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[[画像:Pierre de Fermat.jpg|thumb|ピエール・ド・フェルマー]]
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'''フェルマーの最終定理'''(フェルマーのさいしゅうていり、{{lang-en-short|Fermat's Last Theorem}})とは、{{math|3}} 以上の[[自然数]] {{mvar|n}} について、{{math|''x{{sup|n}}'' + ''y{{sup|n}}'' {{=}} ''z{{sup|n}}''}} となる自然数の組 {{math|(''x'', ''y'', ''z'')}} は存在しない、という[[定理]]である{{refnest|group=注釈|これに対して {{math|''n'' {{=}} 2}} のとき、{{math|''x{{sup|2}}'' + ''y{{sup|2}}'' {{=}} ''z{{sup|2}}''}} を満たす自然数の組 {{math|(''x'', ''y'', ''z'')}} は無数に存在し、[[ピタゴラスの定理#ピタゴラス数|ピタゴラス数]]と呼ばれる。}}。'''フェルマーの大定理'''とも呼ばれる。[[ピエール・ド・フェルマー]]が驚くべき証明を得たと書き残したと伝えられ、長らく[[証明 (数学)|証明]]も反証もなされなかったことから'''フェルマー予想'''とも称されたが、フェルマーの死後330年経った[[1995年]]に[[アンドリュー・ワイルズ]]によって完全に[[ワイルズによるフェルマーの最終定理の証明|証明]]され、'''ワイルズの定理'''または'''フェルマー・ワイルズの定理'''とも呼ばれるようになった<ref>[[ニュートン (雑誌)|Newton]] 2019年2月号 p86</ref>。
'''フェルマーの最終定理'''(フェルマーのさいしゅうていり、{{lang-en-short|Fermat's Last Theorem}})とは、{{math|3}} 以上の[[自然数]] {{mvar|n}} について、{{math|''x{{sup|n}}'' + ''y{{sup|n}}'' {{=}} ''z{{sup|n}}''}} となる自然数の組 {{math|(''x'', ''y'', ''z'')}} は存在しない、という[[定理]]である{{refnest|group=注釈|これに対して {{math|''n'' {{=}} 2}} のとき、{{math|''x{{sup|2}}'' + ''y{{sup|2}}'' {{=}} ''z{{sup|2}}''}} を満たす自然数の組 {{math|(''x'', ''y'', ''z'')}} は無数に存在し、[[ピタゴラスの定理#ピタゴラス数|ピタゴラス数]]と呼ばれる。}}。'''フェルマーの大定理'''とも呼ばれる。[[ピエール・ド・フェルマー]]が驚くべき証明を得たと書き残したと伝えられ、長らく[[証明 (数学)|証明]]も反証もなされなかったことから'''フェルマー予想'''とも称されたが、フェルマーの死後330年経った[[1995年]]に[[アンドリュー・ワイルズ]]によって完全に[[ワイルズによるフェルマーの最終定理の証明|証明]]され、'''ワイルズの定理'''または'''フェルマー・ワイルズの定理'''とも呼ばれるようになった<ref>[[ニュートン (雑誌)|Newton]] 2019年2月号 p86</ref>。
なお,証明は極めて容易である。
== 概要 ==
== 概要 ==
2023年1月13日 (金) 04:53時点における版
フェルマーの解説、特に「フェルマーの最後の定理」(Observatio Domini Petri de Fermat ) を含む1670年版ディオファントス の『算術 』。
ピエール・ド・フェルマー
フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 ︵ フ ェ ル マ ー の さ い し ゅ う て い り 、 英 : F e r m a t ' s L a s t T h e o r e m ︶ と は 、 3 以 上 の 自 然 数 n に つ い て 、 x n + y n = z n と な る 自 然 数 の 組 ( x , y , z ) は 存 在 し な い 、 と い う 定 理 で あ る [ 注 釈 1 ] 。 フ ェ ル マ ー の 大 定 理 と も 呼 ば れ る 。 ピ エ ー ル ・ ド ・ フ ェ ル マ ー が 驚 く べ き 証 明 を 得 た と 書 き 残 し た と 伝 え ら れ 、 長 ら く 証 明 も 反 証 も な さ れ な か っ た こ と か ら フ ェ ル マ ー 予 想 と も 称 さ れ た が 、 フ ェ ル マ ー の 死 後 3 3 0 年 経 っ た 1 9 9 5 年 に ア ン ド リ ュ ー ・ ワ イ ル ズ に よ っ て 完 全 に 証 明 さ れ 、 ワ イ ル ズ の 定 理 ま た は フ ェ ル マ ー ・ ワ イ ル ズ の 定 理 と も 呼 ば れ る よ う に な っ た [ 1 ] 。
概要
Cubum autem in duos cubos, aut quadratoquadratum in duos quadratoquadratos, et generaliter nullam in infinitum ultra quadratum potestatem in duos eiusdem nominis fas est dividere cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. Hanc marginis exiguitas non caperet.[4]
立方数 を2つの立方数の和に分けることはできない。4乗数を2つの4乗数の和に分けることはできない。一般に、冪 (べき)が2より大きいとき、その冪乗数を2つの冪乗数の和に分けることはできない。この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる。
と ラ テ ン 語 で 書 き 残 し た 。 彼 の 残 し た 他 の 書 き 込 み は 、 全 て 真 か 偽 か の 決 着 が つ け ら れ た ︵ 証 明 さ れ た ・ 反 例 が 挙 げ ら れ た ︶ が 、 最 後 ま で 残 っ た こ の 予 想 だ け は 誰 も 証 明 す る こ と も 反 例 を 挙 げ る こ と も で き な か っ た 。 そ の た め ﹁ フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 ﹂ [ 注 釈 5 ] と 呼 ば れ る よ う に な っ た 。 内 容 自 体 は 三 平 方 の 定 理 程 度 の 知 識 が あ れ ば 理 解 で き る も の で あ っ た た め 、 プ ロ 、 ア マ チ ュ ア を 問 わ ず 多 く の 者 が そ の 証 明 に 挑 ん だ 。 見 事 に 証 明 し た 者 に は 賞 金 を 与 え る と い う 話 も 出 て き て 、 フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 の 存 在 が 一 般 に も 徐 々 に 知 ら れ る よ う に な っ て い っ た 。
個別研究の時代
n が具体的な値を取るいくつかの場合についてはさまざまな証明が与えられた。
n = 4 :フェルマー
1670年に発行されたディオファントスの『算術』(338–339頁)には、フェルマー自身が記した n=4 の場合の無限降下法 を用いた最終定理の証明が収録されている。
フ ェ ル マ ー 自 身 の 証 明 は 、 デ ィ オ フ ァ ン ト ス の ﹃ 算 術 ﹄ に 記 さ れ た 45 番 目 の 書 き 込 み に 含 ま れ て い る [ 5 ] 。 フ ェ ル マ ー は 以 下 の 手 法 、 法 則 、 定 理 を 使 い 証 明 し た [ 6 ] 。
● 指 数 法 則 に 従 っ て x 4 + y 4 = z 4 を ( x 2 ) 2 + ( y 2 ) 2 = ( z 2 ) 2 に 変 換 し 、 ピ タ ゴ ラ ス 数 の 性 質 を 利 用 す る 。
● x , y , z は 互 い に 素 で あ る と す る 。
● 定 理 ﹁ 互 い に 素 で あ る 2 つ の 数 の 積 が 平 方 数 で あ る な ら ば 、 2 つ の 数 も そ れ ぞ れ 平 方 数 で あ る 。 ﹂
● x を 偶 数 、 z , y を 奇 数 と す る 。
● 偶 数 と 奇 数 の 性 質
● 無 限 降 下 法
フ ェ ル マ ー に よ る 証 明 は 後 に レ オ ン ハ ル ト ・ オ イ ラ ー に よ っ て 簡 潔 な 形 で 直 さ れ る [ 7 ] 。
n = 4 の 場 合 が フ ェ ル マ ー に よ っ て 証 明 さ れ た 後 は 、 残 り の 証 明 は n が 奇 素 数 の 場 合 の み を 考 え れ ば よ い こ と に な る [ 8 ] 。 な ぜ な ら 、 n が 奇 数 の 場 合 は 、 n = p q … r の よ う に 奇 素 数 の 積 で 表 す こ と が で き て 、 奇 素 数 p の と き に 成 り 立 て ば 、 ( x q … r ) p + ( y q … r ) p = ( z q … r ) p よ り n = p q … r の と き も 成 り 立 つ こ と が 示 さ れ る 。 さ ら に 、 n が 偶 数 の 場 合 は 、 4 で 割 っ た 余 り が 0 ま た は 2 と な る の で 、 余 り が 0 す な わ ち n = 4 m の 場 合 は ( x m ) 4 + ( y m ) 4 = ( z m ) 4 よ り 成 り 立 ち 、 余 り が 2 す な わ ち n = 4 m + 2 の 場 合 は n = 2 ( 2 m + 1 ) よ り n が 奇 数 の 因 数 2 m + 1 を 持 つ こ と に な り 2 m + 1 を 素 因 数 分 解 し た と き の 奇 素 数 に つ い て 成 り 立 つ か ら で あ る 。
n = 3 :オイラー
レ オ ン ハ ル ト ・ オ イ ラ ー は 1 7 5 3 年 に ク リ ス テ ィ ア ン ・ ゴ ー ル ド バ ッ ハ へ 宛 て た 書 簡 の 中 で n = 3 の 場 合 の 証 明 法 に つ い て 言 及 し [ 9 ] 、 1 7 6 0 年 に 純 初 等 的 で 完 全 な 証 明 を 得 た [ 1 0 ] 。 さ ら に 、 1 7 7 0 年 に 刊 行 し た 著 書 ﹃ 代 数 学 ﹄ ︵ V o l l s t ä n d i g e A n l e i t u n g z u r A l g e b r a ︶ で は そ の 証 明 と は 異 な り ︵ 複 素 数 を 用 い る ︶ エ レ ガ ン ト な が ら 不 完 全 な 証 明 を 公 開 し た 。 た だ し 、 こ の 2 番 目 の 証 明 は 虚 数 の レ ベ ル 、 具 体 的 に は a + b √ − 3 の 形 の 数 ま で 因 数 分 解 を 行 っ た も の で 、 現 代 の 言 葉 で 言 え ば 、 整 数 環
Z
[
−
3
]
{\displaystyle \mathbb {Z} [{\sqrt {-3}}]}
で 因 数 分 解 を 行 う も の で あ っ た が 、 こ の 整 数 環 で は 素 因 数 分 解 の 一 意 性 が 成 立 し な い ︵ 一 意 分 解 環 で は な い ︶ と い う 不 備 が あ っ た [ 1 1 ] の で 、 の ち に √ − 3 の 代 わ り に 1 の 原 始 3 乗 根
ζ
3
=
(
−
1
±
−
3
)
/
2
{\displaystyle \zeta _{3}=(-1\pm {\sqrt {-3}})/2}
を 付 加 し た 整 数 環
Z
[
ζ
3
]
{\displaystyle \mathbb {Z} [\zeta _{3}]}
︵ こ れ は 円 分 体
Q
[
ζ
3
]
{\displaystyle \mathbb {Q} [\zeta _{3}]}
の 整 数 環 で も あ り 、 素 因 数 分 解 の 一 意 性 が 成 り 立 つ ︶ を 使 う こ と で 修 正 さ れ た 。
n = 5 :ジェルマン、ディリクレ、ルジャンドル
1823年 にソフィ・ジェルマン は、フェルマー予想を奇素数 p に対して、 xp + yp = zp において、
第一の場合
x , y , z のいずれも p で割り切れない
第二の場合
x , y , z のいずれかが p で割り切れる
という2つのケースに分類し、p と 2p +1 が共に素数の場合について、「第一の場合」に関してはフェルマー予想が正しいことを証明した[12] :
ソフィ・ジェルマンの定理 ― p を 2p +1 も素数であるような奇素数とする.このときフェルマーの大定理の第一の場合は指数 p に対して正しい.
例 え ば 、 p = 5 の と き 、 2 p + 1 = 1 1 は 素 数 な の で 、 ソ フ ィ ・ ジ ェ ル マ ン の 定 理 ︵ 英 語 版 ︶ よ り フ ェ ル マ ー 予 想 の ﹁ 第 一 の 場 合 ﹂ は 指 数 n = 5 に 対 し て 正 し い 。
1 8 2 5 年 に ﹁ 第 二 の 場 合 ﹂ も 含 め て n = 5 の 場 合 を 完 全 に 証 明 し た の は ペ ー タ ー ・ グ ス タ フ ・ デ ィ リ ク レ と ア ド リ ア ン = マ リ ・ ル ジ ャ ン ド ル で あ る [ 1 3 ] 。
ジ ェ ル マ ン ま で は ︵ そ し て ジ ェ ル マ ン 以 降 も 当 面 は ︶ ﹁ n = 3 の と き ﹂ あ る い は ﹁ n = 4 の と き ﹂ と い っ た 個 別 研 究 の 域 を 出 な か っ た こ の 問 題 に 対 し 、 解 の 条 件 が ﹁ 第 一 の 場 合 ﹂ に 限 ら れ て い る と は い え 包 括 的 な 証 明 を 与 え よ う と し た 点 に お い て 、 ジ ェ ル マ ン の 研 究 成 果 の 意 義 は き わ め て 大 き い 。
n = 14 :ディリクレおよび n = 7 :ラメ、ルベーグ
1 8 3 2 年 に デ ィ リ ク レ は n = 1 4 の 場 合 を 証 明 し た [ 1 4 ] が 、 上 述 の 通 り n が 素 数 で あ る 場 合 の 方 が 肝 要 な の で 、 こ れ は n = 7 の 場 合 を 証 明 す る た め の 途 中 経 過 で あ っ た 。 し か し 実 際 に n = 7 の 場 合 を 証 明 し た の は ガ ブ リ エ ル ・ ラ メ ︵ 1 8 3 9 年 ︶ と 、 ラ メ の 証 明 に 含 ま れ て い た 誤 り を 訂 正 し た ヴ ィ ク ト ル = ア メ デ ・ ル ベ ー グ ︵ 英 語 版 ︶ ︵ 1 8 4 0 年 ︶ で あ っ た [ 1 3 ] 。
1 8 4 7 年 、 ラ メ は ﹁ フ ェ ル マ ー 予 想 の 一 般 的 解 法 を 発 見 し た ﹂ と 発 表 し 、 同 じ 解 法 を 自 分 の 方 が 先 に 発 見 し て い た と 主 張 す る オ ー ギ ュ ス タ ン = ル イ ・ コ ー シ ー と の 間 で 論 争 に ま で な っ た 。 し か し こ の 解 法 と は x n + y n = z n の 左 辺 を 複 素 数 で 素 因 子 分 解 す る と い う も の で あ り 、 こ の 分 解 は 一 意 的 な も の で な い た め こ の 問 題 に 関 す る 解 法 た り え て い な い こ と が 指 摘 さ れ る [ 1 5 ] 。
ま た 、 n = 7 の 場 合 に つ い て の ラ メ の 証 明 が あ ま り に も 複 雑 な も の だ っ た た め 、 同 様 の 手 法 で n = 1 1 や 13 の 場 合 に つ い て 研 究 し て み よ う と 思 う 者 は い な く な り 、 個 別 研 究 の 時 代 は 終 わ る [ 1 3 ] 。
クンマーの理想数
コ ー シ ー と ラ メ が 争 っ て い た の と 同 じ 頃 、 エ ル ン ス ト ・ ク ン マ ー が 自 ら 打 ち 立 て た 理 想 数 の 理 論 ︵ 後 に リ ヒ ャ ル ト ・ デ ー デ キ ン ト が イ デ ア ル の 理 論 と し て 発 展 さ せ る ︶ を 導 入 す る [ 1 6 ] 。 こ れ に よ り 、 多 く の 素 数 に お い て 一 意 的 な 因 数 分 解 が 可 能 と な り 、 n が 正 則 素 数 で あ る ︵ も し く は 正 則 素 数 で 割 り 切 れ る ︶ 全 て の 場 合 に つ い て は 証 明 が な さ れ た [ 1 7 ] 。 虚 数 レ ベ ル で の 一 意 的 な 因 数 分 解 が 不 可 能 な 非 正 則 素 数 も 無 限 に 存 在 す る [ 注 釈 6 ] が 、 ク ン マ ー は 1 0 0 以 下 の 非 正 則 素 数 ︵ 37 , 59 , 67 の 3 個 し か な い ︶ に つ い て は そ れ ぞ れ 個 別 に 研 究 し て 解 決 し た [ 1 9 ] 。 そ の 結 果 、 1 0 0 ま で の 全 て の 奇 素 数 n に つ い て ︵ 当 然 1 0 0 以 下 の 奇 素 数 を 約 数 に 持 つ 全 て の n に つ い て も ︶ フ ェ ル マ ー 予 想 が 成 り 立 つ こ と が 証 明 さ れ 、 そ れ ま で の 個 別 研 究 か ら こ の 問 題 は 大 き く 飛 躍 し た 。
1 8 5 7 年 、 フ ラ ン ス 科 学 ア カ デ ミ ー は 、 1 8 1 6 年 に 続 き 1 8 5 0 年 に 設 け た ま ま 受 賞 者 の 出 な か っ た ﹁ フ ェ ル マ ー 予 想 の 証 明 者 ﹂ の た め の 懸 賞 金 ︵ 金 メ ダ ル と 3 0 0 0 フ ラ ン ︶ を ︵ 最 終 的 解 決 で な い こ と を 承 知 の 上 で ︶ ク ン マ ー に 与 え た [ 2 0 ] 。 1 8 7 4 年 、 ク ン マ ー は 1 0 1 か ら 1 6 3 ま で の 指 数 に つ い て 計 算 を 実 行 し 、 新 た に 1 0 1 , 1 0 3 , 1 3 1 , 1 4 9 , 1 5 7 の 5 個 が 非 正 則 素 数 で あ る こ と を 示 し た [ 2 1 ] 。
そ の 後 、 ク ン マ ー の 理 想 数 を 発 展 さ せ た 代 数 的 整 数 論 に よ る 判 定 法 を コ ン ピ ュ ー タ ー で 計 算 さ せ る こ と に よ り 、 1 9 9 4 年 の 初 め に は
第 一 の 場 合
奇 素 数 p < 8 . 8 × 10 20
第 二 の 場 合
奇 素 数 p < 4 0 0 0 0 0 0
の 場 合 に フ ェ ル マ ー 予 想 が 成 り 立 つ こ と が 証 明 さ れ た [ 2 2 ] 。
近代的アプローチへ
モジュラー形式
アンリ・ポアンカレ は上半平面 上の関数についての研究から、モジュラー形式 を案出する。
モーデル予想
ゲ ル ト ・ フ ァ ル テ ィ ン グ ス に よ る モ ー デ ル 予 想 の 解 決 ︵ 1 9 8 3 年 ︶ に よ り 、 フ ェ ル マ ー 方 程 式 x n + y n = z n が 整 数 解 を も つ な ら ば ︵ つ ま り フ ェ ル マ ー 予 想 が 誤 り な ら ば ︶ そ の 解 の 個 数 は 本 質 的 に 有 限 個 し か な い こ と が 証 明 さ れ る 。 こ の ﹁ 有 限 個 ﹂ が ﹁ 実 は 0 個 ﹂ で あ る こ と が 示 さ れ れ ば フ ェ ル マ ー 予 想 は 証 明 で き た こ と に な る が 、 こ の 方 向 か ら の 絞 り 込 み に は 行 き 詰 ま り が 指 摘 さ れ て い た 。 と も あ れ 、 こ の 時 点 で フ ェ ル マ ー 予 想 が ﹁ ほ と ん ど 全 て の 場 合 に つ い て 正 し い ﹂ こ と が 判 明 し た と 言 う こ と は で き た 。
谷山–志村予想
1 9 5 5 年 9 月 、 日 光 で 開 催 さ れ た 整 数 論 に 関 す る 国 際 会 議 で 、 谷 山 豊 が 提 出 し た 幾 つ か の ﹁ 問 題 ﹂ を 原 型 と す る 数 学 の 予 想 が 谷 山 – 志 村 予 想 で あ る 。 そ こ で は 楕 円 曲 線 と モ ジ ュ ラ ー 形 式 の 間 の 深 い 関 係 が 示 唆 さ れ て お り 、 後 に 志 村 五 郎 に よ っ て 定 式 化 さ れ た 。 ﹁ す べ て の 楕 円 曲 線 は モ ジ ュ ラ ー で あ る ﹂ と い う 、 発 表 当 時 は 注 目 を 引 か な か っ た こ の 谷 山 – 志 村 予 想 が 、 の ち に フ ェ ル マ ー 予 想 の 証 明 に 大 き な 役 割 を 果 た す こ と と な る 。
実 は こ の 前 年 の 1 9 5 4 年 、 あ る 保 型 形 式 に 関 す る ラ マ ヌ ジ ャ ン 予 想 の 一 部 を マ ル テ ィ ン ・ ア イ ヒ ラ ー ︵ 英 語 版 ︶ が 証 明 し て い た 。 そ こ で は ﹁ 解 析 的 ゼ ー タ = 代 数 的 ゼ ー タ ﹂ が 示 さ れ て お り 、 谷 山 – 志 村 予 想 の 最 初 の 実 例 と 呼 べ る も の だ っ た 。
こ の ラ マ ヌ ジ ャ ン 予 想 → 谷 山 – 志 村 予 想 → ラ ン グ ラ ン ズ 予 想 → 超 ラ ン グ ラ ン ズ 予 想 と い う 一 連 の 流 れ ︵ ゼ ー タ の 統 一 ︶ は 数 論 の 中 心 的 テ ー マ の 一 つ と な っ て い る 。
フライ・セール予想
1 9 8 4 年 に ゲ ル ハ ル ト ・ フ ラ イ は フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 に 対 す る 反 例 a n + b n = c n か ら は モ ジ ュ ラ ー で な い 楕 円 曲 線 ︵ フ ラ イ 曲 線 ︶ ‥
y 2 = x ( x − a n ) ( x + b n )
が 得 ら れ 、 こ れ は 谷 山 – 志 村 予 想 に 対 す る 反 例 を 与 え る こ と に な る と い う ア イ デ ィ ア を 提 示 。 ジ ャ ン = ピ エ ー ル ・ セ ー ル に よ っ て 定 式 化 さ れ た こ の 予 想 は フ ラ イ ・ セ ー ル の イ プ シ ロ ン 予 想 と 呼 ば れ 、 1 9 8 6 年 に ケ ン ・ リ ベ ッ ト に よ っ て 証 明 さ れ た 。
こ れ ら の 経 過 は 以 下 の よ う に 整 理 す る こ と が で き る 。
(一) ま ず 、 フ ェ ル マ ー 予 想 が 偽 で あ る ︵ フ ェ ル マ ー 方 程 式 が 自 然 数 解 を も つ ︶ と 仮 定 す る 。
(二) こ の 自 然 数 解 か ら は 、 モ ジ ュ ラ ー で な い 楕 円 曲 線 を 作 る こ と が で き る 。
(三) し か し 、 谷 山 – 志 村 予 想 が 正 し い な ら ば 、 モ ジ ュ ラ ー で な い 楕 円 曲 線 は 存 在 し な い 。
(四) 矛 盾 が 導 か れ た の で 、 当 初 の 仮 定 が 誤 っ て い る こ と と な る 。
(五) し た が っ て 、 フ ェ ル マ ー 予 想 は 真 で あ る 。 ︵ 背 理 法 ︶
つ ま り 、 谷 山 – 志 村 予 想 が 証 明 さ れ た な ら ば 、 そ れ は フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 が 証 明 さ れ た こ と を も 意 味 す る の で あ る ( = 完 全 証 明 へ の 道 が つ な が っ た ) 。
し か し 、 当 時 の 数 学 者 た ち の ほ と ん ど が ﹁ 谷 山 - 志 村 予 想 は 証 明 不 可 能 ﹂ と 考 え て お り 、 こ こ ま で ア プ ロ ー チ で き て も フ ェ ル マ ー 予 想 を 解 決 し よ う と 取 り 組 む 数 学 者 は 皆 無 に 等 し か っ た 。
つ ま り ケ ン ・ リ ベ ッ ト に よ る イ プ シ ロ ン 予 想 の 解 決 は ﹃ 証 明 不 可 能 な フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 ﹄ が ﹃ 証 明 不 可 能 な 谷 山 - 志 村 予 想 ﹄ に 置 き 換 わ っ た に す ぎ な か っ た の で あ る 。
最終的解決
アンドリュー・ワイルズ
プ リ ン ス ト ン 大 学 に い た イ ギ リ ス 生 ま れ の 数 学 者 ア ン ド リ ュ ー ・ ワ イ ル ズ は 岩 澤 主 予 想 ( I w a s a w a m a i n c o n j e c t u r e ) を 解 決 す る な ど し て 、 元 々 数 論 の 研 究 者 と し て 有 名 な 人 物 で あ っ た 。 彼 は 10 歳 の 時 に 触 れ た フ ェ ル マ ー 予 想 に 憧 れ て 数 学 者 と な っ た が 、 プ ロ と な っ て か ら は 子 供 時 代 の 夢 は 封 印 し 、 フ ェ ル マ ー 予 想 の よ う な 孤 立 し た 骨 董 品 で は な く 主 流 数 学 の 研 究 に 勤 し ん で い た 。 と こ ろ が 1 9 8 6 年 、 ケ ン ・ リ ベ ッ ト が フ ラ イ ・ セ ー ル 予 想 を 解 決 し た こ と に よ り 、 フ ェ ル マ ー 予 想 に 挑 む こ と は 、 主 流 数 学 の 一 大 予 想 に 挑 む こ と と 同 義 に な っ て し ま っ た 。 か つ て の 憧 れ だ っ た も の が 、 今 や 骨 董 品 ど こ ろ か 解 か ず に は 済 ま さ れ な い 中 心 課 題 の 一 つ に な っ た の で あ る 。 ワ イ ル ズ は こ の こ と に 強 い 衝 撃 を 受 け 発 奮 、 正 に フ ェ ル マ ー 予 想 の 解 決 を 目 的 と し て 、 他 の 研 究 を 全 て 止 め て 谷 山 – 志 村 予 想 に 取 り 組 む こ と と な っ た 。 た だ し こ の 際 、 彼 は 人 々 の 耳 目 を 集 め 過 ぎ る こ と を 懸 念 し て 、 表 面 的 に は 未 発 表 の 研 究 成 果 を 小 出 し に す る こ と で 偽 装 し 、 谷 山 – 志 村 予 想 の 研 究 を 秘 密 裏 に 行 う こ と と し た 。
ワ イ ル ズ は 、 代 数 幾 何 学 ︵ 特 に 楕 円 曲 線 と 群 ス キ ー ム ︵ 英 語 版 ︶ ︶ や 数 論 ︵ モ ジ ュ ラ ー 形 式 や ガ ロ ア 表 現 、 ヘ ッ ケ 環 、 岩 澤 理 論 ︶ の 高 度 な 道 具 立 て を 用 い て 証 明 を 試 み た が 、 類 数 公 式 の 導 出 に 当 た り 岩 澤 理 論 を 用 い る 方 向 で は 行 き 詰 ま っ て し ま っ た 。 そ こ で コ リ ヴ ァ ギ ン = フ ラ ッ ハ 法 ︵ ヴ ィ ク タ ー ・ コ リ ヴ ァ ギ ン と マ テ ィ ア ス ・ フ ラ ッ ハ ︵ 英 語 版 ︶ の 方 法 ︶ に 基 づ く よ う 方 針 転 換 し 、 最 後 の レ ビ ュ ー 段 階 で 自 分 の コ リ ヴ ァ ギ ン = フ ラ ッ ハ 法 の 運 用 に 誤 り が な い か 確 認 を 依 頼 す る た め プ リ ン ス ト ン の 同 僚 ニ ッ ク ・ カ ッ ツ に ﹁ 谷 山 - 志 村 が 証 明 で き そ う だ ﹂ と 打 ち 明 け 、 助 け を 得 る ま で 、 細 部 に 至 る ま で の 証 明 を 完 璧 な 秘 密 の う ち に ほ ぼ す べ て 独 力 で 成 し 遂 げ た ︵ こ こ ま で で 7 年 が 経 過 し て い た ︶ 。 彼 が ケ ン ブ リ ッ ジ 大 学 で 1 9 9 3 年 の 6 月 21 日 か ら 23 日 に か け て 3 つ の 講 義 か ら な る コ ー ス で 証 明 を 発 表 し た と き 、 聴 衆 は 証 明 に 使 わ れ た 数 々 の 発 想 と 構 成 に 驚 愕 し た 。
た だ し 、 そ の 後 の 査 読 に お い て 、 ワ イ ル ズ の 証 明 に は 1 箇 所 致 命 的 な 誤 り が あ る こ と が 判 明 し た 。 こ の 修 正 は 難 航 し た が 、 ワ イ ル ズ は 彼 の 教 え 子 リ チ ャ ー ド ・ テ イ ラ ー の 助 け を 借 り つ つ 、 約 1 年 後 の 1 9 9 4 年 9 月 、 障 害 を 回 避 す る こ と に 成 功 し た 。 ワ イ ル ズ は そ の 瞬 間 を ﹁ 研 究 を 始 め て 以 来 、 最 も 大 事 な 一 瞬 ﹂ と 語 っ て い る 。 1 9 9 4 年 10 月 に 新 し い 証 明 を 発 表 。 1 9 9 5 年 の A n n a l s o f M a t h e m a t i c s 誌 に お い て 出 版 し 、 そ の 証 明 は 、 1 9 9 5 年 2 月 13 日 に 誤 り が な い こ と が 確 認 さ れ [ 2 3 ] 、 3 6 0 年 に 渡 る 歴 史 に 決 着 を 付 け た 。
証明した論文
エピソード
● 現 在 も 未 解 決 の 問 題 の 大 多 数 は 、 問 題 自 体 が 難 解 な 用 語 を 用 い な け れ ば 表 現 で き な い も の で あ る の に 対 し 、 本 定 理 の 言 わ ん と す る と こ ろ は 中 学 生 程 度 の 知 識 さ え あ れ ば 理 解 で き る た め 、 数 多 く の ア マ チ ュ ア 数 学 フ ァ ン が こ れ を 解 決 し よ う と 熱 中 し 、 数 学 を 志 す 者 も 輩 出 さ れ た 。 最 終 的 に 解 決 に 導 い た ワ イ ル ズ 自 身 も そ う し た 者 の 一 人 で あ っ た 。
● フ ェ ル マ ー は こ の 定 理 の 証 明 に 関 し て ﹁ 真 に 驚 く べ き 証 明 を 見 つ け た ﹂ と 記 述 を 残 し て い る 。 し か し 、 現 在 知 ら れ て い る 証 明 は 、 分 野 ご と の 壁 が 厚 く な っ た こ と で 、 半 ば 独 自 に 進 化 と 発 展 を 遂 げ た 各 数 学 分 野 の 最 新 理 論 を 巧 妙 に 組 み 合 わ せ 、 駆 使 す る こ と で 構 成 さ れ て い る 。 い か に ﹁ 数 論 の 父 ﹂ と 呼 ば れ る フ ェ ル マ ー で あ っ て も 、 4 0 0 年 前 に 独 自 に こ の 証 明 を 成 し 遂 げ た と は 考 え 難 い た め 、 フ ェ ル マ ー が n = 4 の 場 合 に 用 い た 無 限 降 下 法 に よ る 証 明 が 全 て の 自 然 数 に 対 し て 適 用 可 能 で あ る と の 勘 違 い に よ る も の と も 考 え ら れ る 。 ま た 、 整 数 論 が 専 門 の 東 洋 大 学 の 小 山 信 也 教 授 は 科 学 雑 誌 ﹁ N e w t o n ﹂ 中 で こ う 語 っ て い る 。
﹁ そ の 後 フ ェ ル マ ー は , n = 3 の 場 合 を 研 究 し た 形 跡 が あ り ま す 。 完 全 な 証 明 を 得 た の な ら , 個 別 の n に つ い て 研 究 す る 必 要 が あ り ま せ ん 。 完 全 な 証 明 を 見 つ け た と い う の は 間 違 い だ っ た と , フ ェ ル マ ー 自 身 も 気 づ い て い た の で は な い で し ょ う か ﹂ [ 2 4 ] 。
● 最 終 的 証 明 は ス キ ー ム の 圏 な ど の 現 代 的 な 代 数 幾 何 の 構 成 を 用 い て い る 。 こ れ は ノ イ マ ン ・ ベ ル ナ イ ス ・ ゲ ー デ ル 流 の 集 合 論 ︵ N B G 集 合 論 ︶ と い う 、 通 常 の 集 合 に 加 え て 類 ( c l a s s ) を 考 え 、 た だ し 集 合 に 対 す る 言 明 の 真 偽 ︵ 証 明 可 能 性 ︶ は Z F C 集 合 論 と 同 じ に な る ︵ Z F C の 保 存 的 拡 大 と い う ︶ よ う に し た 枠 組 み で 定 義 さ れ る 。 N B G 集 合 論 は 本 質 的 に は Z F C 集 合 論 と 同 じ も の で 、 Z F C 集 合 論 に 到 達 不 能 基 数 の 存 在 公 理 を 付 け 加 え て グ ロ タ ン デ ィ ー ク 宇 宙 の 構 成 を 可 能 に し た も の で 置 き 換 え ら れ る と 考 え ら れ て い る 。 こ の こ と か ら 最 終 定 理 の 証 明 の た め に 本 当 は ど れ だ け の 公 理 が 必 要 な の か に つ い て は 疑 問 が 呈 さ れ て も い て 、 Z F C よ り は 弱 い 体 系 で も 十 分 な の で は な い か と 言 わ れ て い る 。
● 最 終 的 な 証 明 で 重 要 な 役 割 を 果 た し た 谷 山 – 志 村 予 想 に 関 し て 、 ワ イ ル ズ と テ イ ラ ー が 証 明 し た の は ﹁ 半 安 定 ﹂ と 呼 ば れ る 特 殊 な 場 合 で あ り 、 一 般 的 な 場 合 に 関 し て は 証 明 を 与 え る こ と は で き な か っ た が 、 フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 ︵ の 反 例 ︶ か ら く る で あ ろ う 反 例 の 可 能 性 を 排 除 す る に は こ れ で 十 分 だ っ た 。 ち な み に 、 後 に 谷 山 – 志 村 予 想 に 完 全 な 証 明 を 与 え た の は ワ イ ル ズ の 弟 子 で あ る ブ ラ イ ア ン ・ コ ン ラ ッ ド と フ レ ッ ド ・ ダ イ ア モ ン ド で あ り 、 今 で は 数 論 の 1 つ の 到 達 点 と さ れ て ﹁ モ ジ ュ ラ ー 性 定 理 ﹂ と よ ば れ る こ と も あ る 。
● 1 9 8 8 年 に 当 時 西 ド イ ツ の マ ッ ク ス ・ プ ラ ン ク 数 学 研 究 所 に い た 、 宮 岡 洋 一 が 証 明 で き そ う だ と い う ニ ュ ー ス が 報 道 さ れ た 。 た だ し 実 際 に は 不 備 が あ り 、 完 全 な 証 明 に は 至 ら な か っ た 。
● 1 9 0 8 年 、 ド イ ツ の 富 豪 パ ウ ル ・ ヴ ォ ル フ ス ケ ー ル は 2 0 0 7 年 9 月 13 日 ま で の 期 限 付 き で フ ェ ル マ ー 予 想 の 証 明 者 に 対 し て 10 万 金 マ ル ク の 懸 賞 金 を 設 け た ( W o l f s k e h l - P r e i s ) 。 当 然 の こ と な が ら ワ イ ル ズ が 受 賞 し 、 そ の 賞 金 は 約 5 0 0 万 円 程 度 で あ る が 、 第 一 次 世 界 大 戦 後 の ハ イ パ ー イ ン フ レ ー シ ョ ン が な け れ ば 、 十 数 億 円 で あ っ た と い わ れ る 。 授 賞 式 は 1 9 9 7 年 6 月 、 ゲ ッ テ ィ ン ゲ ン 大 学 の 大 ホ ー ル に て 、 5 0 0 人 の 数 学 者 が 列 席 す る 中 、 執 り 行 わ れ た 。
● 解 決 以 前 に 書 か れ た SF な ど の 文 芸 作 品 に お け る ﹁ 未 来 ﹂ に お い て 、 未 解 決 の 問 題 と し て 言 及 さ れ て い る こ と が し ば し ば あ る [ 2 5 ] な ど 、 解 決 以 前 は ﹁ 未 解 決 問 題 ﹂ の 代 表 的 な 存 在 で あ っ た 。
● 解 決 以 前 に お い て 、 サ イ コ ッ プ の メ ン バ ー だ っ た カ ー ル ・ セ ー ガ ン は 、 ﹁ 人 類 よ り 高 度 な 文 明 を 持 つ 知 的 生 命 体 と 意 思 の み で 交 信 で き る ﹂ と い う チ ャ ネ ラ ー に 対 し 、 そ の 知 的 生 命 体 へ の 質 問 と し て ﹁ フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 ﹂ の 解 法 を 聞 い て み る が 、 こ と ご と く 無 視 さ れ た [ 注 釈 7 ] 。
● 2 0 2 0 年 11 月 、 望 月 新 一 ら の グ ル ー プ が プ レ プ リ ン ト を 発 表 し 、 望 月 が 提 唱 す る 宇 宙 際 タ イ ヒ ミ ュ ラ ー 理 論 の 応 用 に よ り 、 フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 の 別 証 明 を 与 え た と 主 張 し て い る [ 2 6 ] 。
フィクション
偽の反例
1 9 9 8 年 の ア ニ メ ﹃ ザ ・ シ ン プ ソ ン ズ ﹄ シ ー ズ ン 10 第 2 話 ﹁ 発 明 は 反 省 の パ パ ﹂ に て 、 ホ ー マ ー ・ シ ン プ ソ ン が 次 の 反 例 で あ る よ う に 見 え る 等 式 を 書 く 場 面 が あ る [ 2 7 ] ;
3987
12
+
4365
12
=
4472
12
{\displaystyle 3987^{12}+4365^{12}=4472^{12}}
( a = 3 9 8 7 , b = 4 3 6 5 , c = 4 4 7 2 , n = 1 2 )
し か し 、 こ の 等 式 は 偽 で あ り 、 厳 密 に 計 算 す る と 以 下 の よ う に な る 。
● 3 9 8 7 12 = 16 1 3 4 4 7 4 6 0 9 7 5 1 2 9 1 2 8 3 4 9 6 4 9 1 9 7 0 5 1 5 1 5 1 7 1 5 3 4 6 4 8 1
● 4 3 6 5 12 = 47 8 4 2 1 8 1 7 3 9 9 4 7 3 2 1 3 3 2 7 3 9 7 3 8 9 8 2 6 3 9 3 3 6 1 8 1 6 4 0 6 2 5
● 3 9 8 7 12 + 4 3 6 5 12 = 63 9 7 6 6 5 6 3 4 9 6 9 8 6 1 2 6 1 6 2 3 6 2 3 0 9 5 3 1 5 4 4 8 7 8 9 6 9 8 7 1 0 6 ︵ 約 6 . 4 × 1 0 43 ︶
一 方 、
● 4 4 7 2 12 = 63 9 7 6 6 5 6 3 4 8 4 8 6 7 2 5 8 0 6 8 6 2 3 5 8 3 2 2 1 6 8 5 7 5 7 8 4 1 2 4 4 1 6 ︵ 約 6 . 4 × 1 0 43 ︶
最 初 の 10 桁 ま で が 同 じ 数 字 列 で あ る 。 そ の 差 は 、
● 3 9 8 7 12 + 4 3 6 5 12 - 4 4 7 2 12 = 1 2 1 1 8 8 6 8 0 9 3 7 3 8 7 2 6 3 0 9 8 5 9 1 2 1 1 2 8 6 2 6 9 0
こ れ は 約 1 . 2 1 2 × 1 0 33 ほ ど の 差 で あ る 。
ま た 、
● ( 3 9 8 7 12 + 4 3 6 5 12 ) 1 / 1 2 = 4 4 7 2 . 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0 5 9 2 9 0 7 3 8 2 1 3 5 2 9 2 4 1 4 4 9 4 0 9 ・ ・ ・
● 4 4 7 2 . 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0 5 9 2 9 0 7 3 8 2 1 3 5 2 9 2 4 1 4 4 9 4 0 9 / 4 4 7 2 = 1 . 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 5 7 8 5 5 3
こ れ は 1 . 5 8 × 1 0 - 1 2 ほ ど の 差 で あ る 。
脚注
注釈
(一) ^ こ れ に 対 し て n = 2 の と き 、 x 2 + y 2 = z 2 を 満 た す 自 然 数 の 組 ( x , y , z ) は 無 数 に 存 在 し 、 ピ タ ゴ ラ ス 数 と 呼 ば れ る 。
(二) ^ フ ェ ル マ ー の 書 き 込 み 入 り の ﹃ 算 術 ﹄ 原 本 は 、 今 日 で は 失 わ れ て い る 。 フ ェ ル マ ー が 当 時 読 ん で い た ﹃ 算 術 ﹄ は 、 1 6 2 1 年 に フ ラ ン ス の 貴 族 バ シ ェ が ギ リ シ ア 語 の 原 文 に ラ テ ン 語 の 翻 訳 を 追 加 し た 対 訳 版 で あ る [ 2 ] [ 3 ] 。
(三) ^ 48 個 の 書 き 込 み の 全 訳 は 足 立 ( 1 9 8 6 ) に 収 録 さ れ て い る 。
(四) ^ こ こ で 、 平 方 数 と は 有 理 数 の 平 方 を 意 味 す る 。 他 の 冪 も 同 様 。 よ っ て 、 ﹃ 算 術 ﹄ の 元 の 問 題 を 現 代 風 に 表 現 す れ ば 、 有 理 数 a に 対 し 、 x 2 + y 2 = a 2 の 正 の 有 理 数 解 を ︵ 1 つ ︶ 求 め よ 、 と い う こ と で あ る 。
(五) ^ 定 理 の 証 明 が な さ れ た 1 9 9 5 年 よ り も 前 か ら こ の 予 想 を ﹁ 定 理 ﹂ と 呼 ん で い た こ と に は 無 理 が あ る が 、 反 例 も 挙 げ ら れ て お ら ず 、 予 想 自 体 は ﹁ 真 で あ ろ う ﹂ と 誰 も が 予 測 し た た め 、 ﹁ 定 理 ﹂ と 呼 ば れ る よ う に な っ た 。
(六) ^ 非 正 則 素 数 が 無 限 に 存 在 す る こ と は 1 9 1 5 年 に ヨ ハ ン ・ イ ェ ン セ ン に よ っ て 証 明 さ れ た [ 1 8 ] 。
(七) ^ カ ー ル ・ セ ー ガ ン は 以 下 の よ う に 述 べ て い る 。
私 は と き ど き 、 宇 宙 人 と ﹁ コ ン タ ク ト ﹂ し て い る と い う 人 か ら 手 紙 を も ら う こ と が あ る 。 ﹁ 宇 宙 人 に 何 で も 質 問 し て く だ さ い ﹂ と 言 わ れ る の で 、 こ こ 数 年 は あ ら か じ め 短 い 質 問 リ ス ト を 用 意 し て い る 。 聞 く と こ ろ に よ る と 、 宇 宙 人 は と て も 進 歩 し て い る そ う だ 。 そ こ で こ ん な 質 問 を し て み る ― ― ﹁ フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 を 簡 単 に 証 明 し て く だ さ い ﹂ 。 あ る い は 、 ゴ ル ト バ ッ ハ の 予 想 で も い い 。 も ち ろ ん 宇 宙 人 は 、 ﹁ フ ェ ル マ ー の 最 終 定 理 ﹂ と い う 呼 び 方 は し な い だ ろ う か ら 、 そ の 内 容 を 説 明 し な く て は な ら な い 。 そ こ で 例 の 、 冪 ︵ べ き ︶ 指 数 つ き の ご く 簡 単 な 式 を 書 い て お く の だ が 、 返 事 を も ら っ た こ と は た だ の 一 度 も な い 。 — カ ー ル ・ セ ー ガ ン 、 ﹃ カ ー ル ・ セ ー ガ ン 科 学 と 悪 霊 を 語 る ﹄ 青 木 薫 訳 、 新 潮 社 、 1 9 9 7 年 9 月 20 日 。 I S B N 4 - 1 0 - 5 1 9 2 0 3 - 5 。 p p . 1 0 8 f f
出典
^ Newton 2019年2月号 p86
^ 足立 1995 , pp. 40f
^ 足立 2006 , pp. 17, 87–95
^ Panchishkin & Manin 2007 , p. 341
^ 足立 2006 , pp. 93–95
^ 足立 2006 , pp. 99–101
^ 足立 2006 , pp. 137–139
^ 足立 2006 , pp. 139–140
^ 足立 2006 , p. 140
^ 足立 2006 , p. 148
^ 足立 2006 , pp. 140–148
^ 足立 2006 , pp. 150–156
^ a b c 足立 2006 , p. 150
^ 足立 2006 , p. 231
^ 足立 2006 , pp. 156–165
^ 足立 2006 , pp. 166–218
^ 足立 2006 , p. 215
^ 足立 2006 , pp. 217, 227
^ 足立 2006 , pp. 223–224
^ 足立 2006 , p. 220
^ 足立 2006 , pp. 215, 226
^ 足立 1995 , pp. 17, 128
^ 1995年2月の毎日新聞縮小版より
^ 『Newton別冊 数学の世界[増補第3版]』ニュートンプレス、2019年11月5日、156頁。
^ 『新スタートレック 』38話「ホテル・ロイヤルの謎」など
^ SHINICHI MOCHIZUKI (30 November 2020). Explicit Estimates in Inter-universal Teichm¨uller Theory (PDF) (Report). 京都大学数理解析研究所. 2020年12月5日閲覧 。
^ Singh, Simon (2013) (英語). The Simpsons and Their Mathematical Secrets . A&C Black. pp. 35–36. ISBN 978-1-4088-3530-2 . https://books.google.com/books?id=feg_AQAAQBAJ&pg=PA35
参考文献
関連文献
小説
まんが版
さらに進んだ書物
関連項目
外部リンク