ヴィッカース重機関銃
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ヴィッカース重機関銃 | |
概要 | |
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種類 |
重機関銃 中機関銃 |
製造国 |
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設計・製造 | メトロポリタン=ヴィッカース社 |
性能 | |
口径 | 7.7mm(0.303in) |
銃身長 | 720mm |
使用弾薬 | 7.7mm×56R(.303ブリティッシュ弾) |
装弾数 | 250発(布ベルト) |
作動方式 | ショートリコイル方式 |
全長 | 1,100mm |
重量 | 33~50kg(全備重量) |
発射速度 | 450~600発/分 |
銃口初速 | m/秒 |
有効射程 | 740m |
ヴィッカース重機関銃︵ヴィッカースじゅうきかんじゅう、英‥Vickers machine gun または Vickers gun︶は、第一次世界大戦と第二次世界大戦の両大戦を通じて運用されたイギリス軍の制式重機関銃[注釈 1]である。
![](//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/af/Vickers_machine_gun_in_the_Battle_of_Passchendaele_-_September_1917.jpg/260px-Vickers_machine_gun_in_the_Battle_of_Passchendaele_-_September_1917.jpg)
第一次世界大戦で用いられるヴィッカース重機関銃
1917年9月21日、ベルギーのウェスト=フランデレン州にて行われた﹁メニンロードリッジの戦い﹂の際に撮影されたもの
ヴィッカース重機関銃は、1884年にハイラム・マキシムが開発したマキシム機関銃をベースとし、1896年にヴィッカース社がマキシム機関銃を基に重量軽減やマズルブースターの追加などの改良を加えて完成した。
イギリス軍はこの銃を1912年11月26日付けで“ Gun, Machine, Mark I, Vickers, .303-inch”の名称で制式採用し、しばらくはマキシム機関銃と共に運用していたが、第一次世界大戦により、中隊単位で運用され拠点防衛担当のヴィッカース重機関銃は、分隊単位での突撃支援を主な運用法とするルイス軽機関銃と対を成す形で共にイギリス軍の標準機関銃となり、1916年8月までに機関銃軍団の隷下で100個中隊が機関銃中隊として再編制され、1個歩兵大隊若しくは1個騎兵連隊につき1個機関銃中隊が配備された。
第二次世界大戦直前にはヴィッカース重機関銃の更新が試みられ、対抗馬としてチェコスロバキア製の7.92mm口径ZB53重機関銃との比較試験が行われた結果、ZB53は戦車搭載用機関銃として採用され、ヴィッカース社でBESA機関銃としてライセンス生産されたが、ヴィッカース重機関銃も歩兵用の重機関銃として運用が続けられた︵同時期にルイス軽機関銃の後継として採用されたブレン軽機関銃もチェコスロバキア製のZB26軽機関銃を基に設計されている︶
第二次世界大戦後も朝鮮戦争や第二次中東戦争などで使用されていた︵この時期に7.62mm NATO弾仕様への改修を行った可能性がある︶ものの、1958年以降にFN MAG汎用機関銃にイギリス軍向けの改修を行ったL7 GPMGへの更新が進められ、アデン保護領︵南イエメン︶のラドファン地区での蜂起鎮圧を最後に、1968年5月30日付けでイギリス軍から完全に退役した。
ヴィッカース重機関銃は現在でも、インドやパキスタン、ネパールにおいて予備兵器として保管されている。
概要[編集]
この機関銃は、メトロポリタン=ヴィッカース社製の水冷式重機関銃であり、弾薬はイギリス軍の制式小銃であったリー・エンフィールド小銃と同じ.303ブリティッシュ弾︵7.7mm×56R︶を250連発の布製リンクに装着して使用する。この弾薬は薬莢のリムが大きくせり出した起縁式であり、布製リンクの前方へ直接押し出すことができない。そのため、いったん後方へ引き抜かれ、リンクの下をくぐるようにして薬室へ送り込まれる。 この機関銃は大変頑丈で信頼性が高く、戦場においては10挺のヴィッカース重機関銃が12時間連射し続けて、10挺合計で百万発の銃弾を発射し100本の銃身が磨耗して交換を余儀なくされたが、本体が排莢不良や装弾不良などのトラブルに陥ったことは一度もないほどであった。 重量はどの型かによって前後するものの、一般的には機関銃本体が11 - 13キログラム、三脚が18 - 23キログラム、布製リンクに装着された250発の弾薬が入った弾薬箱が1個当たり10キログラムである。 銃身は水冷式で、4.3リットルの冷却水が銃身周りのウォータージャケットに入り、射撃によって熱を持った銃身を冷却する。ウォータージャケットにはゴム製と思われるパイプが付属しており、これがウォータージャケットから放出された水蒸気を水に戻す復水器に繋がっている。この機器は水を手に入れにくい野戦、特に第二次大戦の北アフリカ戦線に代表される砂漠戦では特に重要であった。復水器を使わなくても射撃は可能で、その際に発生した水蒸気は大気中に放出された。 運用は1挺につき6 - 8人のチームで行い、その役割分担は射手と装填手が1名ずつ、残りの4 - 6名は機関銃の携行を補助すると共に予備部品や整備用品、弾薬を携行する。歴史[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/af/Vickers_machine_gun_in_the_Battle_of_Passchendaele_-_September_1917.jpg/260px-Vickers_machine_gun_in_the_Battle_of_Passchendaele_-_September_1917.jpg)
航空機関銃として[編集]
ヴィッカース重機関銃は“ヴィッカース .303インチ航空機関銃︵Vickers .303 inch aircraft machine gun︶”としてソッピース キャメルやスパッドXIIIなどに代表される1916年以降のイギリス及びフランスの戦闘機の標準兵装となった。この機関銃は戦闘機の機首上部にプロペラ同調装置と共に装備され、銃身周りのウォータージャケットは水を入れない空冷式に変更されて冷却用の空気を取り入れるために多数の穴が開けられている。航空機関銃型は遠隔式操作として戦闘機の機体に固定式に装備されるE型(Class E)と、旋回式銃座に装備されて射手が直接操作するF型(Class F)があり、F型は空冷式に改修されたウォータージャケットを取り外してより細身の多孔式空冷ジャケットに変更している[注釈 2]。 第二次世界大戦前に戦闘機の機関銃が機首から主翼内部に移され、ヴィッカース重機関銃はより軽量で連射速度の速いブローニング .303 航空機関銃に交替された。 なお、第二次大戦で使用されたイギリスの数種類の爆撃機や攻撃機に搭載された旋回機銃としてヴィッカースK機関銃がある。ヴィッカースKは本銃の派生型であると誤解されていることがあるが、駆動方式がガス圧利用であり給弾方式もルイス軽機関銃やDP28軽機関銃と同じ円盤型弾倉︵パンマガジン︶を利用するなど、全くの別物である。 大日本帝国陸海軍ではヴィッカース航空機関銃をそれぞれ﹁八九式固定機関銃﹂︵陸軍︶﹁毘式七粍七固定機銃﹂︵海軍︶としてライセンス生産し、戦闘機に搭載する固定武装として使用した。なお、両銃は同じヴィッカースE型を導入したものだが、使用弾薬が異なり、弾薬の互換性はない。詳細は「八九式固定機関銃」および「九七式七粍七固定機銃」を参照
派生型[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/00/The_Royal_Navy_during_the_Second_World_War_A8209.jpg/240px-The_Royal_Navy_during_the_Second_World_War_A8209.jpg)
ヴィッカース重機関銃の派生型としては、.50"/62ヴィッカース機関銃が挙げられる。
この機関銃はイギリス海軍艦船の対空機関銃として設計された大口径︵.50口径︶弾薬を使用する機関銃で、一般的には全周囲旋回と+80°~-10°までの仰俯角をとることの出来る銃架に4挺単位で搭載された。1920年代に開発され、タウン級軽巡洋艦、ダイドー級軽巡洋艦、カウンティ級重巡洋艦などに搭載されたが、後日エリコン 20mm機関砲やボフォース 40mm機関砲に換装された。また、陸軍では一部の戦車に搭載された。
詳細は「.50"/62ヴィッカース機関銃」を参照