アカデミック・ライティング
アカデミック・ライティング (英語: academic writing) とは、論文やレポートといった学術的文章の書き方をさす。直訳すれば﹁学術的に書くこと﹂[1]。アカデミック・スキルズの一種。
ライティング・センター
ライティング教育は、19世紀後半アメリカで、モリル法による大学の大衆化を受けて始まった[7]。以降﹁ハーバード方式﹂﹁シカゴスタイル﹂などが徐々に生まれた。20世紀中期には、アファーマティブ・アクション[8]や復員兵援護法[9]によるライティングに不慣れな学生の増加を受け、リメディアル教育の場としてライティング・センターが多くの大学に設置された[8]。20世紀末からは、ライティング教育自体の研究や改革も進んでいる[10]。
日本でも、2000年代から﹁早稲田大学ライティング・センター﹂などのライティング・センターが設置され[11][9]、研究や改革も進んでいるが、アメリカに比べれば遅れているとされる[12]。
概要[編集]
アカデミック・ライティングの手法は、論文やレポートだけでなく、学術書、学会発表、ポスター発表、スライド発表などにも使われる。また、企業や研究所における調査報告やプレゼンテーションなど、様々な場面で応用される。 学問分野や使用言語によってルールや慣習が異なる場合もある[2]。 日本では、大学の初年次教育︵導入教育︶や卒論指導で主に教えられる。また、ライティング・センターに所属するチューターが大学図書館などで講座を開いたり[3][4]、大学のWebサイト上にマニュアルが公開されることもある[1]。留学生に対する日本語教育でも教えられる[5]。市販の教科書も無数にある︵エーコ﹃論文作法﹄、木下是雄﹃理科系の作文技術﹄、戸田山和久﹃論文の教室﹄[6]など︶。歴史[編集]
ウィキペディアとの関係[編集]
ウィキペディアは﹁誰もが編集できる百科事典﹂であり、虚偽や低質な情報が多く含まれている。にもかかわらず、学生がレポート等を書くにあたり、ウィキペディアを参照してしまうことが問題になっている[13]。 佐藤ほか 2020は、以下の3点をウィキペディアの適切な使用法として挙げている[14]。 (一)ウィキペディアを参考文献・引用文献として使わない。※ウィキペディア自体を研究するようなケースを除く。 (二)ウィキペディアを読む前に、専門家が監修した事典を読む。 (三)ウィキペディアの記事自体を参照するのではなく、記事内で出典として挙げられている文献を入手して参照する。 ウィキペディアには﹁出典を明記する﹂などのルールがあり、アカデミック・ライティングの要素を部分的に持っている。その点で、学生がウィキペディアをルール通りに書けばレポートの訓練になる、という見解もある[15]。 研究者の世界︵アカデミズム︶が独創性・先取性を重んじるのに対して、ウィキペディアは独創性・先取性を﹁独自研究﹂と呼んで忌避しており、それゆえ両者が目指す方向は正反対とも言われる[16]。主なトピック[編集]
関連項目[編集]
脚注[編集]
(一)^ ab笠木 2019.
(二)^ “アカデミック・ライティング入門‥レポートの書き方”. 大阪府立大学. p. 6 (2018年). 2021年4月23日閲覧。
(三)^ “アカデミックライティングセンター”. 青山学院大学 (2019年6月1日). 2020年10月18日閲覧。
(四)^ “ライティングセンター | 広島大学”. www.hiroshima-u.ac.jp. 広島大学. 2020年10月18日閲覧。
(五)^ “会員の出版物|アカデミック・ジャパニーズ・グループ研究会”. academicjapanese.jp. 2020年10月18日閲覧。
(六)^ “ブックウオッチング‥﹃最新版 論文の教室 レポートから卒論まで﹄ 戸田山和久さん”. 毎日新聞. 2024年5月3日閲覧。
(七)^ 笠木 2022, p. 140ff.
(八)^ ab吉田 2010, p. 99.
(九)^ ab佐渡島 ; 太田 2013, p. 243f.
(十)^ 笠木 2022, p. 151ff.
(11)^ 吉田 2010, p. 101.
(12)^ 笠木 2022, p. 160f.
(13)^ 北村 2022, p. 165.
(14)^ 佐藤ほか 2020, p. 58︵引用にあたり一部改変︶.
(15)^ 北村 2022, p. 166.
(16)^ 山田 2011, p. 61f.