後愚昧記
﹃後愚昧記﹄︵ごぐまいき︶は、南北朝時代の公卿・三条公忠の日記。﹃公忠公記﹄︵きんただこうき︶・﹃後押小路内府記﹄︵のちのおしのこうじだいふき︶とも。
概要[編集]
記名は、公忠の7世の祖・三条実房の日記﹃愚昧記﹄に因む。記録期間は、内大臣在職中の延文6年︵1361年︶1月から薨去4か月前の永徳3年︵1383年︶8月までの約22年間に及び、この間に貞治元年︵1362年︶・同4年︵1365年︶・永和元年︵1375年︶・康暦2年︵1380年︶の4年分を欠くが、かなりの部分が伝存している。 内容は日次記とそれに附帯する文書類から成る。日次記は朝儀・法会に関する記事を中心に、公武の政治情勢・思想状況や歌壇の様子などさまざまな情報を伝え、﹃愚管記﹄・﹃師守記﹄とともに、北朝後期の公家社会を知る上で貴重な史料である。また、公忠は有職故実について洞院公定・久我具通ら諸家と取り交わした書状を保存していたため、それらの原本や写本が日次記とともに伝来する。特に勧修寺経顕との往復書状は諮問抄と題され、独立した書物として扱われる場合もある。 自筆原本は全て巻子装︵縦30.1cm︶で、その大部分に当たる30軸︵日次記13軸・文書15軸・他記2軸︶が東京大学史料編纂所に所蔵され、一括して重要文化財に指定されている他、1軸が陽明文庫に︵重文︶、断簡が宮内庁書陵部・尊経閣文庫に所蔵される。日次記の料紙は、前年の仮名暦や消息・詠草の反故紙の裏を利用したものが多いが、当年の具注暦に直接記入している巻もある。写本としては、史料編纂所の21冊本、内閣文庫の22冊本・29冊本、京都大学の菊亭本17冊・平松本28冊、書陵部の葉室本34冊、陽明文庫の32冊本、静嘉堂文庫の16冊本、水戸彰考館の12冊本、岩瀬文庫の19冊本、東京国立博物館の37冊本を始め、諸本が多く伝存しているが、その間に内容の出入りが少なくない。刊本は、史料編纂所の編集にかかる﹃大日本古記録﹄に翻刻が収録され︵全4冊完結︶、岩波書店から出版されている。参考文献[編集]
- 今枝愛真 「後愚昧記」(『国史大辞典 第5巻』 吉川弘文館、1985年、ISBN 9784642005050)
- 佐藤和彦 「後愚昧記」(橋本義彦ほか 『日本歴史「古記録」総覧〈古代・中世篇〉』 新人物往来社、1990年、ISBN 9784404017888)
外部リンク[編集]
- 「大日本古記録 後愚昧記 一・二・三・四」 - 『東京大学史料編纂所報』(NCID AN00162338)に掲載された本所刊行物の紹介
- 後愚昧記〈自筆本/〉 - 文化遺産オンライン(文化庁)