「霧の彫刻」の版間の差分
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|artist=[[中谷芙二子]] |
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|city= 常設展示はキャンベラ︵1983年︶、立川市︵1992年︶、加賀市︵1994年︶、ビルバオ︵1998年︶、サンフランシスコ︵2013年︶、長野市︵2021年︶など。写真は[[昭和記念公園]]︵東京都立川市︶の﹃霧の森﹄
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|city= 常設展示はキャンベラ︵1983年︶、立川市︵1992年︶、加賀市︵1994年︶、ビルバオ︵1998年︶、サンフランシスコ︵2013年︶、長野市︵2021年︶など。写真は[[昭和記念公園]]︵東京都立川市︶の﹃霧の森﹄
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|year= 1970年- |
|year= 1970年- |
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|title= 霧の彫刻 |
|title= 霧の彫刻 |
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|other_title_1=英語:Fog Sculptures |
|other_title_1=英語:Fog Sculptures |
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=== 気象と芸術 === |
=== 気象と芸術 === |
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[[File:Cumulostratus Etching- Luke Howard.png|thumb|200px|ルーク・ハワードの著書『雲の変化』の[[層積雲]]の挿絵。]] |
[[File:Cumulostratus Etching- Luke Howard.png|thumb|200px|ルーク・ハワードの著書『雲の変化』の[[層積雲]]の挿絵。]] |
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[[ルネサンス]]以降の西洋絵画で[[遠近法]]が導入されると、雲や霧は空間の奥行きを示すものとして描かれるようになった。18世紀に気象学者の[[ルーク・ハワード]]が雲の分類と体系化を行い、 |
[[ルネサンス]]以降の西洋絵画で[[遠近法]]が導入されると、雲や霧は空間の奥行きを示すものとして描かれるようになった。18世紀に気象学者の[[ルーク・ハワード]]が雲の分類と体系化を行い、芸術における雲の描写は、水蒸気の生成変化として科学的に表現できるようになった。ハワードの理論は画家の[[ジョン・コンスタブル]]に影響を与え、コンスタブルは雲についての習作を描いた。画家の[[ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー|ターナー]]は、ロンドンの霧を初めて描いたともいわれ、自然現象としての霧と人工物である蒸気機関の霧が混じり合う﹃[[雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道]]﹄︵1844年︶などの作品を発表した{{Sfn|岡崎|2018e|pp=230-232}}。
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中谷芙二子の父親である物理学者の[[中谷宇吉郎]]は、雪の結晶を研究して世界初の人工雪の制作に成功した{{efn|宇吉郎が学んだ物理学者の[[寺田寅彦]]は、﹁茶わんの湯﹂というエッセイで、茶碗の湯気の観察から始めて霧や雲などの気象現象の原理を解説している{{Sfn|寺田|2000|pp=}}{{Sfn|岡崎|2018e|pp=238-239}}。}}。宇吉郎は、[[ウィルソン・ベントレー]]の﹃雪の結晶﹄という写真集がきっかけで雪の研究を始めたが、写真に撮られるような整った雪の結晶は自然環境においては少なく、変形した結晶が多いことに気づいた{{Sfn|岡崎|2018e|p=242}}。宇吉郎は、美しいとされる結晶だけが写真に撮られ、人々に鑑賞されることを問題視した{{efn|宇吉郎は著書﹃雪﹄で、この問題を書いている{{Sfn|中谷|2012|p=}}{{Sfn|岡崎|2018e|p=242}}。}}。そして、雪の結晶が形成されるプロセスをナカヤ・ダイヤグラムとして明らかにした{{Sfn|岡崎|2018e|pp=239, 241-243}}。
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中谷芙二子の父親である物理学者の[[中谷宇吉郎]]は、雪の結晶を研究して世界初の人工雪の制作に成功した{{efn|宇吉郎が学んだ物理学者の[[寺田寅彦]]は、﹁茶わんの湯﹂というエッセイで、茶碗の湯気の観察から始めて霧や雲などの気象現象の原理を解説している{{Sfn|寺田|2000|pp=}}{{Sfn|岡崎|2018e|pp=238-239}}。}}。宇吉郎は、[[ウィルソン・ベントレー]]の﹃雪の結晶﹄という写真集がきっかけで雪の研究を始めたが、写真に撮られるような整った雪の結晶は自然環境においては少なく、変形した結晶が多いことに気づいた{{Sfn|岡崎|2018e|p=242}}。宇吉郎は、美しいとされる結晶だけが写真に撮られ、人々に鑑賞されることを問題視した{{efn|宇吉郎は著書﹃雪﹄で、この問題を書いている{{Sfn|中谷|2012|p=}}{{Sfn|岡崎|2018e|p=242}}。}}。そして、雪の結晶が形成されるプロセスをナカヤ・ダイヤグラムとして明らかにした{{Sfn|岡崎|2018e|pp=239, 241-243}}。
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=== テクノロジーと芸術 === |
=== テクノロジーと芸術 === |
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1966年に、芸術家と科学者とのコラボレーション組織である{{仮リンク|Experiments in Art and Technology|en|Experiments in Art and Technology}}(E.A.T.)が設立された。設立の中心人物になった{{仮リンク|ビリー・クルーヴァー|en|Billy Klüver}}はスウェーデンからアメリカへ移住してエンジニアとして働いていたが、エンジニアの状況が退屈だとして不満をもっていた{{efn|クルーヴァーは学生時代にスウェーデン映画協会連盟を設立し、アメリカの映画や文化を好んでいたが、実用性や政治的な価値を重視する状況に不満を抱いた{{Sfn|岡崎|2018a|pp=}}。}}。クルーヴァーはニューヨーク近代美術館(MOMA)で[[ジャン・ティンゲリー]]の作品『ニューヨーク讃歌』の展示を手伝ったのちに、テクノロジーと芸術の橋渡しとして、芸術家の[[ロバート・ラウシェンバーグ]]らとE.A.T.を設立した{{efn|Experiments in Art and Technologyという組織名は、税金対策のために弁護士がつけた名前であり、メンバーは特にExperiments(実験的)という部分に不満をもっていた{{Sfn|岡崎|2018a|pp=}}。}}。E.A.T.は異なる組織に属するエンジニアや科学者が協力できるネットワークであり、芸術家の技術的問題を解決するために活動した{{efn|1960年代から1970年 |
1966年に、芸術家と科学者とのコラボレーション組織である{{仮リンク|Experiments in Art and Technology|en|Experiments in Art and Technology}}(E.A.T.)が設立された。設立の中心人物になった{{仮リンク|ビリー・クルーヴァー|en|Billy Klüver}}はスウェーデンからアメリカへ移住してエンジニアとして働いていたが、エンジニアの状況が退屈だとして不満をもっていた{{efn|クルーヴァーは学生時代にスウェーデン映画協会連盟を設立し、アメリカの映画や文化を好んでいたが、実用性や政治的な価値を重視する状況に不満を抱いた{{Sfn|岡崎|2018a|pp=}}。}}。クルーヴァーはニューヨーク近代美術館(MOMA)で[[ジャン・ティンゲリー]]の作品『ニューヨーク讃歌』の展示を手伝ったのちに、テクノロジーと芸術の橋渡しとして、芸術家の[[ロバート・ラウシェンバーグ]]らとE.A.T.を設立した{{efn|Experiments in Art and Technologyという組織名は、税金対策のために弁護士がつけた名前であり、メンバーは特にExperiments(実験的)という部分に不満をもっていた{{Sfn|岡崎|2018a|pp=}}。}}。E.A.T.は異なる組織に属するエンジニアや科学者が協力できるネットワークであり、芸術家の技術的問題を解決するために活動した{{efn|1960年代から1970年代にかけて、[[バックミンスター・フラー]]の著書『[[宇宙船地球号操縦マニュアル]]』(1968年)や、[[スチュアート・ブランド]]が創刊した雑誌『[[全地球カタログ]]』(1968年-1971年)などが出版された。アメリカでは『全地球カタログ』は150万部を越す人気となり、地球規模で環境を考えることが広まり、テクノロジーを役立てるための試みが芸術においても行われた{{Sfn|尾崎|2021|pp=}}。}}{{Sfn|岡崎|2018a|pp=}}。 |
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=== 作者 === |
=== 作者 === |
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中谷は、初めて霧の彫刻を発表したペプシ館([[#パビリオン|後述]])から、水で作り出す霧を採用している。ノズルから噴射する水を針に衝突させて粒に砕くという仕組みで、ノズルの口径は16ミクロン、噴射する水は70気圧で、針に衝突した水の粒は20から30ミクロンの大きさとなる。その水の粒が空気中に浮かぶことで霧と呼ばれる現象として感知される{{Sfn|岡崎|2018e|p=248}}。水には[[純水]]を用いる。純水を選ぶ理由について、霧を外から見るだけではなく霧に入って体験して欲しいからと述べている{{Sfn|クルーヴァー|2020|pp=}}。 |
中谷は、初めて霧の彫刻を発表したペプシ館([[#パビリオン|後述]])から、水で作り出す霧を採用している。ノズルから噴射する水を針に衝突させて粒に砕くという仕組みで、ノズルの口径は16ミクロン、噴射する水は70気圧で、針に衝突した水の粒は20から30ミクロンの大きさとなる。その水の粒が空気中に浮かぶことで霧と呼ばれる現象として感知される{{Sfn|岡崎|2018e|p=248}}。水には[[純水]]を用いる。純水を選ぶ理由について、霧を外から見るだけではなく霧に入って体験して欲しいからと述べている{{Sfn|クルーヴァー|2020|pp=}}。 |
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霧の動きを制御するプログラムも用いられている。建築グループのdoubleNegatives Architecture︵dNA︶との共演では、dNAの市川創太がプログラムを担当した。気象センサーで風速、風向、気温、湿度などを計測し、ノズルの噴霧を制御した。ソフトウェアには仮想の庭を移動するターゲットが想定され、ターゲットがノズルに近づくと噴霧が始まるという仕組みになっていた{{efn|dNAは、魚や鳥の群れの動きや細胞の分化など、ボトムアップによる自律的な生成システムを追求している<ref name=ARTiT />。}}<ref name=ARTiT>{{Cite news|url=https://www.art-it.asia/u/admin_exrev/hslpfgloevcvg10buwxu |title=中谷芙二子+dNA‥MU |
霧の動きを制御するプログラムも用いられている。建築グループのdoubleNegatives Architecture︵dNA︶との共演では、dNAの市川創太がプログラムを担当した。気象センサーで風速、風向、気温、湿度などを計測し、ノズルの噴霧を制御した。ソフトウェアには仮想の庭を移動するターゲットが想定され、ターゲットがノズルに近づくと噴霧が始まるという仕組みになっていた{{efn|dNAは、魚や鳥の群れの動きや細胞の分化など、ボトムアップによる自律的な生成システムを追求している<ref name=ARTiT />。}}<ref name=ARTiT>{{Cite news|url=https://www.art-it.asia/u/admin_exrev/hslpfgloevcvg10buwxu |title=中谷芙二子+dNA‥MU |date=2009-11-06 |work=ART iT |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref>。
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== 主な作品 == |
== 主な作品 == |
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[[File:ZKM-CLOUD-WALK-Felix-Gruenschloss.jpg|thumb|250px|ドイツの[[カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター]](ZKM)で展示した霧の彫刻『CLOUD WALK』。2019年 |
[[File:ZKM-CLOUD-WALK-Felix-Gruenschloss.jpg|thumb|250px|ドイツの[[カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター]](ZKM)で展示した霧の彫刻『CLOUD WALK』。2019年 |
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<ref name=ZKM20190825>{{Cite news|url=https://zkm.de/en/cloud-walk-zkm-fog-sculpture-10731 |title=CLOUD WALK @ZKM. Fog Sculpture #10731 |
<ref name=ZKM20190825>{{Cite news|url=https://zkm.de/en/cloud-walk-zkm-fog-sculpture-10731 |title=CLOUD WALK @ZKM. Fog Sculpture #10731 |date=2019-8-25 |work=ZKM |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref>。]]
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=== パビリオン === |
=== パビリオン === |
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; オパール・ループ(1980年、2002年) |
; オパール・ループ(1980年、2002年) |
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アメリカでは、初の室内での霧の彫刻も発表された。ダンサーの[[トリシャ・ブラウン]]との共作で、ブラウンのダンス・カンパニーの公演﹃オパール・ループ/霧﹄の舞台装置として霧が使われた。ノズルのオン・オフで霧の形・量・動きを制御した{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=28-29}}。2002年には、﹃オパール・ループ/霧﹄の動画を{{仮リンク|フォグ・スクリーン|en|Fog |
アメリカでは、初の室内での霧の彫刻も発表された。ダンサーの[[トリシャ・ブラウン]]との共作で、ブラウンのダンス・カンパニーの公演﹃オパール・ループ/霧﹄の舞台装置として霧が使われた。ノズルのオン・オフで霧の形・量・動きを制御した{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=28-29}}。2002年には、﹃オパール・ループ/霧﹄の動画を{{仮リンク|フォグ・スクリーン|en|Fog display}}に投影したインスタレーションとして﹃オパール・ループ/雲﹄を発表した{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=40-41}}。
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; 男鹿川 |
; 男鹿川 霧の彫刻(1980年) |
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[[栃木県]]の[[男鹿川]]沿いにある[[川治温泉]]で開催された秋祭りにて、﹁霧と音と光のフェスティバル﹂として展示された。[[ビル・ヴィオラ]]が環境音を編集した音を流した{{Sfn|水戸芸術館|2019|p=31}}。
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[[栃木県]]の[[男鹿川]]沿いにある[[川治温泉]]で開催された秋祭りにて、﹁霧と音と光のフェスティバル﹂として展示された。[[ビル・ヴィオラ]]が環境音を編集した音を流した{{Sfn|水戸芸術館|2019|p=31}}。
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; ヨハン・ヨハンソンの世界(2007年) |
; ヨハン・ヨハンソンの世界(2007年) |
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﹁<東京の夏>音楽祭2007﹂で、アイスランドのミュージシャンである[[ヨハン・ヨハンソン]]が来日公演を行い、霧の彫刻と癒合したパフォーマンスが行われた。[[日本未来科学館]]を会場として、演奏の随所で |
﹁<東京の夏>音楽祭2007﹂で、アイスランドのミュージシャンである[[ヨハン・ヨハンソン]]が来日公演を行い、霧の彫刻と癒合したパフォーマンスが行われた。[[日本未来科学館]]を会場として、演奏の随所でステージが霧に包まれた<ref name=intercross>{{Cite news|url=https://intercross-com.co.jp/uploadpdf/report_pdf4_1190720469.pdf |title=島へ - 海を渡る音 ヨハン・ヨハンソンの世界 |date=2007 |work=インタークロス |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref>
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; CLOUD FOREST(2010年) |
; CLOUD FOREST(2010年) |
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[[山口情報芸術センター]]︵YCAM︶のインスタレーションでは、前庭の中央公園に装置が置かれ、[[ダムタイプ]]のメンバーでもある{{仮リンク|高谷史郎|en|Shiro Takatani}}が参加した。高谷によるデイヴィッド・チューダーへのオマージュとして、36台のスピーカーによる複雑な音響もあり、霧、光、音による表現をした<ref name=artscape20100715>{{Cite news|url=https://artscape.jp/report/curator/1216611_1634.html |title=環境創造としてのインスタレーション/チュードアへの応答︵中谷芙二子+高谷史郎﹁CLOUD FOREST﹂︶ |last=阿部 |first=一直 |date=2010-7-15 |work=artscape |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref>。
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[[山口情報芸術センター]]︵YCAM︶のインスタレーションでは、前庭の中央公園に装置が置かれ、[[ダムタイプ]]のメンバーでもある{{仮リンク|高谷史郎|en|Shiro Takatani}}が参加した。高谷によるデイヴィッド・チューダーへのオマージュとして、36台のスピーカーによる複雑な音響もあり、霧、光、音による表現をした<ref name=artscape20100715>{{Cite news|url=https://artscape.jp/report/curator/1216611_1634.html |title=環境創造としてのインスタレーション/チュードアへの応答︵中谷芙二子+高谷史郎﹁CLOUD FOREST﹂︶ |last=阿部 |first=一直 |date=2010-7-15 |work=artscape |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref>。
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; ロンドンフォグ(2017年)、a・ |
; ロンドンフォグ(2017年)、a・form(2017年) |
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ロンドンの[[テート・モダン]] |
ロンドンの[[テート・モダン]]で開催されたグループ展﹁BMW TATE LIVE EXHIBITION: TEN DAYS SIX NIGHTS﹂で発表された。新館であるスイッチ・ハウスの前に、800個のノズルを設置して噴霧した。ロンドンは﹁霧の都﹂のイメージで知られる一方、[[ロンドンスモッグ]]︵1952年︶の大気汚染のイメージもある。中谷は安心して楽しめる霧を作ることで、ネガティブな霧のイメージを払拭する意図があった。本作品は音響・照明・ダンスとの共作であり、霧の動きや濃度によって、[[坂本龍一]]による音響や高谷史郎による照明が変化し、霧の中で[[田中泯]]がパフォーマンスを行った。好評により、展示は2週間延長された<ref name=BoundBaw20170517>{{Cite news|url=http://boundbaw.com/world-topics/articles/28 |title=︻前編︼芸術と科学を越境するアーティスト、中谷芙二子。テート・モダンで77番目の霧の新作を発表 |last=YAMAMINE |first=JUNYA |date=2017-5-17 |work=Bound Baw |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref>。田中、坂本、高谷との共演は、[[オスロ国立美術館|オスロ新国立美術館]]で発表された﹃a・form﹄でも行われた{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=46-47, 50-51}}。
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; ナイアガラ・リバーブ(2017年) |
; ナイアガラ・リバーブ(2017年) |
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; 霧の街のクロノトープ(2020年) |
; 霧の街のクロノトープ(2020年) |
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[[日本における2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響|新型コロナウイルスの影響]]のなか、2020年12月5日︵土︶から12月20日︵日︶にかけて、高谷史郎との共作展覧会﹃霧の街のクロノトープ﹄を開催した。高谷がフレームと照明を行い、中谷による霧の彫刻が設置された。会場には、戦前・戦後の混乱や差別、バブル期の地上げや都市開発の影響を受けつつも、多文化共生の文化を育んできた場所として[[東九条]]の北河原住宅跡地を選んだ{{efn|東九条は、[[韓国併合]]︵1910年︶の影響によって戦前から[[在日朝鮮人]]が多く生活し、戦後はバラックの撤去、東海道新幹線敷設などの影響を受けた。密集や火災の多発などの生活環境が社会福祉の観点から問題視されたが、対策が進められたのは1980年以降だった{{Sfn|山本|2009|pp=}}。}}<ref name=霧の街>{{Cite news|url=https://liquid-kcua.jp/2020/10/16/exhibition-2020/ |title=展覧会﹁霧の街のクロノトープ﹂ |
[[日本における2019年コロナウイルス感染症による社会・経済的影響|新型コロナウイルスの影響]]のなか、2020年12月5日(土)から12月20日(日)にかけて、高谷史郎との共作展覧会『霧の街のクロノトープ』を開催した。高谷がフレームと照明を行い、中谷による霧の彫刻が設置された。会場には、戦前・戦後の混乱や差別、バブル期の地上げや都市開発の影響を受けつつも、多文化共生の文化を育んできた場所として[[東九条]]の北河原住宅跡地を選んだ{{efn|東九条は、[[韓国併合]](1910年)の影響によって戦前から[[在日朝鮮人]]が多く生活し、戦後はバラックの撤去、東海道新幹線敷設などの影響を受けた。密集や火災の多発などの生活環境が社会福祉の観点から問題視されたが、対策が進められたのは1980年以降だった{{Sfn|山本|2009|pp=}}。}}<ref name=霧の街>{{Cite news|url=https://liquid-kcua.jp/2020/10/16/exhibition-2020/ |title=展覧会「霧の街のクロノトープ」 |work=京都市立芸術大学 |access-date=2021-04-12 |language= |issn=}}</ref><ref name=bijutsutecho20201205>{{Cite news|url=https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23191 |title=中谷芙二子と高谷史郎が見せる「霧の街のクロノトープ」。京都・北河原団地跡地で野外公開 |date=2020-12-5 |work=美術手帖 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。 |
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会場は直方体のグリッド状に足場が組まれ、高さ約3.6メートルの上下にノズルが設置された。東西の短辺と南北の長辺でノズルの角度や間隔が異なり、東西から密度の濃い霧が噴霧され、南北の霧がそこに覆いかぶさるようになっている{{efn|短辺では上下のノズルは高さ約3.6メートル、約12.5センチ間隔で設置された。ノズルの角度は、包囲や上下によって違いがあり、東側では上列ノズルは下向き45度、下列ノズルは下向き30度であり、西側では上列が0度、下列が下向き45度となる。長辺のノズルは1列のみで約10センチ間隔、下向き30度となっている{{Sfn|平倉|2021|p=19}}。}}。霧の噴霧時間は1回4分間であり、噴霧するタイミングには東西南北でずれがある。ノズルの位置と時間のずれによって対流が起き、霧が動的な塊となるようにデザインされている{{Sfn|平倉|2021|pp=19-21}}。住宅街の空き地という生活に密接に関わる場所を会場とした点で、主に美術館や公園で展示されてきた『霧の彫刻』と異なる特徴をもっている{{Sfn|平倉|2021|p=27}}。 |
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=== 景観 === |
=== 景観 === |
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; 雨月物語 - 懸崖の滝(2008年) |
; 雨月物語 - 懸崖の滝(2008年) |
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[[横浜トリエンナーレ]]の出品作品では、霧によって人工の滝を表現した。[[三渓園]]の旧[[東慶寺]]本堂の庭に噴霧装置、[[赤外線センサー]]、[[LED]]を設置し、無風の時に霧が滝のように流れ、人が通ると竹藪のLEDが明滅する{{Sfn|水戸芸術館|2019|p=42}}。霧の制御とプログラムはdNAの市川創太、照明デザインとプログラムは藤本隆行が行なった<ref>{{Cite news|url=https://www.colorkinetics.co.jp/works/194 |title=中谷芙二子 ﹁雨月物語-懸崖の滝﹂ Fogfalls #47670 |
[[横浜トリエンナーレ]]の出品作品では、霧によって人工の滝を表現した。[[三渓園]]の旧[[東慶寺]]本堂の庭に噴霧装置、[[赤外線センサー]]、[[LED]]を設置し、無風の時に霧が滝のように流れ、人が通ると竹藪のLEDが明滅する{{Sfn|水戸芸術館|2019|p=42}}。霧の制御とプログラムはdNAの市川創太、照明デザインとプログラムは藤本隆行が行なった<ref>{{Cite news|url=https://www.colorkinetics.co.jp/works/194 |title=中谷芙二子 「雨月物語-懸崖の滝」 Fogfalls #47670 |date=2008 |work=カラーキネティクス・ジャパン |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。市川は、2009年に[[東京日仏学院]]で開催された「MU : Mercurial Unfolding 偶成と展開」でも霧のプログラムを担当した<ref name=ARTiT />。 |
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; Fog × FLO(2018年) |
; Fog × FLO(2018年) |
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=== 個展「霧の抵抗」(2018年-2019年) === |
=== 個展「霧の抵抗」(2018年-2019年) === |
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日本初の中谷の大規模個展は、2018年10月27日から2019年1月20日に[[水戸芸術館]]現代美術ギャラリーで開催された<ref name=美術手帖180922>{{Cite news|url=https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/18491 |title=霧のアーティスト・中谷芙二子が日本初の大規模個展を開催。半世紀にわたり霧とビデオで示してきた﹁抵抗﹂ |
日本初の中谷の大規模個展は、2018年10月27日から2019年1月20日に[[水戸芸術館]]現代美術ギャラリーで開催された<ref name=美術手帖180922>{{Cite news|url=https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/18491 |title=霧のアーティスト・中谷芙二子が日本初の大規模個展を開催。半世紀にわたり霧とビデオで示してきた﹁抵抗﹂ |date=2018-9-22 |work=美術手帖 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref><ref name=水戸芸術館>{{Cite news|url=https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5022.html |title=開催情報﹁霧の抵抗 中谷芙二子﹂ |work=水戸芸術館 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。霧の彫刻は、﹁崩壊シリーズ﹂と名付けられた作品が2点展示された。﹃シンコペーション﹄は、[[磯崎新]]が設計した水戸英術館の噴水に設置され、宙吊りの岩を覆うように霧が発生する。噴水は、[[日米安保闘争]]で[[機動隊]]が民衆に対して行なった放水をイメージして作られており、霧は放水への抵抗を表現している。夜間の照明は[[逢坂卓郎]]が行なった{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=376, 393}}。﹃フーガ﹄は室内インスタレーションであり、室内をスクリーンで仕切り、片側に霧が立ち込める中でカラスの飛ぶ映像が流れる。やがてスクリーンが落とされて突然に室内に霧が満ち、カラスは飛び去ってゆく。2018年11月19日と10日に田中泯が場踊りを行なった{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=386-387}}。
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=== 常設 === |
=== 常設 === |
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[[File:NGA Fog sculpture by Fujiko Nakaya (429173353).jpg |thumb|250px|[[オーストラリア国立美術館]](NGA)の霧の彫刻『砂漠の霧微気象圏』。1983年からの常設展示で、苗木が成長して森林となった。]] |
[[File:NGA Fog sculpture by Fujiko Nakaya (429173353).jpg |thumb|250px|[[オーストラリア国立美術館]](NGA)の霧の彫刻『砂漠の霧微気象圏』。1983年からの常設展示で、苗木が成長して森林となった。]] |
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; 砂漠の霧微気象圏(1983年-) |
; 砂漠の霧微気象圏(1983年-) |
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{{仮リンク|シドニー・ビエンナーレ|en|Biennale of Sydney}}で発表した霧の彫刻『アーストーク』(1976年)は、子供や老人、犬も喜び、霧の中でたたずむ人や走る人などさまざまな反応があった{{Sfn|中谷|2019|p=200}}。『アーストーク』は[[オーストラリア国立美術館]](NGA)に買い上げられ、オープン企画として『砂漠の霧微気象圏』と改名して常設された。彫刻庭園にある砂地の1平方キロメートルに苗木を植え、霧の彫刻を設置して変化を見るという内容で、苗木は成長を続けて1990年代には茂みとなり、2000年代には森林へと変わっていった。この企画は、京都大学と光田寧の監修による科学とアートの共同プロジェクト「砂漠の成因・変化の記録」の模擬実験も兼ねていた{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=32-33}}。 |
{{仮リンク|シドニー・ビエンナーレ|en|Biennale of Sydney}}で{{仮リンク|ドメイン公園|en|The Domain, Sydney}}において発表した霧の彫刻『アーストーク』(1976年)は、子供や老人、犬も喜び、霧の中でたたずむ人や走る人などさまざまな反応があった{{Sfn|中谷|2019|p=200}}。『アーストーク』は[[オーストラリア国立美術館]](NGA)に買い上げられ、オープン企画として『砂漠の霧微気象圏』と改名して常設された。彫刻庭園にある砂地の1平方キロメートルに苗木を植え、霧の彫刻を設置して変化を見るという内容で、苗木は成長を続けて1990年代には茂みとなり、2000年代には森林へと変わっていった。この企画は、京都大学と光田寧の監修による科学とアートの共同プロジェクト「砂漠の成因・変化の記録」の模擬実験も兼ねていた{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=32-33}}。 |
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; 霧の森(1992年) |
; 霧の森(1992年) |
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東京都[[立川市]]の[[昭和記念公園]]の遊具として、建築家の[[北川原温]]とのコラボレーションで﹃霧の森﹄が制作された。﹁こどもの森﹂のエリアに﹃霧の池﹄や﹃霧の滝﹄が設置され、霧の中で遊べるようになっていた。子供は初めは怖がったものの、慣れて霧に出入りするようになったという{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=32-33}}。期間は3月から11月、霧の出る時間帯は10時から16時にかけて、00分と30分に15分間行われる<ref>[https://www.showakinen-koen.jp/facility/facility_child/ 昭和記念公園﹁こどもの森﹂]︵2021年4月12日閲覧︶</ref>。
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東京都[[立川市]]の[[昭和記念公園]]の遊具として、建築家の[[北川原温]]とのコラボレーションで﹃霧の森﹄が制作された。﹁こどもの森﹂のエリアに﹃霧の池﹄や﹃霧の滝﹄が設置され、霧の中で遊べるようになっていた。子供は初めは怖がったものの、慣れて霧に出入りするようになったという{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=32-33}}。期間は3月から11月、霧の出る時間帯は10時から16時にかけて、00分と30分に15分間行われる<ref>[https://www.showakinen-koen.jp/facility/facility_child/ 昭和記念公園﹁こどもの森﹂]︵2021年4月12日閲覧︶</ref>。
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; グリーンランド氷河の原(1994年) |
; グリーンランド氷河の原(1994年) |
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中谷宇吉郎を顕彰する施設である[[中谷宇吉郎雪の科学館]]の中庭に設置された。中谷は、父親の宇吉郎が晩年にアイスコアの研究をした[[グリーンランド]]に行き、氷河[[モレーン]]の石を採取して記念館の庭に敷いた。約300個のノズルによって石の庭に霧が噴霧される{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=38-39}}。モレーンの石は[[チューレ空軍基地]]付近から約60トンが採取され、7億年前から27億年前のものとされる。グリーンランドの[[永久凍土]]にみられるポリゴン・フィールドと呼ばれる地形を再現し、風の吹く日には霧が舞い上がってブリザードのようになる<ref>[https://yukinokagakukan.kagashi-ss.com/facility/courtyard/ ﹃グリーンランド氷河の原﹄]︵中谷宇吉郎雪の科学館。2021年4月12日閲覧︶</ref>。
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中谷宇吉郎を顕彰する施設である[[中谷宇吉郎雪の科学館]]の中庭に設置された。中谷は、父親の宇吉郎が晩年にアイスコアの研究をした[[グリーンランド]]に行き、氷河[[モレーン]]の石を採取して記念館の庭に敷いた。約300個のノズルによって石の庭に霧が噴霧される{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=38-39}}。モレーンの石は[[チューレ空軍基地]]付近から約60トンが採取され、7億年前から27億年前のものとされる。グリーンランドの[[永久凍土]]にみられるポリゴン・フィールドと呼ばれる地形を再現し、風の吹く日には霧が舞い上がってブリザードのようになる<ref>[https://yukinokagakukan.kagashi-ss.com/facility/courtyard/ ﹃グリーンランド氷河の原﹄]︵中谷宇吉郎雪の科学館。2021年4月12日閲覧︶</ref>。
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; F.O.G.(1998年) |
; F.O.G.(1998年) |
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1998年に[[ビルバオ・グッゲンハイム美術館]]で、[[ロバート・ラウシェンバーグ]]の回顧展が開催された。中谷はラウシェンバーグの提案により、オープニング・イベントのために霧の彫刻『F.O.G.』を制作した。作品名は、建築家の[[フランク・オーウェン・ゲーリー]]の頭文字から取られている。この作品はラウシェンバーグによって同館に寄贈され、常設展示となった<ref name=anarchive>[https://www.guggenheim-bilbao.eus/la-coleccion/obras/escultura-de-niebla-no-08025-f-o-g - ESCULTURA DE NIEBLA Nº 08025 (F.O.G.) Fujiko Nakaya](Guggenheim Bilbao。2021年4月12日閲覧)</ref>。 |
1998年に[[ビルバオ・グッゲンハイム美術館]]で、[[ロバート・ラウシェンバーグ]]の回顧展が開催された。中谷はラウシェンバーグの提案により、オープニング・イベントのために霧の彫刻『F.O.G.』を制作した。作品名は、建築家の[[フランク・オーウェン・ゲーリー]]の頭文字から取られている。この作品はラウシェンバーグによって同館に寄贈され、常設展示となった<ref name=anarchive>[https://www.guggenheim-bilbao.eus/la-coleccion/obras/escultura-de-niebla-no-08025-f-o-g - ESCULTURA DE NIEBLA Nº 08025 (F.O.G.) Fujiko Nakaya](Guggenheim Bilbao。2021年4月12日閲覧)</ref>。 |
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サンフランシスコの科学館である[[エクスプロラトリアム]]に展示された{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=44-45}}。館内の橋に800個以上のノズルを設置し、毎日10時、正午、14時、16時と木曜日の19時に噴霧される。カリフォルニア州の旱魃の影響により2014年は中断があったが、脱塩した海水を使うことで再開した{{efn|サンフランシスコは霧の街としても知られている。寒流である[[カリフォルニア海流]]が、陸地から流れる空気を冷やし、空気中の水分が集まって霧へと変わる<ref>[https://www.exploratorium.edu/exhibits/fog-bridge-72494 Fog Bridge #72494](Exploratorium、2013年)</ref>。[[カリフォルニア州の気候]]も参照。}}<ref>[https://www.exploratorium.edu/visit/calendar/event-fog-bridge-72494 Fog Bridge #72494 by Fujiko Nakaya](Exploratorium、2013年)</ref>。 |
サンフランシスコの科学館である[[エクスプロラトリアム]]に展示された{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=44-45}}。館内の橋に800個以上のノズルを設置し、毎日10時、正午、14時、16時と木曜日の19時に噴霧される。カリフォルニア州の旱魃の影響により2014年は中断があったが、脱塩した海水を使うことで再開した{{efn|サンフランシスコは霧の街としても知られている。寒流である[[カリフォルニア海流]]が、陸地から流れる空気を冷やし、空気中の水分が集まって霧へと変わる<ref>[https://www.exploratorium.edu/exhibits/fog-bridge-72494 Fog Bridge #72494](Exploratorium、2013年)</ref>。[[カリフォルニア州の気候]]も参照。}}<ref>[https://www.exploratorium.edu/visit/calendar/event-fog-bridge-72494 Fog Bridge #72494 by Fujiko Nakaya](Exploratorium、2013年)</ref>。 |
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; 長野県立美術館(2021年-) |
; 長野県立美術館(2021年4月-) |
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[[長野県信濃美術館]]が[[長野県立美術館]]として2021年4月10日にリニューアルし、霧の彫刻が常設展示された。同館はランドスケープ・ミュージアムをコンセプトとし、中谷の作品は館内にある滝の上流から噴霧されている<ref name=美術手帖201117>{{Cite news|url=https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23874 |title=中谷芙二子﹁霧の彫刻﹂を常設する長野県立美術館がオープン。﹁ランドスケープミュージアム﹂が目指すものとは | |
[[長野県信濃美術館]]が[[長野県立美術館]]として2021年4月10日にリニューアルし、霧の彫刻が常設展示された。同館はランドスケープ・ミュージアムをコンセプトとし、中谷の作品は館内にある滝の上流から噴霧されている<ref name=美術手帖201117>{{Cite news|url=https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/23874 |title=中谷芙二子﹁霧の彫刻﹂を常設する長野県立美術館がオープン。﹁ランドスケープミュージアム﹂が目指すものとは |date=2021-4-10 |work=美術手帖 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。噴霧は、毎日9時30分から1時間間隔で8回行われる<ref name=長野県立美術館>{{Cite news|url=https://nagano.art.museum/fureru1 |title=霧の彫刻 #47610 -Dynamic Earth Series Ⅰ- |work=長野県立美術館 |access-date=2021-05-12 |language= |issn=}}</ref>。
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; Pokémon WONDER(2021年7月-) |
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[[よみうりランド]]の自然エリアを使ったイベント「Pokémon WONDER」(ポケモンワンダー)のコース内に霧の彫刻が常設された。4500平方メートルの敷地に自然素材で作られた[[ポケモン]]が隠れており、参加者はポケモンを探すことが目的となる。中谷のコンセプトは、子供が霧に浸って五感を開放し、全感覚で霧と戯れることを通して、自然を子供たちに返すこととしている<ref name=美術手帖210707>{{Cite news|url=https://bijutsutecho.com/magazine/news/exhibition/24266 |title=中谷芙二子監修の「霧」を抜けて。よみうりランドで「Pokémon WONDER」がオープン |date=2021-07-07 |work=美術手帖 |access-date=2021-08-03|language= |issn=}}</ref>。 |
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== 評価 == |
== 評価 == |
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﹃霧の森﹄︵1992年︶によって、中谷は1993年に[[吉田五十八賞]]の特別賞を受賞した{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=32-33}}。2017年には、霧を扱った彫刻の草分けとして、フランスの[[芸術文化勲章]]の最高位コマンドゥールを受賞した
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﹃霧の森﹄︵1992年︶によって、中谷は1993年に[[吉田五十八賞]]の特別賞を受賞した{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=32-33}}。2017年には、霧を扱った彫刻の草分けとして、フランスの[[芸術文化勲章]]の最高位コマンドゥールを受賞した
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<ref name=フランス大使館>{{Cite news|url=https://jp.ambafrance.org/article12533 |title=中谷芙二子氏が芸術文化勲章を受章 |
<ref name=フランス大使館>{{Cite news|url=https://jp.ambafrance.org/article12533 |title=中谷芙二子氏が芸術文化勲章を受章 |date=2019-1-17 |work=フランス大使館 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。2018年には霧の彫刻やビデオ・アートの活動によって[[高松宮殿下記念世界文化賞]]を受賞した<ref name=高松宮殿下記念世界文化賞18>{{Cite news|url=https://www.praemiumimperiale.org/ja/laureate/laureates/nakaya |title=2018年 第30回 彫刻部門 中谷芙二子 |date=2020-11-17 |work=高松宮殿下記念世界文化賞 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。2020年には、[[メディア・アート]]や霧の彫刻の活動により、[[文化庁長官]][[表彰]]を受けた<ref name=文化庁長官表彰>{{Cite news|url=https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/92684701_02.pdf |title=令和二年度文化庁長官表彰名簿 |date=2020-12-17 |work=文化庁 |access-date=2021-04-12|language= |issn=}}</ref>。
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== 主な常設展示 == |
== 主な常設展示 == |
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* 『フォグブリッジ』[[エクスプロラトリアム]]、[[サンフランシスコ]]、2013年{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=44-45}} |
* 『フォグブリッジ』[[エクスプロラトリアム]]、[[サンフランシスコ]]、2013年{{Sfn|水戸芸術館|2019|pp=44-45}} |
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* 『SEA FOG』大阪北口広場(通称:うめきた広場)、[[大阪市]]、2013年 |
* 『SEA FOG』大阪北口広場(通称:うめきた広場)、[[大阪市]]、2013年 |
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* 『NAGI 凪』[[品川シーズンテラス]]、[[港区]]、2015年<ref>[https://www.kissport.or.jp/spot/tanbou/1809/ 港区探訪 品川シーズンテラス](Kissポート、2015年。2021年4月12日閲覧)</ref> |
* 『NAGI 凪』[[品川シーズンテラス]]、[[港区 (東京都)|港区]]、2015年<ref>[https://www.kissport.or.jp/spot/tanbou/1809/ 港区探訪 品川シーズンテラス](Kissポート、2015年。2021年4月12日閲覧)</ref> |
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*『霧の彫刻』[[長野県立美術館]]、[[長野市]]、2021年<ref name=美術手帖201117 /> |
* 『霧の彫刻』[[長野県立美術館]]、[[長野市]]、2021年<ref name=美術手帖201117 /> |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
=== 注釈 === |
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{{Notelist|2 |
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=== 出典 === |
=== 出典 === |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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* {{Cite journal|和書|author=飯田豊 |title=アーティスト・中谷芙二子のふたつの顔。飯田豊評「霧の抵抗 |
* {{Cite journal|和書|author=飯田豊 |title=アーティスト・中谷芙二子のふたつの顔。飯田豊評「霧の抵抗 中谷芙二子」 |url=https://bijutsutecho.com/magazine/review/19385 |format=PDF |journal=美術手帖 |publisher= |year=2019 |month=feb |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|飯田|2019}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=[[井川学]] |title=霧と露の化学とその環境影響に関する研究 |url=https://doi.org/10.11298/taiki.50.59 | |
* {{Cite journal|和書|author=[[井川学]] |title=霧と露の化学とその環境影響に関する研究 |url=https://doi.org/10.11298/taiki.50.59 |format=PDF |journal=大気環境学会誌 |publisher=大気環境学会 |year=2015 |volume=50 |issue=2 |pages=59-66 |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|井川|2015}}}} |
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* {{Citation| 和書 |
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| author = [[池上裕子 (美術史家)|池上裕子]] |
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| title = 越境と覇権―ロバート・ラウシェンバーグと戦後アメリカ美術の世界的台頭 |
| title = 越境と覇権―ロバート・ラウシェンバーグと戦後アメリカ美術の世界的台頭 |
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* {{Cite journal|和書|author=[[岡崎乾二郎]] |title=to be continued ── ビリー・クルーヴァーとE.A.T. |url=https://kagakuukan.org/jpn/texts/to-be-continued | |
* {{Cite journal|和書|author=[[岡崎乾二郎]] |title=to be continued ── ビリー・クルーヴァーとE.A.T. |url=https://kagakuukan.org/jpn/texts/to-be-continued |format=PDF |journal= |publisher=かがく宇かん |year=2018 |month=feb |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|岡崎|2018a}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=岡崎乾二郎 |title=あふるるもの |url=https://kagakuukan.org/jpn/archive/what_overflows |format=PDF |journal= |publisher=かがく宇かん |year=2018 |month=mar |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|岡崎|2018b}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=岡崎乾二郎 |title=霧の抵抗1 |url=https://kagakuukan.org/jpn/texts/the_resistance_of_fog_01 | |
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* {{Cite journal|和書|author=[[尾崎俊介]] |title=自己啓発本として読む『ホール・アース・カタログ』 |url=https://hdl.handle.net/10424/00009169 |format=PDF |journal=外国語研究 |publisher=愛知教育大学外国語外国文学研究会 |year=2021 |month=mar |volume=54 |pages=131-186 |naid= |issn=02881861 |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|尾崎|2021}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=菊池敏正 |title=現代美術における彫刻の可能性と動向 ―ZKMでの展覧会を通じて― |url=http://www.um.u-tokyo.ac.jp/web_museum/ouroboros/v24n1/v24n1_kikuti.html |format=PDF |journal=東京大学総合研究博物館ニュース |publisher=東京大学総合研究博物館 |year=2019 |month=jan |volume=24 |issue=1 |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|菊池|2019}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=ビリー・クルーヴァー |title=ビリー・クルーヴァーによる中谷芙二子へのインタヴュー(1978年11月24日) |url=https://kagakuukan.org/jpn/texts/fujiko_ieie |format=PDF |journal= |publisher=かがく宇かん |year=2020 |month=jan |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|クルーヴァー|2020}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=寺田寅彦 |title=茶わんの湯 |url=https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2363_13807.html |format=PDF |journal=青空文庫 |publisher= |year=2000 |month=oct |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|寺田|2000}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=中谷宇吉郎 |title=雪 |url=https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/52468_49669.html |format=PDF |journal=青空文庫 |publisher= |year=2012 |month=nov |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|中谷|2012}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=中谷芙二子 |title=応答する風景 霧の彫刻 |url=https://ci.nii.ac.jp/naid/110003801254 |format=PDF |journal=建築雑誌 |publisher=日本建築学会 |year=1996 |month=may |volume=111 |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|中谷|1996}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=[[平倉圭]] |title=霧のかたち |url=https://drive.google.com/file/d/1B1bHJ2Ivk4haEmNmzKVOQL4ULz4ue4dM/view |format=PDF |journal=聞こえないを聴く・見えないを視る |publisher=京都市立芸術大学 |year=2021 |month=mar |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-05-12 |ref={{sfnref|平倉|2021}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=村松秀 |title=最先端の現代アートから見た科学,そしてコミュニケーション : テレビ番組制作を通じて |url= |
* {{Cite journal|和書|author=村松秀 |title=最先端の現代アートから見た科学,そしてコミュニケーション : テレビ番組制作を通じて |url=https://doi.org/10.14943/30526 |format=PDF |journal=科学技術コミュニケーション |publisher=北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット |year=2008 |volume=3ふ |pages=115-128 |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|村松|2008}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=山峰潤也 |title=【前編】芸術と科学を越境するアーティスト、中谷芙二子。テート・モダンで77番目の霧の新作を発表 |url=http://boundbaw.com/world-topics/articles/28 | |
* {{Cite journal|和書|author=山峰潤也 |title=【前編】芸術と科学を越境するアーティスト、中谷芙二子。テート・モダンで77番目の霧の新作を発表 |url=http://boundbaw.com/world-topics/articles/28 |format=PDF |journal=Bound Baw |publisher=大阪芸術大学 |year=2017 |month=may |volume= |naid= |issn= |accessdate=2021-04-12 |ref={{sfnref|山峰|2017a}}}} |
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* {{Cite journal|和書|author=山峰潤也 |title=【後編】霧の彫刻とビデオ・アートからみる、アーティスト 中谷芙二子に通底する哲学 |url=http://boundbaw.com/world-topics/articles/30 | |
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== 関連項目 == |
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* [[:en:Gas sculpture|Gas sculpture]] |
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== 外部リンク == |
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2023年3月10日 (金) 10:38時点における最新版
英語:Fog Sculptures | |
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作者 | 中谷芙二子 |
---|---|
製作年 | 1970年- |
素材 | 純水 |
所蔵 | 常設展示はキャンベラ(1983年)、立川市(1992年)、加賀市(1994年)、ビルバオ(1998年)、サンフランシスコ(2013年)、長野市(2021年)など。写真は昭和記念公園(東京都立川市)の『霧の森』 |
背景[編集]
気象と芸術[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a0/Cumulostratus_Etching-_Luke_Howard.png/200px-Cumulostratus_Etching-_Luke_Howard.png)
テクノロジーと芸術[編集]
1966年に、芸術家と科学者とのコラボレーション組織であるExperiments in Art and Technology︵E.A.T.︶が設立された。設立の中心人物になったビリー・クルーヴァーはスウェーデンからアメリカへ移住してエンジニアとして働いていたが、エンジニアの状況が退屈だとして不満をもっていた[注釈 3]。クルーヴァーはニューヨーク近代美術館︵MOMA︶でジャン・ティンゲリーの作品﹃ニューヨーク讃歌﹄の展示を手伝ったのちに、テクノロジーと芸術の橋渡しとして、芸術家のロバート・ラウシェンバーグらとE.A.T.を設立した[注釈 4]。E.A.T.は異なる組織に属するエンジニアや科学者が協力できるネットワークであり、芸術家の技術的問題を解決するために活動した[注釈 5][12]。作者[編集]
中谷の芸術活動は絵画から始まり、固定しているように見える絵画作品も、素材は時間とともに変質していくという点に注目した[4]。1950年代から1960年代にかけて、腐敗するキャンパスや自然の物質崩壊プロセスなどの物質代謝を作品に取り込む試みをした[注釈 6]。中谷は腐敗のプロセスを生きたプロセスの一つと考えて﹁土に還る絵﹂を描き、やがて常に変化する霧へと関心が移っていった[15]。1964年に来日したロバート・ラウシェンバーグとデイヴィッド・チューダーと交流した中谷は、2人にクルーヴァーを紹介され、1966年に設立されたE.A.T.のメンバーになる[注釈 7]。これが霧の彫刻を技術的に実現するきっかけとなった[注釈 8][12][17]。 1960年代から1970年代は環境への関心が高まった時期であり、中谷は環境の概念を芸術作品の制作に活用した[注釈 9]。中谷の関心は自然環境だけでなく、メディアの環境にも向けられており、こうした問題意識はメディア・アートの活動にもつながった[注釈 10][21][22]。コンセプト[編集]
素材[編集]
霧は微小な水滴が集合し、輪郭をもって空気中をただよう現象を指す。水蒸気が飽和水蒸気圧を超えることで水滴に変化し、浮遊する。霧の発生には、放射冷却による放射霧、冷たい空気が暖かい水面に流れて生じる蒸気霧、暖かい空気が冷たい水面に流れて生じる移流霧などさまざまな種類がある[注釈 11][24]。 中谷は霧を選んだ理由について、それらが敏感な媒体である点をあげている。霧はアーティストの考えを反映する素材ではなく、環境に敏感に反応し、見えるものを見えなくし、風のように見えないものを見えるようにすると述べている。また、霧や雲は自然の特性を物理的にあらわにする効果があり、人々が霧を通して自然に対して敏感になることを中谷は望んだ[25]。彫刻としての特徴[編集]
水滴の集合として現れる霧は、固有の形をとどめずに変化し続けるプロセスであり、固定した形を鑑賞しようとする者の認識には抵抗する[4]。こうして霧の彫刻は記録ではなく、出来事として表現される。物質的な状態や振る舞いを意味するメディウムが、中谷の作品に共通する特徴であり、この特徴はメディア・アートなど中谷の他の芸術活動にも共通している[26]。 霧の彫刻は、視覚だけでなく全感覚を通して環境を知覚するのを助け、知覚だけでなく動作にも影響を及ぼす[27]。中谷は、霧の彫刻を最も気に入っている点として、自然条件の均衡そのものの現象であり、条件が少しでも変われば消えてしまう点にあるかもしれないと書いている[28]。サンフランシスコ、ボストン、ロンドンなど霧で知られる地域での展示も多く、これには人工の霧を各地の霧と出会わせるイメージもある[26]。 1980年代には、霧の彫刻の発表を中断した時期もあった。商業イベントで霧の演出を依頼されることが増えたため、消費文化の活動から距離をとるのが目的だった[29]。霧の彫刻について、1996年に中谷は以下のように書いている[30]。 いま、切実に問われているのは、人間と自然の間の信頼関係ではないかと思う。私たち都会人は、ペットボトルの水しか信用しなくなってしまった。水道の水は臭くて飲めない。川や海は汚染されているからプールで泳ぐ。そこまで自然を信用できなくなったら、もうバーチャルな世界で泳ぐしかない。︵中略︶ 人工霧を大量に発生させて、環境とのインタラクションを楽しむ﹁霧の彫刻﹂は、大気の呼吸を視覚化して刻々に変化するライブ環境であり、自然と向き合う媒介項としての彫刻である[30]。技術[編集]
当初中谷は、自然における形態変化を起こす温度差を制作に用いることを考え、ドライアイスをヒーターで温めて雲を作って試した[25]。また、雲を作る装置として、北海道大学の孫野長治に実験を依頼した。実験ではアンモニアガス、炭酸ガス、塩素ガスが使われたが、刺激臭や有毒成分を理由として採用はされなかった[31]。 中谷は、初めて霧の彫刻を発表したペプシ館︵後述︶から、水で作り出す霧を採用している。ノズルから噴射する水を針に衝突させて粒に砕くという仕組みで、ノズルの口径は16ミクロン、噴射する水は70気圧で、針に衝突した水の粒は20から30ミクロンの大きさとなる。その水の粒が空気中に浮かぶことで霧と呼ばれる現象として感知される[32]。水には純水を用いる。純水を選ぶ理由について、霧を外から見るだけではなく霧に入って体験して欲しいからと述べている[25]。 霧の動きを制御するプログラムも用いられている。建築グループのdoubleNegatives Architecture︵dNA︶との共演では、dNAの市川創太がプログラムを担当した。気象センサーで風速、風向、気温、湿度などを計測し、ノズルの噴霧を制御した。ソフトウェアには仮想の庭を移動するターゲットが想定され、ターゲットがノズルに近づくと噴霧が始まるという仕組みになっていた[注釈 12][33]。主な作品[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/77/ZKM-CLOUD-WALK-Felix-Gruenschloss.jpg/250px-ZKM-CLOUD-WALK-Felix-Gruenschloss.jpg)
パビリオン[編集]
ペプシ館︵1970年︶ 霧の彫刻が初めて発表されたのは、1970年に開催された日本万国博覧会でE.A.T.が手がけたペプシ館だった[注釈 13]。ペプシ館は﹁垣根なき世界﹂をテーマとして直径27メートルのミラードームを建設し、60名以上の芸術家や科学者が参加した[注釈 14][21][37]。パビリオンを雲で覆うというアイデアが出ていることを中谷は知り、参加した[36]。 ペプシ館のドームを霧で覆うため、薬品を使わず、人間が安全に中に入れるように水で作ることが検討された。中谷はメーカーや研究機関をあたって方法を調査し、果樹園の遅霜対策の噴霧装置の開発者であるトム・ミーをクルーヴァーに紹介された。それまでのミーの装置はアンモニアと塩素を使っており、ミーは中谷の依頼で水を使った噴霧装置を1969年に開発した。ミーの噴霧装置は、ピン・ジェット型ノズルによって粒径20から30ミクロンの霧を作ることに成功した。装置の霧を見た中谷は、その形状が人間には作り出せない造形だと考えた[注釈 15][39]。ミーの装置を採用したペプシ館の霧の彫刻は、京都大学の光田寧と室田達郎による風洞実験もへて、万博で公開された[注釈 16][41]。パフォーマンスとの共演[編集]
アイランド・アイ・アイランド・イア︵I.E.I.E.︶︵1974年︶ デイヴィッド・チューダーの発案により、島全体を1つの楽器として演奏する企画があり、中谷は霧の彫刻で参加した。チューダー、ジャクリーン・マティス、中谷、クルーヴァーの4名が島で3日間の調査を行った[注釈 17][42]。自然の霧が発生した場合に霧に覆われるであろう場所を選んで発生させた。崖の上から霧を落としたり、地形の特徴を目立たせることも考えた[25]。島には電気や水道がないため、噴霧装置の電力には酸素ボンベ、水は海水を用いた[42]。テストは行われたが、企画そのものは実現はしなかった。 オパール・ループ︵1980年、2002年︶ アメリカでは、初の室内での霧の彫刻も発表された。ダンサーのトリシャ・ブラウンとの共作で、ブラウンのダンス・カンパニーの公演﹃オパール・ループ/霧﹄の舞台装置として霧が使われた。ノズルのオン・オフで霧の形・量・動きを制御した[43]。2002年には、﹃オパール・ループ/霧﹄の動画をフォグ・スクリーンに投影したインスタレーションとして﹃オパール・ループ/雲﹄を発表した[44]。 男鹿川 霧の彫刻︵1980年︶ 栃木県の男鹿川沿いにある川治温泉で開催された秋祭りにて、﹁霧と音と光のフェスティバル﹂として展示された。ビル・ヴィオラが環境音を編集した音を流した[45]。 ヨハン・ヨハンソンの世界︵2007年︶ ﹁<東京の夏>音楽祭2007﹂で、アイスランドのミュージシャンであるヨハン・ヨハンソンが来日公演を行い、霧の彫刻と癒合したパフォーマンスが行われた。日本未来科学館を会場として、演奏の随所でステージが霧に包まれた[46] CLOUD FOREST︵2010年︶ 山口情報芸術センター︵YCAM︶のインスタレーションでは、前庭の中央公園に装置が置かれ、ダムタイプのメンバーでもある高谷史郎が参加した。高谷によるデイヴィッド・チューダーへのオマージュとして、36台のスピーカーによる複雑な音響もあり、霧、光、音による表現をした[21]。 ロンドンフォグ︵2017年︶、a・form︵2017年︶ ロンドンのテート・モダンで開催されたグループ展﹁BMW TATE LIVE EXHIBITION: TEN DAYS SIX NIGHTS﹂で発表された。新館であるスイッチ・ハウスの前に、800個のノズルを設置して噴霧した。ロンドンは﹁霧の都﹂のイメージで知られる一方、ロンドンスモッグ︵1952年︶の大気汚染のイメージもある。中谷は安心して楽しめる霧を作ることで、ネガティブな霧のイメージを払拭する意図があった。本作品は音響・照明・ダンスとの共作であり、霧の動きや濃度によって、坂本龍一による音響や高谷史郎による照明が変化し、霧の中で田中泯がパフォーマンスを行った。好評により、展示は2週間延長された[47]。田中、坂本、高谷との共演は、オスロ新国立美術館で発表された﹃a・form﹄でも行われた[48]。 ナイアガラ・リバーブ︵2017年︶ パリで開催された、ポンピドゥー・センターとIRCAMの40周年記念イベントで発表された。霧と電子音楽の共演となり、KTL、Alponom、マヌエル・ポレッティと共演した[49]。 霧の街のクロノトープ︵2020年︶ 新型コロナウイルスの影響のなか、2020年12月5日︵土︶から12月20日︵日︶にかけて、高谷史郎との共作展覧会﹃霧の街のクロノトープ﹄を開催した。高谷がフレームと照明を行い、中谷による霧の彫刻が設置された。会場には、戦前・戦後の混乱や差別、バブル期の地上げや都市開発の影響を受けつつも、多文化共生の文化を育んできた場所として東九条の北河原住宅跡地を選んだ[注釈 18][51][52]。 会場は直方体のグリッド状に足場が組まれ、高さ約3.6メートルの上下にノズルが設置された。東西の短辺と南北の長辺でノズルの角度や間隔が異なり、東西から密度の濃い霧が噴霧され、南北の霧がそこに覆いかぶさるようになっている[注釈 19]。霧の噴霧時間は1回4分間であり、噴霧するタイミングには東西南北でずれがある。ノズルの位置と時間のずれによって対流が起き、霧が動的な塊となるようにデザインされている[54]。住宅街の空き地という生活に密接に関わる場所を会場とした点で、主に美術館や公園で展示されてきた﹃霧の彫刻﹄と異なる特徴をもっている[55]。景観[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/aa/Fog_Bridge_at_the_Exploratorium.jpeg/250px-Fog_Bridge_at_the_Exploratorium.jpeg)
雪と氷との対話︵2005年-2006年︶[編集]
ラトビア自然史博物館で開催された﹁雪と氷との対話 芸術と科学における観察/想像展﹂では中谷が企画に参加し、雪をテーマにした美術作品、雪氷学やアイスコア研究の紹介、そして宇吉郎の活動に焦点をあてた内容となった。中谷はインスタレーションの﹃霧箱﹄を展示し、他の芸術家による宇吉郎へのオマージュ作品もあった[注釈 20][61]。個展﹁霧の抵抗﹂︵2018年-2019年︶[編集]
日本初の中谷の大規模個展は、2018年10月27日から2019年1月20日に水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催された[2][62]。霧の彫刻は、﹁崩壊シリーズ﹂と名付けられた作品が2点展示された。﹃シンコペーション﹄は、磯崎新が設計した水戸英術館の噴水に設置され、宙吊りの岩を覆うように霧が発生する。噴水は、日米安保闘争で機動隊が民衆に対して行なった放水をイメージして作られており、霧は放水への抵抗を表現している。夜間の照明は逢坂卓郎が行なった[63]。﹃フーガ﹄は室内インスタレーションであり、室内をスクリーンで仕切り、片側に霧が立ち込める中でカラスの飛ぶ映像が流れる。やがてスクリーンが落とされて突然に室内に霧が満ち、カラスは飛び去ってゆく。2018年11月19日と10日に田中泯が場踊りを行なった[64]。常設[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/df/NGA_Fog_sculpture_by_Fujiko_Nakaya_%28429173353%29.jpg/250px-NGA_Fog_sculpture_by_Fujiko_Nakaya_%28429173353%29.jpg)
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/e7/Un_buen_d%C3%ADa_%2845076376321%29.jpg/250px-Un_buen_d%C3%ADa_%2845076376321%29.jpg)
評価[編集]
﹃霧の森﹄︵1992年︶によって、中谷は1993年に吉田五十八賞の特別賞を受賞した[65]。2017年には、霧を扱った彫刻の草分けとして、フランスの芸術文化勲章の最高位コマンドゥールを受賞した [76]。2018年には霧の彫刻やビデオ・アートの活動によって高松宮殿下記念世界文化賞を受賞した[77]。2020年には、メディア・アートや霧の彫刻の活動により、文化庁長官表彰を受けた[1]。主な常設展示[編集]
- 『砂漠の霧微気象圏』オーストラリア国立美術館・彫刻庭園、キャンベラ、1983年[65]
- 『霧の森、国営昭和記念公園』昭和記念公園、立川市、1992年[78]
- 『グリーンランド氷河の原』中谷宇吉郎雪の科学館、加賀市、1994年[67]
- 『F.O.G.』ビルバオ・グッゲンハイム美術館、ビルバオ、1998年
- 『フォグブリッジ』エクスプロラトリアム、サンフランシスコ、2013年[70]
- 『SEA FOG』大阪北口広場(通称:うめきた広場)、大阪市、2013年
- 『NAGI 凪』品川シーズンテラス、港区、2015年[79]
- 『霧の彫刻』長野県立美術館、長野市、2021年[73]