コロラドビャクシン
コロラドビャクシン | |||||||||||||||||||||||||||
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![]() コロラドビャクシン | |||||||||||||||||||||||||||
保全状況評価[1] | |||||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]() | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Juniperus scopulorum Sarg., 1897[6] | |||||||||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||||||||
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英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Rocky mountain juniper[1][7][8], Rocky mountain red cedar[1][7][8], mountain red cedar[7], river juniper[1][8], Colorado red cedar[9], red cedar[1][8], weeping juniper[7], western juniper[8] |
コロラドビャクシン︵学名: Juniperus scopulorum︶は、裸子植物マツ綱のヒノキ科ビャクシン属に属する常緑針葉樹の1種である。高さ10–20メートルになる高木であり、小枝は細く、鱗片状の葉で覆われる。球果は翌年に熟し、液果状で直径4-9ミリメートル、紫黒色で粉白をおびる。北米西部に広く分布しており、草地、荒原、岩石地などに生育している。北米東部に見られるエンピツビャクシンに近縁であり、異所的に分布している。スカイロケット︵‘Skyrocket’︶などさまざまな園芸品種があり、観賞用に植栽されている。
特徴[編集]
常緑高木であり、ふつう主幹が明瞭だがまれに株立ち状、高さ10–20メートル (m) になる[7][10][11]︵図1, 2a, b︶。樹冠は円錐形から不定形[7][10][11]。樹皮は赤褐色から灰褐色、薄く縦に剥がれる[7][10][11]︵下図2c︶。小枝は平滑、横断面は四角から三角形、ふつう上向するがときに下垂、末端は細く、葉長の2/3以下[7][10]。2a. 樹形
2b. 樹形
2c. 樹皮
葉はふつう鱗形葉、まれに針葉、明緑色から濃緑色、ときに青緑色、全縁、背軸側にある腺点は楕円形で明瞭[7][10][11]。鱗形葉は長さ 1–3 mm、ときに竜骨状、先端は尖頭から鈍頭、重なる場合でも1/5長以下、十字対生して枝を覆う[7][10][11]︵下図3a︶。針葉はさや状、長さ 3-12 mm、向軸側は白色を帯びない[7][10][11]。
雌雄異株であり、"花期"は4月から6月、雄球花[注 2]または雌球花[注 3]を小枝の先端につける[11][15]。雄球花は楕円形、長さ 2–4 mm、黄褐色、ふつう6個の小胞子葉からなる[11][15]︵上図3b︶。球果は翌年の秋から冬に成熟し、裂開せず鱗片は合着して液果状︵漿質球果︶になり、球形から卵形、直径 4-9 mm、青黒色、粉白をおび、1-3個の種子を含む[7][10][11][15]︵上図3c︶。種子は黄褐色、長さ 2-5 mm[10][11]︵下図4c︶。染色体数は2n = 22[7][10]。
分布・生態[編集]
北アメリカ西部に広く、しかし散在的に分布しており、カナダ西部からメキシコ北部、特にロッキー山脈に沿って見られる[6][7][15]︵下図5a︶。生育可能な気候条件の範囲は幅広く、7月平均気温が 16–24°C、1月平均気温が -9°Cから4°C、平均年間降水量が 250–840 mm の地域に見られ、乾燥地に生育する[15]。
一般的に土壌が浅くあまり発達していない痩せた土地の、草原や牧草地、荒地、岩地などに生育する[15]︵上図4b, c︶。森林にも生育するが、優占することはない[15]。
球果は、主に鳥によって食べられ、種子散布される[11][15]。種子散布において哺乳類は重要ではないが、ヒツジは球果を好んで食べることが知られており、放牧地の道沿いにコロラドビャクシンが生えていることがある[15]。
コロラドビャクシンの枝葉は、家畜、シカ、バイソンなどさまざまな動物に食べられる[11]。また、さまざまな鳥がコロラドビャクシンに営巣する[11]。
Cercospora sequoiae︵子嚢菌門クロイボタケ綱︶は、コロラドビャクシンにとって最も深刻な病害を引き起こす[15]。他に、Rhizoctonia solani︵担子菌門ハラタケ綱︶、Phomopsis juniperovora︵子嚢菌門フンタマカビ綱︶なども害を与える[15]。また、リンゴやナシなどに大きな被害を与える赤星病菌︵担子菌門サビキン綱︶の中間宿主となる[15]。
コロラドビャクシンを食害する動物として、甲虫、鱗翅目、双翅目、キジラミ、ハダニなどが知られる[15]。またセンチュウの Pratylenchus penetrans は実生の根に深刻な害を与える[15]。
人間との関わり[編集]
コロラドビャクシンの材の木目は細かく、辺材は白色、心材は紫紅色でその境界は明瞭、精油を多く含み芳香がある[7][15]。家具や塀などに用いられる[11]。また、コロラドビャクシンの球果や若枝の精油は、薬用としても利用されている[11]。 北米東部の先住民の多くの部族は、コロラドビャクシンを儀式に用いていた[11]。材は、弓や楽器、燃料などに用いられていた[11]。また、球果や葉、根を生薬としていた[11]。 防風林として利用されることがある[11]。観賞用にも利用され、‘Blue Arrow’、‘Blue Creeper’︵ブルークリーパー︶、‘Blue Heaven’︵ブルーヘブン; 下図5a︶、‘Blue Trail’、‘Cologreen’、‘Erecta Glauca’、‘Gray Gleam’︵グレイグラム︶、‘Green Ice’、‘Greenspice’、‘Jewell Frost’、‘Medora’︵メドーラ︶、‘Moffat Blue’、‘Montana Green’、‘Moonglow’︵ムーングロウ︶、‘Pathfinder’、‘Platinum’、‘Skyrocket’︵スカイロケット; 下図5b, c︶、‘Sparkling Skyrocket’、‘Springbark’、‘Sutherland’、‘Table Top’、‘Table Top Blue’、‘Tollesonís Blue Weeping’、‘Tollesonís Green Weeping’、‘Welchii’、‘Witchita Blue’︵下図5d︶、‘Winter Blue’︵ウィンターブルー︶などの園芸品種がある[11][15][16]。5a. ‘Blue Heaven’(ブルーヘブン)
5b. ‘Skyrocket’(スカイロケット)
5c. ‘Skyrocket’(スカイロケット)
5d. ‘Witchita Blue’
分類[編集]
コロラドビャクシンはエンピツビャクシン︵Juniperus virginiana︶に極めて近縁であり、北米を二分して南北に走るグレートプレーンズを境界として西側にコロラドビャクシン、東側にエンピツビャクシンが分布している[7]。分布域が接する地域では、交雑することが報告されている[7]。また米国北西部のピュージェット湾周辺に分布する︵上図4a︶J. maritima も極めて近縁であり、この3種は同種とすべきとも考えられている[7]。他にも、J. barbadensis、J. bermudiana、J. gracilior なども近縁であり、明瞭な系統群を構成している[7]。
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
(一)^ abcdeFarjon, A. (2013年). “Juniperus scopulorum”. The IUCN Red List of Threatened Species 2013. IUCN. 2024年1月13日閲覧。
(二)^ 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編), ed (2015). “種子植物の系統関係図と全5巻の構成”. 改訂新版 日本の野生植物1. 平凡社. p. 18. ISBN 978-4582535310
(三)^ 米倉浩司・邑田仁 (2013). 維管束植物分類表. 北隆館. p. 44. ISBN 978-4832609754
(四)^ 大場秀章 (2009). 植物分類表. アボック社. p. 18. ISBN 978-4900358614
(五)^ “Juniperus”. The Gymnosperm Database. 2024年1月8日閲覧。
(六)^ ab“Juniperus scopulorum”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2024年1月13日閲覧。
(七)^ abcdefghijklmnopqrs“Juniperus scopulorum”. The Gymnosperm Database. 2024年1月13日閲覧。
(八)^ abcde“Juniperus scopulorum Sarg.”. GBIF Backbone Taxonomy. 2024年1月13日閲覧。
(九)^ “Juniperus scopulorum”. N.C. Cooperative Extension. 2024年1月13日閲覧。
(十)^ abcdefghij“Juniperus scopulorum”. Flora of North America. Flora of North America Association. 2024年1月13日閲覧。
(11)^ abcdefghijklmnopqrst“ROCKY MOUNTAIN JUNIPER”. NRCS, USDA. 2024年1月13日閲覧。
(12)^ ab長谷部光泰 (2020). 陸上植物の形態と進化. 裳華房. p. 205. ISBN 978-4785358716
(13)^ abc清水建美 (2001). 図説 植物用語事典. 八坂書房. p. 260. ISBN 978-4896944792
(14)^ アーネスト M. ギフォード、エイドリアンス S. フォスター﹃維管束植物の形態と進化 原著第3版﹄長谷部光泰、鈴木武、植田邦彦監訳、文一総合出版、2002年4月10日、332–484頁。ISBN 4-8299-2160-9。
(15)^ abcdefghijklmnopNoble, D. L.. “Rocky Mountain Juniper”. Forest Service, USDA. 2024年1月13日閲覧。
(16)^ 柴田忠裕・香川晴彦・大谷徹・梅本清作 (2012). “ビャクシン属植物10種61品種を用いたナシ赤星病菌の中間宿主としての寄生性の評価”. 千葉農林総研研報 4: 51–55.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
●“Juniperus scopulorum”. Plants of the World Online. Kew Botanical Garden. 2024年1月13日閲覧。︵英語︶
●“Juniperus scopulorum”. The Gymnosperm Database. 2024年1月13日閲覧。︵英語︶
●“Juniperus scopulorum”. Flora of North America. Flora of North America Association. 2024年1月13日閲覧。︵英語︶
●“ROCKY MOUNTAIN JUNIPER”. NRCS, USDA. 2024年1月13日閲覧。︵英語︶
●Noble, D. L.. “Rocky Mountain Juniper”. Forest Service, USDA. 2024年1月13日閲覧。︵英語︶