グロスフスMG42機関銃
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二脚を装着したMG42 | |
グロスフス MG42機関銃 | |
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種類 | 機関銃 |
製造国 | ドイツ国 |
設計・製造 |
グロスフス マウザー シュタイアー |
仕様 | |
種別 | 汎用機関銃 |
口径 | 7.92mm |
銃身長 | 533mm |
使用弾薬 | 7.92x57mmモーゼル弾 |
装弾数 |
ベルト給弾式 ドラムマガジン式 |
作動方式 | ローラーロック式ショートリコイル |
全長 | 1,220mm |
重量 | 11,6kg |
発射速度 | 1,200-1,500発/分 |
銃口初速 |
975m/秒 884m/秒 |
有効射程 | 1,000m |
歴史 | |
製造数 | 423,600挺[1] |
グロスフスMG42機関銃︵グロスフスMG42きかんじゅう、Maschinengewehr 42︶、MG42またはMG-42︶は、第二次世界大戦時の1942年にナチス・ドイツにより開発・製造された汎用機関銃である。
内部構造を示すカットモデル
MG34と同様、口径7.92mm、ショートリコイル方式、オープンボルトの反動利用式である。ただしMG34とは異なり、連射のみで単射機能はない。引き金は撃針を作動させるのでなく、ボルト・アセンブリを前進させる。ボルト・アセンブリの前後動にともなって給弾レバーが作動する構造はMG34と同様だが、これと給弾レバーとのかみ合い部が改良されている。MG34では給弾レバーに設けたレール状の突起を遊底の溝に噛み合わせていたが、MG42では設計を合理化して遊底側にピン状の突起を、給弾レバー側に噛み合い溝を設けている。ポーランドのエトヴァルト・シュテッケ︵Edward Stecke︶から取得した特許を基礎にしたローラーロック式を閉鎖機構に採用し、MG34よりも泥や埃に強く、ジャミングしにくくなった。ボルト・アセンブリのローラーはレシーバー内部ではなく、銃身後端の延長部と噛み合う。
MG34とは異なり、MG42には75発入りのサドル型ドラムマガジン﹁ドッペル・トロンメル︵Doppeltrommel︶﹂は使用できなかった。 なお、蛇足であるが、日本国内で﹁MG42にドッペル・トロンメルを取り付けることができる﹂という誤解が広まったのは、﹁タミヤ 1/35 ミリタリーミニチュアシリーズ No.16 ドイツ陸軍 BMW R75 サイドカー﹂のプラモデルに付属する歩兵が、ドッペル・トロンメル付のMG42を担いでいるという、資料の少ない時代の些細な考証ミスによるもの、とされる。
MG42は他国の機関銃などと比べて、珍しい排莢システムを使用していた。他国や従来の機関銃は左部︵もしくは上部︶から給弾して右部から排莢するのが一般的だったが、MG42は100連発ドラムマガジンを装着するために薬莢を下から排出する設計になっていた。また、銃口にリコイル・ブースターを装備し、MG42の発射速度は毎分1,200発、いくつかのバージョンは1,500発となり、後のMG45では毎分1,800発以上に達した。これは敵目標を射界に捕捉できる時間が短いため、可能な限り発射速度を高めた方が有効であるとの実験結果による。発射速度が高まったため反動が大きく、MG34と比較すると命中精度は落ちたが、速射性能がその欠点を補った。また、リコイル・ブースターを使用せずに射撃することも可能だった。このような高い発射速度では発射音が連続して聞こえ、﹁布を切り裂く﹂音と呼ばれ、﹁ヒトラーの電動のこぎり﹂︵ドイツ語‥Hitlersäge、英語‥Hitler's Buzzsaw︶というニックネームを付けられた[2]。また、発射音の高さも凄まじく、機関銃手はしばしば難聴に陥ったと言われており、高い連射速度でバレルのライフリング等の摩耗が激しく、1秒以上トリガーを引いてはいけなかったとのこと。また前進したボルトが衝撃でわずかに跳ね戻り、不充分な閉鎖状態で発砲したことによって薬莢が破裂するおそれがあったが、根本的な対策が普及するのは戦後生産型になってからであった。
連射の反動で肩からずれるのを防ぐため、銃床は下方前部にトリガーを引く手とは反対の手︵右手でも左手でもよい︶を添えられる突起部︵ハンドレスト︶が設けられている。木製と黒いベークライト樹脂製の銃床があり、後者の方が一般的であった。銃身はMG34のものより軽く摩耗も早かったが、銃身カバー右後端のハッチを開く一挙動だけで簡単に銃身を抜くことができ、数秒で交換することができた。戦闘時には銃の脇に予備銃身をおき、時々交換して冷却しながら使用した。銃身の摩耗を防ぎ弾薬を節約するために、連射は一秒以下にとどめるのが普通であった。後期生産型では銃身と機関部の焼損と摩耗対策に、部品に硬質クロムメッキが施された。
二脚は銃の前部または中央部に取り付けることができたが、取付け部の形状が異なるためMG34と互換性はない。バイポッド︵二脚︶を含めると11.6kgで、MG34より軽量化された。さらに、銃身ジャケットの形状に合わせ、新たに銃架が改修された専用三脚﹁ラフェッテ42﹂が開発された︵三脚自体の重量は20.5kg︶。
装填操作用のレバーはMG34と同じく機関部の右側面に設けられ、当初は指掛け付きレバーが水平に突き出ていたのに対し、その後はT型形状のレバーに変更された。ローラーロック機構を後退させる際には、最初の引き起こし時に強い力が必要なため、T型レバーには引き起こし時に作用するカムが追加された。
一部に﹁シュパンダウ工場製﹂の銘板が付いていたため、連合国軍兵士から﹁シュパンダウ﹂の名で呼ばれることもあった。ドイツ軍AFVの車載機関銃は、ボールマウントが対応するMG34が標準装備だったが、車内からMGポートを通して使う﹁IV号駆逐戦車﹂、エンジングリル上に対空銃架を持つ﹁ヤークトティーガー﹂、新型砲塔の同軸機銃として搭載する﹁パンターF型﹂、前方の銃架に搭載する﹁Sd.kfz.250、Sd.kfz.251の後期型﹂など、ボールマウント以外にMG42を搭載する戦闘車両もあった。
概要[編集]
当時のドイツ国防軍の主力機関銃だったラインメタルMG34は優秀な銃だったが、部品に削り出し素材を多用するなど生産性に問題があり、高価格であった。コストダウンと量産性の向上を重点目標に競争試作が行われ、グロスフス社[注 1]の技師ヴェルナー・グルーナーが設計した本銃がMG42として採用された。グロスフス社は家庭用をはじめとした金属製品のメーカーで、銃器専業メーカーではなかったが、とくに板金加工についてノウハウを持っていた。 完成した銃はプレス加工の多用により、MG34のおよそ半分の人手や低いコスト[注 2]で製造でき、生産工程で資材をより節約できた。1942年から量産を開始し、グロスフス社、マウザー社、グストロフ社︵Gustloff-Werke︶他で生産され、戦時生産数が40万挺を超えた成功作となった[注 3]。 MG42は複数の国々で使用され、ライセンス品や模倣品が数多く生産された。アメリカ軍でも使用弾薬を自国規格に変更したフルコピー品の生産を企画している︵後述#T24参照︶。それらも含め戦後も多くの国で使用された他、派生型のMG3が今なお現用である。 ヒトラーの電動のこぎりという異名がある。特徴[編集]
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1943年にアメリカ陸軍が作成した鹵獲火器の操作教育映画より、初期型MG42の操作を示す部分の抜粋
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Lafette 42三脚架に搭載された状態
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各種の状態で展示されるMG42
右奥のものは対空用の三脚架
バリエーションと試作品[編集]
1944年、資材不足から新たなバージョンが開発された。MG45︵または MG42V︶と呼ばれるもので、使用材料をさらに減らして9kgまで軽量化され、発射速度は毎分1,800発以上と限界まで高められた。最初の試験は1944年6月に行われたが量産に至らず、結局10丁だけが試作された。MG42Vの設計の一部は戦後、ローラーディレード・ブローバック方式を採用したH&K社の小火器や、スイスのMG710に引き継がれている。
詳細は「MG45」を参照
M53
ユーゴスラビアが第二次世界大戦後の賠償金代わりとしてドイツから兵器製造機械を譲り受けて生産した。口径は7.92mmのままである。
MGm/62
デンマークがドイツから輸入したMG42/59︵MG1︶。銃架はデンマークで製造した物を使用している。
MG51
1951年にスイスが正式採用した機関銃。MG42に類似した構造となっているが、閉鎖機構にローラーではなくタブを採用し、切削加工のレシーバーの前方にプレス加工のバレルジャケットを取り付けるなど独自性が見られる。弾薬はスイス独自の7.5x55mm スイス弾。
MG74
オーストリアのステアー社がライセンス生産していたMG42に独自の改良を加えて製造した機関銃。
詳細は「MG74」を参照
ドイツ︵西ドイツ︶で第2次世界大戦後に製造されたものとして、MG42を7.62x51mm NATO弾仕様に再設計されたMG42/59やラインメタルMG1、発射速度の調整のできる改良型・MG3があり、これはドイツ連邦軍︵Bundeswehr︶に採用されている。また、他の国々でも派生バージョンやMG3を採用しており、現在に至るまで運用されている。
詳細は「ラインメタルMG3」を参照
登場作品[編集]
グロスフスMG42機関銃の登場作品を表示するには右の [表示] をクリックしてください。
MG42は第二次世界大戦後半のドイツ軍主力機関銃であり、第二次大戦、それも大戦後半の戦いを扱った映画にはほぼ必ずと言っていいほど登場するが、実写映画の場合必ずしも実銃が登場しているとは限らず、作品によってはMG3等戦後のモデルや前述のライセンス生産品、その他模倣品がMG42として登場していることがある。また、MG42の構造を良く調べていないために、左側から排莢される誤った描写をしているものも少なくない。