「お富さん」の版間の差分
(25人の利用者による、間の27版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
{{Infobox Song |
|||
⚫ |
|
||
| Name = お富さん |
|||
| Type = |
|||
| Artist = [[春日八郎]] |
|||
| alt Artist = |
|||
*[[青江三奈]] |
|||
*[[都はるみ]] |
|||
*[[エボニー・ウェッブ]] |
|||
*[[ソウル・フラワー・モノノケ・サミット]] |
|||
*[[福田こうへい]] |
|||
| from Album = |
|||
| from Album2 = |
|||
| Released = 1954年8月 |
|||
| Format = [[レコード]] |
|||
| track_no = |
|||
| Recorded = |
|||
⚫ | |||
| Length = 2分34秒 |
|||
| Writer = [[山崎正 (作詞家)|山崎正]] |
|||
| Composer = [[渡久地政信]] |
|||
⚫ | |||
| Producer = |
|||
| Chart position = |
|||
| Tracks = |
|||
| prev = |
|||
| prev_no = |
|||
| next = |
|||
| next_no = |
|||
| Misc = |
|||
}} |
|||
⚫ | 「'''お富さん'''」(おとみさん)は、[[春日八郎]]の歌で[[1954年]]8月に発売された[[歌謡曲]]である。 |
||
== 解説 == |
== 解説 == |
||
﹁お富さん﹂は作詞を[[山崎正 (作詞家)|山崎正]]、作曲を[[渡久地政信]]が担当し、当初[[キングレコード]]のスター歌手であった[[岡晴夫]]が歌う予定だったが、岡がキングレコードを辞めてフリー宣言︵[[タイヘイレコード|日本マーキュリー]]と本数契約を結んでいる︶したため、急遽若手の春日に歌わせたところ、リリースから4か月で40万枚、最終的に125万枚を売り上げるセールスとなり、春日の出世作となった{{Sfn|本山|2011|pp=49-67}}。
|
|||
[[歌舞伎]]の『[[与話情浮名横櫛]]』(通称:切られ与三郎)からセリフを大量に取り入れている。ただし作曲した渡久地は歌舞伎のことはあまり知らず、むしろ当時最新の音楽であった[[ブギウギ]]のリズムを基にして曲を書いた。その軽快なヨナ抜き音階のメロディーは大当たりとなり、「粋な黒塀」「見越の松」「他人の花」といった[[与話情浮名横櫛#名科白|仇っぽい名詞句]]を何も知らない子供までもが盛んに歌った。 |
|||
﹁お富さん﹂は当時[[宴会]]で歌われていた猥褻なお座敷ソングに代わる、いくらか軽い調子で[[替え歌]]のしやすいものを狙って作曲した、と渡久地は述べている{{Sfn|本山|2011|pp=49-67}}。[[沖縄]]出身で[[奄美大島]]育ちの渡久地は、[[四分の四拍子]]のリズムのなかに[[八分の六拍子]]をアクセントとして加えた[[ブギ|ブギウギ]]のリズムを基に、手拍子や軽快な[[ヨナ抜き音階]]など[[沖縄音楽]]・[[カチャーシー]]の要素と、[[チンドン屋]]のリズムの影響を受けた奄美[[新民謡]]の要素を織り込みながら曲を書いた{{Sfn|本山|2011|pp=49-67}}。
|
|||
「お富さん」ははじめ[[キングレコード]]のスター歌手であった[[岡晴夫]]が歌う予定だったが岡が[[日本コロムビア|コロムビアレコード]]に移籍したため、急遽若手の春日に歌わせたところ大ヒット。これが春日の出世作となった。 |
|||
作詞の山崎はキングレコードからの復古調のものをという要求に応じて、戦前・戦中の諸芸能の世界では定番だった[[歌舞伎]]の﹃[[与話情浮名横櫛]]﹄︵通称‥切られ与三郎︶からセリフを大量に取り入れている。ただし、山崎は特に歌舞伎に通じていた訳でもなく、作曲した渡久地に至っては﹁カブキは嫌いで、見た事もない﹂と述べている{{Sfn|本山|2011|pp=49-67}}。﹁粋な黒塀﹂﹁見越の松﹂﹁他人の花﹂といった[[与話情浮名横櫛#名科白|仇っぽい名詞句]]を何も知らない子供までもが盛んに歌ったが、その[[アウトロー]]的な歌詞は教育上の社会問題となり、[[日本放送協会|NHK]]が子供が﹁お富さん﹂を歌う事の是非を問う[[討論番組]]を組むほどだった{{Sfn|本山|2011|pp=49-67}}。冒頭部の﹁粋な黒塀﹂は、山崎が若年期に住んでいた[[高崎市]]の[[花街]]・[[柳川町 (高崎市)|柳川町]]の風景から着想を得たものである<ref>{{cite web|url=https://www2.jomo-news.co.jp/playback/data/?p=20171121|title=﹁お富さん﹂ 山崎さん︵前橋︶が作詞|publisher=上毛新聞|date=1954-11-21|accessdate=2023-11-28}}</ref>。その縁から、1954年には柳川町にあった映画館・[[高崎電気館]]で春日八郎の歌謡ショーが開催された。
|
|||
なおこの曲のヒットに便乗しようと[[JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント|ビクターレコード]]は後に『[[青砥稿花紅彩画]]』(通称:白浪五人男)を題材にした「弁天小僧」(歌:[[三浦洸一]])という歌をリリースしヒットさせたが、社会現象にまでなった「お富さん」には及ばなかった。 |
なおこの曲のヒットに便乗しようと[[JVCケンウッド・ビクターエンタテインメント|ビクターレコード]]は後に『[[青砥稿花紅彩画]]』(通称:白浪五人男)を題材にした「弁天小僧」(歌:[[三浦洸一]])という歌をリリースしヒットさせたが、社会現象にまでなった「お富さん」には及ばなかった。 |
||
1984年には作詞‥伊藤アキラ、作曲‥森田公一で続編となる﹁その後のお富さん﹂が春日の歌唱で発売されたが、同曲は歌舞伎の要素は一切廃され、お富と与三郎のその後を描いた、[[すすきの|すすき野]]・[[八代市|八代]]・[[輪島市|輪島]]・[[横浜市|横浜]]のご当地ソングとなっている。
|
|||
この曲は[[1977年]]11月にエボニー・ウェッブによって「ディスコお富さん」としてカバーされてリバイバルヒットし、発売2週間で20万枚を売り上げた。 |
|||
元号が昭和から[[平成]]に替わった[[1989年]]の大晦日、『[[第40回NHK紅白歌合戦]]・第一部(昭和の紅白)』に、春日は通算21回目の紅白出場を果たし「お富さん」を歌唱したが、これが春日の生涯最後の紅白歌合戦出演となった。 |
元号が昭和から[[平成]]に替わった[[1989年]]の[[大晦日]]、﹃[[第40回NHK紅白歌合戦]]・第一部︵昭和の紅白︶﹄に、春日は通算21回目の紅白出場を果たし﹁お富さん﹂を歌唱したが、これが春日の生涯最後の紅白歌合戦出演となった。[[1991年]]10月、春日が67歳で亡くなった時の葬儀では、参列者全員でこの﹁お富さん﹂を合唱した。この葬儀には[[竹下登]]元[[内閣総理大臣|総理]]も参列していた。
|
||
== カバー == |
|||
⚫ | その後[[1990年代]]に入り、沖縄民謡の唄者・平安隆(『かりゆしの月』に収録)や[[チンドン]]楽団の[[ソウル・フラワー・モノノケ・サミット]](『[[デラシネ・チンドン]]』に収録)がカバーしている。 |
||
﹁お富さん﹂は[[1970年]]に[[青江三奈]]によってカバーされ、翌[[1971年]]には都はるみが﹁はるみのお富さん﹂としてカバーした{{Sfn|本山|2011|pp=67-75}}。青江の﹁お富さん﹂が都会的なブルース[[艶歌]]としてアレンジされたのに対し、﹁はるみのお富さん﹂は同じ艶歌ながらチンドン風のアレンジである。
|
|||
[[1991年]]10月、春日が67歳で亡くなった時の葬儀では、参列者全員でこの﹃お富さん﹄を合唱した。この葬儀には[[竹下登]]元[[内閣総理大臣|総理]]も参列していた。
|
|||
1970年代の[[ディスコ]]ブームの折、たまたま来日していた[[メンフィス (テネシー州)|メンフィス]]のファンクグループ、エボニー・ウェッブに、ディスコ風のアレンジをした﹁お富さん﹂を歌ってもらい、[[1978年]]11月末<ref name="yomi_790131">﹁﹃お富さん﹄孤立奮闘 ディスコで復活 おシャカ様も仰天?﹂﹃[[読売新聞]]﹄1979年1月31日付夕刊、5頁。</ref>に﹁ディスコお富さん﹂として発売されてリバイバルヒットした{{Sfn|本山|2011|pp=67-75}}。同曲は[[関西]]から全国へと人気が拡大し、1979年1月時点で25万枚を売り上げた<ref name="yomi_790131" />。主な購買層はリアルタイムで﹁お富さん﹂の大ヒットを知らない︵当時の︶10代〜20代であったという<ref name="yomi_790131" />。このヒットを受け、その後に﹁花笠音頭﹂を歌ってもらったがこちらはヒットせず、エボニー・ウェッブは翌年に帰国した。2000年代以降に[[ディスコ歌謡]]の名盤として再評価されている。
|
|||
⚫ | |||
余談ではあるが、『[[志村けんのだいじょうぶだぁ]]』において、[[志村けん]]と[[いしのようこ|石野陽子]](現:いしのようこ)の夫婦コントに[[エアロビクスダンス]]の曲として使用され、その意外性と親しみやすい曲調が受け、若者層に浸透していった。 |
|||
また、春日八郎の大ファンである「[[こちら葛飾区亀有公園前派出所]]」の主人公、[[両津勘吉]]は作中でこの歌を何回も歌っている。 |
|||
== 脚注 == |
|||
{{脚注ヘルプ}} |
|||
{{Reflist}} |
|||
== 参考文献 == |
|||
* {{Cite book ja-jp|和書 |author = 本山謙二 |title = 文化・メディアが生み出す排除と解放 |year = 2011 |chapter = 蘇り、妖怪化する歌、『お富さん』をめぐって |publisher = [[明石書店]] |series = 差別と排除の[いま] |editor = [[荻野昌弘]] |isbn = 9784750334356 |ref = harv }} |
|||
== 関連項目 == |
|||
* [[笠井潔]] - 推理作家。その短編「神輿と黄金のパイン」([[コラボレーション]]短編集『黄昏ホテル』所収)は「お富さん」をモチーフにしている。 |
|||
== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
||
* [https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1326583 「お富さん」] - [[国立国会図書館デジタルコレクション]] |
|||
*[http://www.ringohouse.com/dramafiles/04.otomi.html お富さん・昭和歌謡とわれらの時代] |
|||
{{ |
{{デフォルトソート:おとみさん}} |
||
⚫ | |||
[[Category:春日八郎の楽曲]] |
[[Category:春日八郎の楽曲]] |
||
⚫ | |||
[[Category:1954年の楽曲]] |
[[Category:1954年の楽曲]] |
||
[[Category: |
[[Category:キングレコードの楽曲]] |
||
[[Category:日本のポピュラーソング]] |
|||
[[Category:第5回NHK紅白歌合戦歌唱楽曲]] |
|||
[[Category:第40回NHK紅白歌合戦歌唱楽曲]] |
|||
[[Category:楽曲 お|とみさん]] |
|||
[[Category:歌舞伎を題材とした作品]] |
2023年11月29日 (水) 00:53時点における最新版
「お富さん」 | ||
---|---|---|
春日八郎の楽曲 | ||
リリース | 1954年8月 | |
規格 | レコード | |
ジャンル | ポピュラーソング | |
時間 | 2分34秒 | |
レーベル | キングレコード | |
作詞者 | 山崎正 | |
作曲者 | 渡久地政信 | |
|
「お富さん」(おとみさん)は、春日八郎の歌で1954年8月に発売された歌謡曲である。
解説
[編集]カバー
[編集]脚注
[編集]参考文献
[編集]- 本山謙二、荻野昌弘(編)、2011、「蘇り、妖怪化する歌、『お富さん』をめぐって」、『文化・メディアが生み出す排除と解放』、明石書店〈差別と排除の[いま]〉 ISBN 9784750334356