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2011年1月25日 (火) 10:27時点における版

三河松井氏︵みかわまついし︶は、三河国幡豆郡発祥の松井氏。はじめ今川氏や東条吉良氏に仕え、後には徳川家康の家臣となった松井忠次とその一族をさす。駿河国・遠江国の守護大名で戦国大名化した今川氏に早くから仕えた遠江松井氏︵信薫や宗信に代表される︶が代々遠州二俣城に居城したのに対し、三河国幡豆郡吉良庄出身で、天文期よりその領主東条吉良氏に仕えた。このうち松井忠次はこの吉良氏に姻戚関係を持った松平氏に帰属して東条松平氏の成立に寄与、その功績により徳川家康より松平称姓を許された。以後、忠次の系統が支族に至るまで松平を称し、松井松平家と呼ばれた。

発祥・経歴

﹃寛政重修諸家譜﹄などは初祖を松井忠直︵通称金四郎、実名は忠信とも︶とし、松平清康・広忠に歴仕して武功ありとするが、忠直は六条判官源為義の子松井冠者維義、その15代の裔孫・松井為維︵惣左衛門︶の子︵もしくは孫︶と云う。しかし、松井冠者維義を遠祖とする家伝は遠州系松井氏に同じく︵維義17代の子孫・松井義行︵山城守︶の系︶、元は同族であったと考えられている。一部の系図類には遠州松井氏の惣領である松井宗能︵山城守︶の弟の系に掛けて初代・惣左衛門為維、2代・惣左衛門某、3代・金四郎忠直(?-1542)、4代・左近忠次とするものがある。今川氏の属臣として東条吉良氏の寄騎であったらしい。永禄4年︵1561年︶に今川方東条吉良氏が徳川家康に降服後、松井忠次は家康に従った。この時より、今川家重臣の遠州二俣城主松井氏とは別の歩みを始めた。遠州松井氏が主家今川氏の没落に伴い零落していったのとは対照的に、三河の忠次とその一族は徳川軍の主力の一翼を担い、今川・武田・北条の戦国大名諸氏と戦い、忠次自身は天正11年︵1583年︶、伊豆国沼津の三枚橋城にて北条氏との対陣中に死去した。松井忠次は遠州諏訪原城︵諏訪之原城、牧野城︶攻落やその後の守備に功績甚大と評され、家康よりその偏諱と松平の名乗りを与えられて松平康親と改称した。康親嫡子松平康重︵周防守︶は父の死後もその遺志を継ぎ、三枚橋城を守備した。その後も康重は功を重ね、北条氏降伏後の天正18年︵1590年︶、家康の関東移封に伴い、武蔵国私市藩2万石に封じられ、その後常陸笠間藩3万石に転じるなど徳川譜代大名になった。以後、この系統は転封を繰り返して、丹波国篠山藩・和泉国岸和田藩・石見国浜田藩など、幕末までに十余度も支配地が替わった。最後は第12代藩主・康英の時に武蔵川越藩︵8万4千石︶にて明治維新を迎えた。

傍系等

松平康親以前の同系の支族には、慶長6年の笠間転封に伴い松平康重が東条松平家の後見から離れると、これに代わって武蔵忍藩在任中の東条松平家当主忠吉の家老として補佐役を勤め、慶長5年︵1600年︶忠吉の関ヶ原初陣に従軍、忠吉の尾張清洲52万石栄転にも従った松井図書︵忠勝︶やその子松井石見守︵忠通、忠光とも︶がある。この系統は主君忠吉の病死後は尾張徳川家の祖徳川義直に仕えて名古屋藩藩士となった。また、康親弟の松井光次の系統には家康麾下の牧野康成に付属され、のち越後長岡藩家老家となった流もある︵詳細→越後長岡藩の家臣団︶。ほかに小身ではあるが徳川幕臣と、伊勢国鳥羽藩稲垣氏の家臣に松井冠者維義を遠祖とする松井氏がある。徳川幕臣の松井氏は御家人から広敷の添番を経て徳川綱吉の妾、清閑寺氏の用達に抜擢され、旗本︵150俵︶の列に加わり子孫は小十人に列することが多かった。鳥羽藩主・稲垣氏は、越後長岡藩主・牧野忠成の父である牧野康成が属臣であったという出自を持つためか、鳥羽藩永代家老・山本氏︵300石︶をはじめ長岡家臣と同族の者がこれに随従していることがある。忠吉の支流︵越後長岡藩家老・松井氏の支流となるとみられる︶で鳥羽藩士となった松井氏2家︵いずれも60石︶がある。

系譜

太線は実子、細線は養子（黒文字表示の実名は養子として転出を表す）。

松井忠直
 ┃
松平康親
 ┃
康重
 ┣━━━━━━┳━━━━━━┳━━━━━━┓
康政          康映 　　   　康命　      　康敬
 ┃      　　　┃            ┃            ┃
康朗   　　　 康官          康雄          康郷
 ┃            ┣━━┓      ┃            ┣━━━━┳━━━━┓
康寛          康員  康房    康納          康豊　　　康平    前田房長
 ┃            ├───┐    ┣━━━┓              ┃        ┣━━━┓
康晴          康房    康豊  康詮    康年            康般    前田清長   康定   
 ｜                    ┃    ┣━━━┳━━━┓                ┃
康年                　康福  康孝    康休    康道              康保
                       ｜            ┃      ┣━━━┓            　　　　　　　　　            
                      康定          康疆    康任    康正  
                       ├───┐    ┃      
                      康保    康任  康英(長崎奉行)                                    
                            ┣━━━┳━━━┓                  
                              康寿    康爵    康圭
                                               ┃ 
                                              康泰
                                               ｜
                                              康英
                                               ｜
                                              康載

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-'''三河松井氏'''︵みかわまついし︶は、[[三河国]][[幡豆郡]]発祥の[[松井氏]]。はじめ[[今川氏]]や東条[[吉良氏]]に仕え、後には[[徳川家康]]の家臣となった[[松平康親|松井忠次]]とその一族をさす。[[駿河国]]・[[遠江国]]の[[守護大名]]で[[戦国大名]]化した今川氏に早くから仕えた[[遠江松井氏]]([[松井信薫|信薫]]や[[松井宗信|宗信]]に代表される)が代々遠州[[二俣城]]に居城したのに対し、[[三河国]][[幡豆郡]]吉良庄出身で、[[天文 (元号)|天文]]期よりその領主[[吉良氏|東条吉良氏]]に仕えた。このうち松井忠次はこの吉良氏に姻戚関係を持った[[松平氏]]に帰属して[[東条松平家|東条松平氏]]の成立に寄与、その功績により徳川家康より松平称姓を許された。以後、忠次の系統が支族に至るまで松平を称し、'''松井松平家'''と呼ばれた。
+'''三河松井氏'''︵みかわまついし︶は、[[三河国]][[幡豆郡]]発祥の[[松井氏]]。はじめ[[今川氏]]や東条[[吉良氏]]に仕え、後には[[徳川家康]]の家臣となった[[松平康親|松井忠次]]とその一族をさす。[[駿河国]]・[[遠江国]]の[[守護大名]]で[[戦国大名]]化した今川氏に早くから仕えた[[遠江松井氏]]︵[[松井信薫|信薫]]や[[松井宗信|宗信]]に代表される︶が代々遠州[[二俣城]]に居城したのに対し、[[三河国]][[幡豆郡]]吉良庄出身で、[[天文 (元号)|天文]]期よりその領主[[吉良氏|東条吉良氏]]に仕えた。このうち松井忠次はこの吉良氏に姻戚関係を持った[[松平氏]]に帰属して[[東条松平家|東条松平氏]]の成立に寄与、その功績により徳川家康より松平称姓を許された。以後、忠次の系統が支族に至るまで松平を称し、'''松井松平家'''と呼ばれた。
 [[ファイル:Japanese crest Tuta.svg|thumb|120px|松井松平家の家紋 ＝ 蔦]]
 == 発祥・経歴 ==
-﹃[[寛政重修諸家譜]]﹄などは初祖を'''[[松井忠直]]'''︵通称金四郎、実名は忠信とも︶とし、[[松平清康]]・[[松平広忠|広忠]]に歴仕して武功ありとするが、忠直は六条判官[[源為義]]の子松井冠者[[源維義|維義]]、その十五代の裔孫・松井為維︵惣左衛門︶の子(もしくは孫)と云う。しかし、松井冠者維義を遠祖とする家伝は遠州系松井氏に同じく(維義十七代の子孫・松井義行︵山城守︶の系)、元は同族であったと考えられている。
+﹃[[寛政重修諸家譜]]﹄などは初祖を'''[[松井忠直]]'''︵通称金四郎、実名は忠信とも︶とし、[[松平清康]]・[[松平広忠|広忠]]に歴仕して武功ありとするが、忠直は六条判官[[源為義]]の子松井冠者[[源維義|維義]]、その15代の裔孫・松井為維︵惣左衛門︶の子︵もしくは孫︶と云う。しかし、松井冠者維義を遠祖とする家伝は遠州系松井氏に同じく︵維義17代の子孫・松井義行︵山城守︶の系︶、元は同族であったと考えられている。
-一部の系図類には遠州松井氏の惣領である[[松井宗能]]︵山城守︶の弟の系に掛けて初代・惣左衛門為維、2代・惣左衛門某、3代・金四郎忠直(?-1542)、4代・[[松平康親|左近忠次]](1521-1583)とするものがある。今川氏の属臣として東条吉良氏の寄騎であったらしい。
+一部の系図類には遠州松井氏の惣領である[[松井宗能]]︵山城守︶の弟の系に掛けて初代・惣左衛門為維、2代・惣左衛門某、3代・金四郎忠直(?-1542)、4代・[[松平康親|左近忠次]]とするものがある。今川氏の属臣として東条吉良氏の寄騎であったらしい。
-[[永禄]]4年([[1561年]])に今川方東条吉良氏が徳川家康に降服後、松井忠次は家康に従った。この時より、今川家重臣の遠州二俣城主松井氏とは別の歩みを始めた。遠州松井氏が主家今川氏の没落に伴い零落していったのとは対照的に、三河の忠次とその一族は徳川軍の主力の一翼を担い、今川・[[武田氏|武田]]・[[後北条氏|北条]]の戦国大名諸氏と戦い、忠次自身は[[天正]]11年︵[[1583年]]︶、[[伊豆国]][[沼津]]の[[三枚橋城]]にて北条氏との対陣中に死去した。松井忠次は遠州[[諏訪原城|諏訪原城︵諏訪之原城、牧野城︶]]攻落やその後の守備に功績甚大と評され、家康よりその偏諱と松平の名乗りを与えられて'''[[松平康親]]'''と改称した。
+[[永禄]]4年︵[[1561年]]︶に今川方東条吉良氏が徳川家康に降服後、松井忠次は家康に従った。この時より、今川家重臣の遠州二俣城主松井氏とは別の歩みを始めた。遠州松井氏が主家今川氏の没落に伴い零落していったのとは対照的に、三河の忠次とその一族は徳川軍の主力の一翼を担い、今川・[[武田氏|武田]]・[[後北条氏|北条]]の戦国大名諸氏と戦い、忠次自身は[[天正]]11年︵[[1583年]]︶、[[伊豆国]][[沼津]]の[[三枚橋城]]にて北条氏との対陣中に死去した。松井忠次は遠州[[諏訪原城|諏訪原城︵諏訪之原城、牧野城︶]]攻落やその後の守備に功績甚大と評され、家康よりその偏諱と松平の名乗りを与えられて'''[[松平康親]]'''と改称した。
-康親嫡子'''[[松平康重]]'''(周防守)は父の死後もその遺志を継ぎ、三枚橋城を守備した。その後も康重は功を重ね、小田原北条氏降伏後の天正18年︵[[1590年]]︶、家康の関東移封に伴い、[[武蔵国]][[騎西藩|私市藩]]二万石に封じられ、その後[[常陸国|常陸]][[笠間藩]]三万石に転じるなど徳川譜代大名になった。
+康親嫡子'''[[松平康重]]'''︵周防守︶は父の死後もその遺志を継ぎ、三枚橋城を守備した。その後も康重は功を重ね、北条氏降伏後の天正18年︵[[1590年]]︶、家康の関東移封に伴い、[[武蔵国]][[騎西藩|私市藩]]2万石に封じられ、その後[[常陸国|常陸]][[笠間藩]]3万石に転じるなど徳川譜代大名になった。
-以後、この系統は転封を繰り返して、[[丹波国]][[篠山藩]]・[[和泉国]][[岸和田藩]]・[[石見国]][[浜田藩]]など、幕末までに十余度も支配地が替わった。最後は第12代藩主・[[松平康英|康英]]の時に武蔵[[川越藩]]︵八万四千石︶にて[[明治維新]]を迎えた。
+以後、この系統は転封を繰り返して、[[丹波国]][[篠山藩]]・[[和泉国]][[岸和田藩]]・[[石見国]][[浜田藩]]など、幕末までに十余度も支配地が替わった。最後は第12代藩主・[[松平康英|康英]]の時に武蔵[[川越藩]]︵8万4千石︶にて[[明治維新]]を迎えた。
 == 傍系等 ==
-松平康親以前の同系の支族には、慶長6年の笠間転封に伴い松平康重が東条松平家の後見から離れると、これに代わって武蔵忍藩在任中の東条松平家当主[[松平忠吉|忠吉]]の家老として補佐役を勤め、[[慶長]]5年([[1600年]])忠吉の[[関ヶ原の戦い|関ヶ原]]初陣に従軍、忠吉の[[尾張国|尾張]]清洲五十二万石栄転にも従った'''松井図書'''︵忠勝︶やその子'''松井石見守'''︵忠通、忠光とも︶がある。この系統は主君忠吉の病死後は[[尾張徳川家]]の祖[[徳川義直]]に仕えて[[名古屋藩]]藩士となった。
+松平康親以前の同系の支族には、慶長6年の笠間転封に伴い松平康重が東条松平家の後見から離れると、これに代わって武蔵忍藩在任中の東条松平家当主[[松平忠吉|忠吉]]の家老として補佐役を勤め、[[慶長]]5年︵[[1600年]]︶忠吉の[[関ヶ原の戦い|関ヶ原]]初陣に従軍、忠吉の[[尾張国|尾張]]清洲52万石栄転にも従った'''松井図書'''︵忠勝︶やその子'''松井石見守'''︵忠通、忠光とも︶がある。この系統は主君忠吉の病死後は[[尾張徳川家]]の祖[[徳川義直]]に仕えて[[名古屋藩]]藩士となった。
-また、康親弟の松井光次の系統には家康麾下の[[牧野康成 (大胡藩主)|牧野康成]]に付属され、のち[[越後長岡藩]]家老家となった流もある。︵詳細→[[越後長岡藩の家臣団#牧野氏︵2︶|越後長岡藩の家臣団]]︶
+また、康親弟の松井光次の系統には家康麾下の[[牧野康成 (大胡藩主)|牧野康成]]に付属され、のち[[越後長岡藩]]家老家となった流もある︵詳細→[[越後長岡藩の家臣団#牧野氏︵2︶|越後長岡藩の家臣団]]︶。
-ほかに小身ではあるが徳川幕臣と、[[伊勢国]][[鳥羽藩]]稲垣氏の家臣に松井冠者維義を遠祖とする松井氏がある。徳川幕臣の松井氏は御家人から広敷の添番を経て[[徳川綱吉]]の妾、清閑寺氏の用達に抜擢され、旗本(150俵︶の列に加わり子孫は[[小十人]]に列することが多かった。鳥羽藩主・稲垣氏は、越後長岡藩主・牧野忠成の父である牧野康成が属臣であったという出自を持つためか、鳥羽藩永代家老・山本氏(300石)をはじめ長岡家臣と同族の者がこれに随従していることがある。忠吉の支流︵越後長岡藩家老・松井氏の支流となるとみられる︶で鳥羽藩士となった松井氏2家︵いずれも60石︶がある。
+ほかに小身ではあるが徳川幕臣と、[[伊勢国]][[鳥羽藩]]稲垣氏の家臣に松井冠者維義を遠祖とする松井氏がある。徳川幕臣の松井氏は御家人から広敷の添番を経て[[徳川綱吉]]の妾、清閑寺氏の用達に抜擢され、旗本︵150俵︶の列に加わり子孫は[[小十人]]に列することが多かった。鳥羽藩主・稲垣氏は、越後長岡藩主・牧野忠成の父である牧野康成が属臣であったという出自を持つためか、鳥羽藩永代家老・山本氏︵300石︶をはじめ長岡家臣と同族の者がこれに随従していることがある。忠吉の支流︵越後長岡藩家老・松井氏の支流となるとみられる︶で鳥羽藩士となった松井氏2家︵いずれも60石︶がある。
 == 系譜 ==

2011年1月25日 (火) 10:27時点における版

発祥・経歴

傍系等

系譜

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