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'''アイルランド音楽'''︵アイルランドおんがく︶とは、楽譜に頼らず、[[アイルランド]]で聴き覚えによって伝えられた歌とダンスの音楽である<ref>{{Cite web|title=Comhaltas: About Us|url=https://comhaltas.ie/about/|website=comhaltas.ie|accessdate=2021-01-05}}</ref>。イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアなど移民として移り住んだアイルランドのゆかりのある人々によって親しまれてきたが、ワールドミュージックの高まりによって、ドイツ、フランス、アジアなど外国での人気も高まり、インターナショナルな傾向を見せている。
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'''アイルランド音楽'''(-おんがく)とは、[[アイルランド]]に住む人々、ならびにそれ以外の国に住むアイルランド系の人々がアイルランド音楽と認識して作曲あるいは演奏する音楽である。 |
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アイルランドの音楽は、アイルランド民族の海外流出やイギリスやアメリカから受けた影響などがあるものの、その伝統的な側面はいまだ強く残されており、むしろアイルランド音楽自身もまた多くの音楽に直接的・間接的に影響を与えてきたと言える。[[20世紀]]の[[ロック (音楽)|ロック]]はアメリカの[[カントリー・ミュージック]]から強い影響を受けているが、[[カントリー・ミュージック]]もアイルランド音楽を起源のひとつとして持っている。伝統音楽だけでなく[[現代音楽]]の分野でも非常に豊かであり、その中にはアイルランド旧来の音楽性に執着しようとする動きもあるが、アイルランドの国内ですらあまり強い注目を受けておらず、それゆえに伝統音楽ほどには海外に伝播してはないのが現状である。
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{{出典の明記| date = 2022年5月| section = 1}} |
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アイルランドの音楽は、イギリスやスコットランド、アメリカなどの影響を受けながら独自に発展してきたものである。アイルランド音楽は、ほとんどが奏者自身の手によって作曲されたものである。50年代になると、ショーン・オリアダによって、新たな音楽表現がなされ、60、70年代には、フォークリバイバルの波に乗って若手のバンドであるクラナドやプランクシティが活躍した。ブルーアイド・ソウルの[[ヴァン・モリソン]]<ref group="注">「ブラウンアイド・ガール」「ワイルド・ナイト」などが代表曲。</ref>、ロックのシニード・オコーナー、アイリッシュ・パンクのポーグズらもアイルランドの音楽家である。 |
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[[20世紀]]の[[ロック (音楽)|ロック]]はアメリカの[[カントリー・ミュージック]]から強い影響を受けているが、[[カントリー・ミュージック]]もルーツをたどればブリテン島やアイルランドの音楽であり、現代の音楽の源泉であるともいえる。 |
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また、アイルランド音楽が直接ロックや[[パンク・ロック|パンク]]、その他と結びついて現代化された物がアイルランド内外で大ヒットする事もある。実際、70年代から80年代にかけては、伝統音楽とロックの境界線は不鮮明なものであったが、その際に多くのミュージシャン達がこの2スタイルの垣根を超えて融合しようとする創作を当然のように行ってきた(この傾向は、近年でも[[U2]]や[[ホースリップス]]、[[クラナド]]などに見受けられる)。しかしながら、ことアイルランド音楽の場合は、結局は新しいものに取って替わるよりもその原点へと回帰しようという動きも非常に活発であった。 |
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70年代から80年代にかけては、アイルランド伝統音楽がロックや[[パンク・ロック|パンク]]などに影響され、ポーグズなどを発端とした新しい音楽が音楽市場で次々と成功を収め、ワールドミュージックに新しいジャンルを切り開いた。
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日本では他の[[ケルト圏の音楽]]と共に[[ケルト音楽]]とまとめて呼ばれることも非常に多いが、アイルランド音楽はそれ単独でジャンルとして成立しており、またアイルランド人のアイデンティティーや文化に強く由来している性質上、こうした「ケルト」という括りを忌避する向きもあることは念頭に置いておくべきである。 |
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アイルランドにおける伝統音楽は、[[リール (ダンス)|リール]]や[[ジグ (音楽)|ジグ]]などの様々な種類のダンスの音楽と、数多くの歌からなる。また、カロランが作曲したバロック音楽のハープの曲もアイルランドの音楽に含まれる。
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アイルランドの伝統音楽は、[[16世紀]]頃から流行した[[リール (ダンス)|リール]]や[[ジグ]]などのダンスと、そのための[[舞曲]]、無伴奏の[[叙事詩]]歌や[[抒情詩]]歌、[[子守唄]]などの古いジャンルと、アイルランドから他国へ[[移民]]する者たちが歌った歌、民族紛争時代に歌われた[[反戦歌]]などの新しいジャンルから構成されている。中でもダンス曲は大きなウェイトを占めている。
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伝統音楽は古くから聴き覚えによるもので、楽譜にして残されることはなかった。しかしながら、[[18世紀]]あるいはそれ以前からイギリスやアイルランドの音楽研究者や曲の収集者の手によって記録され、20世紀のハープの復興の際にはそれらが役に立ち<ref>{{Cite web|和書|title=失われたアイルランドの響きを求めて|url=https://teramotokeisuke.com/|website=失われたアイルランドの響きを求めて|accessdate=2021-01-05|language=ja}}</ref>、その後の民俗音楽の研究に役立てられた。20世紀初頭には、アメリカの[[フランシス・オニール]]によってアイルランド伝統曲や奏者たちが本格的に記録、出版された<ref>{{Cite web|和書|url=http://epu.ucc.ie/henebry/ |title=フランシス・オニール|website=epu.ucc.ie | accessdate=2021-01-05}}</ref>。この本は評判になり販売部数も多く、アイルランドのレパートリーの構築に役に立った。けれども、アイルランド伝統音楽の楽譜はメロディーのアウトラインしか書かれておらず、楽譜を見て曲を学ばないのが基本である。
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伝統音楽は古くから口承で伝えられてきており、[[18世紀]]あるいはそれ以前の譜面も数多く存在するが、近年まで楽譜などの形で書き下ろされることはあまりなかった。口承という性格上、同じ曲でもそのメロディは地域によって、また演奏者によって微妙に異なっていることが多い上に、同じ演奏者であっても、演奏する場所、状況によって、あるいはその時の気分によってメロディは異なる。これは、曲の根本的なメロディは、おおまかなアウトラインであり、それをどのように解釈するかは個人に任せられていることを意味している。
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アイルランドでは |
アイルランドでは音楽と生活が密接に結びついていた。ダンスや演奏は野外や個人宅、農家の納屋などで行われていたが、フォークリバイバルの60年代からパブでセッションが行われるようになった。今日では[[パブ]]でのセッションが観光客向けにも窓口を広くして開催されている。2人以上集まれれば、そこは音楽の場となる。お互い知っているレパートリーを一緒に演奏し、1つ曲を3ループくらいすると、それだけではおわらせずに同じリズム形式の曲を大抵2つまたは3つつなげて演奏するのが一般的である。パブの音楽シーンはアイルランド音楽にとって、音楽家同士の出会いの場になったり、発表する場でもある。
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アイルランド伝統音楽は元来パイプやフィドルによるソロの演奏であり、本来和声の概念を持たない。また、曲がモードでできているため、3和音が合わない場合もある。基本的に演奏は他の楽器も同じ旋律を演奏するユニゾンである。近年では、対旋律などがしばしば近年のドニゴールのフィドル、[[ギター]]、[[ブズーキ]]による伴奏に見られる。
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アイルランドの伝統歌謡としては、[[叙事詩]]歌や[[抒情詩]]歌などのアイルランド語の歌、イギリスの[[バラッド]]、英語の歌、移民の歌、哀悼歌、殺人の歌、愛の歌、パーティーの歌、イギリスへの抵抗運動の英雄を謳った歌などテーマはさまざまである。 |
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今日、パブでセッションを行なうという行為は多くの国で人気があり、アイルランド人のみならず、それぞれの国のミュージシャンたちによって愛好されている。 |
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楽器については、伝統的に用いられてきたのは[[イリアン・パイプス|イリンパイプス]]と[[フィドル]]である。[[ティン・ホイッスル]]は19世紀から、[[アコーディオン]]、[[コンサーティーナ]]などのリード楽器は20世紀頃から新しく導入された。現在では、どんな楽器でも受け入れられている。以下に挙げる楽器は代表的なものであるが、1930年頃から[[ピアノ]]、[[サックス]]も取り入れられている。[[ギター]]や[[ブズーキ]]などは1930年代〜1960年代後半にかけて実験的なバンドに導入された。1950年頃には、ショーン・オリアダによって、片側に革が張られたバウロンや古楽器であるハープシコードなども伝統楽器に加えられた。
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* ジャーマン |
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* [[ワルツ]] |
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* [[アイリッシュ・ダンス#シャン・ノース|シャン・ノース]] |
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今日、アイルランドの伝統音楽を演奏するための楽器として好まれるものはあっても、特定されているものはない。演奏するために必要な音階を備えた楽器であれば、どんなものでも参加を認められるし、また実験の対象になる。以下に挙げる楽器は代表的なものであるが、[[ピアノ]]や[[ジェンベ]]、[[サックス]]などが取り入れられる例もある。[[ギター]]や[[ブズーキ]]などは1930年代~1960年代後半にかけて実験的に導入された新参の楽器であるが、[[ティン・ホイッスル]]や[[アコーディオン]]といった代名詞的な楽器ですら、19世紀頃から導入されたものである。最も古くから取り入れられている楽器は[[イリアン・パイプス]]や[[フィドル]]など。それでも、17世紀頃からである。
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現在アイルランドの[[国章]]になっている[[ハープ]] |
けれども、アイルランドにおいてもっとも古くから使用されていた楽器は、現在アイルランドの[[国章]]になっている[[ハープ]]である。ハープは宮廷の楽器として中世から吟遊詩人と共に重用されてきたが、18世紀を最後に一時完全に途絶えた。カロランの曲などハープの曲はダンスの音楽ではないが、ショーン・オリアダはカロランの曲を多く現代によみがえらせた。
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[[Image: Uilleann pipes-practice set.jpg|thumb|140px|イリアン・パイプス]] |
[[Image: Uilleann pipes-practice set.jpg|thumb|140px|イリアン・パイプス]] |
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[[Image: Bodhran.jpg|thumb|140px|バウロン]] |
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** [[マンドリン]]([[フラットマンドリン]]の方がより広く使われる) |
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** [[バンジョー]]([[テナーバンジョー]]の方がより広く使われる) |
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* 管楽器 |
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** [[ロー・ホイッスル]] |
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** [[イリアン・パイプス]] ([[バグパイプ]]) |
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* リード楽器 |
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** [[アコーディオン]] |
** [[アコーディオン]](ダイアトニックのボタンアコーディオンが好まれる) |
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** [[コンサーティーナ]](ダイアトニックのアングロ・コンサーティーナが好まれる) |
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== アイルランドの代表的なアーティスト == |
== アイルランドの代表的なアーティスト == |
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* [[ポーグズ]]<ref group="注">アイリッシュ・パンクの代表的バンド。</ref> |
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* [[クランベリーズ]]<ref group="注">「リンガー」などがヒット。</ref> |
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* [[マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン]] |
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* [[U2]] |
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=== 出典 === |
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== 関連項目 == |
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* [[アイルランド音楽家協会]] |
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{{ヨーロッパの題材|音楽|mode=5}} |
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{{アイルランド関連の項目}} |
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{{Ireland-stub}} |
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{{デフォルトソート:あいるらんとおんかく}} |
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[[Category:アイルランドの音楽|*あいるらんど]] |
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[[Category:音楽のジャンル|あいるらんど]] |
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[[da:Irsk folkemusik]] |
[[da:Irsk folkemusik]] |
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[[de:Irish Folk]] |
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[[fr:Musique traditionnelle irlandaise]] |
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[[ga:Ceol traidisiúnta na hÉireann]] |
[[ga:Ceol traidisiúnta na hÉireann]] |
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[[hr:Irski folk]] |
[[hr:Irski folk]] |
2023年10月6日 (金) 08:10時点における最新版
歴史[編集]
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/bc/Uilleann_pipes-practice_set.jpg/140px-Uilleann_pipes-practice_set.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1a/Bodhran.jpg/140px-Bodhran.jpg)
アイルランドの代表的なアーティスト[編集]
ダンスとダンス曲[編集]
- アイリッシュ・ダンス(セットダンス)
- リール
- ジグ
- スリップ・ジグ
- シングル・ジグ
- スライド
- ホーンパイプ
- ハイランド
- ストラスペイ
- フリング