灌漑

農地へ水を人工的に供給すること
かんがいから転送)

: irrigation[1][2][3]使
2000


概要

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用水路による水田灌漑







()

灌漑の歴史

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畜力による灌漑(上エジプト、1840年ごろ)
 
カレーズのトンネル内部(中国トルファン市





調6[4]

800使1使[5]

使()使150[6]

エジプト

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3500



1231800使[7]

メソポタミア

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3000

宿使



使退

南米

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ペルーアンデス山脈山中の Zaña Valley では、紀元前4千年紀ごろから灌漑用用水路があったことが放射性炭素年代測定により示されたと主張する考古学者もおり、紀元前3千年紀および紀元9世紀ごろの用水路も見つかっているという。これらは新世界では最古の灌漑と主張されている。その下からさらに古い用水路の痕跡も見つかっており、紀元前5千年紀にまで遡ると調査者は主張している[8]

インド亜大陸

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32600[9][10]

1842121898

300 Parakrama Bahu (11531186) [11]

西欧

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西使使

18

D.F.

中国

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8000 6西5256[12]0使[13][14]殿使[15]


 
ため池兵庫県加東市

日本

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25002600退32

米国

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スプリンクラーによるブルーベリー畑の畑地灌漑(ニューヨーク州)

北アメリカでは、先史時代からいくつもの灌漑システムが作られてきた。例えば、アリゾナ州ツーソンを流れるサンタクルーズ川付近でも灌漑施設の遺構が見つかっている。約4000年前の集落跡と共に見つかった。サンタクルーズ川の氾濫原は紀元前1200年ごろから紀元150年ごろまで農業が盛んだった。

現在はセンターピボットなどの大型灌漑により、世界の穀物倉となっている。

現代

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20

20002,788,000km268%17%9%5%1%[16]

灌漑方式

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小麦畑の湛水灌漑
 
パキスタンパンジャーブ地方の灌漑された耕作地

灌漑はその目的、水源、方法による分類がある。ここに示すのは方法による分類である。灌漑の最終的な目標は耕作地全体にちょうどよい量の水を均一に供給することであり、現在の灌漑法はそういった意味では十分に効率的とは言えない。

  • 水田灌漑
    • 湛水灌漑
    • 間断灌漑
    • 田越し灌漑
    • 掛け流し灌漑

以下に灌漑方式の概要と得失を記す。

地表灌漑

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地表灌漑システムでは、水が耕作地の地表を重力に従ってゆっくり流れ、地面を濡らし地中に浸透する。畦間灌漑、ボーダー灌漑、水盤灌漑などがある。水田のように耕作地全体がほぼ水没する場合は湛水灌漑と呼ぶ。歴史的には最も古くからある灌漑法である。

灌漑水路から一定周期で畑地に冠水する。作物に吸収されずに灌漑水路面と耕地表面で無駄に蒸発する灌漑用水ロスが最も大きく、塩害も起こしやすい。20世紀に入ってダムが造られ大規模に行われるようになった。

水田灌漑のうち、常時水流から水を取水して田畑に満たすものを掛け流し灌漑、水が満ちれば取水を止めて、しばらくしてから再び取水するものを間断灌漑と呼ぶ。掛け流し灌漑は水量のロスが大きく、また山間地などで流水の水温が低い場合は特に取水口付近の稲の生育が悪くなりやすい。間断灌漑の利益と損失はこの逆であり、水量が節約でき水温を高温に保つことができるものの、水温が高温になりすぎるとやはり稲の生育が悪くなる。このため、併用またはその土地の状況に応じて灌漑方式が選択される。また、上の田から下の田へと水を供給する灌漑を田越し灌漑という[17]

局所灌漑

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点滴灌漑 - エミッタ
 
ブラジルのペトロリナのブドウ。点滴灌漑のおかげでステップ気候のこの地でブドウが栽培できる。

局所灌漑(またはマイクロ灌漑)とは、パイプのネットワークで低圧で水を供給するシステムであり、個々の作物にピンポイントで給水するよう固定パターンになっている。点滴灌漑、マイクロスプリンクラー灌漑、バブラー灌漑などがこれに分類される[18]

点滴灌漑

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19601/5寿

使

スプリンクラー灌漑

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移動式スプリンクラー(イギリス、オックスフォードシャー

275900kPa37610mm50mm使

使

205

センターピボット灌漑

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ドロップ型スプリンクラーを使ったセンターピボット。Photo by Gene Alexander, USDA Natural Resources Conservation Service.

センターピボット灌漑はスプリンクラー灌漑の一種で、亜鉛メッキした鋼またはアルミニウム製のパイプを複数連結したものをトラス構造で支持し、車輪付きの塔に載せ、パイプの各所にスプリンクラーを設置したものである。このシステムは一端を中心として円を描くように移動し、その中心となる側から水を供給する。

最近のセンターピボットシステムの多くは蒸発による損失を防ぐようなるべく作物の近くで水を撒くため、パイプから下に枝分かれさせたドロップ型のスプリンクラーを使っている。スプリンクラーではなくホースやバブラーをドロップに装着して、直接地表に水を撒くこともある。センターピボットを使用する場合、作物は円形の土地に作付けされる。もともとセンターピボットは水力駆動だったが、今では油圧と電動機を使ったシステムが主流となっている。最近ではスプリンクラーにGPS装置を備えているものが多い。

平行移動式灌漑

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ホイールライン型灌漑システム(アイダホ州、2001年) Photo by Joel McNee, USDA Natural Resources Conservation Service.

1.5m10m45130mm使使

地下灌漑

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使使

使1020使

湿気の多い大気から水分を集める灌漑法

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ランサローテ島のブドウ畑。ブドウの木の周りに火山礫による壁を作ることで、島に発生する霧を集め灌漑を行う

湿度の高い地域では夜間に大気中の水分が結露する。これを利用した灌漑法を「集露」または「集霧」と呼ぶ。例えば、ランサローテ島のブドウ畑では石や帆布を使った露を集める仕組みで灌漑を行っている。

灌漑の水源

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灌漑の水源としては、地下水を湧水あるいは井戸を使って利用する場合、ため池などの地表水を利用する場合、何らかの廃水を浄化したり塩水を淡水化して利用する場合などがある。地表水を使った特殊な灌漑法として洪水灌漑または拡水と呼ばれる技法がある。これは、普段は水が流れていない乾燥した河床(ワジ)を複数連結したネットワークを形成しておき、洪水の際にそこにあふれた水を誘導して広いエリアに供給する方法である。洪水灌漑は灌漑技法の一種だが、一般に雨水採取による植物の栽培は灌漑とはみなされない。雨水採取とは、建物の屋根や未使用の土地に降った雨水を集めて利用する技法である。

最近の灌漑技術

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1/hr[19]







pF2.8



灌漑による悪影響

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20041850

[20]





Ringold Formation

退使[21][22]



[23][24]

綿()20

灌漑の顕彰と保全

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灌漑史跡は人類の農耕と治水技術の発展の歴史を物語るものとして、文化財文化遺産として保護される傾向が国際的に広まっている。

かんがい施設遺産

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国際かんがい排水委員会(ICID)が、灌漑の歴史・発展を明らかにし、灌漑施設の適切な保全に資することを目的として、建設から100年以上経過し、灌漑農業の発展に貢献したもの、卓越した技術により建設されたもの等、歴史的・技術的・社会的価値のある灌漑施設を登録・表彰するために、かんがい施設遺産制度を創設した[25]

世界遺産

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UNESCO[26]
 















 




無形文化遺産

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沿[27][28]



7[29]

記憶遺産

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ユネスコ三大遺産事業の一つである記憶遺産は、歴史的・社会的な事象を伝える記録の保護を目的としている。

農業遺産

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FAOGIAHS
 

  

 

 

西 



 



 

 

 







 

 

世界水システム遺産

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世界水会議が推進する水管理に関係する施設などを顕彰する制度で、灌漑施設も対象になる。

文化財保護法による文化財

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[30]


 


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西





 




 

歴史まちづくり法による歴史的風致維持向上地区

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日本遺産

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日本遺産文化庁が推進する文化財を観光資源と位置付ける活用法。重要文化的景観の近江八幡の水郷、高島市海津・西浜・知内の水辺景観、高島市針江・霜降の水辺景観などを「琵琶湖とその水辺景観―祈りと暮らしの水遺産」として包括、福島県郡山市猪苗代町の「未来を拓いた『一本の水路』―大久保利通“最期の夢”と開拓者の軌跡 郡山・猪苗代―」が安積疏水を対象としている。

 
東西用水酒津樋門

近代化産業遺産

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法的保護根拠はないが経済産業省近代化産業遺産を認定しており、「瀬戸内海沿岸の灌漑施設」としてかんがい施設遺産の淡山疏水(淡河疎水山田川疎水)とその流間流末に位置する印南野ため池群、高梁川東西用水酒津樋門岡山県倉敷市)、豊稔池ダム香川県観音寺市)が選ばれている。

土木遺産

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社団法人土木学会が歴史的土木構造物土木遺産として認定しており、かんがい施設遺産からは七ヶ用水の大水門・給水口と山田堰が認定されているほか、多数の灌漑施設が含まれている[31]。特にユネスコへ加盟できないため世界遺産への展望が開けない台湾が独自に選定した世界遺産候補である烏山頭ダムを認定している点が注目される。

機械遺産

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社団法人日本機械学会が機械技術の発展に貢献したものを機械遺産として認定している。農研機構生物系特定産業技術研究支援センターの農機具資料館収蔵品が登録されており、灌漑用のポンプなどが含まれている[32]

100選

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農林水産省が日本の農業を支えてきた代表的な用水から疎水百選、農業の礎となった歴史・文化・伝統がある貯水池からため池百選、景観維持のため棚田百選[33]を選定している。

 
円山川下流域の水田

ラムサール条約

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水鳥の生息環境である湿地帯を保護する目的のラムサール条約は、人工湿地としての灌漑農地や用水路も対象としている。国内では宮城県蕪栗沼周辺水田と兵庫県の円山川下流域周辺水田が灌漑耕作湿地として登録されている。

エコパーク

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ユネスコが世界遺産と並行して推進しているMAB(Man and the Biosphere/人間と生物圏)計画の生物圏保護区(日本語通称エコパーク)は、自然環境の厳正保護が目的の世界遺産に対し、エコパークは自然との共存を図りつつ利用することも認めている。日本で登録されている志賀高原只見南アルプスでは自然湧水を活かした流下灌漑(重力灌漑)が行われている。

出典

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(一)^ Frost protection: fundamentals, practice, and economics  Volume 1 (PDF). Food and Agriculture Organization of the United Nations (2005). 2010824

(二)^ Williams, J. F.; S. R. Roberts, J. E. Hill, S. C. Scardaci, and G. Tibbits. Managing Water for Weed Control in Rice. UC Davis, Department of Plant Sciences. 2007314

(三)^ Arid environments becoming consolidated

(四)^ The History of Technology  Irrigation. Encyclopædia Britannica, 1994 edition 

(五)^ Qanat Irrigation Systems and Homegardens (Iran). Globally Important Agriculture Heritage Systems. UN Food and Agriculture Organization. 2007110

(六)^ Encyclopædia Britannica, 1911 and 1989 editions

(七)^ Amenemhet III. Britannica Concise. 2007110

(八)^ Dillehay TD, Eling HH Jr, Rossen J (2005). Preceramic irrigation canals in the Peruvian Andes. Proceedings of the National Academy of Sciences 102 (47): 172414. doi:10.1073/pnas.0508583102. PMC 1288011. PMID 16284247. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1288011/. 

(九)^ Rodda, J. C. and Ubertini, Lucio (2004). The Basis of Civilization - Water Science? pg 161. International Association of Hydrological Sciences (International Association of Hydrological Sciences Press 2004).

(十)^ Ancient India Indus Valley Civilization. Minnesota State University "e-museum". 2007110

(11)^ de Silva, Sena (1998). Reservoirs of Sri Lanka and their fisheries. UN Food and Agriculture Organization. 2007110

(12)^ China  history. Encyclopædia Britannica,1994 edition 

(13)^ Needham, Joseph (1986). Science and Civilization in China: Volume 4, Physics and Physical Technology, Part 2, Mechanical Engineering. Taipei: Caves Books Ltd. Pages 344-346.

(14)^ Needham, Volume 4, Part 2, 340-343.

(15)^ Needham, Volume 4, Part 2, 33, 110.

(16)^ Siebert, S.; Hoogeveen, J.; Döll, P.; Faurès, J-M.; Feick, S.; Frenken, K. (10 November 2006). "The Digital Global Map of Irrigation Areas  Development and Validation of Map Version 4" (PDF). Tropentag 2006  Conference on International Agricultural Research for Development. Bonn, Germany. 2007314

(17)^ 2 p224 1961430

(18)^ Irrigation in Africa in figures  AQUASTAT Survey  2005 (PDF). Food and Agriculture Organization of the United Nations (2005). 2007314

(19)^  - 2008921

(20)^ ILRI, 1989, Effectiveness and Social/Environmental Impacts of Irrigation Projects: a Review. In: Annual Report 1988, International Institute for Land Reclamation and Improvement (ILRI), Wageningen, The Netherlands, pp. 18 - 34 . On line: [1] 

(21)^ EOS magazine, september 2009

(22)^ World Water Council

(23)^ Drainage Manual: A Guide to Integrating Plant, Soil, and Water Relationships for Drainage of Irrigated Lands, Interior Dept., Bureau of Reclamation, (1993), ISBN 0-16-061623-9 

(24)^ Free articles and software on drainage of waterlogged land and soil salinity control in irrgated land. 2010728

(25)^  

(26)^   

(27)^ Irrigators tribunals of the Spanish Mediterranean coast: the Council of Wise Men of the plain of Murcia and the Water Tribunal of the plain of Valencia - UNESCO Intangible Heritage

(28)^ 20101018

(29)^ UNESCO - Traditional irrigation: knowledge, technique, and organization (). ich.unesco.org. 2023129

(30)^  

(31)^ HP

(32)^ 

(33)^ () 

関連項目

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外部リンク

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