大番 (小説)
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(佐藤和三郎から転送)
﹃大番﹄︵おおばん︶は、獅子文六の大衆小説。昭和前期の兜町を舞台に、相場師﹁ギューちゃん﹂の波乱万丈の一生を描く。
原作は1956年から1958年まで﹃週刊朝日﹄に連載された。人気作となって加東大介主演で映画化され、さらにフジテレビで連続ドラマ化されて、主人公を演じた渥美清の作品となった。
ストーリー[編集]
大正末期、愛媛県宇和島近郊の農村に生まれた田舎青年・赤羽丑之助は、村の男女の出会いの場である村祭りの夜に、なんとか彼女を作ろうと知恵を絞る。ハンサムではない彼が考えたのは、ラブレターをガリ版印刷で大量生産し、村の女の子に見境なく渡す、数撃ちの物量作戦に出ることであった。祭りの当日、彼は印刷ラブレターの一枚を、血迷って地元資産家の令嬢の可奈子に渡してしまう。これはたちまち村の大スキャンダルになり、追い込まれた丑之助は村から夜逃げする羽目になった。 遠く東京にやってきた彼は日本橋兜町の株仲買店の小僧に就職、相場の世界に足を踏み入れた。戦前から戦後にかけての東京証券界を舞台に、相場師﹁ギューちゃん﹂となった彼の破天荒な一代記を描いた、痛快人情小説。映画[編集]
●﹃大番﹄︵1957年、東宝︶ ︹スタッフ︺監督‥千葉泰樹、脚本‥笠原良三、音楽‥佐藤勝、製作‥藤本真澄 ︹出演者︺赤羽丑之助‥加東大介、おまきさん‥淡島千景、新どん‥仲代達矢、木谷さん‥河津清三郎、チャップリンさん‥東野英治郎、森可奈子‥原節子、森家の番頭‥多々良純、勝やん‥三木のり平、有島伯爵‥平田昭彦、巡査‥小林桂樹、そば屋の主人‥田中春男、弁五郎‥佐田豊 ●﹃続大番 風雲篇﹄︵1957年、東宝︶ ︹スタッフ︺監督‥千葉泰樹、脚本‥笠原良三、音楽‥佐藤勝、製作‥藤本真澄 ︹出演者︺赤羽丑之助‥加東大介、父丑吉‥谷晃、母タネ‥沢村貞子、義弟長十郎‥太刀川洋一、妹タツエ‥上野明美、おまきさん‥淡島千景、有島可奈子‥原節子、有島伯爵‥平田昭彦、勝やん‥三木のり平、木谷さん‥河津清三郎 ●﹃続々大番 怒涛篇﹄︵1957年、東宝︶ ︹スタッフ︺監督‥千葉泰樹、脚本‥笠原良三、音楽‥佐藤勝、製作‥藤本真澄 ︹出演者︺赤羽丑之助‥加東大介、おまきさん‥淡島千景、新どん‥仲代達矢、木谷さん‥河津清三郎、有島可奈子‥原節子、有島伯爵‥平田昭彦、可奈子の父‥柳永二郎、校長‥村上冬樹、新任の署長‥十朱久雄、大将‥山茶花究 ●﹃大番 完結篇﹄︵1958年、東宝︶ ︹スタッフ︺監督‥千葉泰樹、脚本‥笠原良三、音楽‥佐藤勝、製作‥藤本真澄 ︹出演者︺赤羽丑之助‥加東大介、おまきさん‥淡島千景、新どん‥仲代達矢、長谷部マリ子‥団令子、武林‥有島一郎、川田廉太郎‥山村聡、MP‥ロイ・ジェームス、有島可奈子‥原節子テレビドラマ[編集]
1962年10月3日から1963年4月24日までフジテレビ系列で放送。全26回。放送時間は毎週水曜22:15 - 22:45︵JST︶。出演者[編集]
スタッフ[編集]
フジテレビ系 水曜22:15 - 22:45枠 | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
反逆児 |
大番 |
モデル[編集]
主人公﹁ギューちゃん﹂の人物像は﹁ブーちゃん﹂のあだ名があった実在の人物・合同証券社長の佐藤和三郎をモデルに造形された[1][2][3]。本作は昭和の兜町界隈の風俗をよく伝えるとともに、主人公のライバルで売りの名人といわれた角政(山種証券創設者の山崎種二[4])、大手証券の総帥でありながら、仕手戦の敗北で自殺した木谷(山一證券社長・太田収)、かつての山一・野村・日興・大和がモデルの大手四大証券など、戦前戦後の証券界に仮借した人物や企業が登場する。
方言[編集]
主人公の若者時代や取引で失敗し郷里に引き上げる場面では、宇和島地方の人情、文化、方言などを詳しく知ることができる。作者が終戦直後、妻の実家である宇和島市津島町︵旧北宇和郡岩松町︶に疎開していた時の見聞が、本作や﹁てんやわんや﹂などの題材になったと思われる。