帰ってきたドラえもん
﹁帰ってきたドラえもん﹂は、漫画﹃ドラえもん﹄の短編エピソードのひとつ︵1974年発表︶。本作を原作としてテレビアニメが2つ、アニメ映画が2つ作られている。
漫画[編集]
1974年3月に﹃小学四年生﹄4月号にて藤子不二雄名義で発表された。藤本弘による単独執筆作。エピソード名は﹁帰って来たドラえもんの巻﹂。全10頁。全77コマ。前号には﹁さようなら、ドラえもん﹂が掲載され、その最終頁には﹁4月号につづきます﹂と記載されていた。 1975年5月発売のてんとう虫コミックス第7巻に収録された際にエピソード名が﹁帰ってきたドラえもん﹂の表記となり、加筆・修正が行われ全12頁、全88コマの作品となった︵2009年発売の藤子・F・不二雄大全集4巻にも収録︶。 デジタルカラー版 2015年4月に北米で発売された電子書籍﹃Doraemon﹄ Kindle Edition34巻に収録された際に、デジタル彩色技術により全頁がフルカラーで着色された︵エピソード名は﹁Welcome Back Doraemon﹂︶。同年7月に日本で発売された﹃ドラえもん﹄デジタルカラー版34巻は同書の日本語版である。あらすじ[編集]
ドラえもんが未来へ帰ってしまったため、無気力な日々を過ごしていたのび太が、ある日スネ夫から﹁ツチノコをみつけた﹂、ジャイアンから﹁そこでドラえもんと会った﹂と知らされたことから始まる物語。詳細は「ドラえもんの最終回#帰ってきたドラえもん」を参照
テレビアニメ[編集]
漫画を原作としたテレビアニメが2つ作られている。放送日とエピソード名は以下の通り。
﹁帰ってきたドラえもん﹂︵1981年︶[編集]
1月3日に﹁'81お正月だよ!ドラえもん﹂︵1月1日から3日連続で放送された特番︶内にて放送。漫画の﹁さようなら、ドラえもん﹂と﹁帰ってきたドラえもん﹂を組み合わせてひとつにした作品。約21分。 1994年と1997年のスペシャル放送で再放送された。DVD﹃ドラえもんコレクションスペシャル 春の4﹄に収録。 国外での放送 藤子プロが日本国外では本テレビアニメ﹁帰ってきたドラえもん﹂を放送しないという方針を採ったため、国外未放送となっている。[要出典]これを踏まえて、﹃決定!これが日本のベスト﹄︵テレビ朝日︶にて、複数の外国人にこのエピソードを見せ反応をうかがうという企画が行われた。しばしば海外における﹁幻の最終回﹂として紹介されることがあるが、日本で発売されているDVDを入手してリージョンフリーまたは日本のリージョンコードに対応しているDVDプレイヤーを使用すれば日本国外でも視聴は可能である。﹁さようならドラえもん﹂︵2009年︶[編集]
3月20日に﹁ドラえもん30周年スペシャル﹂内にて放送。漫画の﹁さようなら、ドラえもん﹂と﹁帰ってきたドラえもん﹂を組み合わせてひとつにした作品。約31分。けんかは公園で行われる。アニメ映画(1998年)[編集]
帰ってきたドラえもん | |
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監督 | 渡辺歩 |
脚本 | 城山昇 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
出演者 |
大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 千々松幸子 中庸助 |
音楽 | 菊池俊輔 |
主題歌 | 山野さと子「青い空はポケットさ」 |
撮影 | 熊谷正弘 |
編集 | 岡安肇 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 |
シンエイ動画 テレビ朝日 小学館 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1998年3月7日 |
上映時間 | 27分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
次作 | のび太の結婚前夜 |
1998年3月7日に、劇場用アニメ映画﹃帰ってきたドラえもん﹄として公開された。同時上映の長編作品は﹃ドラえもん のび太の南海大冒険﹄。
漫画の﹁さようなら、ドラえもん﹂と﹁帰ってきたドラえもん﹂を組み合わせてひとつにした作品。27分。
本作では原作漫画では登場しなかったしずか、ドラミ、のび太のおばあちゃん︵のび太の回想シーンのみ︶が登場するなどの大幅な追加と変更が行われている︵﹁#原作漫画との相違点﹂を参照︶。
中編シリーズ第1作[編集]
渡辺歩が監督する﹃映画ドラえもん﹄の中編シリーズ5部作の第1作である[1]。 本作から2002年の﹃ぼくの生まれた日﹄までの5作の中編映画は、原作者である藤子・F・不二雄の没後、その心を受け継ごうとする者たちが、原作漫画の中から選んだ作品を映画化したもので、﹁ドラえもん感動シリーズ﹂と呼ばれる[2]。この5作で監督を務めた渡辺歩は、後年に﹃のび太の恐竜2006﹄の監督も務めた[2]。あらすじ[編集]
いつものようにジャイアンにいじめられ、ドラえもんに泣きつくのび太。しかし、ドラえもんは憂鬱そうな感じを見せる。実はドラえもんは未来の世界へ帰らなければならなくなったのだ。のび太は必死に止めるがパパの言葉と亡き祖母との思い出のダルマを経て、﹁ダルマと同じように転んでも起き上がる﹂ことを思い出し、ドラえもんとの別れを受け入れることにする。 お別れパーティーを終えた後、寝付けないことから夜の町を散歩する2人。ドラえもんが離れている間、のび太は同じように夜の散歩をしていたジャイアンと遭遇。昼間の件から殴ろうとするジャイアンに対し、のび太はドラえもんから心配を払拭させるべく、無謀を承知で単身ジャイアンに挑む。いなくなってしまったのび太を探すドラえもんの目に映ったのは何度殴られてもジャイアンに立ち向かったのび太がジャイアンを根負けさせた光景だった。ボロボロの身ながらも自分だけの力でジャイアンに勝ったことを誇らしげに語るのび太に涙するドラえもんはのび太を連れ帰り、眠ったのを見届けた後、未来の世界に帰還する。 のび太はドラえもんがいない寂しさを噛みしめながら、ドラえもんはのび太との最後の思い出の場所である公園跡地に毎日のように足を運びながら、日々を過ごす。それでも2人はしずかやドラミたちの気遣いもあり、前を向こうとしていた。 そんなある日、のび太はジャイアンから﹁ドラえもんを見かけた﹂と教えられる。どら焼きを買い、ドラえもんを探し回るのび太だが、そのドラえもんはスネ夫が化けた偽物であり、全てはジャイアンがエイプリルフールにかこつけて、先日のケンカの仕返しに行ったことだった。悔しさと怒りのあまり、自分を心配して様子を見に来たしずかを意に介さず、落としたどら焼きも置いて逃げ帰ったのび太はドラえもんが残した道具・ウソ800を使い、言ったことを嘘にすることでジャイアンとスネ夫に仕返しするが急に空しくなり、2人を許す。 帰宅したのび太はママに﹁ドラちゃんには会えたの?﹂と問われて﹁ドラえもんは帰ってこない﹂と返答する。自室に戻ったのび太の目に映ったのは本物のドラえもんであった。ウソ800の効力が残っていた為、ドラえもんは帰ってこないことが嘘になったのだ。のび太を心配して様子を見に来たしずかや大量のどら焼きを持って、お詫びに来たジャイアンとスネ夫もドラえもんと再会を果たし、皆、和解するのだった。キャスト[編集]
●ドラえもん - 大山のぶ代 ●野比のび太 - 小原乃梨子 ●源静香 - 野村道子 ●剛田武 - たてかべ和也 ●骨川スネ夫 - 肝付兼太 ●野比玉子 - 千々松幸子 ●野比のび助 - 中庸助 ●ドラミ - よこざわけい子 ●剛田の母 - 青木和代 ●店員 - 巴菁子 ●子供 - 佐藤ゆうこスタッフ[編集]
●原作 - 藤子・F・不二雄 ●監督・作画監督 - 渡辺歩 ●脚本 - 城山昇 ●美術監督 - 明石聖子 ●撮影監督 - 熊谷正弘 ●録音監督 - 大熊昭 ●音楽 - 菊池俊輔 ●編集 - 岡安肇 ●動画チェック - 原佳寿美 ●色彩設計 - 照屋美和子 ●原画 - 尾鷲英俊、加来哲郎、石井智美、石黒育、福本勝、本多哲、佐々木よし子 ●彩色 - スタジオキリー、ベガエンタテイメント ●特殊効果 - 前川孝 ●リスマスク - マキ・プロ ●アニメーション協力 - 松土隆二、武井健 ●背景 - 土師勝弘、古賀徹、岡部真由美、天水勝、松本吉勝、本多美紀、新井由華、伊藤朱美 ●撮影 - 角原幸枝、山田廣明、倉田佳美、木次美則、鈴木浩司、金子仁 ●編集 - 小島俊彦、中葉由美子、村井秀明、川崎晃洋、三宅圭貴 ●効果 - 横山正和 ●録音スタジオ - APUスタジオ ●ミキサー - 内山敬章 ●アシスタントミキサー - 田口信孝 ●音響制作 - オーディオプランニングユー ●音響制作デスク - 小澤恵 ●音楽協力 - 立原一 ●技術協力 - 森幹生 ●タイトル - 道川昭 ●現像 - 東京現像所 ●プロデューサー - 増子相二郎、木村純一、梶淳 ●制作協力 - 藤子プロ、ASATSU ●制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日原作漫画との相違点[編集]
本作で描かれている原作漫画とは異なる場面の例を以下に挙げる。原作漫画での描写が併記されていない場面は、原作漫画にはない場面。本アニメ作品は原作者で漫画作者の藤本の死去後に作られたため、変更箇所はいずれも原作者の承認を受けたものではない。 原作漫画には存在しない場面 以下の場面は本アニメ作品の制作時にアニメスタッフにより創作されたもので、原作漫画には登場せず︵他エピソードを含む︶、公式設定でもない。 ●のび太が押し入れの中で泣く。それを慰めたパパは、おばあちゃんが亡くなった時にものび太が押し入れで泣いたと語る。のび太は押し入れにあったダルマを見て、おばあちゃんとの約束﹁何度転んでも起き上がるよ﹂を思い出す︵ダルマとおばあちゃんとの約束の箇所のみ、原作漫画ではてんとう虫コミックス18巻﹁あの日あの時あのダルマ﹂に登場する。初出は1978年︶。 ●お別れパーティーで、のび太は笑顔でドラえもんとどら焼きで乾杯する︵原作漫画では俯いた描写のみ︶。 ●ドラえもんが未来へ帰る際に、のび太にそっと別れを告げる。のび太は寝言でドラえもんの名前を2度呟く。 ●のび太とジャイアンがけんかしている最中に雨が降りはじめる。 ●22世紀に帰還したドラえもんが満開の桜の下でドラミと談笑する︵ドラえもんとドラミがいる場所は、ドラえもんとのび太が夜に立ち寄った公園の跡地である。現代で桜の木の後ろにある高架を走っていた電車は、22世紀の場面ではリニアモーターカーのような車両に替わっている︶。 ●のび太がスーパーマーケットに買い物に行き、しずかと共に道を歩く。 ●スネ夫がドラえもんに変装してのび太を騙した後公園で嘘だと明かし、ジャイアンが先日の﹁仕返し﹂だと告げる。 ●ジャイアンの嘘に泣き崩れるのび太の前にしずかが現れ、のび太が落としたどら焼きを拾いながら﹁こんなことだと思ったわ…﹂ともの悲しげにジャイアンの嘘に薄々気づいていたことをつぶやき、のび太を慰めようとするものの、無視されてしまう。 ●ドラえもんの姿を模した箱の機能は﹁一度だけ必要な道具が出てくる﹂設定。のび太は箱を開けるかどうかで葛藤する。 ●ウソ800の効力は75分。 ●ジャイアンとスネ夫に仕返しする際に、のび太が﹁ドラえもんの最後の力だ﹂と言う。 ●ジャイアンがジャイアンのママからお仕置きされる︵原作漫画では引きずって連れて行かれるのみ︶。 ●のび太が﹁今のは全部、本当﹂と言い、ジャイアンとスネ夫を解放する。のび太は独り言で﹁さようならドラえもん﹂﹁桜ももう終わりだね﹂と呟き、散り始めていた桜が満開となる。 ●2人の再会を知り、のび太のママはドラえもん用にハンバーグを追加する。のび太が落としたどら焼きを持って謝罪に来たジャイアンとスネ夫、のび太を心配して様子を見に来たしずかが皆でドラえもんの帰還を喜ぶ。 ●ドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫が空地で野球をし、しずかがそこにやってくる。雲はダルマの形をしている。 原作漫画には存在するが、本アニメ作品には存在しない場面 原作漫画の以下の場面は本アニメ作品には取り入れられなかった。 ●﹁ねむらなくてもつかれないくすり﹂をドラえもんが出す。 ●﹁あいつときどきねぼけて、夜中にさんぽするんだ﹂というのび太の台詞︵本アニメ作品ではジャイアンが夜中に出歩いていた理由は説明されない︶。 ●スネ夫に騙されて犬にボロボロにされる。 ●のび太が﹁うしろにおばけがいるぞっ﹂と泣きながら嘘をつく。 原作漫画とは異なる本アニメ作品での場面と設定 下記の場面は原作漫画と本アニメ作品の両方に登場するが、場所、台詞、行動等に差異がある。 ●ドラえもんとのび太が夜の散歩で一休みする場所、のび太とジャイアンがけんかする場所は公園︵原作漫画では空地︶。 ●涙を見せまいと散歩の途中で立ち去るドラえもんの台詞が﹁ちょっとトイレに…﹂︵原作漫画では﹁そのへんを散歩して来る﹂︶。この時のび太は﹁︵ドラえもんはロボットだから︶トイレなんか行かないくせに﹂と言っているが、てんとう虫コミックス37巻﹁しかしユーレイはでた!﹂︵初出は1982年︶ではのび太とドラえもんが小便器の前で並んで用を足す場面が描かれている。 ●ドラえもんの姿を模した箱を、ドラえもんが未来に帰った後で机の引き出し︵タイムマシンの入り口だった場所︶からのび太が発見する︵原作漫画ではドラえもんが帰る前に直接渡される場面がのび太の回想で描かれる︶。 ●4月1日に、のび太は買物に行くために家を出る︵原作漫画ではスネ夫に呼ばれて家を出る︶。 ●箱を開けた際に、ウソ800の説明がドラえもんの声で流れる︵原作漫画では説明書が同梱されている︶。 ●のび太はウソ800を飲み干す︵原作漫画では半分ほどだけ飲む︶。 ●のび太はジャイアンに﹁君はママに叱られない。ちっとも﹂と言う︵原作漫画では﹁きみはね……、ママにほめられるね、いやというほど﹂︶。 ●ドラえもんがのび太と再会する前に、再び現代に来られるようになった原因に気づいている︵原作漫画では足元のウソ800を見てから気づく︶。主題歌[編集]
●﹁青い空はポケットさ﹂ ●作詞 - 高田ひろお 作曲・編曲 - 菊池俊輔 歌 - 山野さと子予告映像[編集]
予告映像では原作漫画﹁さようなら、ドラえもん﹂の最終コマが使用されている。原作漫画では、のび太はドラえもんがいなくなった寂しさを噛みしめながらも乗り越えることを誓っているが、本作の予告映像では、のび太はドラえもんが帰ってくることを願い、ドラえもんの声を聴いて喜んでいる。受賞歴[編集]
●第16回ゴールデングロス賞優秀銀賞[3]。国外での放送[編集]
2005年にスペインでテレビ放送された[4]。アニメ映画︵2014年︶[編集]
2014年に、劇場用3Dアニメ映画﹃STAND BY ME ドラえもん﹄︵8月8日公開︶内のエピソードのひとつとして映画化された[5]。詳細は「STAND BY ME ドラえもん」を参照
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
(一)^ 宮昌太郎 (2022年7月29日). “渡辺歩③ 大事なことはすべて﹃ドラえもん﹄から教わった”. Febri. 一迅社. 2023年11月21日閲覧。
(二)^ ab大山のぶ代﹃ぼく、ドラえもんでした。 涙と笑いの26年うちあけ話﹄小学館、2006年6月、169頁。ISBN 978-4-09-387654-4。
(三)^ “過去のゴールデングロス賞 - 全国興行生活衛生同業組合連合会”. Japan Association of TheaterOwners. 2020年10月17日閲覧。
(四)^ El retorno de Doraemon
(五)^ “3DCG﹃ドラえもん﹄、藤子・F・不二雄先生も知らなかった物語”. ORICON NEWS. オリコン (2014年8月16日). 2023年11月21日閲覧。
関連項目[編集]
●漫 - 原作漫画、大長編漫画等の執筆者の頭の1文字または略記号。藤=藤子不二雄。F=藤子・F・不二雄。1987年の独立前のみ﹁藤﹂と記載した︵ただし﹃ドラえもん﹄は連載開始時から藤本単独作︶。FP=藤子プロ。それ以外は作画者を記載。括弧付きは藤本以外が執筆した外伝、短編など。詳細は大長編ドラえもん#作品一覧︵併映作品は各作品のページ︶を参照。