デジタル大辞泉 「友愛」の意味・読み・例文・類語 ゆう‐あい〔イウ‐〕【友愛】 兄弟間の情愛。また、友人に対する親しみの情。友情。友(ゆう)誼(ぎ)。﹁友愛の精神﹂ [類語]友情・友誼・親睦・深交・昵懇・懇意・交際・付き合い・交わり・人付き合い・触れ合い・社交・交友・交遊・友好・親交・交歓・交情・厚誼・高誼・好誼・よしみ・懇親 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「友愛」の意味・読み・例文・類語 ゆう‐あいイウ‥【友愛】 〘 名詞 〙 ( 形動 ) 兄弟・友人の間の親しみ。また、他に対して深い思いやりをもつさま。[初出の実例]「以二友愛一而布二於弟兄朋交之際一」(出典:竹居清事(1455頃)松林説)[その他の文献]〔隋書‐元諧伝〕 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
改訂新版 世界大百科事典 「友愛」の意味・わかりやすい解説 友愛 (ゆうあい) 友愛という言葉は,狭くは︿友情friendship﹀を意味する場合もあるが,特に英語fraternityなど西欧語の訳語として,兄弟の間の情愛から,さらにひろく家族など同一集団を結合する情愛,人間全体を一つの家族として包み込む人間相互の兄弟愛をも意味する。このもっとも広い意味で,友愛は︿博愛philanthropy﹀︿隣人愛brother-ly love﹀と同義である。このような友愛の観念は,洋の東西を問わず古くからあるが,近代以降もっとも明確な観念と制度化を生んだのは,西欧の場合である。西欧の伝統となった友愛の観念は,主としてキリスト教のうちから生まれた。ラテン語のfraternitasからきたfraternityという言葉が用いられたのは,12世紀のころからであり,より世俗化した意味をもつphilanthropy︵博愛,人類愛︶という言葉がギリシア語ないしラテン語のphilanthrōpiaの訳語として用いられるようになったのは,17世紀以降である。 古代ギリシアで︿愛する﹀という意味をもつ語のうち,phileinは,神々の人間に対する,また友人の友人に対する配慮的な愛を意味し,たとえばアリストテレスは,この言葉を,相互に相手にとって善きことをねがいあう点で同類の有徳の人間同士の親愛の情の意で用いた。そこには,奴隷を除く市民の間で,人間は同じ大きな家族の一員であるとする観念があり,このような人間仲間への共感的友愛としての人間愛philanthrōpiaという言葉は,アイスキュロスの︽縛られたプロメテウス︾に用いられている。その後ストア学派で,この語にはより普遍的な人類愛の意味を与えられた。 しかし,友愛ないし博愛の観念がより明確なものとなったのは,キリスト教において,人間の神への愛と人間相互の愛として︿アガペ︵愛︶﹀の観念が確立されることによってであるといえる。そこでは,神を愛するがゆえに隣人をも愛し,汝の敵をも愛するという,人種や階級や性別を超えた人間相互の兄弟愛︵隣人愛︶としての友愛の観念が生まれた。それは,単なる観念にとどまらず,︿慈善﹀の行為として制度化され,信者の相互扶助からさらに富者の貧者への慈善的扶助が来世の応報とも結合して精神的義務とされ,教会が慈善病院や学校,修道院などの建設への拠金を奨励することにもなった。そして,アッシジのフランチェスコにみられるように,自己犠牲と無償の愛,さらには貧しさそのものの精神的価値を強調するまでになり,慈善を通ずる人間の兄弟愛としての友愛は倫理的観念として広く浸透した。それとともに,このキリスト教の精神の下で,同じ職業のものが,互助のために拠金しあう義務をもった兄弟団fraternitasをつくり,これがギルドとも呼ばれて,産業革命にいたるまで,商工業の分野で大きな力をもった。このような同業組合やそれと同様な各種の兄弟団=友愛団体は,複雑な入会儀礼を生みつつとくに若者の社会生活の重要な因子となった。年季の明けた職人の放浪徒弟制は,︿遍歴﹀の伝統を生み,遍歴中の相互扶助の制度を生んだ。 やがて近代になると,宗教改革の過程で,プロテスタンティズムは,財の寄進や善行による救済よりも信仰のみによる救済を説いて,友愛をいっそう内面化するとともに,他方で中世的慈善をより社会的規模での匿名的な自発的慈善団体による社会奉仕へと発展させた。それは,キリスト教的な友愛的相互扶助を世俗化するとともに,社会改革とも結びつけることになった。そして,18世紀になって,観念体系の主軸に神に代わって︿人間﹀を置く啓蒙思想がひろがるなかで,万人の︿人間性﹀の完成と社会の︿進歩﹀が人間としての理想とされた。たとえば,ルソーは,身分その他を超えてすべてのものに対して人間的であることを要請し,人間にとって︿人間愛以外になんの知恵があるか﹀︵︽エミール︾︶と説き,カントは,理性的意志にもとづいて,隣人への愛を義務として自発的に実行することに真の道徳性をみた。このような人間性と進歩の理想は,友愛を人道主義的博愛︵人間愛︶として理念化し,教育や政治におけるイデオロギー的主導観念にまで高めた。教育の面では,J.B.バゼドーやペスタロッチなどによって近代教育の基礎におかれ,政治の面では,フランス大革命の標語︵自由,平等,博愛︶ともなって,人権思想や近代民主主義の基本理念となった。 他方,社会的な制度としては,工業化の進展するなかで,同業組合や遍歴制度はしだいに廃れたが,しかし労働者・職人の間で友愛団体の伝統は存続し,労働組合の母胎ともなり,またさまざまな仲間団体として政治活動や社会活動の基盤となった。さらに高等教育の普及とともに,各種学生団体︵たとえばドイツのブルシェンシャフトやアメリカのフラターニティのファイ・ベータ・カッパーなどが有名︶を生んだ。このような友愛団体のうちとくに注目されるのは,18世紀にはじまるフリーメーソンや19世紀はじめのサン・シモン主義をはじめ,R.オーエン,C.フーリエらの各種のユートピア社会主義にもとづく社会改良団体である。アナーキズム,とくにクロポトキンの相互扶助論などでも友愛理念の占める比重は小さくない。また,キリスト教内部でも,クエーカーやメソディストなど福音主義諸派の活動も,友愛団体の理念に結びついており,それらは宣教活動を通じて世界各地に友愛の理念を広めることにもなった。 そのほか︿友愛﹀の観念は,19世紀から20世紀にかけて貧民救済や保健,青少年保護から学術奨励にいたる社会の諸分野で多数の慈善団体を生み,やがてその規模も大きくなる。たとえば,A.カーネギーやJ.D.ロックフェラー,H.フォードらは,みずからの獲得した富を勤倹力行する個人の自己実現のために使うことを富者の義務と考えて,近代的な財団を設けた。20世紀になって,慈善的・相互扶助的友愛団体の理念は,福祉国家の発展のなかで,公的な社会福祉事業の理念へと転化するが,しかしなお,友愛についての個人の責任,個人および社会の福祉のための自発的協同という理念は,その重要性を失っていない。 →愛 →慈善事業 執筆者‥荒川 幾男 出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普及版 字通 「友愛」の読み・字形・画数・意味 【友愛】ゆう(いう)あい 友情。また、兄弟の愛情。︹三国志、呉、孫伝︺、早(つと)に二親を失ふ。弟輔は嬰(えいがい)、自ら贍(たんいく)し、友愛甚だ篤(あつ)し。 字通﹁友﹂の項目を見る。 出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報