香料
香料︵こうりょう、flavor︶は、食品に香りと味の一部を付与する食品添加物︵フレーバー︶と、食品以外のものに香りを付けるフレグランス(香粧品香料︶に大別される。
概要[編集]
一般に香料は、様々な植物や一部の動物から抽出された天然香料︵てんねんこうりょう︶、あるいは化学的に合成された合成香料︵ごうせいこうりょう︶を多数調合して作られる。これらはフレーバー、フレグランスに関わらず調合香料︵ちょうごうこうりょう︶と呼ばれる。 調合香料を作成する際の調合品目やその割合、調合の順序などを記載した処方箋︵レシピ︶を作成すること、あるいは実際に調合香料を作成する行為を調香といい︵調合香料を作成する行為は調合︵ちょうごう︶と呼ばれ、この二つは混同されることも多いが、意図的に語を使い分ける場合もある︶、調香を行う専門職は調香師と呼ばれる。特にフレーバーを調香する調香師はフレーバリスト、フレグランスを調香する調香師はパフューマーと呼ばれる。 フレーバーとフレグランスの違いは一般的に﹁口に入るものかどうか﹂で判断される。たとえば、歯磨き粉に使われる香料は口に入るものだからフレーバーである。一方、柔軟剤や香水などに用いられる香料は口に含むことはないので、フレグランスである。また、香料統計によると香料の国内シェアの割合はフレーバーの割合が85%以上を占めることがわかっている︵過去5年間︶ [1]天然香料[編集]
天然香料のほとんどは植物より抽出された精油や樹脂である。精油の抽出法としては水蒸気蒸留が最もよく用いられている。しかし熱に対して不安定な精油については、柑橘類のように果皮を圧搾したり、花の精油のように有機溶媒により抽出しているものも存在する。
植物由来の天然香料は農産物であるので
●収穫の時期が限られるので需要の急変に対応できない。
●処理する農産物の量に対して含まれる香料の量はわずかであるので高価。
●気候などにより生産量が一定しないため価格変動が大きい。
●産地やその年の気候により品質が一定しない。
といった欠点がある。
動物から得られる天然香料としてはジャコウジカから得られるムスク︵麝香、じゃこう︶、ジャコウネコから得られるシベット︵霊猫香、れいびょうこう︶、ビーバーから得られるカストリウム︵海狸香、かいりこう︶、マッコウクジラから得られるアンバーグリス︵龍涎香、りゅうぜんこう︶の4種が著名である。しかし、それらを産出する動物の個体数が減少しており保護されているため、現在では合成香料によって代替され、ほとんど用いられていない。また食品素材として用いられる肉エキスや魚介エキスといった抽出物も元となった食材の香気を有していることから動物から得られる天然香料の一種と言える。
合成香料[編集]
合成香料は天然香料中の成分や、あるいは天然には存在しないが香料として有効な化合物を化学的に合成したものである。単一の化合物からなることから調合香料に対して単品香料︵たんぴんこうりょう︶、あるいは化学的に合成されることからアロマケミカルと呼ばれることもある。 またその化合物が天然に見出されている合成香料はネイチャーアイデンティカル(Nature Identical、略してNIと言われる)、天然に見出されていないものはアーティフィシャル (Artificial) もしくはニューケミカル (New Chemical) と呼んで区別している。 合成香料は天然香料の欠点を持たないため、天然香料の欠点を補うものとして用いられる。 合成香料の原料としては石油より得られるエチレンやアセチレンなどのほかに、精油より分離されるテルペン化合物や油脂より得られる脂肪酸などが用いられ、これを化学反応させることにより合成香料を得る。 なお、天然香料より蒸留や再結晶により単離精製して得た単一の香料化合物(例えばハッカ油から得たメントール)は単離香料︵たんりこうりょう︶と呼ばれ、化学合成にはよらないものであるが合成香料の一種として扱われることが多い。詳細は「合成香料」を参照
調合香料[編集]
フレーバー[編集]
フレーバーは、飲料、菓子、調味食品などの食品から、歯磨剤や洗口剤などのオーラルケア商品、タバコなどに用いられる。
添加の目的[編集]
フレーバーの添加の目的は大きく分けて二つある。 ●着香 無香の飲食物︵砂糖水、ガムベース、寒天など︶に好ましい香りや味を付ける。 ●矯臭 食品の製造過程で付いてしまった臭いを隠したり、より好ましい香りに改善したり︵マスキング︶、失われた臭いを補ったりする。香料の形態[編集]
またフレーバーが添加される食品の性質も多岐にわたるので香料の形態もいくつかある。 ●水溶性香料 エタノールやグリセリンなど水に溶解するもので希釈された液体香料で、清涼飲料水など水分量の多い飲食物に使用される。 ●油溶性香料 油脂やプロピレングリコールなど油に溶解するもので希釈された液体香料で、焼き菓子やスープなど油脂を含む飲食物に使用される。 ●乳化香料︵エマルジョン︶ 乳化剤を含む液体香料で、必要な量の香料が溶解しないときなどに使用される。 ●粉末香料 香料をデキストリンなどの担体に吸着させたもの、あるいはアラビアガムなどの賦形剤とともにいったん乳化した油溶性香料をスプレードライヤーなどの装置で噴霧乾燥したもので、錠菓やスナック菓子などに使用される[2]。フレグランス[編集]
フレグランスは、香水、化粧品などのフレグランス製品から、石鹸やシャンプーなどのトイレタリー用品、芳香剤や線香などの日用品、工業用プラスチックやゴムなどに練り込まれるなど、人の口に入るもの以外の全ての香料について使われる。 食品を模した日用品︵例えばイチゴの匂いの消しゴムなど︶にはフレーバーではなくフレグランスが用いられる。 フレグランスが添加される対象はほとんど無香のものが多いので目的としては着香が大部分である。しかし次亜塩素酸系の漂白剤のように不快な刺激臭を持つ対象に対してはそれを隠す目的で香料が添加される。世界の主要な香料メーカー[編集]
かつては、10億ドル規模の6つの多国籍企業があったが、ジボダンが2007年にクエスト・インターナショナルを買収した。新しい香料分子はこれらの大企業によって作られる[3]。- ジボダン(Givaudan、スイス)
- フィルメニッヒ(Firmenich、スイス)
- インターナショナル・フレバー・アンド・フレグランス(IFF、International Flavors and Fragrances、アメリカ)
- シムライズ(Symrise、ドイツ)
- 高砂香料工業(Takasago International Corporation、日本)
かつて存在した香料メーカー[編集]
- クエスト・インターナショナル(Quest International、オランダ)
日本の主要な香料メーカー[編集]
- 高砂香料工業
- 長谷川香料
- 小川香料
- 曽田香料
- 長岡香料
- 塩野香料
- 三栄源エフ・エフ・アイ
- 高田香料
- 富士フレーバー
- 稲畑香料
- 中山技術研究所
- 横山香料
- 日進香料
- ティアンドエム
- 内外香料
- ミナト香料研究所
- サンアロマ
かつて存在した香料メーカー[編集]
日本の業界団体[編集]
脚注[編集]
- ^ https://www.jffma-jp.org/profile/statistics.html
- ^ 光琳選書3『食品と香り』清水純夫・角田一・牧野正義編著 2004年 光琳 ISBN 4-7712-0024-6
- ^ ルカ・トゥリン 著 『香りの愉しみ、匂いの秘密』 山下篤子 訳、河出書房新社、2008年