愛国百人一首
愛国百人一首︵あいこくひゃくにんいっしゅ︶は、奈良時代から幕末までの和歌の中から、﹁愛国の情熱を詠いあげた﹂秀歌を選んだもの。日本文学報国会が情報局および大政翼賛会の後援と、毎日新聞社の協力を得て企画。昭和17年︵1942年︶11月20日、東京市内で発行される新聞紙上にて発表された。
選定委員は佐佐木信綱、土屋文明、折口信夫、斎藤茂吉、太田水穂、尾上柴舟、窪田空穂、吉植庄亮、川田順、齋藤瀏、松村英一、北原白秋ら12名︵ただし北原は委員就任後まもなく死去︶。選定対象は明治元年以前に物故した人物に限られている。新聞紙上に発表されたものに改訂と解説を加えたものが、﹃定本愛国百人一首﹄として昭和18年︵1943年︶3月に毎日新聞社から刊行されている。さらに同年11月には、日本玩具統制協会により絵入りカルタとして商品化され、普及された。
愛国百人一覧
- 柿本人麻呂 大君は神にしませば天雲の雷の上に廬(いほり)せるかも
- 長奥麻呂 大宮の内まできこゆ網引(あびき)すと網子(あご)ととのふる海人の呼び声
- 大伴旅人 やすみししわが大君の食(をす)国は大和もここも同じとぞ念(おも)ふ
- 高橋虫麻呂 千万の軍(いくさ)なりとも言挙げせずとりて来ぬべきをのことぞ思ふ
- 山上憶良 士(をのこ)やも空しかるべき万代に語り続(つ)ぐべき名は立てずして
- 笠金村 丈夫(ますらを)の弓上(ゆずゑ)振り起し射つる矢を後見む人は語り継ぐがね
- 山部赤人 あしひきの山にも野にも御猟人(みかりびと)さつ矢手挟(たばさ)みみだれたり身ゆ
- 遣唐使使人母 旅人の宿りせむ野に霜降らば吾(わ)が子羽ぐくめ天の鶴群(たづむら)
- 安倍郎女 わが背子はものな思ほし事しあらば火にも水にも吾(われ)なけなくに
- 海犬養岡麿 御民われ生ける験(しるし)あり天地の栄ゆる時に遇(あ)へらく思へば
- 雪宅麻呂 大君の命かしこみ大船の行きのまにまに宿りするかも
- 小野老 あをによし奈良の京(みやこ)は咲く花のにほふがごとく今さかりなり
- 橘諸兄 降る雪の白髪(しろかみ)までに大君に仕へまつれば貴くもあるか
- 紀清人 天の下すでに覆ひて降る雪の光を見れば貴くもあるか
- 葛井諸会 新(あらた)しき年のはじめに豊の年しるすとならし雪の降れるは
- 多治比鷹主 唐国に往き足らはして帰り来むますら武雄(たけを)に御酒たてまつる
- 大伴家持 天皇(すめろぎ)の御代栄えむと東(あづま)なるみちのく山に金(くがね)花咲く
- 丈部人麻呂 大君の命かしこみ磯に触り海原(うのはら)わたる父母をおきて
- 坂田部麻呂 真木(まけ)柱ほめて造れる殿のごといませ母刀自(ははとじ)面(おめ)変りせず
- 大舎人部千文 霰(あられ)降り鹿島の神を祈りつつ皇御軍(すめらみいくさ)に吾は来にしを
- 今奉部與曾布 今日よりは顧みなくて大君のしこの御盾と出で立つ吾は
- 大田部荒耳 天地(あめつち)の神を祈りてさつ矢ぬき筑紫の島をさしていく吾は
- 神人部子忍男 ちはやぶる神の御坂に幣(ぬさ)奉り斎(いは)ふいのちは母(おも)父がため
- 尾張浜主 翁(おきな)とてわびやは居らむ草も木も栄ゆる時に出でて舞ひてむ
- 菅原道真 海ならずたたへる水の底までも清き心は月ぞ照らさむ
- 大中臣輔親 山ごとの坂田の稲を抜き積みて君が千歳の初穂にぞ舂(つ)く
- 成尋阿闍梨母 もろこしも天の下にぞ有りと聞く照る日の本を忘れざらなむ
- 源経信 君が代はつきじとぞ思ふ神かぜやみもすそ川のすまん限(かぎり)は
- 源俊頼 君が代は松の上葉(うはば)におく露のつもりて四方(よも)の海となるまで
- 藤原範兼 君が代にあへるは誰も嬉しきを花は色にもいでにけるかな
- 源頼政 みやま木のその梢とも見えざりし桜は花にあらはれにけり
- 西行法師 宮柱したつ岩根にしき立ててつゆも曇らぬ日の御影(みかげ)かな
- 藤原俊成 君が代は千代ともささじ天の戸や出づる月日のかぎりなければ
- 藤原良経 昔たれかかる桜の花を植ゑて吉野を春の山となしけむ
- 源実朝 山は裂け海はあせなむ世なりとも君にふた心わがあらめやも
- 藤原定家 曇りなきみどりの空を仰ぎても君が八千代をまづ祈るかな
- 宏覚禅師 末の世の末の末まで我が国はよろづの国にすぐれたる国
- 中臣祐春 西の海よせくる波も心せよ神の守れるやまと島根ぞ
- 藤原為氏 勅として祈るしるしの神風に寄せくる浪はかつ砕けつつ
- 源致雄 命をば軽きになして武士(もののふ)の道よりおもき道あらめやは
- 藤原為定 限りなき恵みを四方にしき島の大和島根は今さかゆなり
- 藤原師賢 思ひかね入りにし山を立ち出でて迷ふうき世もただ君の為
- 津守国貴 君をいのるみちにいそげば神垣にはや時つげて鶏(とり)も鳴くなり
- 菊池武時 もののふの上矢(うはや)のかぶら一筋に思ふ心は神ぞ知るらむ
- 楠木正行 かへらじとかねて思へば梓弓(あずさゆみ)なき数に入る名をぞとどむる
- 北畠親房 鶏の音になほぞおどろくつかふとて心のたゆむひまはなけれど
- 森迫親正 いのちより名こそ惜しけれもののふの道にかふべき道しなければ
- 三条西実隆 あふぎ来てもろこし人も住みつくやげに日の本の光なるらむ
- 新納忠元 あぢきなやもろこしまでもおくれじと思ひしことは昔なりけり
- 下河辺長流 富士の嶺(ね)に登りて見れば天地はまだいくほどもわかれざりけり
- 徳川光圀 行く川の清き流れにおのづから心の水もかよひてぞ澄む
- 荷田春満
- 賀茂真淵
- 田安宗武
- 楫取魚彦
- 橘枝直
- 林子平
- 高山彦九郎
- 小沢蘆庵
- 本居宣長
- 荒木田久老
- 橘千蔭
- 上田秋成
- 蒲生君平
- 栗田土満
- 賀茂季鷹
- 平田篤胤
- 香川景樹
- 大倉鷲夫
- 藤田東湖
- 足代弘訓
- 加納諸平
- 鹿持雅澄
- 僧月照
- 石川依平
- 梅田雲浜
- 吉田松陰
- 有村次左衛門
- 高橋多一郎
- 佐久良東雄
- 徳川斉昭
- 有馬新七
- 田中河内介
- 児島草臣
- 松本奎堂
- 鈴木重胤
- 吉村寅太郎
- 伴林光平
- 渋谷伊與作
- 佐久間象山
- 久坂玄瑞
- 津田愛之助
- 平野国臣
- 真木和泉
- 武田耕雲斎
- 平賀元義
- 高杉晋作
- 野村望東尼
- 大隈言道
- 橘曙覧