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親指シフト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2010年に登場した、NICOLA規格準拠のPC用コンパクト親指シフトキーボード。ホームポジションに両手を添えれば、親指は自然と2つのシフトキーを触る。これらは変換/無変換キーとしても動作する。
2001年に登場した、NICOLA規格準拠のPC用コンパクト親指シフトキーボード。ホームポジションに両手を添えれば、親指は自然と2つのシフトキーを触る。その下に変換/無変換キーが位置するものの、これらは(USBの制限に合わせるために)真上のキーと同じ働きしかしない。

21


概要

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親指シフト

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QWERTYJIS使

JIS11212


NICOLA

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NICOLAは、日本語入力コンソーシアムが親指シフト規格のうち一部仕様を変更した規格である。

NICOLAの名称は「NIHONGO-NYURYOKU CONSORTIUM LAYOUT(日本語入力コンソーシアム配列)」の頭文字に由来する。

操作方式

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/





使使





/QWERTY/
文字キーのキートップ
文字入力とキー操作
入力したい文字 キー操作
文字キーの下側に刻印されている読み (A) 文字キーを単独で打鍵
文字キーの上側に刻印されている読み (B) 文字キーと、文字キーを打つ手の親指シフトキーを同時に打鍵(同時打鍵
Aの文字の濁音 文字キーと、文字キーを打つ手とは反対側の親指シフトキーとを同時に打鍵(濁音がある文字のキーのみ有効)(クロスシフト+同時打鍵
Aの文字の半濁音 (親指シフト規格のみ)左右いずれかの小指シフトキー(半濁音キー)を押しながら、文字キーを打鍵(半濁音がある文字のキーのみ有効)
文字キーに刻印されている半濁音 (D) (NICOLA規格のみ)半濁音は濁音のない文字のキー(「ら」「,」「め」「ね」「い」)に刻印されており、クロスシフトで打鍵すると「ぱ」「ぴ」「ぷ」「ぺ」「ぽ」が入力される
英字 (C) 英字モードにて、文字キーを単独打鍵(一般のQWERTY配列キーボードと同じ)

親指シフト規格では、一つのシフトキーに一つの機能を割り当てるのではなく、「手の形・文字キーと親指シフトキーとの位置関係」に応じてシフトの意味合いを変えることにより、「片手で打てば濁音になり得ない清音かな」「両手で打てば濁音かな」というルールを、ほぼ規則的に実現している。

他のシフト方式と比べての親指シフト方式の特徴については、シフトキーの項目を参照。

キー配列

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親指シフト規格のキー配列は、かつて時代と共に変遷してきたが、基本的な仕様は変わっていない。ここでは親指シフト規格を採用した最初の製品であるOASYS100の配列と、現在用いられているPC向けのNICOLA規格配列を紹介する。なお、OASYS100とその後のOASYSとでは記号類の配置に若干の違いがあるものの、英字入力時の配列は一般的なQWERTY配列キーボードとほぼ同一であるため、日本語入力時の配列についてのみ紹介する。

親指シフト規格

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OASYS100の日本語入力時の配列  #

OASYS100

6[1]

3
使

使





使退
退OASYS

NICOLA規格

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NICOLANICOLAJISOASYS100FANSIAJISJJISJNICOLA

日本語入力時の配列 (NICOLA)
NICOLA/CtrlAlt

OASYS100


NICOLANICOLANICOLA

退


JIS使

/


JIS[2]PC

JIS X 4064:200222JISNICOLA

 PanasonicLet's noteJIS使[3]

派生の独自配列

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ユーザーが独自に設計した親指シフト系列の様々な配列が提案されている。一般的に流通しているJISキーボードで打ちやすいように右手キーの位置を一つ右にずらしたorz配列や、清濁別置でより合理的な配列を目指した飛鳥配列、左右交互打鍵に重点を置いた小梅配列などが存在する。これらの独自配列は、後述の「やまぶきR」や、「DvorakJ」といった単独エミュレーションソフト等を用いて実装されている。[4]

評価

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参議院速記者の坂本正剛は、自身は東芝ワープロスクール一期生でありJISキーボードを使用していたが、著書『ワープロ速記法』の中で、親指シフトキーボードを「非常に合理的にキーが配列されていて、私もこの方式を高く評価してい」ると記した[5]。しかし、その時点では普及度を重視して最終的にはJISキーボードを推薦していた。一方、後に著した『新ワープロ速記法』では、親指シフトについて「キーボードの数が少ないことは、それだけ指の移動が少なく、速く打つことができる」、「毎分60字のスピードに到達する練習時間をJISと比較すると約半分ですみ、同じ時間だけ練習すればJISより2、3割速く打つことができ」るとし、「親指シフトのキーボードは富士通のワープロやパソコン以外には通用しませんが、正確に速く入力できるという条件にぴったりで、速記者や入力業者用ワープロとして最適です」と前著より積極的に親指シフトを評価した[6]

入力速度

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日本語の文章(天声人語4日分:3735文字)を入力したときの打鍵数を、他の入力方式と比較した資料によると[7]、以下の通りである。

打鍵数と内訳(変換・無変換は除く)
総打鍵数 比率 備考
親指シフト 3735 1.0 シフトキー自体を押した数は、カウントしない。
JIS配列かな 4110 1.1 シフトキー自体を押した数は、カウントしない。
ローマ字 6474 1.7

JIS1JIS2

JIS


学習の容易さ

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日本能率協会1983年に行った調査では[7][8]、キーボード未経験者にJISカナ、ローマ字、親指シフト規格の入力をそれぞれ練習させ、練習時間に対する入力速度の統計を取ったところ、入力速度の向上は親指シフト規格が一番速く、ローマ字入力が一番遅いという結果が得られている。これは、ローマ字入力では覚えるべきキーの数が少ないため取りかかりは容易であるが、習熟して頭の中で読みからローマ字に変換するプロセスが消えるまでに長く時間がかかるため、上達は遅いと説明されている。

歴史

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開発の背景

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ISOROM

1970/JEF

JEFFACOM-M[9][10][11]IBM[12]

JEF

1979JW-10

JIS1972[13][14]

1
111





調



3

Dvorak使


OASYSの発展と衰退

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JW-106301980OASYS100270使使OASYS

OASYS使1000

1982100My OASYS751984OASYS Lite22100JIS1JISOASYSJIS

198010OASYS使使






使

[13]212000

使便

1986OASYSJIS使JIS姿JIS
シリーズ別に見る出荷形態の変遷
業務用(100シリーズ) 家庭用(30/Liteシリーズ他)
戦略 1号機から一貫して親指シフト規格・JIS配列を用意
50音配列、新JIS配列を用意した時期もある
初期には親指シフト規格のみ、後にJIS配列を追加
初期 親指シフト規格が主体 親指シフト規格のみ(ただし、50音順ゴムカバー同梱機もあった)
中期 親指シフト規格が主体 親指シフト規格が主体
後期 親指シフト規格が主体 JIS配列が主体

1990NECPC-9801OASYSPC-9801ASKeyboard1996OASYS300使NICOLARBoard PRO for PCRBoard PRO for MacRBoard PRO for 9801

OASYS1995""WindowsOASYS 2002WindowsIMEJapanist

新JISキーボード化の失敗

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JIS50JIS[15]使[16][15]

NECMNEWSOASYS

JISJIS

JIS使198661JISJIS

JIS

JISJIS[17]



JISJIS調使JIS

JISJISJIS

JIS姿199911JISJIS

JIS200214JIS X4064[18]NICOLA

日本語入力コンソーシアムの誕生と、NICOLA規格の制定

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JIS1989

NICOLAJIS[]JIS使使[?]

富士通製品の64ビットOSへの対応の遅れ

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Windows XPWindowsOS64

Japanist20032Japanist 2003Windows 7646464OS使64

2010FKB7628OS32Japanist 2003使64OS[19]

64OS使使

20117Japanist 2003  (64bit)Windows 7 6420123

富士通製キーボードの販売終了

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2020年5月19日、富士通はJIS配列のデファクトスタンダード化により関連事業の継続が難しくなったとして、親指シフトに関係するハードウェア・ソフトウェアの終売を発表した[20][21]。富士通製の親指シフトキーボードは、2021年5月に販売を終了し、2026年6月にサポートを打ち切る[22]。なお販売については当初の予定より前倒しで2021年1月末に終了した[23]

今後、親指シフトの利用はエミュレータの活用が中心となる。

導入

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採用機種

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OASYSJISFMRFM TOWNSFACOM 9450SSPARCstationOEMPFUC

NEWS

PC



pomera()DM250 1

エミュレータ

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親指シフト環境の実現にはキーボードの論理配列を規定ないし変更する配列エミュレータが必要であるが(キーボードによっては専用のキーボードドライバで実現できる[24]),エミュレータがあれば一般のキーボードやノートパソコン等でも親指シフトを利用できる。

ソフトウェアエミュレータ

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ソフトウェアエミュレーションによる実装が複数のOSで行われており、環境構築や設定の微調整が可能となっている。またスマートフォンタブレット向けのアプリも存在する。

キーボード

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専用キーボード

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富士通の直販において親指シフト専用キーボードを取り扱っている(専用のソフトウェアが必要である[25])。

2020年時点では、「親指シフトキーボード(PS/2接続)」(FMV-KB613)、「親指シフトキーボード(USB接続)」(FMV-KB232)、「LIFEBOOK親指シフトキーボードモデル(企業向けノートPCカスタムメイドオプション)」(FMCKBD09H)の3種類が販売されているが、2021年5月ですべて販売終了[26]

一般キーボード

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USB[27] [28]

OADG 109AppleJIS

Happy Hacking KeyboardPFU[29]PFUHappy Hacking Keyboard Professional JP REALFORCE2[30]

専用機材とエミュレータとの相違

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専用の親指シフトキーボードによる親指シフト規格の文字入力と、エミュレータによる親指シフト規格の文字入力には、以下のような違いがある。

親指シフトキーの機能

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PS/2接続の親指シフト専用キーボードには、親指シフトキーのためのキーコードを出力する専用の親指シフトキーが備わっている。

これに対し、USB接続の親指シフトキーボードや一般のJISキーボードには、左右の親指シフトキーに対応するキーコードを割り振ることが可能な独立したキーは備わっていない。そのため、親指シフトキーの機能を実現するためには、既存のキーのいずれかに、そのキーの本来の機能に重複して、親指シフトキーの機能を割り当てる場合がある。その割り当てが行なわれると、親指シフトキーの機能を割り当てられたキー(代替キー)は、文字キーと同時打鍵された場合に親指シフトキーの機能を発揮し、単独で打鍵された場合のみ本来の動作を行なう、という代替キーの動作切り替えが行なわれる。

実際の製品としては1991年のオアシスポケットから採用され始めた。2008年以降の機種では、デスクトップ・モバイル・ノートの種別を問わず、PS/2接続のキーボードを除いて全てこの仕様でリリースされている。(#NICOLA規格参照)

専用の親指シフトキーボードでも、変換/無変換キーに親指シフトキーの機能を重複割り当てすることを、NICOLA規格では認めている。

同時打鍵の判定

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OASYSの親指シフトキーボードでは、親指キーを先に押した場合はどんなにタイミングがずれても許容された(前置シフト)。エミュレータ(後述)では親指キー・文字キーのどちらが一瞬早かった場合でも数百ミリ秒のズレを許容する。

多くのエミュレータはこのタイミングを細かく調整したり、前置シフトの有無を設定できる。

エミュレータ 一覧

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ソフトウェアエミュレータを内蔵した日本語IME

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単体ソフトウェアエミュレータ

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Windows32/64
Mk-II2020/4/1Mk-II使Windows 64bit

em1keypcoyayubiwmNICOLA

NICOLAUSB

R 使

DvorakJ

2NICOLAUSB



Q's Nicolatter 8

Windows32
Q2010/05/13NICOLA

Windows CE


Windows Mobile
em1keyoyayubiwmNICOLA

Mac OSOS9


Nickey

macOS
Lacaille (  )

Karabiner-Elements
KeyRemap4MacBookKalabinerKarabiner-ElementsSeilKarabiner-Elements

NicolaK Pro (   )

TESLA

Tesla Plus - 2003105

TESLA 

UnixLinux
Q's Nicolatter for X

kinput2 for NICOLA

oyainput

Emacs
omelet

MS-DOS

ハードウェアエミュレータ(コンバータ)

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  • クロスプラットフォーム
    • OyaConv 親指シフトの利用を目的として開発されたコンバータ。英数を含め全てのキー配列を入れ替え、変更するための設定も可能。
    • かえうち キーボード配列を変換する汎用コンバータ。親指シフト,DvorakやColemakはもとより,ユーザーによるカスタマイズ可能で各種配列が利用できる。 
    • USB2BT PLUS USBキーボード/マウス/ゲームパッドなどUSB HIDデバイスをBluetoothに変換しiPhone/スマートフォン/パソコンを操作可能とするアダプタ。制限事項はあるが親指シフト入力機能を備えている。[31]

親指シフトユーザーの著名人

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HP稿[32]

[33][34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44]西[45][46]

[47]

参考文献

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 NHK1985 ISBN 978-4-14001-478-3 

2016

調JIS X 4064  2002

調  JIS C 6236-1986 1986

 1991ISBN 4-87008-078-8

1983

脚注

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(一)^ 使

(二)^  

(三)^ 102007 ISBN 978-4-88759-544-6 

(四)^  2020 

(五)^ 1984 

(六)^ 1988 

(七)^ ab810  NICOLA  (JIS) 

(八)^ 

(九)^  4/12

(十)^  4/12

(11)^  4/12

(12)^ http://www.ykanda.jp/jef/announce/sales.jpg

(13)^ ab53 1967

(14)^ 53 1968

(15)^ ab (880522-880607)

(16)^  2002/10/26  

(17)^ JIS- 

(18)^ 

(19)^  (USB) FKB7628

(20)^  40.  ITmedia NEWS (2020519). 2020519

(21)^  40 - 

(22)^ 40退 -  (20200519)

(23)^ PC Watch40 - Impress2021382021313

(24)^  | NICOLA . nicola.sunicom.co.jp. 20191210

(25)^ 使 -FMWORLD:. www.fmworld.net. 2019128

(26)^  - 2020519

(27)^ http://eee-life.com/kb/

(28)^    NISSE. www.esrille.com. 20191218

(29)^ 2778-120620 : shiology

(30)^  - . 20191218

(31)^ (sohtaMei) - USB2BT+. sohta02.web.fc2.com. 2020111

(32)^ web 

(33)^  :

(34)^ youtube | 

(35)^ 

(36)^   

(37)^  

(38)^  [@inosenaoki] (2020520). "198040". XTwitter202134 

(39)^  (20121116). ThinkPadMacBook. . 202134

(40)^  [@agitadashi] (2012318). "使稿". XTwitter202134 

(41)^ 47 201522202134

(42)^  [@komorikentarou] (2020523). "". XTwitter202134 

(43)^ 20. .   (201212). 202134

(44)^  [@kikawa9] (2016720). "". XTwitter202134 

(45)^   . . 2015108202135

(46)^   稿 - 

(47)^ web 

外部リンク

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