道化師
西洋の道化師の特徴[編集]
歴史[編集]
宮廷道化師(ジェスター)[編集]
宮廷道化師の仕事は、その名の通りの主人または周囲の人物達を楽しませる役割を担っていた。また、宮廷道化師達は小人症などの肉体的障害を持っているものが多く、笑い物としての対象にされていた。しかし、君主に向かって無礼なことでも自由にものを言うことが許される唯一の存在でもあった。曲芸よりは冗談やジョークを言う芸風を主とする道化師である。
また、その職業的な役割(君主の機嫌取り、君主の感情を操れること)から、国家間の紛争における仲介(連絡)者や、行政と民の中立な立場で世間の風評を演技(表現、意見)する等、オンブズマンとしての役割も果たしていたという説がある。
ジョーカー[編集]
トランプでよく登場するジョーカーはジャック、クィーン、キングが宮廷の王族を意味する絵柄から関連して宮廷道化師が描かれることが多い。
クラウン[編集]
現在では曲芸と曲芸の間を埋めて、観客の曲芸への余韻を冷めさせない役目として作られたおどけ役の、曲芸もでき司会(日本的な視点では客いじりも行う)もする役者である。18世紀頃イギリスのサーカス(厳密にはその前身である円形の劇場での曲馬ショー)の中で「おどけ役」を演じていた役者が自らのことを「クラウン」と名乗ったのが始まりだとされている。クラウンの意味にはのろま、ばか、おどけ者、おどける、ふざける、田舎ものなどの意味を含む。18世紀当時は曲馬ショーと曲馬ショーとの間に曲馬乗りを下手に演じたり、パロディをしたりしていた。
ピエロ[編集]
起源は17世紀後半にコメディ・イタリアンにて公開されたDom Juan ou le Festin de pierreに登場するキャラクターである。当時のピエロの性格は今とは異なり、純粋で鈍感な農民であった。その後もいろいろな作品で登場していくうち、今のピエロのイメージに近くなっていった。名前の由来はイタリア人男性の名前であるPierreがPierrotに変化したものである。したがって女性のピエロは存在しない。真っ白な顔に大きなボタンが付いたゆったりとした白いブラウスと幅広の白いパンタロンを着ている。黒い涙のようなメイクをしていたり、フリルの付いた襟や帽子や円錐の形をした帽子をかぶっていることもある。日本ではピエロとクラウンを混同している人が殆どだが、大きな間違いである。
- ホワイトフェイス
- sad clown (blanc)
- happy clown (オーギュスト、auguste)
- 顔は白、ピンク、赤、もしくは褐色に塗られ、目や口等は協調された黒や赤で塗られる。役割は無政府主義者、ジョーカー、愚者である。
- キャラクタークラウン
- パン屋など色んな役割を演じた道化師
その他[編集]
日本[編集]
歌舞伎には道外方または道化方という役どころがあるが、これが最も古い時期に成立した役柄の一つといわれる。やはり物真似や滑稽な口上で人を笑わせたが、西欧の道化師との大きな違いはそれが純然とした芝居の役どころとして発達したことにある。元禄歌舞伎では、演目の構成上特に重要な一場面を担当することが多く、それもただ滑稽な演技で観客を笑わせるだけではなく、司会役としての役割を兼ねた役どころだった。しかしその後の歌舞伎が物語性を追求したものになっていったこと、そして通し狂言がほとんどなくなり今日のような見取り狂言じたてになったことで、道外方の役割はしだいになくなり、天明歌舞伎のころまでには衰退してしまった。 なお当時の芝居小屋に掛けられる看板には、まず一枚目に一座の看板役者を、続く二枚目には人気の若衆方を、そして三枚目にこの道外方を書いて掲げていたが、これが面白可笑しい者のことを指す﹁三枚目﹂の語源の一つと考えられている。代表的な道化師[編集]
●ジョセフ・グリマルディ ●ジョン・ビル・リケッツ - アメリカではじめてピエロ役となった。 ●ウィラード・スコット︵テレビで活動した道化師︶ クラウンをモデルにしたキャラクター ●ドインク・ザ・クラウン - クラウンをモチーフとしたアメリカのプロレスラー。 ●ボゾ ●パンチとジュディ ●ドナルド・マクドナルド道化師を題材にした作品[編集]
文学[編集]
●痴愚神礼讃 ●ウィリアム・シェイクスピアの戯曲 ●﹃十二夜﹄、﹃お気に召すまま﹄、﹃リア王﹄など ●スティーブン・キングのホラー小説﹃IT (小説)﹄︵1986年︶。絵画[編集]
●ベラスケスによる宮廷道化師の肖像画作品 ●道化師ドン・ファン・デ・アウストリア、道化師ディエゴ・デ・アセド、道化師バルバローハ、道化師セバスティアン・デ・モーラなど音楽作品[編集]
●リゴレット︵ヴェルディのオペラ︶ ●道化師︵レオンカヴァッロのオペラ︶ ●道化師の朝の歌︵ラヴェルのピアノ組曲﹃鏡﹄第4曲︶ ●プルチネルラ︵バレエ作品、またストラヴィンスキーによるバレエ音楽︶ ●月に憑かれたピエロ︵シェーンベルクの作品︶ ●道化師︵カバレフスキーの管弦楽組曲︶ ●月光とピエロ︵堀口大學の詩集、およびそれを歌詞とした清水脩作曲の合唱組曲︶ ●道化師のソネット︵さだまさしの歌︶ ●青天井のクラウン︵ソウル・フラワー・ユニオンの歌︶映画[編集]
●サーカス︵1928年︶ ●嘆きの天使︵1930年︶ ●ライムライト︵1952年︶ ●道︵1954年︶ ●フェリーニの道化師︵1970年︶ ●キラークラウン︵1987年︶ ●王の男︵2005年︶ - 李氏朝鮮の道化の物語 ●ショコラ 〜君がいて、僕がいる〜︵2016年︶ ●ジョーカー︵2019年︶テレビドラマ[編集]
●ITイット脚注[編集]
参考文献[編集]
- イーニッド・ウェルズフォード,内藤健二訳『道化』,晶文社
- ウィリアム・ウィルフォード,高山弘訳『道化と笏杖』,晶文社
- 山口昌男『道化的世界』,筑摩書房
- 高橋康成『道化の文化』,中央公論社
- 石井正之助,ピーター・ミルワード監修『ルネサンスにおける道化文学』,荒竹出版