狩猟
(猟師から転送)
狩猟︵しゅりょう、英: hunting︶とは、野生動物を捕獲する行為のことである。狩り︵かり︶、とも。[注釈 1]
捕獲後の目的︵殺傷して利用、保護、タグ付けリリース︶とは関係なく、捕獲行為を言う。
概要[編集]
狩猟の歴史は非常に長い。 そもそも、人類が誕生する以前から、肉食性の動物は狩りをして生きていた。 ︵人類の歴史は数百万年と言われているが︶人類は、太古の昔から採集や狩りや漁をして生きてきた︵このような、人類の本来の食料獲得の方法および集団のありさまを文化人類学では狩猟採集社会という︶。 狩猟の最も本来的な目的は、命を保つために必要な食料︵食糧︶を獲得することにある。端的に言うと、食べるための肉などを得るために狩るのである。これはそもそも人類誕生以前から野生動物が行っている狩りの目的であり、人類にとっても一番根源的で基本的な目的である。また人類の場合はさらに、生活に必要な物資を野生動物から獲得するためにも狩りを行う。たとえば皮革・油脂・羽毛・骨・牙などを得るために狩りを行う。 野生の動物や植物を飼いならしたり栽培する牧畜や農耕という技術を人類が最初に得たのは、メソポタミアにおいてだとされており、牧畜のほうが紀元前1万1000年頃、農耕のほうは紀元前9000年頃だとされている。 農業の歴史も参照。 牧畜や農耕が次第に人類に広まってゆき、そちらで得られる食料が増えるにつれ、食料獲得を目的とした狩猟は減少傾向になった。だが、物資を得るための猟のほうは、むしろその逆で、特に18世紀の産業革命を契機に資本主義が形成され、広範囲の物資が市場で商品として取引され貨幣と交換される社会となると、商品価値の高い資材を獲得することを目的に、かえって大規模な狩猟が行われるようになった。[注釈 2] たとえばアザラシやヒョウの毛皮、象牙などを得て商品として売って貨幣を得るために狩りが行われるようになったのである。このため、狩猟によって特定の種が絶滅したり生息数が激減するなどの生態系への深刻な影響が顕在化してきた。これに応じて、狩猟が行われる地域の法規や、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約︵ワシントン条約︶が整備され、狩猟には一定の制限が加えられたり禁止されている場合がある。ただし、密猟も後を絶たず、いわゆる﹁いたちごっこ﹂状態も起きており、十分な実効性が上がっていないケースも多いとの指摘もある。狩猟の方法[編集]
詳細は「Category:狩猟の方法」を参照
アフリカの熱帯雨林に暮らす人々や、日本における銃を用いた大型獣の狩猟などは、集団によって行われる。
日本のシカやイノシシ猟を例にとると、グループの中で獲物を追い立てる役と、獲物の逃げ道沿いに待ち伏せをして銃を構えている役とに分かれて狩猟する。熊を狩るときも集団を組むのは基本である。
このように集団で捕った獲物は、狩猟の参加者あるいは村落全体で配分されるという事例が日本の他に、サン人、ムブティ族などアフリカにおいてもみられる。
方法の一覧
●持久狩猟 - 原人は獲物が疲れて動けなくなるまで追い詰めて狩る狩猟を行い持久走を行う進化を遂げた。
●罠猟
●猟犬
●鷹狩
●巻狩
●ラップヤクト ‐ ドイツでオオカミを追い込むのに利用した狩猟法。布を垂れ下げて、獲物の逃げる方法を誘導する。
古代エジプトで投棒で狩猟していた様子。こん棒を投げる狩猟は原始時 代以前から行われていたと考えられる。
目的[編集]
食糧の獲得 狩猟の目的の基本中の基本は食糧・食材の獲得である。現在でも、狩猟の獲物を解体し肉として食べている国・地域は多い。特にフランスでは狩猟で得た野生動物の肉をジビエ︵仏: gibier︶と呼び、独特の風味のある高級食材として食しており、近年では日本でも同様である。 様々な物資の獲得 もうひとつの基本としては、皮革︵毛皮︶・油脂・骨・角︵つの︶・牙・羽毛などを得るために狩猟がおこなわれてきた歴史がある。 人の生活圏の動物駆除 狩猟は人間の生活環境に不都合な影響を及ぼす動物を排除するため、いわゆる﹁駆除﹂のためにも行われてきた。たとえば次のようなことである。 ●直接的に人間や住居を襲う動物を捕獲し、人間の生活圏から除去し、人間の生命の安全を確保すること ●飼育している動物や栽培している植物を捕食する動物を駆除し、人の生活資源を保全すること 野生動物管理 また、野生動物の個体数を調整するという自然保全上の大きな役割も担っている[1]。 こうした狩猟には主に以下のケースがある。 ●従来は存在しなかった外来種が侵入するなど、生態系が乱されることを防止するため、または乱されてしまった生態系を原状に回復させるため、その外来種の動物等を選択的に駆除すること ●人間が特定の動物種の個体数を意図的に増加・減少させてしまった結果、その生態系のバランスが崩れ、それを修正するために特定の動物種を狩猟すること なお、駆除目的、野生動物管理目的いずれでも、捕獲した鳥獣は、副次的に資材を得るために用いられる場合がある。[注釈 3]各国の歴史と現状[編集]
ヨーロッパ[編集]
ヨーロッパには先史時代の狩猟の痕跡や遺跡が多く残されている。スペインとフランスの洞窟には数多くの壁画が残されている。1000点の壁画の内、人間が描かれたのものは20点たらずで残りはすべて狩猟対象の動物の絵である。フランスのソーヌ=エ=ロワール県には断崖の下に野生馬の骨が2メートル半堆積した場所があり、人間に追い立てられた推定10万頭のウマが崖下に落ちた痕跡と見られている。同様の狩りの様子を描いた壁画がラップランドで見つかっている[2]。 イギリスでは古来よりスポーツハンティングが貴族や富裕層の嗜みとして行われたことから[3]、彫金が施された銃器やシューティングブレークなどの高級な狩猟用品の市場が形成されている。現在のイギリスには48万人の狩猟者がいるとされるが、狩猟免許は存在せず、狩猟者登録も必要ない[3]。狩猟をする権利はその土地の所有者が有しており、他者に貸与することもできるため、娯楽として自由に狩猟を楽しむアマチュアハンターもいれば、仕事として依頼されるなどして専門に狩猟を行うプロハンターもいる[3]。なおイギリスではシカを対象とした狩猟はハンティング︵hunting︶ではなく﹁ストーキング﹂︵stalking︶と呼ばれる。狩猟の際にかぶる帽子も﹁鹿撃ち帽︵deerstalker hat︶﹂と呼ばれる。 ドイツで狩猟を行うには試験に合格して狩猟免許を得る必要がある[4]。ドイツには2008年の時点で約35万人の狩猟者が存在し、狩猟者数は微増傾向にある[4]。ドイツでは森林管理と狩猟が密接に関係しており、ドイツの森林官のほとんどは狩猟免許を取得している[4]。こうした狩猟森林官とは別に、職業狩猟者が1000人ほど国内に存在する[4]。 北欧はヨーロッパの中でも狩猟が盛んに行われている地域である[5]。ノルウェーの狩猟者数は約19万人で、他のヨーロッパ諸国と同様に土地所有者が狩猟権を有する[5]。ロングイェールビーンではホッキョクグマの狩りが1950年代まで観光資源となっていた。アフリカ[編集]
アフリカではヨーロッパによる植民地支配が始まった19世紀以降から現代までサファリと呼ばれる狩猟旅行やスポーツハンティングが盛んに行われている。サハラ砂漠以南の42のアフリカ諸国のうち25か国でスポーツハンティングが認められており、年間1万8500人を超える狩猟者がアフリカを訪れる[6]。 また、正規の狩猟者以外によって行われる密猟が国際的な問題となっている[7]。アメリカ[編集]
アメリカは狩猟大国であり、2011年の時点で総人口の約6%に相当する1370万人が狩猟を行っており、20-30億ドルもの経済効果が推定されている[8]。1980年代からは狩猟者の数は減少傾向がみられたが、2010年代に入ってまた増加している。アメリカでは銃や弓矢、クロスボウが使われ、年間700万頭のオジロジカや2万頭のアメリカクロクマが狩猟される[9][注釈 4]。日本[編集]
日本列島においては旧石器時代や縄文時代には狩猟が植物採集や漁労活動とともに主要な生業であったと考えられている。縄文時代にはシカ、イノシシを主要な狩猟獣とした生業が営まれていた[10]。弥生時代、そして続く古墳時代になると本格的な稲作農耕が開始され、安定的な食料供給が可能になったため狩猟の重要性が低くなっていったと言われる。一方で農耕に伴なう害獣駆除などを目的とした狩猟は継続していたと考えられており、弓矢などの狩猟道具や矢が刺さったシカが描かれた土器や埴輪の存在から狩猟がなおも行われていたことが窺える[10]。鷹狩も古代から行われており日本書紀には仁徳天皇の時代︵355年︶に鷹狩が行われ、タカを調教する専門職が置かれたという記録がある。
東北地方に住んでた蝦夷は騎乗しての狩猟の他に鷹狩も行っており、毛皮を交易品としてヤマト王権に売っていた。また狩猟で培われた騎射の技術が俘囚により武士へと伝わった。
農耕に適さない北方に住んでいたアイヌは狩猟採集生活を続けており、トリカブトの毒矢や罠猟で大小様々な動物を狩り、毛皮を和人に売っていた。
奈良時代には仏教の受容により殺生・肉食が忌避されるに至ったとされる[注釈 5]。しかし、﹃延喜式﹄では地方に対して鹿皮や猪脂など狩猟獣の動物資源が賦課されていたり、﹃万葉集﹄ではシカの毛皮から内臓までを無駄なく利用している内容の歌が詠まれているなど、とくに庶民の間では狩猟活動が継続されていたと考えられている[11]。日本では肉食の禁忌令が何度か発令されたが、主に牛や馬など家畜を対象としたものであった[12]。江戸時代にはももんじ屋と呼ばれる獣肉を販売する店が存在した[13]。
貴族の間ではスポーツハンティングとしての狩猟が行われた。狩りに出かける際には動きやすい狩衣へ着替えたが、平安時代になると公家の普段着となっていった。
中世には武家の間でスポーツハンティングとして鷹狩が広まり、江戸時代には諸大名が鷹狩のため、鳥見などの専門職が定められた。
狩猟は木材生産・製材や鉱山経営、炭焼きなど山の諸生業のひとつとして行われていた一方で、動物資源の利用だけでなく畑作物への獣害対策としても行われた[14]。東日本では鉄砲︵火縄銃︶を用いた害獣駆除を目的とした狩猟が実施されていた[15]。また、東北地方では職業として狩猟を行う人々はマタギと呼ばれ、独特の習俗があった。対して、西日本ではわなを一部に組み合わせたしし垣が利用された[13]。中世や近世の日本における農民にとって鉄砲は農具であり、農耕と狩猟は密接な関係があったとされる[16]。
明治時代になると狩猟の法制化が進んだ。1872年に﹁鉄砲取締規則﹂、1873年に﹁鳥獣猟規則﹂、1892年に﹁狩猟規則﹂、1895年3月27日に﹁狩猟法﹂が次々と公布され、狩猟期間や狩猟方法、狩猟鳥獣などが具体的に定められた[17]。また、﹁北海道鹿猟規則﹂、﹁樺太狩猟取締規則﹂、﹁朝鮮狩猟規則﹂、﹁台湾銃猟取締規則﹂、﹁関東州銃猟取締規則﹂、﹁南洋群島狩猟取締規則﹂といったように各風土に応じて特別の法令によって取締が実施された。これらの背景には、軍用毛皮の需要拡大にともなう欧米向けの外貨獲得という目的があり、狩猟によって産業が築かれた[18]。1908年9月24日、狩猟法施行規則改正が公布︵省令︶、10月1日施行され、コマドリ・メジロなど59鳥類が捕獲禁止された。
大正時代の1918年には﹁狩猟法﹂が改正され、狩猟鳥獣や狩猟免許が制度化されたことで、現代の狩猟法に近いものとなった[19]。昭和時代の1929年に全国の狩猟者によって設立された﹁大日本聯合猟友会﹂︵のちの﹁大日本猟友会﹂︶は、狩猟道徳の向上、野生鳥獣の保護、有害鳥獣駆除、狩猟の適正化など日本の狩猟において大きな役割を担っている。
1970年前後は、狩猟事故が相次いだ。特に、1970年は11月1日から同月8日の間だけでも死者3人、負傷者75人︵うち40人は地域住民︶を出したことから社会問題化した。警察庁は原則、講習を受ければ銃砲所持許可が得られる制度[20]を見直し、規制強化が行われた。
現状として、日本の狩猟人口は年々高齢化し、かつ減少しつつある。1979年に45万人だった狩猟人口は1995年には25万人、2007年時点で16万人程度である。日本で許可されている銃は約30万丁である。これは国際的には低い登録率であり、日本同様厳しい銃規制を持つ狩猟国イギリスでは日本の半分の人口にもかかわらず、500万丁の銃が許可されている。日本の狩猟者のほとんどは男性であり、女性の割合は1%にも満たない[21]。
一方、北海道などはエゾシカ・ヒグマ、本州ではイノシシ・ニホンジカに代表される野生動物による農林業被害は深刻な事実であり[1]、ライフル銃の所持条件の緩和や毒薬の使用、狩猟期間の延長といった鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の規制緩和が強く求められている。またハンター養成のため、北海道の西興部村などは、指導者付きで若者などに狩猟体験ツアーを行っている︵但し、このツアーは銃器を使用できるものではない︶。伊豆半島においてはニホンジカによる食害が深刻な問題であり、半島全体で推定2万頭生息する個体を5000頭以下まで減少させる事が望ましいとされている現状が存在する。また、経済や自然に大きな影響を与える外来種︵アライグマやマングースなど︶も駆除が強く求められている。以上のような状況にあって、国の統一的見解はまだ存在せず、猟銃の所持許可および狩猟は、有害鳥獣の被害が深刻な自治体では緩く、都市部では殆ど認めない傾向にある。しかし、近年は環境省が鳥獣保護管理の担い手確保を目的とした狩猟の魅力を伝えるフォーラム[外部リンク 1]を都市部を含む各地の都道府県で開催するなど、ハンターを増やそうとする取り組みが行政主体で行われ始めている。
日本国内で許可されている法定猟具[編集]
網 むそう網、はり網、つき網、なげ網 わな くくりわな、箱罠、囲い罠︵天井を持たない箱罠︶、箱落とし︵さん木を備えるもの︶、筒型イタチ捕獲器 銃器 猟銃︵散弾銃、ライフル銃、ライフル銃及び散弾銃以外の猟銃[注釈 6]︶、空気銃 その他 スリングショット - 正確には法定猟具にも禁止猟具にも該当しておらず、使用による罰則規定も存在しないという状況である。日本の法律で禁止されている狩猟道具[編集]
●輪の直径が12cmを超えるくくりわな ●イノシシなどの大型獣を吊り上げられるほど強力な吊り上げ式くくりわな ●とらばさみ︵法改正に伴い、2007年4月16日から使用不可︶ ●つりばり ●とりもち︵もちなわやはごなど。現状ではわなを用いての鳥猟自体が禁止されているため︶ ●かすみ網︵所持・販売についても禁止されている[22]︶ ●戸板落とし︵さん木を備えない圧殺目的の﹁はこおとし﹂も含まれる︶ ●絞殺を目的とした構造の筒型イタチ捕獲器︵絞殺を防ぐストッパーの装着が義務付けられている︶ ●12ゲージを越える大口径散弾銃︵北海道でのトド猟に限定して10ゲージが許可されている︶ ●口径10.5mmを越えるライフル銃︵威力が大きすぎるため、所持自体が原則禁止︶ ●口径5.9mm以下のライフル銃︵例えば.223口径など。威力が低く半矢になる可能性が高いため射撃競技用としてのみ許可される︶ ●空気散弾銃 ●準空気銃 ●矢を使うもの︵和弓、アトラトル、クロスボウなど︶ ●爆薬 ●毒薬 ●キジ笛 ●音響機器 ●危険な罠、危険な落とし穴 ●犬に咬み付かせて捕ること ●禁止されているのは﹁犬に咬みつかせることのみにより捕獲等する方法又は犬に咬みつかせて狩猟鳥獣の動きを止め若しくは鈍らせ、法定猟具以外の方法により捕獲 等すること﹂であり、犬以外の動物に捕らせる事は禁止されていない。例えば、鷹狩に関して、それを違法とする法的根拠は存在しない。狩猟の問題点[編集]
銃弾による水鳥・ワシ類の鉛汚染 北海道のエゾシカ猟に代表される鹿猟では、散弾銃にスラッグ弾を込めたもの、あるいはライフル銃が用いられる。この鉛でできた実包で鹿を撃ち、被弾部位を含む残滓を放置すると、ワシ類やカラスなどがそれを食べると鉛中毒が引き起こされる。また、鳥類を捕獲する場合は、主に散弾銃を用いて行われるが、この実包の中には鉛でできた散弾が多数封入されている。鳥類には、習性として砂のうに小さな土石の粒を蓄える種があり、そのような鳥は直接狩猟の対象とされない場合であっても、狩猟による間接的な影響を被っている。つまり、そのような種類の鳥が土や小石等と一緒に、水辺に放出された鉛散弾を摂取することによって、鳥の体内に鉛がたまってしまい、鉛中毒となって死に至ることがある。 鉛中毒対策として、散弾の素材として鉛以外の金属︵スチール・ビスマス︵軟鉄︶・錫・タングステンポリマー等︶を用いたスラッグ弾あるいはライフル弾の実包が製造されている。日本国内でも一部地域においては、使用が許される散弾が鉛以外の材質を用いたものに制限されている。北海道では鉛弾の利用は全面的に禁止されており[23]、宮城県などの地域でも使用禁止が広がってきている。北海道では、平成10年度に回収されたワシの死体のうち約80%が鉛中毒だったが、平成17年度にはその比率が10%未満に減少している。完全に0にならない理由として、違法な狩猟者の存在や、既に半矢で体内に鉛弾を有している個体の存在が挙げられている。また、既に水辺に放出された鉛散弾が深く沈下するまでには数十年かかるため、水鳥鉛中毒の発生は今後も継続し、その数も徐々にしか減少しないと考えられている。 個体数のバランス崩壊 生態系は、よく知られる食物連鎖のほか、未解明のものも含めて極めて複雑なメカニズムによって各種生物の個体数や生息地域のバランスが保たれている。しかしこのメカニズムに人為的な介入が加えられると、バランスが大きく崩壊する場合がある。狩猟鳥獣の生態数は、狩猟者が狩猟期間終了後に提出する種別毎の捕獲数や捕獲場所の情報も含めて調査されており、著しく減少した場合は、一時的に捕獲禁止規制が実施され、生態数の回復が図られる。しかし実際には狩猟圧よりも生息環境の悪化が捕獲数減少を引き起こしているという意見もある。キジやヤマドリなどはメスの捕獲が禁止されており、基本的に生殖上の余剰オスを狩猟する形になっている。これを調査するために猟期初期のオス・メス別の出会い数調査も行われている。その比率はおおむね 1:1 となっており、これは現在の捕獲数が余剰オスの範囲であることを意味し、捕獲禁止は意味がないとの意見もある。 動物の権利侵害 ﹃動物の解放﹄を著述したピーター・シンガーは動物の殺害や残虐行為を止め、野生動物は放っておくべきであると指摘している。義務論者のトム・レーガンは、人間は狩猟してはならず、放っておくべきだと指摘している。スー・ドナルドソンらは、先住民族の土地をヨーロッパ人が植民地支配したのは不正であるという例を引き合いに出し、野生動物は領内で社会を作る利益を持ち、侵略者から彼らを保護するために主権を認めるのは有効であると指摘している[24]。法学者で動物の権利を主張するフランシオンは、一般に不必要な動物への危害は避けるべきだとされているが、狩猟も不必要な危害の禁止に反し、やめるべきだと指摘する[25]。脚注[編集]
注釈[編集]
(一)^ なお、英語のhuntingという言葉は、陸の生き物をとることも、水中の生き物をとることも、どちらも含む。つまりhuntingにはfishing︵漁、漁労︶も含みうる。それと関連するが、日本語の﹁りょう﹂も、それにあてる漢字は﹁猟﹂も﹁漁﹂もある。つまり、日本でも英語圏でも、陸上の生物も水中の生物も、生き物をとることであれば、根源的には同類の行為と扱われている。ただし、何でも細かく分類し対比することを人は積み重ねてきた歴史があるので、対比されることが増えてきた。近代以降は両者は対比、区別されることが増えてきた。当記事でも、基本的には﹁猟﹂と﹁漁﹂を区別し、漁以外を説明する。
(二)^ 人間が食べられる量や食欲には限度があるが、金銭はいくらでも溜め込むことができ、いうなれば、人の金銭欲には限度が無いからである。︵より正確に言うと、人類全員がそうだというわけではなく、人類の中には理性や智慧を使い、わずかでも自分には十分だ、と判断できる﹁小欲知足﹂の人々が一定割合いる一方で、人類の一部に、際限なく金銭欲に駆られて 際限なく金銭獲得の行為に突き進む輩がいて、そういう輩は金銭で人を大量に雇って組織的な行為を行ったり、法人︵会社︶を設立してさらにシステマティックに行うなどして、その行為の影響が特に大きいからである。︶
(三)^ 命は大切にすべきだ、どんな命でもただ殺して捨ててしまうのではなく、できるだけ大切に、せめて食料などとして活用するべきだ、と狩猟関係者も考え、また狩猟関係者に対して一般市民からそういった意見が寄せられる。
(四)^ 米国では、弓矢としては、﹁コンパウンド・ボー﹂と呼ばれる、滑車つきのアーチェリーがさかんに使われている。
(五)^ 一休とんち話に殺生を禁ずる寺院において仏具に獣皮が使われていることを皮肉る挿話がある。
(六)^ ハーフライフル銃身のサボット弾専用散弾銃。
出典[編集]
(一)^ ab“鳥獣保護管理と狩猟”. 野生鳥獣の保護管理. 環境省. 2012年9月4日閲覧。
(二)^ トゥーサン=サマ 1998, pp. 70–72.
(三)^ abc﹃野生動物管理のための狩猟学﹄pp.34-42
(四)^ abcd﹃野生動物管理のための狩猟学﹄pp.42-52
(五)^ ab﹃野生動物管理のための狩猟学﹄pp.61-69
(六)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄pp.69-76
(七)^ ﹃消えゆくゾウたち - アフリカゾウの危機(Elephants in the Dust-The African Elephant Crisis)﹄トラフィックイーストアジアジャパン 2015年6月15日閲覧。
(八)^ U.S. Fish and Wildlife Service (2011年). “2011 National Survey of Fishing, Hunting, and Wildlife-Associated Recreation” (PDF). 2012年9月4日閲覧。
(九)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄pp.52-61
(十)^ ab﹃野生動物管理のための狩猟学﹄p.6
(11)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄p.7
(12)^ ﹃野生動物管理 -理論と技術-﹄p.11
(13)^ ab﹃野生動物管理のための狩猟学﹄p.8
(14)^ ﹃暮らしと生業 ひと・もの・こと2﹄p.162
(15)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄p.9
(16)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄p.10
(17)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄pp.11-13
(18)^ 田口洋美﹁マタギ―日本列島における農業の拡大と狩猟の歩み―﹂﹃地学雑誌﹄第113巻第2号、2004年、191-202頁。
(19)^ ﹃野生動物管理のための狩猟学﹄p.14
(20)^ 暴発狩猟 山仕事は命がけ 負傷、大半は住民 しいられる自衛策 資格きびしくしたい 警察庁﹃朝日新聞﹄1970年︵昭和45年︶11月10日12版23面
(21)^ “TWINとは?”. The Women In Nature. 2013年3月27日閲覧。
(22)^ 大日本猟友会 2012.
(23)^ “ワシ類の鉛中毒対策について”. 環境生活部 自然環境課. 北海道庁. 2012年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年3月27日閲覧。
(24)^ スー・ドナルドソン、ウィル・キムリッカ﹃人と動物の政治共同体﹄尚学社、2017年。
(25)^ ﹃動物の権利入門﹄88頁
参考文献[編集]
書籍[編集]
●上原真人・白石太一郎・吉川真司・吉村武彦 編﹃暮らしと生業 ひと・もの・こと2﹄岩波書店、2005年10月6日。ISBN 4-00-028062-7、ISBN 978-4-00-028062-4。 ●羽山伸一・三浦慎悟・梶 光一・鈴木正嗣 編﹃野生動物管理―理論と技術―﹄文永堂、2012年5月5日。ISBN 978-4-8300-3241-7。 ●梶 光一・伊吾田宏正・鈴木正嗣 編﹃野生動物管理のための狩猟学﹄朝倉書店、2013年1月20日。ISBN 978-4-254-45028-6。 ●マグロンヌ・トゥーサン=サマ 著、玉村豊男 訳﹃世界食物百科﹄原書房、1998年。ISBN 4562030534。 ●大日本猟友会﹃狩猟読本﹄2012年。 ●ゲイリー・L・フランシオン﹃動物の権利入門﹄緑風出版、2018年。論文[編集]
●田口洋美﹁マタギ―日本列島における農業の拡大と狩猟の歩み―﹂﹃地学雑誌﹄第113巻第2号、2004年、191-202頁。関連項目[編集]
●スポーツハンティング - クレー射撃 ●生態系 ●銃砲刀剣類所持等取締法 - 火薬類取締法 ●鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律 ●猟友会 ●狩猟免許 ●野生動物管理 - 鳥獣管理士 ●絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約︵ワシントン条約︶- ラムサール条約 ●狩猟採集社会 ●密猟 - 半矢 ●漁業・漁・釣り ●生類憐れみの令 ●ジビエ、熊肉 ●戸板落とし - 日本の猟具 ●狩猟鳥 - 鴨場 ●シューティングブレーク - 狩猟用の高級ワゴン車 ●猟官制 - 公務員を狩猟の獲物のように扱うことからこの名がついた。 ●簡易無線 ●マタギ - 古来の日本における狩猟文化の一つ ●狩猟仮説外部リンク[編集]
- Federation of Associations for Hunting and Conservation of the EU (FACE)
- ヨーロッパの狩猟に関する活動を行っているNGO。
- 大日本猟友会
- 日本の狩猟者のための共済事業を行っている法人。
- 環境省 狩猟の魅力まるわかりフォーラム
- 若手ハンターの確保などを目的とした環境省によるフォーラム。
- The Women In Nature -shoot & eat- (TWIN)
- 日本の野生動物に関わる活動をしている女性狩猟者等で構成される組織。
- 狩猟における無線の利用について
- 関東総合通信局(有害鳥獣事業及び発信器のリーフレット)