解禁された。
出典[編集]
(一)^ ab岩波書店﹃広辞苑 第六版﹄
(二)^ The Big Question: How did the April Fool's Day tradition begin, and what are the best tricks?independent 2009年3月31日
(三)^ Find out about April Fools' Day and Aprilscherze in Germany!UK-German Connection voyage kids
(四)^ abPHP研究所 ﹃[四訂版]今日は何の日 話のネタ365日﹄、p.67
(五)^ 籏智広太 (2021年4月1日). “﹁こんなことになるとは…﹂13年前のエイプリルフールについた“嘘”がネットで… ある男の告白”. BuzzFeed News 2022年3月31日閲覧。
(六)^ abcひろさちや﹃やじうま歳時記﹄文藝春秋、1994年、44-45頁。ISBN 4-16-348350-0。
(七)^ “多摩地区だけはやたらと詳しい3D地球儀ソフト﹁TAMA World Wind﹂”. 窓の社. インプレス (2005年4月1日). 2016年9月1日閲覧。
(八)^ Penguins - BBC - YouTube
(九)^ ﹁海外文化 ハーバーマスの初の小説を出版﹂東京夕刊、﹃朝日新聞﹄、1995年5月18日、9面。
(十)^ ﹁おわび﹂東京夕刊、﹃朝日新聞﹄、1995年6月14日、5面。
(11)^ DIRECT2013東京新聞 - ウェイバックマシン︵2013年5月2日アーカイブ分︶
(12)^ “激辛ハッピーターン﹁つらターン﹂コンビニ発売、エイプリルフール企画を一年越しに商品化、新感覚の激辛﹁つらパウダー﹂で“とまらないつらさ”/亀田製菓2024”. 食品産業新聞 (2024年4月1日). 2024年4月2日閲覧。
(13)^ “エイプリルフールのSNS投稿から本当に商品化 亀田製菓が激辛﹁つらターン﹂販売開始”. 産経新聞 (2024年4月1日). 2024年4月2日閲覧。
(14)^ 王霜舟﹁エイプリルフールの傑作に新華社のコメント﹂﹃ニューヨーク・タイムズ﹄、2016年4月1日。2023年12月16日閲覧。
(15)^ 北田﹁中国官製メディアがエイプリルフールを批判、中国ネットは怒り﹁これこそがジョーク﹂﹁自分たちは毎日がエイプリルフールのくせに﹂﹂﹃レコードチャイナ﹄、2016年4月1日。2016年4月10日閲覧。
(16)^ “﹁偽ニュース﹂騒動余波、北欧メディアがエープリルフールを自粛”. AFP. 2017年4月1日閲覧。
(17)^ “エイプリルフール”. Scratch. 2024年5月29日閲覧。
参考文献[編集]
- PHP研究所 『[四訂版]今日は何の日 話のネタ365日』 PHP研究所(PHPハンドブック)、2006年11月9日、ISBN 9784569658049