デジタル大辞泉
「ケンタウロス」の意味・読み・例文・類語
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ケンタウロス
(一)( [ギリシア語] Kentauros ) ギリシア神話の怪物の一族。上半身が人間、下半身は馬の四肢をもつ。原始的野獣性を象徴する。
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ケンタウロス
Kentauros
ギリシア神話の半人半馬の怪物。複数形はケンタウロイ。最初の親族殺しとなったイクシオンIxiōnと,ゼウスが妃ヘラの姿に似せて送った雲︵ネフェレ︶との交わりによって,あるいは両者の子ケンタウロスが牝馬と交わって生まれたという。彼らは野蛮かつ好色な種族で,テッサリア地方のペリオン山に住んでいたが,近隣のラピタイ族の王ペイリトオスPeirithoosの結婚式に招かれたおり,酩酊︵めいてい︶した数人のケンタウロスが花嫁や他のラピタイ族の女を犯そうとして両族間の戦闘となり,敗れたケンタウロス族はペロポネソス半島へ逃れた。その後,エリュマントス山の猪狩りに赴く途中の英雄ヘラクレスがエリス地方を通りかかったとき,ささいなことからケンタウロス族との戦いが生じ,多くのケンタウロスどもが生命を落とした。この中には,医神アスクレピオスに医術を授け,アキレウス,イアソンらを養育したことで知られる賢者ケイロンCheirōnも含まれるが,彼は他のケンタウロスどもとは生れを異にし,ゼウスの父神クロノスの子であったとされる。すでにホメロスの叙事詩にも語られているラピタイ族との戦いは,古くから美術作品の好主題であった。有名なものに,︿フランソアの壺﹀︵前570ころ︶の陶器画,アテナイのパルテノン神殿およびオリュンピアのゼウス神殿の彫刻,ポンペイの︿ケンタウロスの家﹀の壁画等がある。またラテン詩人オウィディウスはその︽転身物語︾にくわしい叙述を残した。
執筆者‥水谷 智洋
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ケンタウロス
けんたうろす
Kentauros
ギリシア神話の半人半馬族。ヘラ女神に情欲を抱いたイクシオンが、雲からつくられたヘラの似姿と交わってもうけた一族とも、あるいはその結合から生まれたケンタウロス︵個人名︶が、牝馬(めすうま)と交わって生ませた一族ともいわれる。テッサリアの山に住む乱暴者たちで、ラピタイ人の王ペイリトオスの結婚式に招かれたおり、酒に酔って花嫁や侍女たちに狼藉(ろうぜき)をはたらこうとしたことから、ケンタウロスとラピタイ人の間に一大闘争が勃発(ぼっぱつ)する。その模様は、オリンピアのゼウス神殿の西の破風(はふ)に描かれ、よく知られている。この戦いに敗れたケンタウロスたちは、テッサリアを追われてギリシア各地に散らばっていった。なかでもネッソスはエウエノス川の渡し人夫となったが、英雄ヘラクレスの妻ディアネイラを対岸へ運ぶときに彼女を犯そうとしたため、英雄に射殺された。しかし、野蛮なケンタウロスのなかにはフォロスやケイロンといったきわめて文化的な存在もあった。とくにケイロンは、イクシオンの血統ではなくティタン神のクロノスの子とされ、不死身なうえに医術、狩猟、武術、預言術などの達人として、アスクレピオスやアクタイオン、イアソン、アキレウスら英雄の師となった。
ヤグルマギク︵キク科︶などの属名Centaureaは、ケイロンが誤って客人ヘラクレスの矢で自分の足を傷つけたとき、この草で治療したという伝承に由来する。
﹇中務哲郎﹈
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百科事典マイペディア
「ケンタウロス」の意味・わかりやすい解説
ケンタウロス
ギリシア神話の半人半馬の怪物。複数形ケンタウロイ。イクシオンと雲ネフェレから生まれた。エリスやテッサリアの山野や森に住み,野蛮で酒と色欲にふける放縦な生活を送るとされるが,ケイロンのような賢者もいる。ラピタイ族の王ペイリトオスが結婚の宴に招いたところ,ケンタウロスたちは花嫁やその他の女を凌辱(りょうじょく)しようとし,激しい戦闘の結果ケンタウロス族は敗れた。画題として好まれた〈ケンタウロマキア〉である。
→関連項目イクシオン|テセウス
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ケンタウロス
Kentauros
ギリシア神話中,上半身が人間で,腰から下は馬の形をした怪物の種族。人間の身でヘラ女神を犯そうとしたイクシオンが,ゼウスによってヘラとそっくりの姿につくられた雲と交わって生ませたとされ,テッサリアの山中に住み,生肉を常食として野獣に近い暮しをしていたが,酒好きで,酔うと好色になり人間の女に乱暴を働く性向を有したため,ラピタイ族との間に争いが起り,戦闘に敗れてテッサリアを追われてアルカディアに移住した。ところがここでも酒が原因でヘラクレスと争うはめに陥り,この英雄にさんざんに痛めつけられたという。ケンタウロスのなかには,ケイロンやフォロスなど,ほかの仲間たちと違う穏和な性質の持主もいた。
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世界大百科事典(旧版)内のケンタウロスの言及
【アップダイク】より
…ペンシルベニア州シリングトンに生まれ,ハーバード大学を優等で卒業,オックスフォード大学ラスキン美術学校に留学後,《ニューヨーカー》の編集員を経て作家生活に入る。《救貧院の祝祭日》(1959)で注目され,日常生活から逃亡する若者の生の不安を描いた《走れウサギRabbit,Run》(1960)で人気を博し,神話的世界と現代を対置して初老の教師の苦悩を描いた《ケンタウロス》(1963)で全米図書賞を受けた。洗練された詩的文体でニューヨーカー派の風俗作家と目されているが,平凡な市民生活に題材を求め,愛,自由,救済といった神学的主題を追究しているのが特色。…
【ウマ(馬)】より
…天がける馬はときには翼を与えられ(ギリシアのペガソスなど),海に入れば下半身が魚ともなる。人頭馬身の怪獣としてケンタウロスが知られ(古代ギリシアのテッサリアの蛮族が巧みに馬を操り,人馬一体のごとく見えたのを起源とするといわれる),他方,馬頭人身の形もあり(馬頭観音など),馬と人間との強いかかわり合いを示している。︻柳 宗玄︼。…
【雲】より
…ゼウスはまたあるとき,彼の妃のヘラに,ゼウスによって天上に住むことを許されていた英雄のイクシオンが恋慕し,人間の身で非道にも神々の女王を犯そうとすると,雲でヘラとそっくりの姿を造り,イクシオンにこの雲ネフェレNephelēを抱かせた。そして妊娠したネフェレから生まれたのが,上半身が人間で下半身が馬の好色で乱暴な怪物ケンタウロスたちであるという。雲女のネフェレは,後に人間の王アタマスと結婚し,フリクソスという息子とヘレという娘を産んだが,アタマスはそのあとでネフェレを離別しテーバイの王カドモスの娘イオを妃に迎えた。…
【ヤグルマギク(矢車菊)】より
…多年草ではオウゴンヤグルマソウC.macrocephala Puschk.が切花にされ,C.montana L.(英名mountain bluet)が山草としてつくられる。︻浅山 英一︼
﹇伝説﹈
ヤグルマギクの属名はギリシア神話のケンタウロスにちなむ。彼らのうち最も賢明なケイロンは,ヘラクレスに過って矢を射られ苦痛に耐えられず死を願ったという。…
【ラピタイ】より
…単数形はラピテスLapithēs。彼らの王イクシオンIxiōnの子ペイリトオスPeirithoosがヒッポダメイアHippodameiaと結婚したおり,彼はその祝宴にみずからの異母兄弟にあたるペリオン山の半人半馬の[ケンタウロス]族を招いた。ところが酩酊したケンタウロスどもが花嫁やラピタイ族の女を略奪しようとしたので,ここに大乱闘が生じたが,ラピタイ族は,やはりこの宴席に招かれていたペイリトオスの親友,アテナイ王子テセウスの加勢もあって,激戦の末,ケンタウロス族を撃退したという。…
※「ケンタウロス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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