: speed checkATS

概要

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情報伝送方式

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速度照査方式の種類は、地上から車上への情報の伝送の仕方で点制御と連続制御の2種類に分類されている。

点制御

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点制御 (intermittent control) の速度照査は、情報をある特定の地点で地上から車上へ伝送するものである。伝送できる箇所が制限されているため、途中で信号機の指示速度が変化してもそれをすぐに車上へ伝達することができない。受け取った情報に応じて車上の装置が速度照査を行うが、情報を受け取った地点でのみ速度を照査して必要に応じてブレーキを掛ける方式(点照査)と、次に制限速度情報を受け取る地点まで車上装置が情報を記憶して列車の速度を照査し続ける方式(連続照査)がある。

連続制御

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 (continuous control) 

照査方式

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点照査

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100 km/h80 km/h

1.

2.80 km/h80 km/h調沿

3.

4.1100 km/h


連続照査

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1.

2.


パターン照査

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100 km/h60 km/h

1.

2.

3.




速度照査の適用対象

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速度照査による照査を適用する対象としては以下のような例が挙げられる。速度照査装置の種類により、どの種類の速度制限を適用できるかは異なっている。

信号機

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JR145km/h55km/h

速度制限のある曲線・分岐器

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臨時速度制限

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工事や保線作業を行っている区間などに臨時に速度制限が設定されることがある。平常時は速度制限がない区間に新たに設定されるので、何らかの手段で列車に新たに設定された速度制限の情報を伝達する必要がある。

最高速度

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原理

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速度照査で用いられている原理を分類して説明する。

地上時間比較式

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36 km/h10 m/s1011



ATS-SSx

車上時間比較式

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2RLC22

36 km/h210112

調

0 km/h

RLC使

ATS-STSWSSSKSF0.5 

多変周地上子式

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RLC



INDUSIPZBASFAATS

軌道回路式

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AF

沿

ATSATCATBBACCATCTGVTVM-430ATC1TVM-430

交差誘導線式

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交差誘導線式は、レールの間に交差誘導線と呼ばれるケーブルを敷設し、このケーブルと車上の間で電磁波を利用した通信を行うことで情報を伝送する仕組みである。前方の進路の開通状況や先行列車までの位置といった情報などが車上に伝送されて、車上装置がその情報に基づいて照査を行う。

交差誘導線により連続制御パターン照査を実現しているものとしては、ドイツやオーストリアで用いられているLZBがある。

トランスポンダ式

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ATS-PTBLKVBEBICABETCS 1

無線通信式

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JRATACSETCS 23

速度計式

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ATS使

ATS-P使ATS-P使

ATS-PJR1ATS

国鉄・JRにおける速度照査

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日本国有鉄道(国鉄)とそれを引き継いだJRグループにおける速度照査装置について詳細を説明する。

タイマー方式による速度照査

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速度照査用ATS地上子

JR0.5

地上タイマー方式

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分岐器過速度警報装置
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5ATS-BSSNSN

1966196860km

 / ATS
曲線における速度照査
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ATS-SNATS-SN60km/hJR2005726 2005425JRATS-P

車上タイマー方式

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ATS-ST系列
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JRJRJRATS-SNATS-STATSATS-SATS-SxATS-SWATS-SSATS-SKATS-SFATS-SNATS-STATS-ST1994ATS-ST[]

ATS-STJRS60km/h4 - 5Y

ATS-SATS-SxATS-SNJRATS-SNJR
ATS-ST(JR東海)
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JR東海がATS-SNに、速度照査機能を付加して開発したものであり、列車番号送出機能も付加されている。1990年に運用を開始し、1994年 - 1998年にかけて速度照査機能が付加された[1]

ATS-SW(JR西日本)
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ATS-STのハードウェアをCPU制御で再設計したもので、ATS-STの機能から列車番号送出機能を省略した他はATS-STに準じる。西日本旅客鉄道(JR西日本)用。1991年に運用を開始した。

ATS-SS(JR四国)
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ATS-SWと同様のもので、四国旅客鉄道(JR四国)用である。1993年に運用を開始した。

ATS-SK(JR九州)
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ATS-SWと同様のもので、九州旅客鉄道(JR九州)用である。1994年に運用を開始した。

ATS-SF(JR貨物)
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日本貨物鉄道(JR貨物)用で、当初はATS-Sと同等であったが、のちにATS-SNの機能が追加され、現在ではATS-STの機能も追加されている。

ATS-SN(JR東日本)
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JR東海のATS-ST線区への乗り入れ対策として速度照査ボードを追加したJR東日本の車上装置。JR東日本のATS-SN区間には過速度警報装置はあるものの、絶対停止コマンドの速度照査機能が無かったが、近年-SFとして設置されはじめている。ただし、ATS-SN搭載車にはATS-Pが併載されており、JR東海もATS-PTへと移行した現在ではJR東日本・東海区間においてATS-SNの速度照査機能が使用される機会はない(伊豆箱根鉄道駿豆線乗り入れの場合のみ使用する機会がある)。

ATS-ST系列による曲線での速度照査
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ATSATS-STJR25 JR8/JR西17/JR 0/JR 0[]

ATS-ST

ATS-ST

JR

ATS-ST

ATS-STATS-SxLC121103110040[]

パターン方式による速度照査

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ATS-PPATS-SxATS-P

ATS-PJRJR西

ATS-PNJRP1

ATS-PTJR

ATS-PFJRP

JRATS-PsATS-SxATSATS-P

日本の民鉄における速度照査

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地上タイマー方式(単変周式・点照査)

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JR(ATS-SN)

: ATS
JR42[2]使[3]5

車上タイマー方式(単変周式・点照査)

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JRATS-ST

=0km/h2

: 

車上連続照査方式(多変周式・AF軌道回路方式・その他の方式)

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軌道に流す連続的な情報または地上子による点で受け取る情報を元に、車両側で連続的速度を照査する。

多変周式

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: 

AF軌道回路方式

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ATCAF使

: 西西()

その他の方式

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ATSB

 31ATS

速度照査の現状

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JR北海道

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JR北海道は130km/h運転を行う特急列車を始め、多くの高速列車を運行しているが、同社の運転保安装置は海峡線ATC-Lを除くとすべてATS-SNである。従来は曲線での速度照査装置は貨物列車の過速度転覆事故が相次いだ函館本線大沼付近の峠越え区間にのみ設置され他所には全く無かったため、曲線での速度超過の危険性に対する列車の保安は事実上、運転士の注意力のみに委ねられていた。

国土交通省の通達を受け、同社は2005年7月26日より、ATS-SN線区における曲線での速度照査装置の運用を開始した。既に10箇所で運用を開始しており、2006年度末までに計21箇所設置する予定。当該装置は分岐器過速度防止装置と同じもので速度照査地点ごとに地上タイマーと列車検出地上子、即停地上子制御用のリレー回路が必要であり、また、豪雪山間地域における電源確保(高圧から変圧)やその維持管理などが必要で、全く無電源のST/SF車上タイマー方式と較べると費用が嵩む。なお、分岐器での速度照査は200箇所以上で実施していた(分岐器過速度防止装置によるもの)。

JR東日本

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6473.9km2005331ATS-PATS-Ps1820kmATS-P109ATS-SN4577.4kmATS-SN[]

ATS-P西JRJRATS-PATS-PATS-SF3ATS-SF4 - 5SF宿SF

JR東日本の整備計画

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JR

200982063757820ATS-P/ATS-Ps292109528ATS-SN[]

20091872012919626ATS-P/ATS-Ps26[]

2620092ATS-P1226[]

ATS-P200622009142012420850km

ATS-Ps23ATS-Ps[]ATS-PsATS-SN

JR東海

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JRATS-ST130km/h40km/h8JR西130km/h×0.9ATS-ST9[]ATS-PATS-PT20102012

JR西日本

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JR西日本はJR福知山線脱線事故の発生以前、17箇所の曲線で速度照査を行なっていた。

これはJR東日本以外のJR各社の中では最も多いが、在来線4388.1km(50線区)に対しては十分な数ではなかった。また、設置箇所について「最高速度130km/hの路線」という不合理な限定を付したため、福知山線脱線事故現場(曲線進入前後の制限速度差が50km/h)が設置対象から漏れることになった。

関西圏のアーバンネットワーク線区の大半ではATS-SWが多用されているが、現状ではATS-SWは信号に対する速度照査地上子が十分に設置されておらず、ATS-Pと比較して保安度が大きく劣る。

JR西日本福知山線脱線事故と速度照査

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107JRATS-SW

ATS-PJR西JR西2005619-ATS-PPATS-PATS-SW

 JR西ATS-PATS-PJR西JRJR0JR西ATS-PJR

ATS-SWATS-PATS-PJR西ATS-SW

JR西日本の整備計画

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JR西

2005200633112341ATS-SW20063281234

ATS-SW

2008 - 西 - ATS-P -  - 2010 -  - 西 - 

JR四国

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JR四国では車上側での速度照査機能を有するATS-SSを整備していた。しかし、多数の急曲線を縫うように高速で走行する振り子式特急列車を多く運行していながら、従来は曲線での速度照査は全く行わず、曲線での速度超過の危険性に対する列車の保安は事実上、運転士の注意力のみに委ねられていた。

JR四国の曲線での速度照査

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国土交通省の発表によれば、2006年度末までに62箇所の曲線で速度照査を行う予定となっており、うち国土交通省の指摘以外の曲線で自主的に地上子を設置するのは29箇所である。

JR四国の分岐器での速度照査

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JR四国は分岐器における速度照査を行なっているとしているが、設置数は不明である。なお、分岐器速度制御装置は使用しておらず、すべてATS-SSでの速度照査であるが、今後分岐器速度制御装置を整備するとしている。

JR四国の線路終端部での速度照査

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線路終端部においては管内で7駅あるすべての終端駅で速度照査を実施しているが、2005年3月2日にJR四国と同じATS-SS方式による速度照査が行われていた土佐くろしお鉄道の終端駅である宿毛駅構内で発生した衝突事故を受けて、全終端駅で線路終端用の速度照査用地上子を増設、順次使用を開始している。

JR九州

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JRATS-SK130km/h

JR39200615200924572009ATS

JR19681001988ATS-SK60km/hSK0.50.550.45

使ATS-SK

国鉄・JRと同一のATSを採用する私鉄・第三セクター鉄道

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愛知環状鉄道

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JRATS-ST JR使

2155km/hJR120km/h

JRJRJRATS-PT20002007ATS-PT1

:2011

伊勢鉄道

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JR110km/h西ATS-ST

60km/h

1JR

JRATS-PTATS-PT

2011  2010

脚注

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  1. ^ 「JR東海 在来線全線に速度照査機能 ATS-ST形に付加 年度内完了」『交通新聞』交通新聞社、1999年1月25日、2面。
  2. ^ 通達 : 「自動列車停止装置の設置について」 昭和42年鉄運第11号 (1967/01発)「自動列車停止装置の構造基準」
  3. ^ カバーを被せている

参考文献

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  • 電気鉄道ハンドブック編集委員会 編『電気鉄道ハンドブック』(初版)コロナ社、2007年。ISBN 978-4-339-00787-9 
  • Institution of Railway Signal Engineers 編(英語)『European Railway Signalling』A & C Black、1995年。ISBN 0-7136-4167-3 
  • 『信号シリーズ7 ATS・ATC』日本鉄道電気技術協会。 

関連項目

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