文違い
文違い︵ふみちがい︶は古典落語の演目のひとつ。東京で広く演じられる。
概要[編集]
初代柳家小せんの作と伝えられる。内藤新宿の岡場所を舞台にした、一種の廓噺。 1940年︵昭和15年︶9月20日、警視庁は内容が卑俗的で低級であるとして、文違いを含む53演目を上演禁止︵禁演落語︶とした[1]。主な演者[編集]
物故者[編集]
●三代目三遊亭小圓朝 ●六代目三遊亭圓生 ●五代目古今亭志ん生 ●八代目三笑亭可楽現役[編集]
●十一代目金原亭馬生あらすじ[編集]
内藤新宿の飯盛女・お杉は、﹁お父っつぁんが無心してきたので、20両︵※単位は演者によって円とも︶を用立ててほしい﹂と嘘をつき、なじみ客の半七に色っぽくねだるが、半七はその半額程度しか持っていないため、応じることができない。そこでお杉は、同じくなじみ客で、隣の部屋に待つ田舎者の角蔵のもとへ行き、﹁おっ母さんが病気で、高い薬の人参を買ってやりたい﹂と嘘をつき、角蔵が取引のために持っていた預かり金をせしめ、あらためて半七に足りない分をせびって20両を得る。 お杉は半七に﹁お父っつぁんに渡してくる﹂と言い残し、半七や角蔵の部屋から離れた一室に向かう。そこには目を布で押さえている男が座っている。男は芳次郎︵よしじろう︶という名の、お杉の本当の恋人で、なおかつ、お杉に金を無心した本当の相手だった。 金を受け取った芳次郎はそそくさと帰る。お杉は置き忘れられた手紙を見つける。読んでみると、小筆︵こふで︶という名の別の飯盛女が芳次郎に宛てたもので、﹁田舎の大尽︵=富豪︶の身請けを断ったが、代わりに50両を要求されている。眼病と偽り、お杉をだましてしまえ﹂という意味の内容が書かれている。お杉は悔し泣きをしながら、半七の部屋に戻るために部屋を出る。 そのころ、半七もお杉が落としていった手紙を見つけ、読むと芳次郎の名で﹁眼病をわずらい、このままでは目が見えなくなるので、薬代として20両がいる。父親に無心されたと偽り、半七をだましてしまえ﹂と書かれていたので、怒り狂う。お杉が半七の部屋に戻るやいなや、互いにだまされ合って気が立っているふたりは、﹁7両︵あるいは5両︶かたりやがった︵=だまし取った︶な﹂﹁なにさ、そんなはした金。あたしは20両だよ﹂とすさまじい口論を経て、喧嘩になる。 お杉と半七の口論を壁越しに聞いていた角蔵は、従業員を呼びつけ、﹁早く止めてこ︵=止めてこい︶!間夫︵まぶ=浮気相手︶から金子︵きんす︶を受け取ったとか渡したとかで、お杉が殴られているだ。あれは色でも欲でもなく、お杉のかかさまの病のために、おらが恵んだものだ﹂と言うが、すぐに向かおうとする従業員を押しとどめ、 ﹁いや、やめておこう。それを言ったら、おらが間夫だとわかっちまう﹂脚注[編集]
- ^ 低俗と五十三演題の上演禁止『東京日日新聞』(昭和15年9月21日)『昭和ニュース事典第7巻 昭和14年-昭和16年』本編p773 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年