パーソナルコンピュータ
概要[編集]
パーソナルコンピュータ︵PC︶は、個人で使用するコンピュータである[7][注釈 3]。 パーソナルコンピュータが登場する以前、コンピュータは大型で高価だった[7]。購入や運用に巨額の費用が必要なので、それらは大企業や大学や研究所などが所有し、1台を、それら組織に所属する人々が共同で使用していた︵タイムシェアリングシステム︶。この時代、個人が自分のためだけに購入して占有して使えるようなコンピュータは存在しなかった。だが1971年にアメリカのインテルがマイクロプロセッサの開発に成功したことで、コンピュータを小型化および低価格化する道が開け、個人所有する可能性が開かれた[7]。 パーソナルコンピュータのサイズや形状による分類ではノートPC︵ラップトップPC︶、デスクトップPC、タブレット型PC︵スレートPC︶などがある。 現在パーソナルコンピュータで使用される代表的なアプリケーションソフトウェアとしてはウェブブラウザ、オフィススイート︵ワープロソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト、データベース 等︶、ゲームソフトなどがある。名称[編集]
﹁パーソナルコンピュータ﹂という用語は、1972年にアラン・ケイがACM National Conferenceで発表した"A Personal Computer for Children of All Ages"の中で使用され、﹁個人のための理想のコンピュータ﹂という意味で使った[注釈 4]。 最初のパーソナルコンピュータには諸説あるが、現在では一般的に最初に実際に市販されたパーソナルコンピュータはAltair 8800と言われており、これは1974年にインテルの8bitマイクロプロセッサ8080をCPUに用いて登場したものである。ただし1970年代後半までは、CPUにマイクロプロセッサを採用したコンピュータは、英語圏では主に﹁micro computer﹂などと呼ばれることが多く︵たとえば1977年発売のTRS-80も名称は﹁TRS-80 Micro Computer System﹂であり︶、あるいは﹁home computer﹂という呼称も好まれた。日本で1970年代後半は、英語のmicro computerをカタカナに直訳した﹁マイクロコンピュータ﹂が堅い記事などでは好まれ、︵日本国内では用語を4文字︵4音節︶に短縮することが好まれるので︶日常的には短縮形の﹁マイコン﹂が使われた。 パーソナルコンピュータという用語は1977年ころから一部の機種についても使われており、アメリカでは1977年発売のApple IIの広告類で、日本では1979年発表・発売のPC-8000シリーズを指して日本電気が使うようになった︵この﹁PC-8000﹂の2文字﹁PC﹂は﹁Personal Computer﹂の頭文字︶。 世界的に見て一番決定的だったのは、IBMが1981年に発売しベストセラーとなったIBM PC︵製品名称は﹁IBM Personal Computer﹂︶で、更にIBM PCおよび後継製品をベースにしたIBM PC互換機が市場でデファクト・スタンダードとなったため、世界的にパーソナルコンピュータ(PC)という用語が普及した。なおIBM PC互換機以外の有力なパーソナルコンピュータはMacのみとなったため、PCとの略称は特にIBM PC互換機を指して使われる場合もある。日本では省略して﹁パソコン﹂と呼ばれるようになり、﹁パソコン﹂が定着すると、あとは﹁ホビーパソコン﹂﹁ノートパソコン﹂﹁パソコン教室﹂のような、他の語と﹁パソコン﹂を組み合わせた造語も次々と行われるようになった。
歴史[編集]
20世紀[編集]
1970年代 8ビット時代 パーソナルコンピュータの出現[編集]
1980年代16ビット時代 オフィスへの普及[編集]
1990年代 32ビット時代 パソコンのネット端末化[編集]
21世紀[編集]
インターネットとPC[編集]
インターネットの普及とともに、各パソコンはブロードバンドルータに接続され、更に上位のルータ・スイッチやサーバに連結されるようになり、インターネットの利用者は主にパソコンをインターネットの情報アクセス端末として利用するようになった[17]。 インターネット利用者1人当たりのPC台数は、経済水準によって違いがあり、各国の1人当たりのPC保有台数と1人当たりGDPには一定の正の相関があることが指摘されるようになった[17]。途上国ではパソコンの利用はオフィスでの業務用やインターネット・カフェなど共同利用形態が多いが、経済水準の向上や情報化社会の進展に応じてパソコンの保有台数は増加し、特に就労者は家庭用と業務用等で複数台を利用する傾向がみられた[17]。 2005年時点の1人当たりのPC保有台数の世界平均は0.82で、最高値はアイルランドの1.49だった[17]。新世代のパーソナルコンピュータの出現[編集]
2000年代には新しい情報端末が多く出現し、携帯電話、情報携帯端末︵Personal Digital Assistants‥PDA︶、ゲーム機等からのインターネットへのアクセスが急増するようになった[20]。 ユーザーが各種アプリストアからアプリケーションをダウンロードしてインストールすることが可能なスマートフォンが普及し、HTML5/CSS3標準をサポートするブラウザが増えたことでウェブアプリケーションの高機能化が進み、さらにハードウェア性能も向上したことから、日常生活を送るうえでの手続きや娯楽などはスマートフォンやタブレットがあれば事足りるようになった[21]。そのため、家庭で従来の﹁パソコン﹂を所有せず、操作したことがない一般消費者も増えている。 しかし、スマートフォンはクリエイティブな作業に使うには限界があること、ハード性能に制約があること、タッチ操作には最適化されている一方でポインティングデバイスやキーボードによる入力には最適化されていないこと、サンドボックスによりアプリケーションのインストールが制限されていること︵ハードウェアの拡張やオペレーティングシステムおよびデバイスドライバーなどの自由なインストールもできない︶などから、依然として従来のパソコンやワークステーションは広く使われている。タブレット型PCの普及[編集]
パソコンも個人用途ではスマートフォンに代替される傾向となり、2012年には日本国内のパソコン出荷数の減少が始まる。2013年にはWindows XPのサポート終了に伴う駆け込み需要で販売台数が増加したが、2014年からはそれがなくなり、パソコンの販売台数が急減した[22]。2014年度には国内出荷が1000万台を割り込んだ[23]。一方でスマホをパソコン寄りに近づけたタブレット型PCが2010年のApple iPadを皮切りに登場し、逆にパソコンをスマホ寄りに近づけたタイプも登場し、普及がみられる[17]。種類[編集]
形状や大きさによる分類には次のようなものがある。分類の基準やそれぞれの呼称は、メーカー、シリーズ、時期などによって異なる。ノートパソコン(ラップトップ)[編集]
ネットブック[編集]
ノートブックのうち、性能や拡張性をウェブサイト閲覧などの軽作業には充分な程度に低く抑えることで小型・軽量・低価格としたもの。
タブレット型PC[編集]
デスクトップパソコン[編集]
スティック型[編集]
USBメモリに似たスティック状の形状にCPU(SoC)とメモリ、ストレージにeMMCを搭載した超小型パソコン。たいていのモデルはHDMI端子を備えており、フラットパネルディスプレイに接続して使用する。コンポーネントの実装面積や廃熱に制約があり性能は著しく低いが、持ち運びがしやすい。バッテリーは内蔵しない。消費電力が小さいためモバイルバッテリーの給電でも動作する場合がある。
その他[編集]
ウェアラブル[編集]
時計型や頭部に装着するなど、身体に装着して使用するもの。
PDA[編集]
スマートフォン[編集]
PDAに携帯電話機能をプラスし、単体で移動体通信網への接続機能を持たせたもの。
ワークステーション[編集]
サーバ[編集]
ハードウェア[編集]
メインボード[編集]
CPU[編集]
メインメモリ[編集]
補助記憶装置[編集]
リムーバブルディスク[編集]
拡張カード[編集]
電源[編集]
ディスプレイ[編集]
キーボード[編集]
ポインティングデバイス[編集]
音源とスピーカ類[編集]
黎明期のPCは、内蔵音源としてビープ音やFM音源といった貧弱な音源しか持たなかったが、PCMデータの再生に対応したPCM音源を搭載したサウンドチップが標準的となり、また各種OSにおいてアプリケーションソフトウェアからオーディオデバイスを利用するためのアプリケーションプログラミングインターフェイス︵API︶の標準化が進んだことにより、音声や動画の再生が標準的にできるようになっている[注釈 12]。 スピーカーは音声︵音響︶を出力するための装置。インターフェイス[編集]
ケース[編集]
その他の周辺機器[編集]
Webカメラ PCのモニター等に取り付ける小型カメラ。内蔵されるものと外付けのものがある。主にビデオ会議や動画配信などのネットワークストリーミング用途で使用される。 プリンター 紙に印刷するための装置。カラーのインクジェットプリンターやレーザープリンターが主流である。イメージスキャナとの複合機もある。[注釈 13] スキャナ︵イメージスキャナ︶ 外部から画像︵平面的な写真や印刷物︶をPC用のデータに変換して取り込むための装置。ポジやネガなどのフィルムをスキャンできる機種もある。プリンターに統合された複合機が主流となっており、単独の製品は少ない。 ビデオキャプチャ装置 ビデオ信号を動画データに変換して取り込むために使う。内蔵カード型のもの︵ビデオキャプチャカード︶も、外付けの箱型でUSB接続のものもある。 チューナー 古くはAM/FMラジオチューナー搭載モデル、次いでアナログTVチューナー搭載モデルが発売されたことがあったが普及をみなかった。日本ではデジタル放送︵TV︶チューナーが2008年ごろから普及しはじめ、薄型テレビやHDD/DVD/BDレコーダー等の家電製品と同様に、パソコンで放送を録画、再生できるようになっている。 モデム、TAなど モデムはダイヤルアップ接続でインターネットへ接続する場合に必要な装置で2000年代までは標準的に搭載されていた。ISDNを利用する場合はTA、ADSLの場合はADSLモデムを使った。 その他 デジタルカメラ 等 写真データを取り込む場合にUSB接続やワイヤレス接続する。ファームウェア[編集]
パーソナルコンピュータにおけるファームウェアは、主にマザーボードのファームウェア︵BIOS / UEFI︶を指すことが多い[39]。ソフトウェア[編集]
オペレーティングシステム[編集]
オペレーティングシステム(OS)はコンピュータシステム全体の管理と制御を行ない、ユーザーインターフェイスを提供するシステムソフトウェアの一種である。OSによって標準化・抽象化されたAPIが提供されることで、アプリケーションソフトウェアはハードウェアを直接制御する必要がなくなる。
Windows[編集]
マイクロソフトが提供する独自のオペレーティングシステムで、1990年代よりPC/AT互換機に搭載されるOSの主流となっている。Microsoft Windows 10以降はWindows Subsystem for Linux(WSL)によるLinux互換環境もサポートしている。
macOS[編集]
Appleが提供するUnix系の独自のオペレーティングシステムで、Apple社独自のハードウェアで動作する。GUI操作を基本とするが、UNIX互換のシェルも持つ。
ChromeOS[編集]
Googleが提供するLinux系の独自オペレーティングシステムで、Google Chromeをベースとしたシェルを持つ。Androidとの連携や互換性が優れており、ソフトウェア開発用途などにDebian系のLinuxサブシステム(Crostini)も制限付きながら利用できる[40]。
PC-UNIX[編集]
アプリケーションソフトウェア[編集]
ミドルウェア[編集]
ミドルウェアはOSとアプリケーションとの間に構築されるアプリケーションフレームワークの一種である。アプリケーションの開発を効率化する。主なメーカー[編集]
主なパーソナルコンピュータのメーカーは以下の通りである。大手メーカーの多くはクアンタ・コンピュータ、コンパル・エレクトロニクスなどの台湾に本社を置く受託製造メーカーにOEM生産を委託しており、ノートパソコンに至っては世界の年間生産台数の約9割を台湾企業が手掛けている。市場シェア[編集]
各項目とも、2019年1〜12月、台数ベース、IDC調査。世界[編集]
出典‥[48]順位 | メーカー | シェア率 (%) |
---|---|---|
1 | レノボ | 21.3 |
2 | HP Inc. | 20.9 |
3 | デル | 15.7 |
4 | ASUS | 7.4 |
5 | Apple | 7.1 |
6〜 | その他 | 27.7 |
日本[編集]
出典:[49]
順位 | メーカー | シェア率 (%) |
---|---|---|
1 | NEC | 25.4 |
2 | 富士通 | 19.0 |
3 | HP Inc. | 12.4 |
4 | デル | 12.1 |
5 | Dynabook | 11.1 |
6〜 | その他 | 20.0 |