車両の通行側
車両が道路の中央よりも左側と右側のどちらの部分を通行しなければならないか
(左側通行から転送)
概要
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車両は、進行方向に向かい、原則として︵道路中央よりも︶左側︵左寄り︶の部分を通行しなければならないとする左側通行と、それとは逆に、車両は原則として︵道路中央よりも︶右側︵右寄り︶の部分を通行しなければならないとする右側通行とがある。英語で左側通行はLeft-hand traffic (LHT)といい、右側通行は Right-hand traffic (RHT)という。
世界の概況
編集 ↑↓車両の左側通行を行っている地域
↓↑車両の右側通行を行っている地域
全世界的には右側通行を採用している国が多い。人口比では左側通行と右側通行の比率が34‥66で、道路の総延長距離では27.5‥72.5になる[1]。
1国の領内でも地域によって通行区分が異なる場合がある。中国返還後の香港︵1997年〜︶ならびに中国返還後のマカオ︵1999年〜︶、アメリカ領ヴァージン諸島は、本国が右側通行の国家でありながら例外的に左側通行を採用している。これに対し、本国が左側通行であるイギリス領のジブラルタルは右側通行を採用している。日本の沖縄県もかつては右側通行であった︵後述︶。
左右通行区分が異なる国家同士を道路で結ぶ場合、タイ︵左側︶とラオス︵右側︶を結ぶ橋は2本あるが、1本目のタイ=ラオス友好橋は左側通行であり、通行区分を逆転させるためにラオス側手前で上下線が平面交差によって入れ替わる構造になっている。一方、2本目の第2タイ=ラオス友好橋は右側通行であり、タイ側で上下線が平面交差によって入れ替わっている。
左側通行
編集詳細は「左側通行の国一覧」を参照
![イギリスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/83/Flag_of_the_United_Kingdom_%283-5%29.svg/25px-Flag_of_the_United_Kingdom_%283-5%29.svg.png)
![アイルランドの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/45/Flag_of_Ireland.svg/25px-Flag_of_Ireland.svg.png)
![香港の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/5b/Flag_of_Hong_Kong.svg/25px-Flag_of_Hong_Kong.svg.png)
![マルタの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/73/Flag_of_Malta.svg/25px-Flag_of_Malta.svg.png)
![キプロスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d4/Flag_of_Cyprus.svg/25px-Flag_of_Cyprus.svg.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/49/Flag_of_Kenya.svg/25px-Flag_of_Kenya.svg.png)
![南アフリカ共和国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/af/Flag_of_South_Africa.svg/25px-Flag_of_South_Africa.svg.png)
![パキスタンの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/32/Flag_of_Pakistan.svg/25px-Flag_of_Pakistan.svg.png)
![インドの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/41/Flag_of_India.svg/25px-Flag_of_India.svg.png)
![マレーシアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/66/Flag_of_Malaysia.svg/25px-Flag_of_Malaysia.svg.png)
![シンガポールの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/48/Flag_of_Singapore.svg/25px-Flag_of_Singapore.svg.png)
![ブルネイの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9c/Flag_of_Brunei.svg/25px-Flag_of_Brunei.svg.png)
![オーストラリアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/b9/Flag_of_Australia.svg/25px-Flag_of_Australia.svg.png)
![ニュージーランドの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/3e/Flag_of_New_Zealand.svg/25px-Flag_of_New_Zealand.svg.png)
![バハマの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/93/Flag_of_the_Bahamas.svg/25px-Flag_of_the_Bahamas.svg.png)
![ジャマイカの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0a/Flag_of_Jamaica.svg/25px-Flag_of_Jamaica.svg.png)
![ガイアナの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/99/Flag_of_Guyana.svg/25px-Flag_of_Guyana.svg.png)
以上のように、イギリスの影響を受けた国や地域が多い。また、かつてオランダの植民地であった
インドネシアと
スリナム、かつてポルトガルの植民地であった
モザンビーク、
東ティモール、および
マカオは、本国が右側通行に変更した[注1]後も引き続き左側通行を維持している。
その他で左側通行を採用している国や地域は、
日本、
タイなどである[2]。
![インドネシアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9f/Flag_of_Indonesia.svg/25px-Flag_of_Indonesia.svg.png)
![スリナムの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/60/Flag_of_Suriname.svg/25px-Flag_of_Suriname.svg.png)
![モザンビークの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d0/Flag_of_Mozambique.svg/25px-Flag_of_Mozambique.svg.png)
![東ティモールの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/26/Flag_of_East_Timor.svg/25px-Flag_of_East_Timor.svg.png)
![マカオの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/63/Flag_of_Macau.svg/25px-Flag_of_Macau.svg.png)
![日本の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9e/Flag_of_Japan.svg/25px-Flag_of_Japan.svg.png)
![タイ王国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a9/Flag_of_Thailand.svg/25px-Flag_of_Thailand.svg.png)
-
車両の左側通行(イギリス)
-
車両の左側通行(日本)
右側通行
編集![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/86/DVP_Congestion.png/200px-DVP_Congestion.png)
![カナダの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/cf/Flag_of_Canada.svg/25px-Flag_of_Canada.svg.png)
![アメリカ合衆国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a4/Flag_of_the_United_States.svg/25px-Flag_of_the_United_States.svg.png)
![メキシコの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/fc/Flag_of_Mexico.svg/25px-Flag_of_Mexico.svg.png)
![コスタリカの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f2/Flag_of_Costa_Rica.svg/25px-Flag_of_Costa_Rica.svg.png)
![パナマの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/ab/Flag_of_Panama.svg/25px-Flag_of_Panama.svg.png)
![ドイツの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/ba/Flag_of_Germany.svg/25px-Flag_of_Germany.svg.png)
![フランスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/93/Flag_of_France_%281794%E2%80%931815%2C_1830%E2%80%931974%29.svg/25px-Flag_of_France_%281794%E2%80%931815%2C_1830%E2%80%931974%29.svg.png)
![スイスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f3/Flag_of_Switzerland.svg/20px-Flag_of_Switzerland.svg.png)
![スペインの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/9/9a/Flag_of_Spain.svg/25px-Flag_of_Spain.svg.png)
![イタリアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/03/Flag_of_Italy.svg/25px-Flag_of_Italy.svg.png)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/21/Flag_of_Vietnam.svg/25px-Flag_of_Vietnam.svg.png)
![ラオスの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/56/Flag_of_Laos.svg/25px-Flag_of_Laos.svg.png)
![カンボジアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/83/Flag_of_Cambodia.svg/25px-Flag_of_Cambodia.svg.png)
![イスラエルの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d4/Flag_of_Israel.svg/25px-Flag_of_Israel.svg.png)
![サウジアラビアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/0d/Flag_of_Saudi_Arabia.svg/25px-Flag_of_Saudi_Arabia.svg.png)
![ロシアの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/f3/Flag_of_Russia.svg/25px-Flag_of_Russia.svg.png)
![ペルーの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/c/cf/Flag_of_Peru.svg/25px-Flag_of_Peru.svg.png)
![ブラジルの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/05/Flag_of_Brazil.svg/25px-Flag_of_Brazil.svg.png)
![モンゴルの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Flag_of_Mongolia.svg/25px-Flag_of_Mongolia.svg.png)
![朝鮮民主主義人民共和国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/51/Flag_of_North_Korea.svg/25px-Flag_of_North_Korea.svg.png)
![大韓民国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/09/Flag_of_South_Korea.svg/25px-Flag_of_South_Korea.svg.png)
![中華民国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/72/Flag_of_the_Republic_of_China.svg/25px-Flag_of_the_Republic_of_China.svg.png)
![中華人民共和国の旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/f/fa/Flag_of_the_People%27s_Republic_of_China.svg/25px-Flag_of_the_People%27s_Republic_of_China.svg.png)
![ミャンマーの旗](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/8c/Flag_of_Myanmar.svg/25px-Flag_of_Myanmar.svg.png)
ドイツ
フランス
ブラジル
台湾
韓国
歴史
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ローマ帝国の時代には左側通行が採用されていたという記録がある。
大陸ヨーロッパでは現在右側通行が主流であるが、馬車の馭者は右手で鞭を振るうため、対向する馬車に鞭を当てないために自然と右側通行になったという説がある。またフランス革命︵1789年︶の際に、それまでアンシャン・レジームで王権と結託していたカトリック教会に市民らが反発し、教会が定めていた左側通行に︵あえて︶対抗して右側通行にし、その後、ナポレオンがヨーロッパ各地を占領していったことでフランス流の通行方式が普及した、といった説もある。
アメリカ合衆国の右側通行は、道路行政を担当した官僚が自分の出身地に合わせたという説や、18世紀後半にイギリスから独立した記念に︵イギリスと反対の方式に︶転換した、とする説などがある。しかし、どの説も決め手に欠け、なぜ左/右側通行になったのかはっきりとわかっていない。
初期の自動車の多くは左右の通行側に関係なく右ハンドルであった。これは、当時の車の多くは操作レバーがボディ横から伸びており、それを操作するのに都合が良いためである。右側通行の国で左ハンドル車が一般化するのはフォード・モデルTが登場する1908年からであるが、それ以降も保守的な一部の高級車は右ハンドルを堅持し続けていた[3]。
日本
日本では警視庁が1900年︵明治33年︶6月21日に道路取締規則を制定し、左側通行を初採用した[4][5][6][7][8][2]。原案を作成した松井茂警視庁第二部長︵交通警察責任者︶は﹁特別な理由や研究に基づいたものではない。古来日本では武士が左腰に大小を差していたため...自然に左側を通る習慣がついたという説があり、また、明治22年制定の﹃人力車営業取締規則﹄では、車馬が行き合うときは、互いに左に避けることになっていたことなどを参考として...﹂などと述べている︵﹃警察協会雑誌﹄大正13年6月号︶[5][7][8][2][9]。通行側採用の理由に明治政府が、イギリスの制度に範をとったためとする説は誤りである[2]。左側通行制は、1920年︵大正9年︶12月、﹁内務省令第45号道路取締令﹂施行で全国的に行われることになった︵警視庁編﹁警視庁史﹂、日本における道路交通法規の変遷﹁道路取締令﹂ほか︶[8][2]。
右側通行と左側通行の転換
編集 右側通行
かつては左側通行だったが、現在は右側通行
左側通行
かつては右側通行だったが、現在は左側通行
かつては地域によって通行区分が異なっていたが、現在は右側通行に統一
20世紀初頭から第二次世界大戦前後にかけて、主に左側通行から右側通行への転換が行われた事例が各地で存在する。しかし、交通インフラが整備された国家・地域での左右交通区分の転換は、住民への周知徹底、信号機や道路標識の全面的変更、道路の構造変更、乗車扉を変更するためのバスの更新など、多大な費用と事故の危険が伴うため、自動車が普及した20世紀中期以降、転換が行われることは少なくなった。
左側通行から右側通行へ
●1867年までイギリスの植民地であったカナダは、自動車は左側通行であったが、アメリカ合衆国と陸続きであることから、1920年代に右側通行へと変更した。
●ポルトガルは、1928年に左側通行から右側通行に変更した。ただし、旧ポルトガル植民地のモザンビークや東ティモール、マカオは変更されず左側通行を維持している。
●同様に、オランダは19世紀初頭に左側通行から右側通行に変更したが、旧オランダ植民地のインドネシアやスリナムは変更されず左側通行を維持している。
●イギリスの海外領土であるジブラルタルでは、1929年6月16日に本国同様の左側通行から隣国スペインに合わせて右側通行へ変更された。︵ジブラルタルの交通#道路も参照︶
●チェコスロバキアやハンガリーは、1930年から1940年代にかけて左側通行から右側通行に変更している。
●オーストリアは、1938年のナチス・ドイツによる独墺併合︵アンシュルス︶を機に、左側通行からドイツ同様の右側通行に変更した。
●中国本土では、上海などのイギリス租界や日本租界、関東州︵大連︶といった日本の租借地、また満洲国も左側通行であったが、1949年の中華人民共和国成立後は香港およびマカオを除く全土が右側通行に変更・統一されている。
●台湾、パラオ、フィリピン、朝鮮半島の2か国︵北朝鮮と韓国︶などは、日本統治時代は日本式の左側通行であったが、第二次世界大戦後、右側通行に変更した。
●スウェーデンは1967年9月3日、自動車の通行区分を左側通行から右側通行に転換した︵ダゲン・H︶。
●ミャンマーは、1970年に旧宗主国であるイギリスからの制度であった左側通行を右側通行に変更した。ミャンマーの場合、国境線は右側通行諸国︵中国、ラオス︶と左側通行諸国︵タイ、インド、バングラデシュ︶の双方と接しているが、左側通行の国とのほうが遙かに距離が長く通行量も多いため、右側通行に変更するメリットは少ない。変更の理由は、ミャンマー政府がイギリス式を嫌ったためとも指導者が占い師による助言を受け入れたためともされている。
右側通行から左側通行へ
●ナミビアとナウルは1918年、右側通行から左側通行に転換した。
●日本の沖縄県は第二次世界大戦後にアメリカ軍の統治下に置かれ、左側通行から右側通行に変更されていた。1972年に日本復帰を果たした後、1978年7月30日、日本本土に合わせてアメリカ統治以前の左側通行に戻した︵730︿ナナサンマル﹀︶。なお、アメリカは沖縄を日本に返還した後も在日米軍基地を有しているが、基地はアメリカ領ではなく日本領であるため、基地内の交通は日本に合わせて左側通行を採用している。
●サモアは2009年9月7日、自動車の通行区分を従来の右側通行から左側通行に変更した。これは同国の自動車普及において、左側通行のオーストラリアやニュージーランドが地理的に近いため、それらの国から右ハンドルの中古車を輸入することが低コストになるということが大きな理由とされる[10]。
右側通行の国と左側通行の国が接する場合
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世界の大部分の国々は大陸にあり、多くが互いに陸続きとなっており、特に右側通行の国と左側通行の国が隣合わせにある場合、両国の道路の接続点で右側通行・左側通行をどのように変換するかということは、ちょっとした課題となる。
右側通行仕様・左側通行仕様(左ハンドル・右ハンドル)
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右側通行・左側通行とハンドルの左右位置には︵全てではなく、一定程度だが︶関係があるので、それについても説明する。
原則
自動車のハンドル位置は通常、左側通行の国では右ハンドル車︵運転席は進行方向右側︶、右側通行の国では左ハンドル車︵運転席は進行方向左側︶が使用される。すなわち、運転席の位置はそれぞれ道路の内側となる。これは車両すれ違い時の安全性や、右左折および追い越し時などの視界、対向車の確認のしやすさなどを考慮した結果であり、デファクトスタンダードともなっている。
︵ただし、ホイールローダーなどの建設機械を除く。後述︶
法規制
左ハンドルに改造された日本製自動車︵トヨタ・カリーナED︶
本来は日本国内専用車のため右ハンドルしか存在しないが、輸出先︵中国本土︶は右ハンドル車が登録不可のため左ハンドルに改造されている。
逆位置の自動車の登録や走行を認めない国も多く、他国に車両を輸出する自動車メーカーは、同一車種について左右ハンドル両方の仕様を設計・製造することが一般的である。また、中古車を輸入した業者などが、法規制に合わせるためにハンドル位置変更の改造を行うこともある︵右画像︶。
例外
しかし例外的に、オールテレーンクレーンやホイールローダーなどの建設機械では、左折時の巻き込み事故や幅寄せ時の接触事故防止の観点から、国に関わらず例外的に一貫して左ハンドル車を採用している。また、左側通行時代のスウェーデンでは左ハンドル車が主流であった。
なお、逆側を走行するルールになっている国から中古車を大量輸入している国では、ハンドルが標準的な位置とは逆位置の車が大量に走行している。たとえばロシア︵極東︶、モンゴル、ミャンマー、北朝鮮、アフガニスタンといった国々は右側通行でありながら、日本から中古車を大量に輸入しているので、右ハンドルの車が大量に使用されている。一方、アメリカ領ヴァージン諸島は左側通行であるが、大半の自動車はアメリカ本国仕様に準じた左ハンドル車である。
自動車愛好家の中には、輸入車はブランドの母国と同じハンドル位置であることにこだわる者が一定数存在する。日本人がドイツ車やフランス車を輸入する際は左ハンドル車を選び、逆にアメリカ人が日本車を輸入する際は右ハンドル車を選ぶべきだという考え方である。日本車に関してはJDM︵Japanese domestic market︶と呼ばれる嗜好で、近年メディアを通じて日本でも知られるようになった。ただしこうした選択は、ドライブスルーや料金所などで不便を被ることになる可能性が高い[注2]。
右側通行の国家・地域の郵便自動車︵郵便配達専用自動車︶では、あえて右ハンドル車を採用している地域がある。主に、運転席に座ったまま配達できるから、という理由である[11][12][13][14][15]。郵便物を道路沿いの郵便ポストに投函するにあたって、右ハンドル車であれば、運転手が運転席に居ながらにして済ませることができるからである[12]。最もよく知られている例はアメリカの小型郵便自動車[11][12][13]であるが、アメリカでは﹁なるべく外に出ないことが保安上の観点からも好ましい﹂という考え方もある[12]。これに該当する居住地域では、郵便ポストの位置も道路沿いに配置するのが通例になっている[13]。
左側通行であるオーストラリアのごみ収集車ではデュアル・コントロール︵DUAL CONTROL︶と呼ばれる両側運転台付きのトラックも存在しており、ごみ回収時はドライバーは左側に乗車し、歩道側に置かれているごみ箱を車内から自動サイドローダー︵専用アーム︶を操作して回収する。
また、右側通行諸国で製造されたレーシングカーの中にも右ハンドル車が存在するが、これはル・マン24時間レースでの競技走行を念頭に置いて設計されており、レースの舞台となるサルト・サーキットが時計回りであるため、右ハンドルの方が視界の上で有利となるからである。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7c/Toyota_ED_front.jpg/250px-Toyota_ED_front.jpg)
脚注
編集注釈
編集出典
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(一)^ ﹁右側通行か左側通行かが一目でわかる世界地図﹂﹃GIGAZINE﹄株式会社OSA、2007年12月16日。2022年7月24日閲覧。
(二)^ abcdefgh大音安弘 (2018-09–26). “俗説に喝!!日本の車が左側通行な理由 英国追従説は嘘だった!!”. 講談社ビーシー. オリジナルの2019年5月12日時点におけるアーカイブ。 2022年9月29日閲覧。
(三)^ 小林 (1993), p. 46.
(四)^ 警視廳東京府公報 M33.
(五)^ ab警視庁交通総務課ツイッター 午前・2021年2月17日 09:30︵JST︶警視庁交通総務課ツイッター 午前・2021年2月18日 11:53︵JST︶
(六)^ “俗語辞典”. 日本放送協会 (2015年7月6日). 2018年1月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月27日閲覧。
(七)^ ab松井茂先生自傳刊行会 編﹃松井茂自傳﹄1952年、168-170頁。
(八)^ abc“日本の災害・防災年表 道路取締規則制定、左側通行決まる︵110年前︶ 1900年︵明治33年︶6月21日”. 防災情報新聞 (防災情報新聞社). (2011-06–06). オリジナルの2022年9月29日時点におけるアーカイブ。 2022年9月29日閲覧。
(九)^ 警視庁交通総務課ツイッター 午前・2021年2月18日 11:53︵JST︶
(十)^ Bryant, Nick (2009年9月7日). “Samoan cars ready to switch sides” (英語). BBC News (British Broadcasting Corporation︿BBC﹀) 2017年1月14日閲覧。※﹁サモアの車左側通行へ準備﹂BBCニュース。
(11)^ ab稲田寛 (2010年8月). “︵寄稿記事︶アメリカでの自動車の運転について” (PDF). Japanese Assistance Network︵JAN︶. p. 2. 2022年7月24日閲覧。 “郵便局の小型配達車はアメリカで唯一右ハンドルに作られ、座席から降りずに道路脇のポストに郵便物を配達することができるようになっています。”
(12)^ abcdまつばらあつし︵ライター︶ (2020年8月24日更新). “お国柄がでてしまう?郵便自動車の色々、色色。”. 外車王. カレント自動車株式会社. 2022年7月24日閲覧。 “このアメリカの郵便車、実は大きな特徴がある。それは何と﹁右ハンドル﹂。これは単に実用面で採用されているらしく、右ハンドルであれば運転席に座ったまま郵便物を配達できる、という理由からだそうで、合理的なんだかズボラ︵笑︶なんだかよくわからないが、まあ、安全面からも﹁外に出ない﹂ことがイイんだろうなあ、と思う次第。このあたりの発想がいかにもアメリカ的。”
(13)^ abc“アメリカの郵便受け”. 個人ウェブサイト. 英語コーチ工藤 裕︵オンライン個別指導︶ (2019年5月21日作成、2020年11月5日更新). 2022年7月24日閲覧。 “アメリカの一般家庭では、郵便受け︵mailbox︶は道路沿いに設置されています。こういうタイプをよく見かけます。このように車道ギリギリに設置してあるので、郵便局の配達員は車から降りることなく郵便物を入れることができるんです。配達車両もそれ用に右ハンドル仕様です。︵...略...︶アメリカの配達車は、車から降りずに配達できるように、運転席が歩道側なんです。効率いいですね。日本だと、配達員の方は、車やバイクから降りては乗りを繰り返していますから、ずいぶん違います。︵...略...︶”
(14)^ toaster [@toasttweet] (2019年10月15日). "で、さっき言った﹁例外﹂にある業務車両がこの﹁郵便配達車﹂です。アメリカは基本左ハンドル車なんですけど、郵便配達車に限っては﹁ドライバーが乗ったまま郵便物をポスト投函できる﹂ように右ハンドルで設計されてるのね。". X︵旧Twitter︶より2022年7月24日閲覧。 ※画像サンプルあり。
(15)^ “アメリカの郵便配達車”. 個人ブログ. 楽園ハワイと私. tigger (2015年2月22日). 2022年7月24日閲覧。
参考文献
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書籍
●小林彰太郎 編﹃天皇の御料車﹄二玄社︿別冊カーグラフィック﹀、1993年1月1日。ASIN B007WI4BQC。
●警視廳︵警視庁︶、東京府 編﹃警視廳東京府公報﹄警視廳︵警視庁︶、東京府、1898年︵明治31年︶10月1日〜1943年︵昭和18年︶6月29日。。全国書誌番号:00016561。
●﹃警視廳東京府公報 明治33年綴﹄
関連文献
編集- 石井研堂『明治事物起原』橋南堂、1908年(明治41年)1月。doi:10.11501/898142。