デジタル大辞泉
「巻」の意味・読み・例文・類語
かん︹クワン︺︻巻︼
﹇名﹈
1 巻物。巻物にした書物。巻(かん)子(すぼ)本(ん)。﹁巻を開く﹂
2 書物。書籍。
3 何冊か合わせてひとまとまりとなる書籍の、その一つ一つ。
﹇接尾﹈助数詞。
1 書籍の冊数をかぞえるのに用いる。﹁全3巻の書物﹂
2 巻物やテープ、フィルムなどの数をかぞえるのに用いる。﹁巻物3巻﹂﹁フィルム5巻﹂
[類語]本・書物・書籍・図書・書冊・書・ブック・文献・典籍・古典・冊子・書巻・ふみ・著作・著書
まき︻巻︵き︶︼
﹇名﹈
1 巻くこと。また、巻いた程度。﹁ぜんまいの巻きが弱い﹂
2 書画の巻物。また、その区分。冊子になったものの区分にもいう。﹁源氏物語の若菜の巻きを読む﹂
3 俳諧の付(つけ)合(あい)を長く続けたもの。また、その書き物。
4 ﹁茅(ちま)巻(き)﹂を略していう女房詞。
﹇接尾﹈助数詞。
1 巻いた回数を数えるのに用いる。﹁二巻き巻く﹂
2 巻き物や書物の数を数えるのに用いる。
﹁すべて千(ちう)歌(た)、二(は)十(た)―、名づけて古今和歌集といふ﹂︿古今・仮名序﹀
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
まき【巻】
(一)[1] 〘 名詞 〙 ( 動詞﹁まく︵巻︶﹂の連用形の名詞化 ) 巻くこと、また巻いた状態のものをいう。
(一)① 巻くこと。巻きかたや、巻いた程度を表わす。﹁巻きが強い﹂など。多くは他の語と熟して用いる。﹁左まき﹂﹁簀(す)まき﹂など。
(二)② 書画などの巻物。巻物の一軸ごとをさしていう。後には、冊子の形態をとっていても、﹁上の巻﹂﹁下の巻﹂などと呼ぶように、書物の区分についていう。
(一)[初出の実例]﹁語は穴穂天皇の紀(みマキ)に在り﹂(出典‥日本書紀︵720︶雄略即位前︵前田本訓︶)
(二)﹁左、猶数一つある果てに、須磨のまき出で来たるに、中納言の御心騒ぎにけり﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶絵合)
(三)③ 連歌・俳諧で、歌仙︵三十六句︶、世吉︵四十四句︶、百韻などの連句一巻のこと。
(一)[初出の実例]﹁彦根より巻など参候よし珍重﹂(出典‥許六宛芭蕉書簡‐元祿六年︵1693︶正月一二日)
(四)④ 粽(ちまき)をいう女房詞。
(一)[初出の実例]﹁山くにのまきまいる﹂(出典‥御湯殿上日記‐文明九年︵1477︶五月四日)
(五)⑤ ﹁まきぞめ︵巻染︶﹂の略。︹随筆・貞丈雑記︵1784頃︶︺
(六)⑥ ﹁おだまきむし︵苧環蒸︶﹂の略。
(一)[初出の実例]﹁蕎麦(そば)は結構、巻(マキ)かあられか天麩羅(てんぷら)か﹂(出典‥歌舞伎・初霞空住吉︵かっぽれ︶︵1886︶)
(二)[2] 〘 接尾語 〙 巻いたものを数えるのに用いる。
(一)① 巻いて一区切りとした状態のものを数えるのに用いる。
(一)[初出の実例]﹁紙ひとまき、御硯(すずり)の蓋(ふた)に取りおろして奉れば﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶野分)
(二)② 特に書物を数えるのに用いる。のちには巻物仕立てでないものにもいう。
(一)[初出の実例]﹁すべて千うた、はたまき、名づけて古今和歌集といふ﹂(出典‥古今和歌集︵905‐914︶仮名序)
(三)③ 巻いた回数を数えるのに用いる。﹁二まき巻く﹂
かんクヮン︻巻︼
(一)[1] 〘 名詞 〙
(一)① 巻き物。巻き軸。巻子本(かんすぼん)。
(一)[初出の実例]﹁経巻を開て見奉るに︿略﹀文字一も不在ず。此を見て恠て、亦、他の巻を開て見奉るに、只前の巻の如し﹂(出典‥今昔物語集︵1120頃か︶七)
(二)[その他の文献]︹韓愈‐与陳給事書︺
(二)② ( 古くは書物は巻き物になっていたところから ) 書籍。本。また、書籍の一冊のまとまり。→巻を追う。
(一)[初出の実例]﹁手不レ執レ巻、常読二此経一、口無二言声一、遍誦二衆典一﹂(出典‥ささめごと︵1463‐64頃︶下)
(二)[その他の文献]︹宋書‐隠逸伝・陶潜︺
(二)[2] 〘 接尾語 〙
(一)① 書籍、巻き物の数をかぞえるのに用いる。
(一)[初出の実例]﹁作者二十三人、詩惣九十首、合為二一巻一、名曰二凌雲新集一﹂(出典‥凌雲集︵814︶序︿小野岑守﹀)
(二)[その他の文献]︹法言‐学行︺
(二)② 書籍の冊数や一冊の内の区分を示すのに用いる。
(三)③ テープや映画のフィルムなどの数を数えるのに用いる。映画の一巻は普通一〇〇〇フィート︵約三〇五メートル︶。
(一)[初出の実例]﹁映画は伊太利物の人情劇で、極彩色全二巻(クヮン)﹂(出典‥夢声半代記︵1929︶︿徳川夢声﹀幻滅! ザマア見ろ)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
巻
まき
新潟県の中北部、西蒲原郡(にしかんばらぐん)にあった旧町名︵巻町(まち)︶。現在は、新潟市(にいがたし)の南西部︵西(にし)区、西蒲(にしかん)区の一部︶にあたる。旧巻町は1889年︵明治22︶町制施行。1955年︵昭和30︶漆山(うるしやま)、峰岡(みねおか)、角田(かくだ)、浦浜(うらはま)、松野尾(まつのお)の5村と合併。2005年︵平成17︶新潟市に編入。旧町域は、弥彦(やひこ)山地北麓(ろく)を占め、西部は日本海に臨む。付近は古代高志深江(こしふかえ)国の国造(くにのみやつこ)が置かれた越国(こしのくに)の発祥地で、金仙(こんせん)寺裏山には菖蒲塚古墳(あやめづかこふん)︵国史跡︶がある。近世は、鎧潟(よろいがた)べりの長岡藩巻組の代官所が置かれ、西川舟運の河岸場(かしば)町、また六斎市場(ろくさいいちば)町として栄えた。近代は郡役所が置かれ、行政、文化、教育の中心として発展した。現在は諸官庁の出先機関や県立高校が4校あり、弥彦参道の買い物町として機能する。JR越後線(えちごせん)、国道116号、402号、460号が通じ、北陸自動車道の巻潟東インターチェンジがあるなどの交通の便を得て、ベッドタウン化が進んでいる。第二次世界大戦後、鎧潟は国営干拓事業により干拓され、農業教育センターが置かれ、農家の後継者を養成する県立興農館(こうのうかん)高校︵2002年閉校︶も設立された。角海(かくみ)浜はかつて﹁越後の毒消し売り﹂のふるさととして知られた。
﹇山崎久雄﹈
﹃﹃巻町双書﹄2000年現在39集︵1965~ ・巻町︶﹄
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
巻
(1)書誌的な意味では,巻自体の書誌的事項を掲載した標題紙(ときには簡略タイトル,表紙タイトルなど)が存在し,また通常独立したページ付けなどがあって,出版者の付けた表示にかかわらず,書誌的なまとまりをなす資料の他の部分と区別できる部分.形態的な意味では,1製本単位,あるいは一つのポートフォリオなどに収容されている全体で,それが刊行されたときのままであるか,後で製本されたものであるかは問わない.形態的単位としての巻は,書誌的な単位のものと一致しないことがある.(2)逐次刊行物における,ある限定された刊行期間の全体を構成する号の集合,もしくはある連続的な部分を構成する号の集合.合綴されていることも,されていないこともある.(3)録音資料や録画資料,コンピュータファイルにおける,ディスクやテープなど記録媒体の形態的単位.
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の巻の言及
【毒消売】より
…当初は男性のしごとだったが,明治に入ってから女性の進出が目だつようになり,未婚女性の半年以上にもわたる長期の,しかも遠隔地への出稼行商だった。越後の毒消丸は新潟市の南西約15kmの西蒲原郡巻町を中心に製造された。この地域は近世初期には漁業と塩業を中心とする漁村だったが,砂丘地の開拓がすすんで半農半漁村となった。…
※「巻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」