コルセット
コルセット︵英: corset︶は、女性用ファウンデーションの一種で、近代から現代にかけてヨーロッパ大陸で一般に使用された。胸部下部よりウェストにかけてのラインを補正する役割を持ち、ヒップの豊かさの強調と対比的に、胴の部分を細く見せた。
イギリスでは、コルセットとほぼ同じ目的の補正下着としてステイズ (stays) があった[1]。これは重層的な構造を持っていたため、ヨーロッパ北部では保温目的でも着用された。
20世紀中盤以降は、ファウンデーションの素材の進化とファッションの方向性の変化でコルセットは廃れており、今日では医療・運動補助用や趣味、一部の民族衣装を着用する際の装身を目的として使用されている。
コルセットを着用する女性と、それを手伝う女性の図
コルセットの形状を維持するためのボーンは鯨髭、ないしは鉄鋼製であった。通常、背後にはハトメに紐を通したレース部分があり、ウエスト部分から取り出された紐を締め付けることによってウェストを細くする。
このような下着では着用に多少時間がかかるが、一人で着用することも十分に可能である。しかし、装着時に手伝いがあるとより良く、早く着付けることができる。後年、女性の社会進出と共にコルセットが廃れたのは、その装着に時間や手間がかかるのも一因とされる。
ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネの肖像
19世紀
フランス革命期のフランスで、この頃のフランス国内の女性の間では一般にコルセットを外したファッションが流行した。画像はナポレオン・ボナパルトの妻ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネの肖像であるが、コルセットをしていないことがわかる。
一方、国外に亡命したフランス人貴族の夫人や子女はコルセットをしたままで、フランス以外ではコルセットを外すことは一般的ではなかった。ただし、フランス軍が占領した地域︵例えばミラノなど︶ではフランス流のコルセットを外したファッションが流行したという記録も残っている。
1815年にナポレオンが失脚し、ブルボン家による王政復古がなると、再び女性たちはコルセットを身に付け始めた。これは、女性の服装面でも復古主義が進行したことを示している。
また、ブルジョア階級や労働者階級の女性もファッションに関心をもつようになり、コルセットを着用するようになった[4]。その後、周期的な流行の波が起こり、19世紀を通じて上流・中流の女性たちのあいだで様々なヴァリエーションのものが流行した一方、流行が低調となる時期が起こった。19世紀から20世紀初頭にかけて変化の周期がますます加速し、ファッションとして十年単位というよりは数年単位で流行が推移した。
20世紀以降
ウィルヘルム・レントゲンがX線を発見し、X線写真でコルセットによる肋骨の変形が知られるようになると、コルセットは不健康であると指摘されるようになった。第一次世界大戦で女性の社会進出が進むと、より機能的で自由な服装が現れ、女性の一般的な服装としてのコルセットは姿を消すことになる。