此方(コッチ)とは？意味や使い方

デジタル大辞泉「此方」の意味・読み・例文・類語

こっ‐ち【^×此^▽方】

︽﹁こち﹂の音変化︾

﹇代﹈ 1 近称の指示代名詞。聞き手よりも話し手の方に近い場所やそこにある物、または、その方向をさす。﹁此方の水は甘いぞ﹂﹁此方が大きい﹂﹁足音が此方へ近づいてくる﹂ 2 一人称の人代名詞。話し手自身、または、その周辺にいる人々をさす。こちら。当方。﹁此方が出向く﹂﹁此方にも考えがある﹂

﹇名﹈ある事が起こった時から今まで。以来。このかた。﹁病気が治ってから此方、健康には留意している﹂ [補説]近世からみられ、﹁こちら﹂よりもくだけた感じの語。 [類語]︵1︶此こ処こ・こちら・そちら・そっち・あちら・あっち・かなた・向こう／︵2︶わたくし・わたし・あたくし・あたし・あたい・あっし・妾わらわ・あちき・内・自分・僕・俺おれ・俺おい等ら・おら・わし・当方・此こち方ら・こちとら・吾ごじ人ん・余よ・我が輩はい・手前・てめえ・我・愚・愚輩・拙者・身共・それがし・某・不ふし肖ょう・小生・愚生・迂うせ生い

こち‐ら︻^×此^▽方︼

﹇代﹈ 1 近称の指示代名詞。㋐話し手に近い方向をさす。﹁此方を向いてください﹂㋑話し手のいる、またはその方向にある場所をさす。﹁此方に来てからもう三年になる﹂㋒話し手の近くにある物をさす。﹁此方も御試着なさいますか﹂ 2 一人称の人代名詞。話し手自身、また話し手の側をさす。当方。﹁此方はいつでも結構です﹂ 3 三人称の人代名詞。話し手のすぐそばにいる人をさす。同等以上の人に用いる。この人。﹁此方が私の兄です﹂ [類語]︵1︶此こ処こ・こっち・そちら・そっち・あちら・あっち・かなた・向こう・手前／︵2︶わたくし・わたし・あたくし・あたし・あたい・あっし・妾わらわ・あちき・内・自分・僕・俺おれ・俺おい等ら・おら・わし・当方・こっち・こちとら・吾ごじ人ん・余よ・我が輩はい・手前・てめえ・我・愚・愚輩・拙者・身共・それがし・某・不ふし肖ょう・小生・愚生・迂うせ生い

こ‐な‐た︻^×此^▽方︼

﹇代﹈ 1 近称の指示代名詞。ある地点より話者のいる地点に近い場所・方向などを示す。こちら。こっち。﹁山の此方﹂﹁静に―を振り向いて﹂︿二葉亭訳・あひゞき﹀﹁―へ給はらん﹂︿平家・一一﹀ 2 二人称の人代名詞。あなた。﹁はい、もう何もかも―のおかげでございますから﹂︿円地・女坂﹀﹁﹃やや、こちの事か。何事ぞ﹄﹃―の御事でござある﹄﹂︿虎清狂・禁野﹀ 3 近称の指示代名詞。過去または未来の一時点から話者のいる現在へ向かっての時間。㋐それからのち。以来。﹁故君の失せ給ひにし―は﹂︿源・橋姫﹀㋑それより前。以前。﹁嵯峨野の御わたりの―に﹂︿狭衣・二﹀ 4 三人称の人代名詞。今話題になっている人。また、近くにいる人。﹁まづ―の心見はてて、とおぼすほどに﹂︿源・夕顔﹀ 5 一人称の人代名詞。わたくし。﹁その衣は―のにて候﹂︿謡・羽衣﹀

こ‐ち︻^×此^▽方︼

﹇代﹈ 1 近称の指示代名詞。こっち。こちら。﹁―やと言へば、ついゐたり﹂︿源・若紫﹀ 2 一人称の人代名詞。わたくし。わたくしども。﹁そちが知らずは、―も知らぬぞ﹂︿虎清狂・文荷﹀

こんた【^×此^▽方】

［代］《「こなた」の音変化》二人称の人代名詞。おまえさん。
「―の言ふ事があたり申さない」〈滑・膝栗毛・初〉

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精選版日本国語大辞典「此方」の意味・読み・例文・類語

こ‐な‐た【此方】

(一)〘代名詞詞〙 (二)[ 一 ] 他称。 (一)① 話し手のいる、または話し手側に近い方角をさし示す︵近称︶。空間的に離れていても、話し手の意識のうえで強く問題にしている場所や方面をいう場合もある。この所。こちら。 (一)[初出の実例]﹁北の障子のあなたに人のけはひするを、こなたや斯くいふ人の隠れたるかたならむ、あはれや、と御心とどめて﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶帚木) (二)﹁つくりたる田のよくて、こなたに作りたるにも、ことの外まさりたりければ﹂(出典‥宇治拾遺物語︵1221頃︶四) (二)② ある一定の時を限って、それより話し手の位置する時に近い期間をさし示す︵近称︶。 (一)(イ) 過去のある時から現在までの間をさし示す。それより後。以来。 (一)[初出の実例]﹁是の月より起(おこ)り十二月より以来(コナタ)を限(かき)りて宮室を営らむと欲す﹂(出典‥日本書紀︵720︶皇極元年九月︵岩崎本室町時代訓︶) (二)(ロ) 将来の、ある時よりも手前の期間をさし示す。それより前。以前。以内。 (一)[初出の実例]﹁をのがあらむこなたは、いと人わらへなるさまに、したがひ靡(なび)かでも、ものし給ひなん﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶真木柱) (三)③ すぐ前に述べた事柄や、それに関連した方面をさし示す︵近称︶。こちら。この方面。 (一)[初出の実例]﹁いと尊くつく廻向の末つ方の心ばへ、いとあはれなり。客人(まらうど)もこなたに進みたる御心にて﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶総角) (四)④ 二人以上の人物のうち、位置的に、また、意識のうえで近くにいる方の人。また、最も問題にされている方の人。この人。 (一)[初出の実例]﹁うらもなく待ち聞えがほなるかたつかた人をあはれとおぼさぬにしもあらねど、︿略﹀まづこなたの心見はててとおぼすほどに﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶夕顔) (三)[ 二 ] 自称。わたくし。 (一)[初出の実例]﹁こなたをもそなたをも、さまざま人の聞こえなやまさむ、ただならむよりはあぢきなきを﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶行幸) (二)﹁こなたのとっさまは法誉道三といひます﹂(出典‥浮世草子・世間娘容気︵1717︶五) (四)[ 三 ] 対称。対等または対等に近い目上の相手に対して丁寧な言い方のとき用いる語。近世にはいってからはやや待遇価値が落ち、目下に対しても用いるようになった。 (一)[初出の実例]﹁かおを打あげて高祖をみて﹃こなたはただなながら昔の桀紂の如な主でをりある﹄と云たれば﹂(出典‥玉塵抄︵1563︶六) (二)﹁今日はこなたが能く流して呉たでさっぱり仕ました。わたしは上るが、こなたはもっと這入るが能(よい)よ﹂(出典‥滑稽本・浮世風呂︵1809‐13︶二)

此方の語誌

(1)平安時代以降、﹁そなた﹂﹁かなた︵あなた︶﹂に対し、空間的・時間的・心理的に話し手に近いと認識されるものを指す近称の指示代名詞として用いられるようになる。人称代名詞としても、[ 一 ][ 二 ]の他称・自称の用法が平安時代に見えているが、[ 三 ]のように対称として用いられるのは室町時代になってからである。 (2)[ 三 ]の待遇価値は、室町時代末期には最高段階に位置していたものが、近世前期上方語では、新たに発生した﹁お前﹂にその座を奪われ、﹁こなた﹂は第二段階に下降した。近世後期上方語になると、寛政期頃までは、なお第二段階を維持するものの、町人の使用が減少し、使用者層が学者・武士・老人等に限定される傾向が見られる。

こ‐ち︻此方︼

(一)〘代名詞詞〙 (二)① 他称。話し手側の方向をさし示す︵近称︶。助詞﹁へ﹂や﹁に﹂を伴わないで用いられた。⇔あち。 (一)(イ) こなたの側。こっち。こちら。 (一)[初出の実例]﹁日下部(くさかべ)の許知(コチ)の山と畳薦(こも) 平群(へぐり)の山の﹂(出典‥古事記︵712︶下・歌謡) (二)﹁母ぞこち渡り給へる﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶浮舟) (二)(ロ) 自分の家。また、その家にいっしょに住むもの。 (一)[初出の実例]﹁﹃小さい子は銀(かね)を持たぬ物じゃ。俺が持て行てやらふ﹄﹃そんならこちの所迄連立て行ませふ﹄﹂(出典‥歌舞伎・傾城壬生大念仏︵1702︶中) (三)(ハ) ( 中国に対して ) 日本。わが国。 (一)[初出の実例]﹁こちのひらつつみのやうにして掛に異にせんためぞ﹂(出典‥六物図抄︵1508︶) (四)(ニ) 時間的に今に近い時。 (一)[初出の実例]﹁黄帝からこちへの事どもをしるしたぞ﹂(出典‥史記抄︵1477︶三) (三)② 自称。男女ともに用い、対等またはやや上位の相手との話に用いる。私。手前。自分。また、私ども。われわれ。 (一)[初出の実例]﹁軽重不得とは、彼は我と重して、こちを軽し、こちも我と重してあれをは軽するほどに﹂(出典‥史記抄︵1477︶一五) (二)﹁こないなあばづれいふと、いかう気づつながるさかい、こちが付込むぢゃ﹂(出典‥滑稽本・戯場粋言幕の外︵1806︶上)

此方の語誌

古くから用例があるが、古代には同様に方向を表わす﹁こなた﹂の方が多く用いられた。室町時代以降用例が多くなり、﹁こちら﹂﹁こっち﹂等の形態を派生した。現代共通語では﹁こちら﹂﹁こっち﹂に勢力を譲って、﹁こち﹂はほとんど用いられなくなっている。

この‐かた︻此方︼

(一)[1] 〘連語〙 こちらのかた。こちら側。こなた。 (一)[初出の実例]﹁見渡しに妹らは立たし是方(このかた)にわれは立ちて︿略﹀或本歌頭句云、隠口(こもりく)の泊瀬(はつせ)の川の彼方(をちかた)に妹らは立たし己乃加多(コノカタ)にわれは立ちて﹂(出典‥万葉集︵8Ｃ後︶一三・三二九九) (二)[2] 〘名詞〙 その時より後。それ以来。こなた。 (一)[初出の実例]﹁爾(それ)より以来(コノカタ)世(よよ)笠(かさ)蓑(みの)を着(き)以て他人の屋の内に入ることを諱(い)む﹂(出典‥日本書紀︵720︶神代上︵寛文版訓︶) (二)﹁孤独(ひとり)の方が好いと、心から思ふようになったのは、十年以来(コノカタ)くらいなものだよ﹂(出典‥火の柱︵1904︶︿木下尚江﹀二四) (三)[3] 〘代名詞詞〙 他称。話し手側または話し手に近い関係にある人をさし示す︵近称︶。﹁このひと﹂をさらに敬意をもって呼ぶとき用いる語。 (一)[初出の実例]﹁﹃誰方(どなた)？﹄﹃此方(コノカタ)が︿略﹀古屋さんの何さ﹄﹂(出典‥平凡︵1907︶︿二葉亭四迷﹀二七)

こっ‐ち︻此方︼

(一)[1] 〘代名詞詞〙 ( ﹁こち︵此方︶﹂の変化した語 ) (一)① 他称。話し手側の方向、また、話し手の側にあるものなどをさし示す︵近称︶。 (一)[初出の実例]﹁あっちよりこっちへくるを曰_二入塞_一也﹂(出典‥杜詩続翠抄︵1439頃︶五) (二)② 自称。わたくし。自分。当方。 (一)[初出の実例]﹁吾(コッチ)は不_レ知矣﹂(出典‥杜詩続翠抄︵1439頃︶八) (二)﹁そっちも亭主のある体、それと知りつつうっかりと、はまり込んだはこっちも不覚﹂(出典‥歌舞伎・与話情浮名横櫛︵切られ与三︶︵1853︶四幕) (二)[2] 〘名詞〙 このかた。以来。 (一)[初出の実例]﹁わし共は二十年もこっちイ、そんなあじゃらしいこたア、中絶のウしてゐますに﹂(出典‥滑稽本・東海道中膝栗毛︵1802‐09︶二)

こち‐ら︻此方︼

(一)〘代名詞詞〙 (二)① 他称。 (一)(イ) 話し手側の方向、場所などをさし示す︵近称︶。 (一)[初出の実例]﹁あちにも我子こちらにも我子が守護になったそ﹂(出典‥寛永刊本蒙求抄︵1529頃︶四) (二)(ロ) 話し手側の人や家などをさし示す︵近称︶。このかた。このお宅。 (一)[初出の実例]﹁当家(コチラ)の伯父さんのお蔭で家へ帰れる様に成た﹂(出典‥怪談牡丹燈籠︵1884︶︿三遊亭円朝﹀五) (三)(ハ) ある時から以後。 (一)[初出の実例]﹁二三日此方(コチラ)心配して居るから﹂(出典‥落語・雨やどり︵1899︶︿六代目桂文治﹀) (三)② 自称。話し手自身をさす。わたくし。また、われわれ。 (一)[初出の実例]﹁仏壇の掃除をこちらが致します﹂(出典‥歌舞伎・今源氏六十帖︵1695︶一)

この‐ほう‥ハウ︻此方︼

(一)[1] 〘名詞〙 こちらの属している地や国。わが国。 (一)[初出の実例]﹁唐のは青と白と黒と赤とて四時に配也。此方とすこしかはる也﹂(出典‥日本書紀桃源抄︵15Ｃ後︶上) (二)[2] 〘代名詞詞〙 自称。男性が用いる。われ。︹文明本節用集︵室町中︶︺ (一)[初出の実例]﹁﹃コレコレ其の方は浜松巖之介と見た。遁さぬ﹄トいへば、﹃イヤイヤ此の方は巖之介ではない﹄﹂(出典‥歌舞伎・姫蔵大黒柱︵1695︶一)

こっち‐ら︻此方︼

(一)〘代名詞詞〙 (二)① 他称。話し手側の場所などをさし示す︵近称︶。 (一)[初出の実例]﹁﹃ああこっちらへ付ればよいに﹄﹃いやいやこちらでもよしよし﹄﹂(出典‥洒落本・遊子方言︵1770︶発端) (三)② 自称複数。われわれ。

こんた︻此方︼

(一)〘代名詞詞〙 ( ﹁こなた﹂の変化した語 ) 対称。お前。あなた。 (一)[初出の実例]﹁﹃馬士どん茶でも進ぜうか﹄﹃いいにへ、モウ呑ずとこんたのその一言でそこいら中(ぢう)がしめって来るハナ﹄﹂(出典‥洒落本・道中粋語録︵1779‐80頃︶)

こっちゃ︻此方︼

(一)〘代名詞詞〙 ( ﹁こちら﹂の変化した語 ) 他称。話し手側の方向、場所などをさし示す︵近称︶。こっち。 (一)[初出の実例]﹁これ此道をかういて、こっちゃの方が子守明神﹂(出典‥浄瑠璃・義経千本桜︵1747︶四)

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ブリタニカ国際大百科事典小項目事典「此方」の意味・わかりやすい解説

此方
こなた

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此方（読み）コッチ

デジタル大辞泉「此方」の意味・読み・例文・類語

こっ‐ち【^×此^▽方】

こち‐ら︻^×此^▽方︼

こ‐な‐た︻^×此^▽方︼

こ‐ち︻^×此^▽方︼

こんた【^×此^▽方】

精選版日本国語大辞典「此方」の意味・読み・例文・類語

こ‐な‐た【此方】

此方の語誌

こ‐ち︻此方︼

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この‐かた︻此方︼

こっ‐ち︻此方︼

こち‐ら︻此方︼

この‐ほう‥ハウ︻此方︼

こっち‐ら︻此方︼

こんた︻此方︼

こっちゃ︻此方︼

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こっ‐ち【×此▽方】

こち‐ら︻×此▽方︼

こ‐な‐た︻×此▽方︼

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こんた【×此▽方】

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こ‐な‐た︻^×此^▽方︼

こ‐ち︻^×此^▽方︼

こんた【^×此^▽方】

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