若江線
若江線︵じゃっこうせん、じゃくこうせん︶は、西日本旅客鉄道︵JR西日本︶の湖西線近江今津駅︵滋賀県高島市︶と小浜線上中駅︵福井県三方上中郡若狭町︶を結ぶ計画だった旧国鉄の鉄道路線であり、その鉄道路線に先行する形で日本国有鉄道自動車局︵国鉄バス︶・西日本旅客鉄道・西日本ジェイアールバス︵西日本JRバス︶が運行する自動車路線である。
概要[編集]
江若鉄道の未成区間を引き継ぐ形で、1922年公布の改正鉄道敷設法別表第77号に﹁京都府山科ヨリ滋賀県浜大津、高城ヲ経テ三宅ニ至ル鉄道﹂[注釈 1]として予定線に組み込まれた。鉄道建設に先行する形で近江今津 - 上中 - 小浜間に国鉄バス若江線が運行されたが、この路線は鉄道線の短絡という使命も有していた。 しかし、1970年代から国鉄の経営が悪化し、国鉄分割民営化によって鉄道敷設法が廃止されたため、鉄道計画は法的な根拠を失うことになった[注釈 2]。その後は滋賀・福井両県が主体となる琵琶湖若狭湾快速鉄道︵若狭リゾートライン︶として構想がなされており、特に小浜市などでは誘致運動が続いていたが[1]、2017年10月に北陸新幹線のルート決定に伴い嶺南広域行政組合が建設促進運動を中止し、計画は中止となった。 小浜市・若狭町を中心に、福井県南部と京都・大阪を最速で結ぶルートの一部であり、JR小浜線で敦賀・東舞鶴を経由するよりも所要時間・運賃ともに優位に立っている。バス路線[編集]
当路線は西日本ジェイアールバスが運行している。また、江若交通︵江若鉄道の後身︶が乗車券を含めた共同運行を行っていた時期があった。江若交通担当便には、滋賀県側は安曇川駅、福井県側は当時京阪グループだった若狭フィッシャーマンズワーフまで運行されていたものもあった。小浜市への連絡[編集]
小浜市への鉄道路線は、若狭湾に沿って走るJR西日本小浜線があるが、京都・大阪方面へは東舞鶴駅または敦賀駅のどちらを経由しても遠回りで時間がかかり、若江線とJR湖西線を乗り継ぐ経路が最速かつ最短経路となる。このため、小浜駅や上中駅では、当線・近江今津駅経由での京都・大阪方面への乗車券も発売されている。 2008年3月15日ダイヤ改正で2往復の減便が行われたほか、最終便が上下とも1時間繰り上げられた。沿線の高島市は、市内の同線を利用した乗客に応じて補助金を拠出する制度[2] を設けるなど利用促進のための施策を行っている。 2015年3月14日時点では1日13往復の運転で、大阪・京都方面からの湖西線新快速が近江今津駅に到着後、接続する若江線のバスが約10分後に発車するダイヤとなっている。この乗り継ぎを利用すると、京都 - 小浜間で2時間程度、大阪 - 小浜間で2時間半程度となり、公共交通機関を利用して京都・大阪市内 - 小浜市・若狭町間を最も早く移動できる。また、大阪 - 小浜間では2020年5月まで運行されていた高速バス﹁わかさライナー﹂より所要時間が短かった。一方、湖西線近江今津以北と若江線との接続や、上中・小浜での小浜線との接続については、あまり考慮されていない。 前記の新快速のほか、朝晩に近江今津駅に停車する特急﹁サンダーバード﹂と接続する便もある一方、京都駅発着の湖西線普通︵京都駅 - 近江舞子駅間も各駅に停車︶と約10 - 15分以内で相互接続する便は、朝晩に数本程度残っているだけになっている[注釈 3]。沿革[編集]
●1904年︵明治37年︶‥﹁鯖街道﹂を結ぶ鉄道路線計画が持ち上がる。 ●1921年︵大正10年︶‥近江から若狭への鉄道建設をめざす江若鉄道が部分開業。 ●1922年︵大正11年︶‥改正鉄道敷設法公布。別表第77号に予定線として記載。 ●1931年︵昭和6年︶‥江若鉄道が近江今津駅まで延伸開業。 ●1935年︵昭和10年︶12月20日‥運輸営業開始︵新平野-若狭熊川間︶[3] ●1936年︵昭和11年︶6月15日‥運輸営業開始︵小浜-新平野間︶[4] ●1937年︵昭和12年︶6月1日‥運輸営業開始︵神田橋-野木口間︶[5] ●1937年︵昭和12年︶12月21日‥運輸営業開始︵若狭熊川-近江今津間︶[6][7] ●1969年︵昭和44年︶‥国鉄湖西線建設計画により江若鉄道は線路用地を日本鉄道建設公団に売却することになり、営業を廃止。 ●1974年︵昭和49年︶‥湖西線が開業。国鉄若江線が計画路線に格上げ。 ●1985年︵昭和60年︶6月18日‥国道303号水坂トンネル供用開始に伴うルート変更により、近江角川・関・瓜生天満前の各停留所をそれぞれ開設︵関・瓜生天満前停留所︵いずれも福井県道218号上に開設︶を経由する便は1日4往復のみ︶。これにより近江杉山 - 保坂間を通過する際の所要時間が2分短縮される。 ●1987年︵昭和62年︶‥鉄道敷設法の廃止により鉄道計画の法的根拠を喪失。国鉄分割民営化によりバス路線が西日本旅客鉄道︵JR西日本︶に承継。一部の便に福井ナンバーの車両が使われるようになる。停留所一覧[編集]
停留所の変遷[編集]
1935年12月20日から1936年6月14日まで 若狭熊川 - 新道口 - 瓜生口 - 若狭仮屋 - 若狭大森 - 三宅︵現・上中,国鉄小浜線と接続︶- 天徳寺 - 日笠 - 新平野︵国鉄小浜線と連絡︶[3] 1936年6月15日から1937年5月31日まで 若狭熊川 - 新道口 - 瓜生口 - 若狭仮屋 - 若狭大森 - 三宅︵現・上中,国鉄小浜線と連絡︶- 天徳寺 - 日笠 - 新平野︵国鉄小浜線と連絡︶- 東市場 - 遠敷 - 木崎橋 - 伏原 - 小濱︵国鉄小浜線と連絡︶[4] 1937年6月1日から1937年12月20日まで 若狭熊川 - 新道口 - 瓜生口 - 若狭仮屋 - 若狭大森 - 三宅︵現・上中,国鉄小浜線と連絡︶- 天徳寺 - 野木口 - 日笠 - 新平野︵国鉄小浜線と連絡︶- 東市場 - 若狭国分 - 遠敷 - 木崎橋 - 湯岡 - 神田橋 - 小濱︵国鉄小浜線と連絡︶[5] 1937年12月21日から1985年6月17日まで 近江今津︵江若鉄道と接続︶- 弘川口 - 下弘部 - 梅原口 - 上藺生 - 上ノ瀬橋 - 北生見 - 近江追分[注釈 7] - 角川口 - 保坂 - 近江杉山 - 下大杉 - 橘町 - 若狭熊川 - 新道口 - 瓜生口 - 若狭仮屋 - 若狭大森 - 三宅︵現・上中,国鉄小浜線と連絡︶- 天徳寺 - 野木口 - 日笠 - 新平野︵国鉄小浜線と連絡︶- 東市場 - 若狭国分 - 遠敷 - 木崎橋 - 湯岡 - 神田橋 - 小濱︵国鉄小浜線と連絡︶[6] 1985年6月18日から1994年まで 近江今津︵国鉄湖西線と接続︶- 弘川口 - 下弘部 - 梅原口 - 上藺生 - 上ノ瀬橋 - 北生見 - 近江追分[注釈 7] - 保坂 - 近江角川 - 近江杉山 - 下大杉 - 橘町 - 若狭熊川 - 新道口 - 瓜生口 -︻瓜生経由‥ 関 - 瓜生天満前︼- 若狭仮屋 - 若狭大森 - 上中︵国鉄小浜線と連絡︶- 天徳寺 - 野木口 - 日笠 - 新平野︵国鉄小浜線と連絡︶- 東市場 - 若狭国分 - 遠敷 - 木崎橋 - 湯岡 - 神田橋 - 小浜︵国鉄小浜線と連絡︶ 1994年から2016年3月25日まで 近江今津駅︵JR湖西線と連絡︶ - 今津西町 - 高島高校前 - 今津役場前 - 弘川口 - 宮西町 - 下弘部 - 上弘部 - 梅原口 - 上藺生 - 古野 - 北生見 - 近江追分[注釈 7] - 保坂 - 近江角川 - 近江杉山 - 天増川口 - 下大杉 - 道の駅若狭熊川宿 - 橘町 - 若狭熊川 - 下新町 - 新道口 - 瓜生口 - 関 - 瓜生天満前 - 若狭仮屋 - 若狭大森 - 上中病院前 - 上中︵JR小浜線と連絡︶ - 三宅小学校前 - 天徳寺 - 若狭神谷 - 野木口 - 日笠 - 新平野駅口 - 平野口 - 大興寺 - 東市場 - 若狭国分 - 遠敷 - 検見坂 - 木崎橋 - 湯岡橋 - 湯岡 - 関電前 - 小浜駅︵JR小浜線と連絡︶ 2005年から2016年3月25日まで 近江今津駅︵JR湖西線と連絡︶ - 今津西町 - 高島高校前 - 今津役場前 - 弘川口 - 宮西町 - 下弘部 - 上弘部 - 梅原口 - 上藺生 - 古野 - ︵北生見︶ - 近江追分[注釈 7] - 保坂 - 近江角川 - 近江杉山 - 天増川口 - 下大杉 - 道の駅若狭熊川宿 - 橘町 - 若狭熊川 - 下新町 - 新道口 - 瓜生口 - 関 - 瓜生天満前 - 若狭仮屋 - 若狭大森 - 上中病院前 - 上中︵JR小浜線と連絡︶ - 三宅小学校前 - 天徳寺 - 若狭神谷 - 野木口 - 日笠 - 新平野駅口 - 平野口 - 大興寺 - 東市場 - 若狭国分 - 遠敷 - 検見坂 - 木崎橋 - 湯岡橋 - 湯岡 - 関電前 - 小浜駅︵JR小浜線と連絡︶ギャラリー[編集]
近江今津駅(2007年)
近江今津駅(2019年、ノンステップバス)
脚注[編集]
注釈[編集]
(一)^ 高城は現在の大津市和邇高城で江若鉄道和邇駅が所在した。三宅とは現在の上中駅のこと。
(二)^ 若狭と京都を結ぶ鉄道路線としてはほかに周山街道に沿った小鶴線計画があった。京都への接続には江若鉄道の買収もしくは廃止補償の問題があった若江線に対し、小鶴線は国鉄路線を直接結ぶだけで予定された沿線には林産資源や鉱山もあった︵小鶴線の項目を参照︶。小鶴線は日本鉄道建設公団の工事線に選定された後、1980年の日本国有鉄道経営再建促進特別措置法︵国鉄再建法︶で建設が凍結されたが、若江線は工事線となることもなかった
(三)^ 接続時分が概ね15分以内の列車として、若江線からの接続は﹁サンダーバード36号﹂が、若江線への接続は﹁サンダーバード5号﹂・﹁サンダーバード39号﹂がある︵時刻は2011年3月12日改正時点。前述の新快速以下の列車との接続体系ともども、詳細は西日本JRバス公式サイト内の近江今津駅の列車接続案内 (PDF) ﹂で採り上げられている︶。
(四)^ 前年に北生見集落とそれに隣接する南生見集落が防衛庁に土地買収され廃村になったため。﹁移転10年﹂ - 京都新聞サイトより
(五)^ ただし滋賀県のバスではこの時点で京阪バス大津営業所管内ならびに江若交通堅田営業所管内において﹁PiTaPa﹂を導入︵ICOCAも利用可能︶していたものの、京阪バス・江若交通では﹁交通系ICカード全国相互利用サービス﹂を実施していないため、PiTaPa・ICOCA以外のICカードを利用することはできなかったが、2016年4月1日より江若交通側でも 全国交通系ICカードの利用が可能になった[9]。
(六)^ 全区間乗車で運賃1330円︵当時、2019年10月1日に消費税の税率改定に伴い1350円に値上げ︶が800円で乗車できる︵途中下車した場合は割引適用外︶。決済は現金のみでICカードは不可。
(七)^ abcde本来の追分集落ではなく、西隣の保坂集落外れの一軒家の前にある。本来の追分集落は北生見集落や南生見集落に先立つ昭和49年に防衛庁に土地買収され廃村[15]。
出典[編集]
(一)^ “杉山淳一の﹁週刊鉄道経済﹂ 北陸新幹線延伸ルートは﹁JR西日本案﹂が正解”. ITmediaビジネスオンライン (2016年3月11日). 2020年1月11日閲覧。
(二)^ 高島市乗合バス利用促進対策事業補助金交付要綱 - 高島市公式サイト
(三)^ ab﹁鉄道省告示第604号﹂﹃官報﹄1935年12月19日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(四)^ ab﹁鉄道省告示第170号﹂﹃官報﹄1936年6月13日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(五)^ ab﹁鉄道省告示第130号﹂﹃官報﹄1937年4月20日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(六)^ ab﹁鉄道省告示第484号﹂﹃官報﹄1937年12月18日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(七)^ 記念スタンプ﹁逓信省告示第4072号﹂﹃官報﹄1937年12月17日︵国立国会図書館デジタルコレクション︶
(八)^ ICカードサービス開始︵近江今津駅〜小浜駅︶ 西日本JRバス公式サイト 2015年9月15日
(九)^ ﹁交通系ICカード全国相互利用開始に伴う当社の対応について﹂ - 江若交通、2016年3月28日
(十)^ PiTaPaサービス導入地域拡大のおしらせ︵別紙︶ (PDF) - 西日本JRバス公式サイト 2015年9月15日
(11)^ 一般路線ダイヤ改正のお知らせ︵金沢・近江今津・京都︶ - 西日本JRバス公式サイト 2016年3月24日
(12)^ ﹃︻名金線・若江線・園福線︼~青春18きっぷ提示でお得にご利用いただけます~﹄︵プレスリリース︶西日本ジェイアールバス、2019年7月18日。2020年1月11日閲覧。
(13)^ “﹁青春18きっぷ﹂提示で路線バス割引 国鉄バス由来の3路線対象 西日本JRバス”. 乗りものニュース. (2019年7月23日) 2020年1月11日閲覧。
(14)^ “青春18きっぷで“トク”するバスと鉄道”. 中日新聞プラス (2019年8月8日). 2020年1月11日閲覧。
(15)^ ﹁ものしり百科﹂ - 高島市立図書館
参考文献[編集]
- 天谷隆治(1993):『若狭地方の交通関係年表』
- 天谷隆治(1993):『若狭地方の鉄道関係年表』
- 芝田俊哉(1993):小浜鉄道物語 一地方鉄道の敷設計画とその挫折.小浜市教育委員会編『わかさの近代』.
- 森口誠之(2002):『鉄道未成線を歩く 国鉄編』JTB.
- 岩谷恭弥(2021):西日本ジェイアールバス若江線における沿線地域住民および利用者の路線認識と評価.地球環境研究(立正大学),23,59-67.
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 若江線 - 西日本ジェイアールバス