デジタル大辞泉 「下り」の意味・読み・例文・類語 くだり【下り/▽降り】 1上から下へ、高いところから低いところへ移動すること。また、その道や流れ。﹁急な―が続く﹂﹁川―﹂⇔上(のぼ)り。 2 鉄道の路線や道路で、各線区ごとの起点から終点への方向。また、その方向に走る列車・バス。⇔上(のぼ)り。 3 都から地方へ行くこと。﹁東(あずま)―﹂﹁海道―﹂⇔上(のぼ)り。 4 ︵土地の名に付けて接尾語的に用いて︶遠く隔った場所の意を表す。くんだり。 ﹁わざわざ鎌倉―まで出掛けて﹂︿漱石・彼岸過迄﹀ 5 時間が移ってある刻限の終わり近くになること。また、その時。 ﹁申(さる)の―になり候ひにたり﹂︿宇治拾遺・一一﹀ 6 ︽北に内裏があったところから︾京都内で北から南に行くこと。⇔上(のぼ)り。 ﹁大宮を―に二条を東へざざめいて引きければ﹂︿平治・中﹀ 7 電気通信網における、中心から末端に向かう方向。無線・有線通信の基地局から端末、インターネット上でのプロバイダーから利用者のパソコン、通信衛星から通信機など、各通信網の末端方向を下りと見なす。下り方向の回線または通信経路をダウンリンクという。⇔上り。 [下接語]東(あずま)下り・天(あま)下り・御(お)下り・オランダ下り・海道下り・川下り・京下り・上り下り・腹下り くんだり【▽下り】 [接尾]《「くだ(下)り」の撥音添加》地名などに付いて、中心地からみて遠く隔たった意を表す。「こんな田舎下りまで来てしまった」 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
精選版 日本国語大辞典 「下り」の意味・読み・例文・類語 くだり【下・降・行・件・条】 (一)[1] 〘 名詞 〙 ( 動詞﹁くだる︵下︶﹂の連用形の名詞化 ) (一)[ 一 ] ( 下・降 ) (一)① 高い所から低い所へ移動すること。また、流れのかみからしもへ行くこと。 (一)[初出の実例]﹁水門(みなと)の 潮(うしほ)の矩娜利(クダリ) 海下(うなくだ)り 後もくれに 置きて か行かむ﹂(出典‥日本書紀︵720︶斉明四年・歌謡) (二)﹁片足踏みはづし、はしごをくだりにころころころ﹂(出典‥浄瑠璃・本朝三国志︵1719︶四) (二)② ( 約二時間を単位とする昔の時の呼び方において ) 時が移り過ぎて、ある刻限が終わりに近づくこと。また、その時。 (一)[初出の実例]﹁申のくだりに、福原に着かせ給﹂(出典‥高倉院厳島御幸記︵1180︶) (三)③ 都から地方へ行くこと。 (一)[初出の実例]﹁斎宮の御くだりちかう成ゆくままに﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶賢木) (二)﹁殿ばら、受領のくだり、僧達などにもわかたせ給ひて﹂(出典‥栄花物語︵1028‐92頃︶鶴の林) (四)④ ( 内裏が都城の北にあったところから ) 京都の内で、南へ行くこと。 (一)[初出の実例]﹁東の大宮を下りに遣せて行くに﹂(出典‥今昔物語集︵1120頃か︶一二) (二)﹁真如堂を西へ打過て、河原を下りに押寄る﹂(出典‥太平記︵14C後︶一七) (五)⑤ 町のはずれの方。また、遠く隔たった土地。土地の名の下につけて用いる。くんだり。 (一)[初出の実例]﹁桜橋から中町くだりぞめいたら﹂(出典‥浄瑠璃・心中天の網島︵1720︶上) (六)⑥ 程度が低くなること。劣ること。 (一)[初出の実例]﹁谷さまにはへる峰への玉かつらただくだりにもなる我身かな︿藤原為家﹀﹂(出典‥新撰六帖題和歌︵1244頃︶六) (七)⑦ 進むにつれてだんだん下がってゆく道。くだりざか。 (一)[初出の実例]﹁上(のぼり)には人が押し下(クダリ)には車が走り﹂(出典‥湯ケ原ゆき︵1907︶︿国木田独歩﹀七) (八)⑧ 鉄道の路線で、各線区ごとに定められた起点から終点への方向。現在では、都市︵特に東京︶ないしはそれに近い所を起点としていう。また、下り電車︵列車︶を略していう。 (一)[初出の実例]﹁疲労(くたび)れて上り下(クダ)り両線路の間に蹲(しゃが)んだ﹂(出典‥窮死︵1907︶︿国木田独歩﹀) (九)⑨ ヒバリの鳴き声の高い方から低い方へ移り行く部分。 (一)[初出の実例]﹁雲雀もまた行はれて、上り・中天・下(クダ)りの三声の美にして﹂(出典‥東京風俗志︵1899‐1902︶︿平出鏗二郎﹀下) (十)⑩ ( ③から転じて ) 江戸時代、特に江戸で上方(かみがた)の産物をいう。﹁下り酒﹂﹁下り杯﹂﹁下り雪駄﹂など品物の名の上に付けていう場合も多い。 (一)[初出の実例]﹁﹃もふ十軒店に下(クダリ)めらが出ているだろふ︿略﹀﹄と大勢づれで雛店へ行(ゆき)﹂(出典‥咄本・無事志有意︵1798︶十軒店) (11)⑪ ﹁くだりあめ︵下飴︶﹂の略。 (一)[初出の実例]﹁りしやう院より御くたり一おりまいる﹂(出典‥御湯殿上日記‐天文二三年︵1554︶正月一〇日) (二)﹁又地黄煎とも書 江戸にては 下りともいふ﹂(出典‥物類称呼︵1775︶四) (12)⑫ 巡業などで、上方から江戸に来ている人。 (一)[初出の実例]﹁いかにしてもしとやかなるなりふり︿略﹀くだりのうちにはさだめて京そだちならばついぢのうちの御ながれかと﹂(出典‥評判記・難野郎古たたみ︵1666頃︶玉井浅之丞) (13)⑬ 下痢(げり)。くだりはら。 (一)[初出の実例]﹁翼日(よくじつ)はらもなをりければ、女房いふは、﹃今朝のくだりは何と有ぞ﹄﹂(出典‥咄本・軽口露がはなし︵1691︶三) (14)⑭ 南風。 (一)[初出の実例]﹁何月は山背(やませ)︵東風︶なれど何月はクダリ︵南風︶なり﹂(出典‥風俗画報‐一五二号︵1897︶人事門) (二)[ 二 ] ( 行・件・条 ) (一)① 上から下へのならび。特に、着物の縦のすじ。 (一)[初出の実例]﹁風の音(と)の遠き吾妹(わぎも)が着せし衣(きぬ)たもとの久太利(クダリ)まよひ来にけり﹂(出典‥万葉集︵8C後︶一四・三四五三) (二)﹁御上前(うへまへ)のくだりには、恋を駿河の富士の嶺を、浮雲が帯となり﹂(出典‥仮名草子・恨の介︵1609‐17頃︶上) (二)② 文章で述べられている一部分。章。条。段。 (一)[初出の実例]﹁故に初の章(クタリ)に云へらく﹂(出典‥日本書紀︵720︶推古一二年四月︵岩崎本訓︶) (二)﹁僅に説洩せし条(クダリ)を拾ひて﹂(出典‥当世書生気質︵1885‐86︶︿坪内逍遙﹀二〇) (三)③ 前文にあげた事柄。前に述べた箇所。前の箇条。くだん。 (一)[初出の実例]﹁この大徳たづねいでてありつるよしを、上(かむ)のくだり啓(けい)せさせけり﹂(出典‥大和物語︵947‐957頃︶一六八) (二)[2] 〘 接尾語 〙 文章の行(ぎょう)を数えるのに用いる。 (一)[初出の実例]﹁ただ三くだりばかりに、文字ずくなにこのましくぞ書き給へる﹂(出典‥源氏物語︵1001‐14頃︶梅枝) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
IT用語がわかる辞典 「下り」の解説 くだり【下り】 インターネットの通信速度をいうときに、自分の端末にインターネット上のサイトからデータを受信する方向をいう。◇ダウンロードの方向。 出典 講談社IT用語がわかる辞典について 情報
百科事典マイペディア 「下り」の意味・わかりやすい解説 下り【くだり】 日本海沿岸,特に北陸以北で呼ばれる南系統の風の名。都(京都)より下るのに好都合な夏の季節風を意味する。 出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
世界大百科事典(旧版)内の下りの言及 【風】より …雁が渡って行く初秋(9~10月)に吹く北風。 下り︵くだり︶日本海沿岸,特に北陸地方以北でいわれる南寄りの風。都(京都)より下るのに好都合な夏の季節風を意味する。… ※「下り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。 出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」