デジタル大辞泉
「バラ」の意味・読み・例文・類語
バラ(Bala)
コ ー カ 湖 か ら 流 出 す る ム ー ン 川 に か か る バ ラ 滝 が 有 名 。 モ ン ゴ メ リ ー が 夏 の 休 暇 を 過 ご し た 地 で あ り 、 小 説 ﹁ 青 い 城 ﹂ の 舞 台 と な っ た 。
出典 小学館 デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
バラ (薔薇) roseRosa L.
目次 植物としてのバラ 昔の園芸種とその原種 ルネサンス時代以降に導入されたバラ,現代のバラの原種 ヨーロッパ で育成されたバラの諸系統 今日のバラのおもな系統 栽培法 香料としてのバラ 歴史の中のバラ 文化史 神話,伝承,民俗 バラ科Rosaceae 植物としてのバラ
美 し い 花 を つ け , ま た 香 料 の 原 料 と も な る バ ラ は , バ ラ 科 バ ラ 属 R o s a の 落 葉 ま た は 常 緑 の 低 木 や つ る 性 植 物 か ら 育 成 さ れ た も の で , 多 数 の 観 賞 用 園 芸 品 種 を 含 む 。 こ の 属 は 約 2 0 0 種 の 野 生 種 が 知 ら れ る 。 茎 葉 に は と げ が 多 く , 互 生 す る 葉 は 通 常 , 奇 数 羽 状 複 葉 , ま れ に 単 葉 に な り , 托 葉 が あ る 。 花 は 茎 頂 に 単 生 か 散 房 状 に つ き , 花 弁 は 5 枚 , 園 芸 品 種 で は 重 弁 化 す る も の が 多 い 。 お し べ , め し べ と も に 多 数 。 瘦 果 ︵ そ う か ︶ は 肉 質 の 花 床 に 包 ま れ る 。 北 半 球 の 亜 寒 帯 か ら 熱 帯 山 地 に か け て 分 布 し , 日 本 に は ノ イ バ ラ , テ リ ハ ノ イ バ ラ , ヤ マ イ バ ラ , タ カ ネ バ ラ , サ ン シ ョ ウ バ ラ , ナ ニ ワ イ バ ラ , ハ マ ナ ス な ど 十 数 種 が 野 生 す る 。
昔 の 園 芸 種 と そ の 原 種
ギ リ シ ア ・ ロ ー マ 時 代 に は , 西 ア ジ ア か ら ヨ ー ロ ッ パ 域 の 野 生 バ ラ や , そ れ の 自 然 交 雑 と 推 定 さ れ る 花 の 目 だ つ 変 り 物 が よ く 栽 培 さ れ て い た 。 こ の 古 典 時 代 か ら ル ネ サ ン ス 時 代 に か け て , 主 と し て ヨ ー ロ ッ パ 南 部 で 栽 培 さ れ て い た バ ラ に は 次 の よ う な 種 が あ る 。 こ れ ら は す べ て , 雑 種 と 断 定 あ る い は 推 定 さ れ て い る も の で , バ ラ は そ の 栽 培 の 初 め か ら 複 雑 な 起 源 を も っ た 園 芸 植 物 で あ る 。
︵ 1 ︶ ロ ー ザ ・ カ ニ ナ R . c a n i n a L . ︵ 英 名 d o g r o s e ︶ 小 葉 は 5 ~ 7 枚 。 花 は 一 重 で 花 弁 は 5 枚 , 花 色 は 薄 桃 色 か ら 桃 色 。 芳 香 が わ ず か に あ る 。 西 ア ジ ア か ら ヨ ー ロ ッ パ に 分 布 す る 。 ︵ 2 ︶ ロ ー ザ ・ モ ス カ ー タ R . m o s c h a t a H e r r . ︵ 英 名 m u s k r o s e ︶ つ る 性 で , 小 葉 は 5 ~ 7 枚 。 花 は 散 房 状 花 序 に 10 ~ 30 個 つ く 。 花 は 白 色 の 一 重 で , 1 日 で 散 る 。 濃 厚 な 香 り が あ る 。 南 ヨ ー ロ ッ パ , 北 ア フ リ カ に 野 生 す る 。 2 n = 1 4 。 ︵ 3 ︶ ロ ー ザ ・ セ ン テ ィ フ ォ リ ア R . c e n t i f o l i a L . ︵ 英 名 c a b b a g e r o s e , P r o v e n c e r o s e ︶ 花 は 英 名 か ら も う か が え る よ う に 結 球 キ ャ ベ ツ 状 の 重 弁 で , 60 弁 以 上 の 多 数 の 花 弁 を も ち , 径 5 ~ 6 c m で , 茎 頂 に 単 生 す る か 2 ~ 3 花 つ け , 普 通 ピ ン ク 色 。 雑 種 起 源 ︵ R . b i f e r a × R . a l b a ︶ で , 不 稔 の 四 倍 体 ︵ 2 n = 2 8 ︶ で あ る 。 こ の 突 然 変 異 の 枝 変 り で , 針 状 の と げ が や や 多 く , 萼 や 花 托 や 小 花 梗 に 絨 毛 ︵ じ ゆ う も う ︶ と 刺 毛 と み つ 腺 の 多 い 特 異 な 形 態 を し た も の を コ ケ バ ラ v a r . m u s c o s a S e r i n g e ︵ 英 名 m o s s r o s e ︶ と 呼 ぶ 。 こ れ は 1 6 9 6 年 ご ろ 南 フ ラ ン ス で 発 見 さ れ , 当 時 , 高 価 な も の で あ っ た 。 ︵ 4 ︶ ダ マ ス ク バ ラ R . d a m a s c e n a M i l l e r ︵ 英 名 D a m a s k r o s e ︶ 小 葉 は 5 ~ 7 枚 。 花 は 散 房 状 に 多 数 つ き , 花 弁 も 多 数 。 花 色 は 赤 , ピ ン ク 。 芳 香 が き わ め て 強 烈 で , 香 油 成 分 に 富 み , 香 水 の 原 料 と も な る 。 自 然 雑 種 ︵ R . g a l l i c a × R . p h o e n i c i a ︶ か ら 選 抜 さ れ た も の と 考 え ら れ , 小 ア ジ ア 地 域 か ら ヨ ー ロ ッ パ に は 16 世 紀 に 導 入 さ れ た 。 2 n = 2 8 。 ︵ 5 ︶ ロ ー ザ ・ ガ リ カ R . g a l l i c a L . ︵ 英 名 F r e n c h r o s e ︶ 直 立 性 の 灌 木 で , 長 い 根 茎 が あ る 。 花 は 上 向 き に 咲 き , 濃 い ピ ン ク か ら 深 紅 色 。 栽 培 さ れ て い る 系 統 は 変 異 に 富 み , 雑 種 起 源 で は な い か と 考 え ら れ て い る 。 7 世 紀 に な っ て イ ス ラ ム 教 徒 の ヨ ー ロ ッ パ 侵 入 と と も に , 西 ア ジ ア 地 域 か ら ヨ ー ロ ッ パ に も た ら さ れ た も の と 考 え ら れ て い る 。
ル ネ サ ン ス 時 代 以 降 に 導 入 さ れ た バ ラ , 現 代 の バ ラ の 原 種
ル ネ サ ン ス 以 降 , 主 と し て ア ジ ア の 各 地 域 か ら ヨ ー ロ ッ パ に 導 入 さ れ た 品 種 改 良 の 原 種 と さ れ た バ ラ に は , 次 の よ う な も の が あ る 。
︵ 1 ︶ コ ウ シ ン バ ラ ︵ 別 名 , 長 春 花 , 長 春 , 月 季 花 ︶ R . c h i n e n s i s J a c q . ︵ 英 名 C h i n a r o s e , B e n g a l r o s e ︶ 常 緑 ま た は 半 常 緑 の 灌 木 。 と げ は 少 な い 。 小 葉 は 3 ~ 5 枚 。 花 は 八 重 ま た は 半 八 重 で , 桃 色 ま た は 深 紅 色 , ま れ に 白 色 。 四 季 咲 性 。 中 国 西 部 に 野 生 化 し て い る 。 2 n = 1 4 , 21 , 28 。 ︵ 2 ︶ ロ ー ザ ・ フ ォ エ テ ィ ダ R . f o e t i d a H e r r m . ︵ = R . l u t e a M i l l . ︶ ︵ 英 名 A u s t r i a n b r i a r ︶ 小 葉 は 5 ~ 9 枚 。 花 は 濃 黄 色 で , 単 生 す る 。 イ ラ ン , イ ラ ク , ア フ ガ ニ ス タ ン 原 産 で , 1 5 4 2 年 こ ろ ヨ ー ロ ッ パ に 導 入 さ れ た 。 2 n = 1 4 , 28 。 花 弁 の 表 が 鮮 や か な 朱 色 の も の を v a r . b i c o l o r W i l l m . と い い , こ れ が 後 年 , 現 在 の バ ラ の 黄 色 , か ば 色 , 朱 色 , 花 弁 の 表 裏 変 色 の も と と な っ た 。 ︵ 3 ︶ ロ ー ザ ・ オ ド ラ ー タ R . o d o r a t a S w e e t ︵ 英 名 t e a r o s e ︶ つ る 性 ま た は 半 つ る 性 で , 小 葉 は 5 ~ 7 枚 で , 照 葉 ︵ て り は ︶ 。 花 は 単 生 か 2 ~ 3 個 頂 生 し , 白 色 や 淡 い ピ ン ク 色 な ど 。 中 国 西 部 に 点 在 し , 交 雑 さ れ た 種 で , 園 芸 品 種 と 考 え ら れ る 。 1 7 6 8 年 か ら 1 8 1 0 年 に か け て ヨ ー ロ ッ パ に 入 り , テ ィ ー ・ ロ ー ズ の 母 種 と な っ た 。 2 n = 1 4 。 ︵ 4 ︶ ロ ー ザ ・ ギ ガ ン テ ア R . g i g a n t e a C o l l e t t e t H e m s l . つ る 性 で , 花 は 乳 白 色 ま た は 黄 色 。 中 国 南 西 部 に 自 生 す る 。 2 n = 1 4 。 ︵ 5 ︶ モ ッ コ ウ バ ラ R . b a n k s i a e R . B r . ︵ 英 名 B a n k ' s r o s e ︶ 常 緑 の つ る 性 で , と げ は 少 な い 。 小 葉 は 3 ~ 5 枚 。 花 は 小 輪 で 白 か 黄 色 。 中 国 西 部 ~ 中 部 に 自 生 し , 19 世 紀 に ヨ ー ロ ッ パ に 紹 介 さ れ た 。 2 n = 1 4 。
以 上 の 種 の ほ か に , 日 本 に も 自 生 す る ノ イ バ ラ の 多 花 性 と 強 健 性 , テ リ ハ ノ イ バ ラ の つ る 性 と 耐 寒 性 , ハ マ ナ ス の 美 し さ な ど が 近 代 の 品 種 改 良 に お お い に 貢 献 し た 。
ヨ ー ロ ッ パ で 育 成 さ れ た バ ラ の 諸 系 統
ヨ ー ロ ッ パ で 育 成 さ れ た バ ラ の 諸 系 統 ヨ ー ロ ッ パ で は こ れ ら の 東 洋 の 原 種 と ヨ ー ロ ッ パ 在 来 の 系 統 と の 人 工 交 雑 で , 数 々 の 新 系 統 が つ く り 出 さ れ た 。 な か で も ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ H y b r i d P e r p e t u a l R o s e と テ ィ ー ・ ロ ー ズ T e a R o s e の 系 統 が , 19 世 紀 後 期 か ら 作 り 出 さ れ , 最 も 重 要 な 園 芸 バ ラ の 系 統 と な っ た 。 ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ は , ハ イ ブ リ ッ ド ・ チ ャ イ ナ H y b r i d C h i n a と 呼 ば れ た 四 季 咲 性 の コ ウ シ ン バ ラ 系 と ダ マ ス ク バ ラ の 自 然 交 雑 種 や , コ ウ シ ン バ ラ 系 と ロ ー ザ ・ ガ リ カ の 交 雑 種 , あ る い は コ ウ シ ン バ ラ 系 と ダ マ ス ク バ ラ の 自 然 交 雑 に よ っ て で き た ブ ル ボ ン ・ ロ ー ズ B o u r b o n R o s e な ど , さ ま ざ ま な 雑 種 起 源 系 統 が さ ら に 育 成 さ れ た 。 性 質 は そ れ ま で 少 な か っ た 大 輪 咲 き の 多 花 性 で , 木 は 強 健 で , 耐 寒 性 や 耐 病 性 に す ぐ れ , 春 の 一 番 咲 き の あ と , 返 り 咲 き も す る 品 種 が 出 た の で , p e r p e t u a l ︵ 四 季 咲 性 ︶ と 名 付 け ら れ た が , 実 際 は 秋 ま で 咲 き 続 け る 真 の 四 季 咲 き で は な い 。 中 国 に は 古 く か ら コ ウ シ ン バ ラ 系 と ロ ー ザ ・ ギ ガ ン テ ア の 自 然 交 雑 種 が あ り , こ れ が 18 世 紀 に ヨ ー ロ ッ パ に 渡 っ た 。 四 季 咲 性 に す ぐ れ , 中 輪 で や や 房 咲 き で は あ る が , 花 色 が 多 く , 花 型 も よ く , 紅 茶 に 似 た 香 り を も つ の で , さ ら に ヨ ー ロ ッ パ 在 来 品 種 が 交 配 さ れ , テ ィ ー ・ ロ ー ズ と 名 付 け ら れ た 。 1 8 6 7 年 フ ラ ン ス の ギ ヨ ー G u i l l o t が テ ィ ー ・ ロ ー ズ と ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ を 交 雑 し て ラ ・ フ ラ ン ス L a F r a n c e と い う 品 種 を 作 り 出 し た 。 こ れ は テ ィ ー ・ ロ ー ズ の 四 季 咲 性 と ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ の 大 輪 咲 き と 強 健 さ を も っ て い た の で , 以 後 次 々 と テ ィ ー ・ ロ ー ズ と ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ , さ ら に ロ ー ザ ・ フ ォ エ テ ィ ダ が 交 雑 さ れ る よ う に な り , ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ H y b r i d T e a R o s e と 呼 ば れ る こ れ ら の 品 種 群 は 現 代 バ ラ ︵ モ ダ ン ・ ロ ー ズ ︶ の 基 本 と な っ た 。 ま た , 1 9 0 0 年 に フ ラ ン ス の ペ ル ネ ・ デ ュ シ ェ J . P e r n e t - D u c h e r は 黄 バ ラ の ロ ー ザ ・ フ ォ エ テ ィ ダ の 八 重 咲 種 と ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ の 一 季 咲 大 輪 と の 人 工 交 配 に よ っ て 濃 黄 あ ん ず 色 の 中 大 輪 ソ レ イ ユ ・ ド ー ル S o l e i l d ' O r を 作 り 出 し た 。 こ れ 以 後 , こ の 系 統 を 親 と す る 黄 色 , 橙 色 , か ば 色 , あ ん ず 色 な ど の 黄 色 系 の 花 色 を も つ 品 種 群 が 生 ま れ た 。 こ れ ら を ペ ル ネ シ ア ナ ・ ロ ー ズ P e r n e t i a n a R o s e と 呼 ぶ 。 ま た , つ る 性 の バ ラ も 19 世 紀 後 期 に 品 種 改 良 が 進 め ら れ た 。 1 8 7 5 年 , ギ ヨ ー が 東 洋 産 の ノ イ バ ラ 系 の も の と コ ウ シ ン バ ラ 系 の ヒ メ バ ラ R . c h i n e n s i s v a r . m i n i m a V o s s ︵ 英 名 f a i r y r o s e ︶ と の 人 工 交 配 に よ っ て 作 っ た 品 種 は , 四 季 咲 小 輪 房 咲 き の 特 徴 を も っ て い た 。 こ の 系 統 は ポ リ ア ン サ ・ ロ ー ズ P o l y a n t h a R o s e と 名 付 け ら れ た が , き わ め て 多 花 性 で 耐 病 性 が あ る 。 ま た 北 欧 で も 育 つ よ う な 耐 寒 性 の あ る 品 種 も あ り , 今 日 で も 寒 地 で も て は や さ れ て い る 。
執 筆 者 ‥ 鈴 木 省 三
今 日 の バ ラ の お も な 系 統
バ ラ の 栽 培 の 歴 史 は 古 く , 種 々 の 原 種 が 交 配 さ れ , 今 日 で は 1 万 を こ え る 品 種 が 栽 培 さ れ て い る 。 バ ラ の 国 際 登 録 局 お よ び ア メ リ カ の バ ラ 協 会 発 行 の ︽ モ ダ ン ・ ロ ー ゼ ズ Ⅷ ︾ ︵ 1 9 8 0 ︶ は , そ れ ま で に 作 り 出 さ れ た 品 種 を 45 系 統 に 分 類 し て い る が , こ れ ら の 系 統 の う ち 今 日 栽 培 さ れ て い る お も な 系 統 は わ ず か 数 系 統 に す ぎ な い 。 ま た 各 系 統 間 の 交 配 が 頻 繁 に 行 わ れ , そ の 中 間 の タ イ プ が 続 出 し , き れ い に 各 系 統 に 分 け に く く な っ て き て い る 。 そ の た め 最 近 で は 今 ま で の 系 統 に こ だ わ ら ず , 系 統 を 大 別 し て ゆ く こ と に な っ た 。 ︵ 1 ︶ ブ ッ シ ュ ・ タ イ プ B u s h t y p e ︵ 木 バ ラ , 株 バ ラ , 叢 生 ︵ そ う せ い ︶ バ ラ ︶ , ︵ 2 ︶ ク ラ イ ミ ン グ ・ タ イ プ C l i m b i n g t y p e ︵ つ る バ ラ ︶ , ︵ 3 ︶ シ ュ ラ ブ ・ タ イ プ S h r u b t y p e ︵ 木 バ ラ と つ る バ ラ の 中 間 型 ︶ の 3 系 統 に 分 け ら れ る 。 こ れ ら は さ ら に そ の 花 の 大 き さ や 花 の つ き 方 お よ び 植 物 体 の 特 性 に よ っ て 系 統 分 類 さ れ て い る 。
︵ 1 ︶ ブ ッ シ ュ ・ タ イ プ こ の タ イ プ は 普 通 の 栽 培 品 種 が 最 も 多 く , し た が っ て 系 統 も 多 い 。 ︵ a ︶ 四 季 咲 大 輪 系 ︵ ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ H y b r i d T e a R o s e ︶ 19 世 紀 に , テ ィ ー ・ ロ ー ズ と ハ イ ブ リ ッ ド ・ パ ー ペ チ ュ ア ル ・ ロ ー ズ , さ ら に ロ ー ザ ・ フ ォ エ テ ィ ダ が 交 雑 さ れ た 品 種 群 で , こ れ に ペ ル ネ シ ア ナ ・ ロ ー ズ の 黄 色 系 ︵ カ ロ チ ノ イ ド 色 素 系 ︶ の 花 色 も 導 入 さ れ た 。 ブ ッ シ ュ ・ タ イ プ の 中 心 的 系 統 で , 本 来 は 1 茎 に 1 花 の 大 輪 を つ け る が , 品 種 に よ っ て は 1 ~ 数 個 の 側 蕾 ︵ そ く ら い ︶ を つ け る も の も あ る 。 グ ラ ン デ ィ フ ロ ー ラ ・ ロ ー ズ G r a n d i f l o r a R o s e と 称 し , 房 咲 き が 後 か ら す ぐ 続 い て 咲 く 系 統 も 含 ま れ て い る 。 花 色 , 花 型 の 多 様 性 , 強 健 , 大 輪 な ど の 点 で す ぐ れ , 現 在 の 世 界 の バ ラ 品 種 の 6 ~ 7 割 が こ の 系 統 で あ り , 品 種 数 も 最 も 多 い 。 花 壇 用 , 切 花 用 , 鉢 植 用 と 用 途 も 広 い 。 ︵ b ︶ 四 季 咲 中 輪 房 咲 系 ︵ フ ロ リ バ ン ダ ・ ロ ー ズ F l o r i b u n d a R o s e ︶ 1 9 1 1 年 に , デ ン マ ー ク の ポ ー ル ゼ ン S . P o u l s e n が ポ リ ア ン サ ・ ロ ー ズ に ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ を 交 雑 し て , 耐 寒 性 と 四 季 咲 性 を も つ 中 輪 房 咲 き の 品 種 を 作 り 出 し た 。 こ の 系 統 は ハ イ ブ リ ッ ド ・ ポ リ ア ン サ ・ ロ ー ズ H y b r i d P o l y a n t h a R o s e と 名 付 け ら れ た 。 そ の 後 , さ ら に 改 良 が 進 み , 花 房 は 大 き く , 花 弁 も 多 く 重 ね ら れ , ア メ リ カ で フ ロ リ バ ン ダ ・ ロ ー ズ と 呼 ば れ る よ う に な っ た 。 1 茎 に 数 花 , と き に 10 花 以 上 の 中 輪 の 花 を 房 状 に つ け る 。 多 花 性 で 樹 型 が 整 っ て お り , 色 彩 も 豊 富 で 耐 寒 性 も 耐 病 性 も 強 い の で , 花 壇 用 と し て 価 値 が 高 い 。 と く に ヨ ー ロ ッ パ で は よ く 栽 培 さ れ , 国 や 地 方 に よ っ て は ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ よ り も 栽 培 数 が 多 い 。 ︵ c ︶ 四 季 咲 大 輪 房 咲 系 ︵ グ ラ ン デ ィ フ ロ ー ラ ・ ロ ー ズ G r a n d i f l o r a R o s e ︶ ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ と フ ロ リ バ ン ダ ・ ロ ー ズ の 中 間 タ イ プ で , 1 茎 に 数 花 を つ け る 大 輪 房 咲 き と な る 。 1 9 5 4 年 に 作 り 出 さ れ た 品 種 ク イ ー ン ・ エ リ ザ ベ ス Q u e e n E l i z a b e t h に 代 表 さ れ , 1 9 5 0 年 代 に ア メ リ カ で 命 名 さ れ た 系 統 で あ る 。 現 在 で は フ ロ リ バ ン ダ ・ ロ ー ズ と ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ の 交 雑 が 盛 ん に な り , グ ラ ン デ ィ フ ロ ー ラ ・ ロ ー ズ に 似 た も の は 多 く , 房 咲 き の 花 が 大 輪 と な り , ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ も 側 蕾 の 発 生 す る 品 種 が 多 く な り , ハ イ ブ リ ッ ド ・ テ ィ ー ・ ロ ー ズ の 系 統 に 入 れ て し ま う 結 果 に な っ て い る 。 ︵ d ︶ 四 季 咲 小 輪 矮 性 ︵ わ い せ い ︶ 系 ︵ ヒ メ バ ラ , ミ ニ ア チ ュ ア ・ ロ ー ズ M i n i a t u r e R o s e ︶ 矮 性 の 原 種 を 親 に , ポ リ ア ン サ ・ ロ ー ズ や ハ イ ブ リ ッ ド ・ ポ リ ア ン サ ・ ロ ー ズ を 交 雑 し た も の で , 第 2 次 世 界 大 戦 前 に オ ラ ン ダ や ス ペ イ ン で 品 種 改 良 が す す ん だ 。 1 茎 に 数 花 の 小 輪 を 房 咲 き に し , 樹 高 は 低 い 。 近 年 , こ の 系 統 か ら 二 つ の グ ル ー プ が 派 生 し た 。 一 つ は マ イ ク ロ ・ ロ ー ズ M i c r o R o s e で , ア メ リ カ で 作 り 出 さ れ た 樹 高 5 ~ 1 5 c m の 極 矮 性 の 品 種 系 統 。 光 量 が ひ じ ょ う に 少 な く て も 栽 培 で き , 太 陽 光 線 に あ て た ほ う が よ い が , 電 灯 下 で も 開 花 す る 。 室 内 の 鉢 植 用 と し て 開 発 さ れ た 。 も う 一 つ は メ イ ア ン デ ィ ナ M e i l l a n d i n a で , フ ラ ン ス の メ イ ア ン 社 M e i l l a n d の 開 発 し た 鉢 植 用 の 系 統 。 樹 高 は フ ロ リ バ ン ダ ・ ロ ー ズ と ミ ニ ア チ ュ ア ・ ロ ー ズ の 中 間 で , 花 径 は 6 c m ぐ ら い と ミ ニ ア チ ュ ア ・ ロ ー ズ の な か で は 大 き い 。 約 2 週 間 は 退 色 し に く い と い う 花 も ち の よ さ と 多 花 性 が 特 徴 で あ る 。
︵ 2 ︶ ク ラ イ ミ ン グ ・ タ イ プ つ る バ ラ と 呼 ば れ , 垣 根 や ア ー チ , ポ ー ル な ど に 用 い ら れ る 。 ︵ a ︶ 小 輪 房 咲 一 季 咲 系 ︵ ラ ン ブ ラ ー R a m b l e r ︶ テ リ ハ ノ イ バ ラ な ど を 親 と し て 改 良 さ れ た 品 種 。 現 在 は あ ま り 作 り 出 さ れ て い な い が , 日 本 中 ど こ で も よ く 見 か け る 。 ロ ー ズ 色 の 小 輪 房 咲 き の つ る バ ラ , ド ロ シ ー ・ パ ー キ ン ス D o r o t h y P e r k i n s が 代 表 品 種 で あ る 。 支 柱 が な い と 地 面 に 伏 せ る か ら , 垣 根 用 に 最 も よ い 。 ︵ b ︶ 大 輪 つ る バ ラ 系 ︵ L a r g e F l o w e r e d C l i m b e r ︶ ラ ン ブ ラ ー と 同 様 テ リ ハ ノ イ バ ラ を 親 と し て 作 り 出 さ れ た 大 輪 咲 き の 系 統 。 ︵ c ︶ 枝 変 り 性 つ る バ ラ 系 ︵ C l i m b i n g S p o r t ︶ ブ ッ シ ュ ・ タ イ プ の も の が 突 然 変 異 に よ っ て つ る 性 と な っ た 品 種 。 花 は も と の 品 種 と ま っ た く 同 じ で あ る 。 大 輪 つ る バ ラ 系 と こ の 系 が と も に 現 在 の つ る バ ラ の 主 流 と し て 栽 培 さ れ て い る 。
︵ 3 ︶ シ ュ ラ ブ ・ タ イ プ ブ ッ シ ュ ・ タ イ プ お よ び ク ラ イ ミ ン グ ・ タ イ プ の い ず れ に も 分 け ら れ な い い わ ば 中 間 の 系 統 。 原 種 間 交 雑 品 種 お よ び そ の 改 良 品 種 を 便 宜 上 , シ ュ ラ ブ ・ タ イ プ と 呼 ん で い る 。 耐 病 性 が 強 く , 栽 培 管 理 が 楽 で 剪 定 ︵ せ ん て い ︶ の 必 要 が な く , 造 園 用 と し て 利 用 さ れ る 。 近 年 ヨ ー ロ ッ パ で は グ ラ ン ド カ バ ー 用 と し て 小 輪 系 の 品 種 が 道 路 の の り ︵ 法 ︶ 面 , 傾 斜 地 , 分 離 帯 な ど に 用 い ら れ て い る 。 こ れ に は た だ , は っ て 伸 び る だ け で な く , こ ん も り と 盛 り 上 が る グ ル ー プ も 評 価 さ れ て い る 。
以 上 の タ イ プ の も の の ほ か , 切 花 用 品 種 の 開 発 が め ざ ま し く , 本 来 の 系 統 か ら 多 少 違 っ た 形 態 を も つ 品 種 が 現 れ て き た 。 と く に フ ロ リ バ ン ダ ・ ロ ー ズ で は , 房 咲 性 を な く し て 単 花 咲 き と し た も の ︵ 日 本 で は ベ ビ ー ・ ロ ー ズ B a b y R o s e と 呼 ば れ , マ リ ー ・ デ ・ ボ ア M a r y D e V o r , ミ ニ ュ エ ッ ト M i n u e t な ど が 代 表 品 種 ︶ や , 房 咲 き の 特 徴 を 最 大 限 に 発 揮 さ せ た も の ︵ ス プ レ ー ・ タ イ プ S p r a y t y p e と 呼 ば れ , ミ ミ ・ ロ ー ズ M i m i R o s e が 代 表 品 種 ︶ で あ る 。 こ れ は カ ー ネ ー シ ョ ン の ス プ レ ー 咲 き と 同 じ よ う に 切 花 の 営 業 用 と し て の グ ル ー プ で あ る 。
栽 培 法
営 利 的 な 切 花 生 産 以 外 は , 露 地 で 栽 培 さ れ る 。 環 境 に 対 す る 適 応 性 は 強 く , 世 界 中 で 広 く 栽 培 さ れ て お り , 日 本 で も 北 海 道 か ら 九 州 , 沖 縄 ま で い た る と こ ろ で 栽 培 さ れ て い る 。 排 水 が よ く 保 水 力 の あ る 土 地 な ら ば , 灌 水 , 施 肥 な ど の 栽 培 管 理 を き ち ん と す れ ば , ど ん な 土 地 で も 作 る こ と が で き る 。
苗 木 は 芽 接 ぎ ま た は 切 接 ぎ し て 殖 や す が , 春 , 秋 の 2 回 入 手 で き る 。 春 の も の を 新 苗 と 呼 び , 4 月 中 旬 よ り 6 月 上 旬 が 植 付 け の 適 期 で あ る 。 秋 の 苗 木 は , 大 苗 ま た は 2 年 苗 と 呼 ば れ , 葉 は な く 太 い 枝 が 2 ~ 3 本 出 て い る 。 10 月 中 旬 か ら 翌 年 の 3 月 下 旬 が 植 付 適 期 で あ る が , 厳 寒 期 は さ け る 。 新 苗 , 大 苗 と も , 通 常 直 径 5 0 c m , 深 さ 5 0 c m 以 上 の 植 穴 を 掘 っ て 植 え 付 け る 。 植 穴 に は 堆 肥 , 有 機 質 肥 料 を 穴 の 半 分 く ら い 入 れ , 土 と よ く 混 ぜ 合 わ せ て 元 肥 と す る 。 肥 料 成 分 は 窒 素 , リ ン 酸 , カ リ の 比 が 1 ‥ 2 か ら 3 ‥ 1 く ら い に な る よ う に す る 。 植 付 け 後 は 十 分 に 灌 水 を 行 い , 乾 燥 防 止 の た め 敷 き わ ら を 行 う 。 植 付 け の 間 隔 は 木 バ ラ ︵ ミ ニ ア チ ュ ア ・ ロ ー ズ を 除 く ︶ は 1 m く ら い , つ る バ ラ は 2 m く ら い に す る 。
追 肥 は 速 効 性 の 化 学 肥 料 を 用 い , 春 の 芽 出 し 後 か ら 月 に 1 ~ 2 回 の 割 合 で 行 う が , つ ぼ み が 着 色 し た ら 一 時 施 肥 を 控 え る 。 冬 季 12 ~ 2 月 に か け , 木 の 周 囲 に 深 さ 3 0 c m く ら い の 穴 を 掘 り , 植 付 時 と 同 様 の 堆 肥 お よ び 有 機 質 肥 料 を 十 分 に 施 す 。 こ れ は 翌 年 の 元 肥 と な る 。
咲 き 終 わ っ た 花 は , 種 子 の 着 生 を 防 ぎ 次 の 花 を よ く 咲 か せ る た め に , 本 葉 を 2 ~ 3 枚 着 け て 切 り 取 る 。 梅 雨 あ け 後 の 高 温 で 木 が 衰 弱 す る た め , 7 月 中 旬 以 後 は 開 花 さ せ ず 摘 蕾 ︵ て き ら い ︶ し , 木 の 衰 弱 を 防 ぐ 。 根 も と か ら 出 る 太 い 茎 は シ ュ ー ト ︵ 苗 条 ︶ と 呼 ば れ , 次 年 度 以 後 の 主 幹 と な る の で , こ の 先 に つ ぼ み が 見 え た と き に そ の 枝 の 2 / 3 か ら 1 / 2 を 残 し て 切 り 取 る 。 8 月 下 旬 か ら 9 月 上 旬 に か け て , 秋 の 整 枝 を 行 う 。 秋 の 整 枝 は 細 枝 , 枯 枝 な ど を 取 り 除 き , そ の 年 に 伸 び た 枝 の 1 / 3 ~ 1 / 4 ほ ど を 切 り 込 む 。 10 月 下 旬 前 後 が 満 開 と な る よ う , 逆 算 し て 整 枝 の 時 期 を 決 め る 。 こ の 時 期 は 品 種 に よ り 多 少 異 な る が , 整 枝 後 約 50 ~ 60 日 く ら い か か る の で , 遅 咲 き の も の は 早 め に 整 枝 を 行 い 開 花 時 期 が そ ろ う よ う に す る 。
剪 定 ︵ せ ん て い ︶ は 通 常 2 ~ 3 月 に 行 う 。 そ の 方 法 は 第 1 に 枯 枝 や 細 い 枝 を 取 り 除 き , 次 に 木 の 内 側 に 伸 び て 込 み 合 っ た 枝 は , 基 部 か ら 切 っ て 全 体 の 枝 数 を 制 限 す る 。 残 っ た 枝 は 前 年 に 伸 び た 長 さ の 1 / 2 ~ 1 / 3 を 残 し , 外 側 に 向 い た 芽 の 上 5 m m ~ 1 c m く ら い で 切 り 去 る 。 以 上 は ブ ッ シ ュ ・ タ イ プ の 剪 定 法 で あ る 。 つ る バ ラ は 前 年 に 長 く 伸 び た 枝 を 残 し , 4 年 以 上 た っ た 古 い 枝 は 基 部 か ら 切 る 。 ま た 弱 い 枝 や 枯 枝 は 取 り 除 き , 残 さ れ た 枝 は 先 端 を 少 し 切 り 込 み , 枝 を で き る だ け 水 平 に な る よ う に 支 持 物 に 誘 引 す る 。 シ ュ ラ ブ ・ タ イ プ は , 枯 枝 お よ び 3 ~ 4 年 以 上 た っ た 古 い 枝 を 基 部 か ら 切 り 取 る 以 外 は , 剪 定 は 原 則 と し て 行 わ な い 。
敷 き わ ら ︵ マ ル チ ン グ ︶ は 夏 季 お よ び 冬 季 に 乾 燥 防 止 , 根 の 凍 結 防 止 の た め に 行 う 。 稲 わ ら , も み が ら , 堆 肥 な ど を 5 c m く ら い の 厚 さ で 株 の 周 囲 に 敷 く 。 台 木 に 接 木 ま た は 芽 接 ぎ に よ っ て 繁 殖 さ れ た 苗 木 は , 根 も と よ り 台 木 の 芽 が 出 る こ と が あ る た め , 見 つ け し だ い か き と る 。 鉢 栽 培 は 素 焼 鉢 が よ い が , プ ラ ス チ ッ ク 鉢 , お け , 樽 , プ ラ ン タ ー な ど で も 栽 培 で き る 。 鉢 の 大 き さ は 新 苗 で 5 号 鉢 ︵ 直 径 1 5 c m ︶ , 大 苗 で 6 ~ 7 号 ︵ 直 径 18 ~ 2 1 c m ︶ を 標 準 と す る が , 根 の 大 き さ に よ り 多 少 増 減 す る 。 保 水 力 が あ り , し か も 排 水 の よ い 肥 料 分 を 含 ん だ 土 を 用 い る 。 植 付 け は 鉢 底 に 赤 玉 土 を 入 れ , そ の 上 に 苗 を お き , 培 養 土 を 入 れ る 。 灌 水 は 土 が 乾 い た ら 行 う 。 夏 季 の 乾 燥 時 に は 朝 夕 2 回 行 う 。 鉢 植 え の 場 合 は 用 土 が 少 な い た め , 追 肥 に よ っ て 肥 料 分 を 補 う 必 要 が あ る の で , 週 1 回 灌 水 が わ り に 化 学 肥 料 を 薄 く 水 に 溶 か し て 与 え る 。 植 替 え は 毎 年 ま た は 隔 年 ︵ 木 の 生 育 状 態 に よ る ︶ , 冬 季 の 休 眠 期 に 行 う 。 冬 季 の 鉢 管 理 は , 地 面 に 鉢 全 体 を 埋 め 込 ん で お く と よ い 。 剪 定 は 露 地 植 え の も の よ り 多 少 刈 り 込 む 。
実 生 に よ る 繁 殖 は 新 品 種 の 作 出 ・ 台 木 の 育 成 以 外 は 行 わ な い 。 接 木 に よ る 繁 殖 が 普 通 で あ る 。 早 春 ノ イ バ ラ を 台 木 と し て 切 接 ぎ を 行 う が , 最 近 は 芽 接 ぎ に よ る 繁 殖 法 も 増 え て き て い る 。 台 木 ︵ ノ イ バ ラ ︶ の 生 育 中 な ら い つ で も 芽 接 ぎ で き る が , 普 通 6 ~ 10 月 で あ る 。 芽 接 ぎ は 接 い だ あ と の 管 理 が 簡 単 で , 芽 接 ぎ 後 は 春 ま で そ の ま ま で よ い 。
栽 培 上 の 最 大 の 悩 み は 病 害 虫 の 防 除 で あ る が , 最 近 は 病 害 に 対 し て は 抵 抗 性 の あ る 品 種 が 作 り 出 さ れ て き て い る 。 ま た , 日 当 り , 通 風 な ど の 環 境 を よ く し , 過 湿 に な ら な い よ う 注 意 す る こ と , 発 病 前 に 定 期 的 に 薬 剤 散 布 を 行 い , 予 防 に つ と め る の が よ い 。
執 筆 者 ‥ 平 林 浩
香 料 と し て の バ ラ
バ ラ は ヨ ー ロ ッ パ で 香 料 と し て も 古 く か ら 貴 ば れ , テ オ フ ラ ス ト ス の ︽ 植 物 誌 ︾ や 大 プ リ ニ ウ ス の ︽ 博 物 誌 ︾ に は , バ ラ 水 r o s e w a t e r や バ ラ 油 r o s e o i l の 記 述 が あ る 。 バ ラ 水 と は 半 開 の バ ラ の 花 を 蒸 留 し , こ の 蒸 気 を 冷 や し て 凝 縮 し た も の で あ る 。 現 在 で も 料 理 の 香 料 と し て 使 わ れ る 。 ま た , バ ラ 油 は こ の バ ラ 水 を 再 蒸 留 し , 上 層 の 精 油 を す く い と っ た も の で あ る 。 生 の 花 4 t か ら 普 通 1 k g の バ ラ 油 が と れ る と い う 。 現 在 で は 冷 浸 法 , 有 機 溶 媒 に よ る 抽 出 法 な ど , 種 に よ っ て バ ラ 油 の 抽 出 法 を 変 え て い る 。 種 と し て は ダ マ ス ク バ ラ を は じ め , ロ ー ザ ・ ガ リ カ , ロ ー ザ ・ ア ル バ , ロ ー ザ ・ セ ン テ ィ フ ォ リ ア が よ く 用 い ら れ た 。 と く に ダ マ ス ク バ ラ は 芳 香 が よ く , 現 在 で も 用 い ら れ て い る 。 主 成 分 と し て は ゲ ラ ニ オ ー ル g e r a n i o l , シ ト ロ ネ ロ ー ル c i t r o n e l l o l , フ ェ ニ ル エ チ ル ア ル コ ー ル , ネ ロ ー ル n e r o l , リ ナ ロ ー ル l i n a l o o l な ど を 含 む 。 種 や 品 種 に よ っ て 芳 香 は さ ま ざ ま に 異 な り , ロ ー ザ ・ モ ス カ ー タ は 麝 香 ︵ じ や こ う ︶ に 似 た 香 り , テ ィ ー ・ ロ ー ズ は 紅 茶 の 香 り , ま た 果 実 や 薬 味 風 の 香 り を も つ も の , 葉 に ニ ッ ケ イ の よ う な に お い の あ る バ ラ な ど が あ り , 微 量 精 油 成 分 も 少 し ず つ 違 う 。 バ ラ の 花 の ジ ャ ム や 花 弁 の 砂 糖 漬 な ど の 利 用 法 も あ る 。
歴 史 の 中 の バ ラ
聖 書 で は ア ダ ム と イ ブ が エ デ ン の 園 を 追 放 さ れ る と き , ︿ い ば ら の 道 を わ け て い く ﹀ と 書 か れ て い る 。 こ の エ デ ン の 園 は バ ビ ロ ニ ア 付 近 を さ し , ま た こ の あ た り は バ ラ の 原 産 地 に 近 い 。 し か し 聖 書 に 出 て く る ︿ バ ラ ﹀ と は , 確 実 に バ ラ と 言 明 で き な く て , む し ろ き れ い な 花 を さ す ぐ ら い の も の と 考 え ら れ て い る 。
前 16 世 紀 ご ろ の も の と さ れ る ク レ タ 島 の ク ノ ッ ソ ス 宮 殿 の 壁 画 に バ ラ の 絵 が 残 っ て い る 。 こ の バ ラ は ダ マ ス ク バ ラ や ロ ー ザ ・ ガ リ カ で あ ろ う と い わ れ て い る 。 ま た エ ー ゲ 海 地 方 は バ ラ が 生 育 し や す く , 前 3 0 0 0 年 ご ろ ロ ー ザ ・ ガ リ カ , ロ ー ザ ・ セ ン テ ィ フ ォ リ ア , ダ マ ス ク バ ラ が あ っ た と 考 え ら れ て い る 。 前 6 世 紀 に な る と , 女 流 詩 人 サ ッ フ ォ ー が 詩 に バ ラ を う た っ て い る 。 そ の 後 , ア ナ ク レ オ ン の 詩 , ヘ ロ ド ト ス , プ ラ ト ン , ア リ ス ト テ レ ス , テ オ フ ラ ス ト ス , 大 プ リ ニ ウ ス な ど の 著 作 に バ ラ が 出 て く る 。 テ オ フ ラ ス ト ス の ︽ 植 物 誌 ︾ の バ ラ は ピ ン ク か ら 白 ま で あ り , 八 重 の バ ラ も 描 か れ て い る 。 ア レ ク サ ン ド ロ ス 大 王 は 遠 征 の 際 , ア リ ス ト テ レ ス や テ オ フ ラ ス ト ス か ら 教 わ っ た 植 物 を 持 ち 帰 っ て い る 。 こ の と き の 記 録 か ら も , 当 時 , ロ ー ザ ・ ガ リ カ や ロ ー ザ ・ セ ン テ ィ フ ォ リ ア が あ っ た こ と が は っ き り し て い る 。 ギ リ シ ア や ロ ー マ で は バ ラ は す で に 栽 培 さ れ , 宴 会 の た び に 花 を さ し た り , 花 び ら を 部 屋 に ま い た と い う 。 お そ ら く 香 り を 楽 し ん だ の で あ ろ う 。 ま た , エ ジ プ ト か ら の 風 習 と し て , バ ラ を 蒸 留 し て 香 水 と し て ふ ろ に 入 れ た り , 化 粧 に 使 っ た り , 贈 物 と し た 。 当 時 は 花 の 価 値 も さ る こ と な が ら , 香 料 と し て の バ ラ の 価 値 が 高 く , バ ラ 水 や バ ラ 油 が も っ ぱ ら 王 侯 貴 族 の 間 で 珍 重 さ れ た 。 ま た 蒸 留 し て バ ラ 精 油 を か た め て 練 物 の よ う に し た も の を , シ ル ク ロ ー ド を 経 由 し て 中 国 の 絹 と 交 換 し た 。
7 世 紀 に な り , ム ハ ン マ ド が イ ス ラ ム 教 の 布 教 を 始 め る よ う に な っ て 以 後 , イ ス ラ ム 教 は ス ペ イ ン や フ ラ ン ス ま で 勢 力 を の ば し た 。 こ の 布 教 の 際 , バ ラ も ま た と も に 広 ま っ た と 記 録 に 残 っ て い る 。
11 世 紀 末 か ら の 十 字 軍 の 遠 征 の 際 に は , バ ラ の 紋 章 を 使 う こ と が は や っ た 。 ル ネ サ ン ス に な る と , イ タ リ ア の 画 家 ボ ッ テ ィ チ ェ リ が 盛 ん に バ ラ を 描 い た 。 こ れ は フ ィ レ ン ツ ェ の メ デ ィ チ 家 に 植 え ら れ て い た バ ラ を 写 生 し た も の と い わ れ て い る 。 ナ ポ レ オ ン の 妃 ジ ョ ゼ フ ィ ー ヌ は マ ル テ ィ ニ ク 島 に 生 ま れ た 。 フ ラ ン ス へ 渡 っ て か ら は , 寒 く て 花 の 少 な い こ と か ら , 世 界 中 か ら 植 物 を 集 め た 。 と く に バ ラ が 好 き で , マ ル メ ゾ ン の 邸 宅 の 庭 園 に は 約 2 5 0 品 種 の バ ラ を 集 め た 。 ジ ョ ゼ フ ィ ー ヌ は 宮 廷 画 家 で 植 物 画 を 描 い て い た ル ド ゥ ー テ P i e r r e - J o s e p h R e d o u t é ︵ 1 7 5 9 - 1 8 4 0 ︶ に こ の マ ル メ ゾ ン 邸 の バ ラ を 描 く よ う に 依 頼 し た 。 ル ド ゥ ー テ の ︽ バ ラ 図 譜 L e s R o s e s ︾ は 1 8 1 7 年 か ら 24 年 に か け て 刊 行 さ れ , 約 1 7 0 図 が 収 録 さ れ た 。 ジ ョ ゼ フ ィ ー ヌ は 1 8 1 4 年 に 死 ぬ が , そ の 後 , パ リ の バ ガ テ ー ル の バ ラ 園 で 品 種 改 良 を 行 っ た の が N . デ ス ポ ル ト で , 29 年 の カ タ ロ グ に は 2 5 6 2 品 種 も 載 せ て い る 。 当 時 い か に た く さ ん の 品 種 を 作 り 出 し た か が わ か る だ ろ う 。
日 本 の 文 献 で は , ︽ 万 葉 集 ︾ の 防 人 歌 に ︿ 道 の 辺 の 荆 ︵ う ま ら ︶ の 末 ︵ う れ ︶ に 這 ︵ は ︶ ほ 豆 の か ら ま る 君 を 別 れ か 行 か む ﹀ に あ る ︿ 荆 ﹀ が , バ ラ の 最 初 ら し い 。 ︽ 古 今 和 歌 集 ︾ に は 紀 貫 之 が ︿ さ う び ﹀ の 題 の 下 に ︿ 我 は け さ う ひ に ぞ み つ る 花 の 色 を あ だ な る 物 と い ふ べ か り け り ﹀ と う た っ て い る 。 こ の ︿ さ う び ﹀ は バ ラ を さ し , 中 国 か ら 渡 来 し た コ ウ シ ン バ ラ で あ る と 考 え ら れ て い る 。 ︽ 枕 草 子 ︾ や ︽ 源 氏 物 語 ︾ の 中 に も ︿ さ う び ﹀ の 記 述 が あ り , 身 近 に 咲 い て い る バ ラ を め で た こ と が わ か る 。 ︽ 明 月 記 ︾ に も ︿ 長 春 花 ﹀ の 名 で コ ウ シ ン バ ラ の こ と が 出 て く る 。 ま た ︽ 栄 華 物 語 ︾ や ︽ 源 平 盛 衰 記 ︾ に も バ ラ の 記 述 が あ る 。
江 戸 時 代 に な る と , 水 野 元 勝 の ︽ 花 壇 綱 目 ︾ に 長 春 花 の こ と が , 伊 藤 伊 兵 衛 の ︽ 花 壇 地 錦 抄 ︾ に は ︿ 荆 棘 ︵ い ば ら ︶ の る い ﹀ と し て ︿ は ま な す , 長 春 , ろ う ざ , 白 長 春 , 猩 々 ︵ し よ う じ よ う ︶ 長 春 , 牡 丹 荆 ︵ ぼ た ん ば ら ︶ , ご や 荆 , 箱 根 荆 , は と 荆 , ち ょ う せ ん 荆 , 山 枡 ︵ さ ん し よ う ︶ 荆 , 唐 荆 ︵ と う ば ら ︶ な ど ﹀ の 花 形 が 述 べ て あ り , 元 禄 時 代 ︵ 1 6 8 8 - 1 7 0 4 ︶ に は バ ラ が 一 般 的 な 花 木 と し て 愛 培 さ れ て い た こ と が わ か る 。 さ ら に ︽ 大 和 本 草 ︾ に は ︿ 薔 薇 , 金 沙 羅 , 月 季 花 , 金 罌 子 ︵ な に わ い ば ら ︶ , 牡 丹 イ ハ ラ , 野 薔 薇 ︵ の い ば ら ︶ ﹀ が 解 説 さ れ て い る 。 こ の う ち 月 季 花 は コ ウ シ ン バ ラ を , 牡 丹 イ ハ ラ は ロ ー ザ ・ セ ン テ ィ フ ォ リ ア を さ し , 中 国 や ヨ ー ロ ッ パ か ら 渡 来 の 外 来 種 で あ る 。
執 筆 者 ‥ 鈴 木 省 三
文 化 史
西 欧 世 界 で は ほ と ん ど 文 明 の 歴 史 が 始 ま っ て 以 来 , バ ラ は 花 の 代 表 で あ っ た 。 そ の た め 西 欧 の 文 学 で は , ち ょ う ど 日 本 の 文 学 に お い て サ ク ラ が そ う で あ る よ う に , 多 層 的 , 多 義 的 な 象 徴 と し て 広 く 用 い ら れ て き た 。 例 え ば そ れ は 美 の 化 身 で あ る か ら , そ こ か ら 正 ・ 負 の 意 味 合 い が , こ も ご も 生 じ て く る 。 赤 い バ ラ は 勝 ち 誇 る 美 と 愛 欲 の 女 神 ビ ー ナ ス ︵ ギ リ シ ア 神 話 の ア フ ロ デ ィ テ , ロ ー マ 神 話 の ウ ェ ヌ ス ︶ と 容 易 に 結 び つ く し , 白 い バ ラ は 聖 母 マ リ ア の 純 潔 と 霊 的 な 愛 を 表 し え た 。 し か し , 美 し い 花 は う つ ろ い や す く , 人 の 世 の 愛 も ま た う つ ろ い や す い 。 と な れ ば バ ラ は , ち ょ う ど サ ク ラ が そ う で あ っ た よ う に , 現 世 の は か な さ の 象 徴 と も な る 。 た だ し 西 欧 の 場 合 , い さ ぎ よ い 諦 念 ︵ て い ね ん ︶ と い う 倫 理 は 導 か れ ず , か え っ て 刹 那 主 義 的 な 快 楽 主 義 を さ そ う 。 ︿ カ ル ペ ・ デ ィ エ ム c a r p e d i e m ﹀ ︵ 時 を と ら え よ 。 楽 し め る う ち に 楽 し め ︶ の モ ッ ト ー は , 詩 的 表 現 と し て は ︿ カ ル ペ ・ ロ サ ス c a r p e r o s a s ﹀ ︵ バ ラ を 摘 め ︶ と な る 。 性 的 快 楽 の 奨 励 だ が , こ れ は 神 秘 主 義 思 想 の 一 部 で , バ ラ が 女 陰 象 徴 で あ る こ と と も つ な が っ て い る だ ろ う 。 そ し て 女 陰 に 集 中 す る 神 秘 思 想 は , 曼 荼 羅 ︵ ま ん だ ら ︶ 志 向 と も 重 な り 合 う 。 薔 薇 十 字 団 の 神 秘 主 義 哲 学 に お い て も , ま た た く さ ん の 詩 人 や 作 家 た ち ︵ 例 え ば リ ル ケ ︶ の 想 念 に お い て も , バ ラ は 曼 荼 羅 で あ る 。 こ れ は 東 洋 思 想 に お け る ハ ス の 花 と 呼 応 す る 。 だ か ら , ち ょ う ど ハ ス が 東 洋 思 想 の 楽 園 の 最 終 的 ビ ジ ョ ン と 結 び つ く よ う に , ダ ン テ ︽ 神 曲 ︾ 最 終 場 面 は 真 っ 白 い 巨 大 な 一 輪 の 白 バ ラ の ビ ジ ョ ン と 変 わ る 。 キ リ ス ト 教 会 堂 建 築 の ば ら 窓 r o s e w i n d o w も , 同 じ 考 え 方 が 根 底 に あ る 。 ま た 西 洋 の 室 内 の 天 井 中 心 に 付 け ら れ る ば ら 飾 り r o s e は , バ ラ が 秘 密 を 暗 示 す る 伝 統 か ら 生 じ た 。 ギ リ シ ア 神 話 で こ の 花 が 沈 黙 の 神 ハ ル ポ ク ラ テ ス H a r p o k r a t ē s に 与 え ら れ た 故 事 に 基 づ く と い わ れ る が , 昔 か ら 会 議 室 の 天 井 中 央 に 1 輪 の バ ラ の 花 を つ け , 会 議 の 内 容 を 外 部 に 漏 ら さ な い 誓 い の 印 と し た 。 ︿ ス ブ ・ ロ サ s u b r o s a ﹀ ︵ バ ラ の 下 で , 秘 密 裏 に ︶ な る 成 語 の 語 源 で あ る 。
執 筆 者 ‥ 川 崎 寿 彦
神 話 , 伝 承 , 民 俗
バ ラ は 古 代 か ら 美 と 愛 , 喜 び と 青 春 の 象 徴 だ っ た 。 ギ リ シ ア 神 話 で は 美 と 愛 の 女 神 ア フ ロ デ ィ テ や 恋 の 神 エ ロ ス に 捧 げ ら れ て い る 。 と く に ア フ ロ デ ィ テ と そ の 恋 人 ア ド ニ ス に 関 す る 神 話 や 伝 説 に は , バ ラ に ま つ わ る も の が 多 い 。 神 々 や 女 神 は バ ラ を 貴 ん だ の で , さ ま ざ ま の 機 会 に バ ラ の 花 で 冠 を 編 ん で は 勝 利 や 結 婚 の 祝 い に 贈 っ た 。 ギ リ シ ア や ロ ー マ で は 実 際 に 結 婚 式 の あ る 家 や 凱 旋 将 軍 の 車 , 出 帆 し た り 帰 帆 す る 船 , ま た い け に え の 動 物 を バ ラ で 飾 っ た 。 世 界 史 上 バ ラ が 惜 し み な く 絢 爛 豪 華 な 宴 会 に つ か わ れ た 例 と し て , ク レ オ パ ト ラ は 床 に 3 0 c m も バ ラ の 花 を 敷 き つ め た と い う し , 皇 帝 ネ ロ は 食 事 の 間 , 周 り の 壁 を 機 械 仕 掛 け で た え ず 客 の 周 り を 回 転 す る よ う に つ く ら せ , そ の 壁 で 四 季 を 表 し , あ ら れ や 雨 の 代 り に バ ラ の 花 を 思 う さ ま 舞 わ せ た と い う 。
さ て キ リ ス ト 教 の 普 及 と と も に , 古 代 に は 愛 と 美 の 女 神 に 捧 げ ら れ た 多 く の も の が マ リ ア 崇 拝 に 移 さ れ , バ ラ も 処 女 マ リ ア を 象 徴 す る も の と な っ た 。 ユ リ が マ リ ア の 清 ら か さ を 象 徴 す る な ら , バ ラ は そ の 優 美 さ と 聖 な る 愛 を 表 し て い る 。 こ の た め 多 く の 画 家 は マ リ ア を バ ラ と と も に 描 い て い る の で あ る 。 一 方 , イ ギ リ ス 史 上 1 4 5 5 年 か ら 30 年 間 に お よ ぶ ば ら 戦 争 は , バ ラ が 血 な ま ぐ さ い 戦 争 に 結 び つ い た い た ま し い 事 件 で あ っ た 。 ラ ン カ ス タ ー 家 は 紅 バ ラ , ヨ ー ク 家 は 白 バ ラ を 紋 章 と し , 両 家 が 王 位 を め ぐ っ て 激 し く 争 い 合 っ た 。 結 局 こ の 戦 い は ラ ン カ ス タ ー 家 の ヘ ン リ ー 7 世 の 勝 利 を も っ て 終 わ る こ と に な る 。
バ ラ と 結 び つ い た 民 間 習 俗 で と く に あ げ な け れ ば な ら な い の が バ ラ 祭 で , ド イ ツ , フ ラ ン ス そ の 他 の 国 々 で は 今 日 で も 盛 大 に 行 わ れ る 。 バ ラ 祭 で は 両 親 に 最 も 従 順 で 行 儀 の よ い 娘 が ︿ バ ラ の 女 王 ﹀ に 選 ば れ , バ ラ の 冠 で 飾 ら れ て 敬 意 を 払 わ れ , 祭 り で 中 心 的 な 役 割 を 果 た す 。 バ ラ は こ の ほ か さ ま ざ ま な 習 俗 と 結 び つ い て い る 。 西 ボ ヘ ミ ア で は 生 ま れ た 赤 ん 坊 の 最 初 の 産 湯 は バ ラ の 茂 み に 注 ぐ 。 す る と 赤 い 健 康 な ほ お を さ ず か る と い う 。 ド イ ツ で は 洗 礼 の と き に 名 付 け 親 に 渡 さ れ た バ ラ の つ ぼ み が 長 い こ と 新 鮮 で あ れ ば , そ れ だ け 子 は 長 生 き す る と い わ れ た 。 ま た 相 愛 の 男 女 が 小 川 に バ ラ の 花 び ら を 投 げ , そ れ が 離 れ ず 水 面 を 流 れ て い く と 二 人 は 結 婚 で き る と い う 。
一 方 , 秋 に 白 バ ラ が 咲 く の は 死 を 意 味 す る と い う 俗 信 も あ る 。 病 人 が 白 バ ラ の 夢 を 見 る と ま も な く 死 ぬ と 伝 え ら れ , こ の た め 病 室 に 白 バ ラ を も っ て い く こ と は 好 ま れ な い 。 ま た 墓 や 死 者 に バ ラ の 花 を 供 え る 風 習 も ギ リ シ ア ・ ロ ー マ 時 代 か ら あ り , 今 で も ス イ ス の 一 部 で は , 共 同 墓 地 の こ と を ︿ バ ラ の 庭 園 R o s e n g a r t e n ﹀ と 呼 ん で い る 。
執 筆 者 ‥ 谷 口 幸 男
バ ラ 科 R o s a c e a e
双 子 葉 植 物 。 約 1 0 0 属 3 0 0 0 種 に お よ ぶ 大 き な 科 で , バ ラ , イ チ ゴ , リ ン ゴ , ナ シ , モ モ , サ ク ラ な ど 人 間 に 有 用 な 植 物 が 多 い 。 高 木 , 低 木 , 多 年 草 , 一 年 草 と , 生 活 型 は さ ま ざ ま で , 南 極 を 除 い た す べ て の 大 陸 に 分 布 し て い る が , 北 半 球 の 暖 帯 か ら 温 帯 に 多 い 。
通 常 , 葉 は 互 生 し , 単 葉 か 掌 状 複 葉 か 羽 状 複 葉 で , 多 く は 托 葉 が あ る 。 花 序 は さ ま ざ ま で , 花 は 多 く の も の で 両 性 , 放 射 相 称 で あ る 。 萼 片 が あ り , し ば し ば 副 萼 片 も あ る 。 花 弁 は 5 枚 ま た は 多 数 , お し べ は 4 , 5 , 10 , 20 ま た は 多 数 , め し べ は 多 数 ~ 少 数 , ま れ に 1 本 で あ る 。 果 実 は 多 様 で , 袋 果 ︵ た い か ︶ , 瘦 果 , 核 果 , ナ シ 状 果 , バ ラ 状 果 , イ チ ゴ 状 果 な ど で あ る 。
日 本 の も の は , 次 の 四 つ の 亜 科 に 分 け ら れ る 。 ︵ 1 ︶ シ モ ツ ケ 亜 科 子 房 は 上 位 で , 数 個 の め し べ は 通 常 離 生 し , 胚 珠 は 多 数 , 果 実 は 袋 果 ま た は 瘦 果 , 一 般 に 托 葉 は 退 化 す る 。 ホ ザ キ ナ ナ カ マ ド 属 , シ モ ツ ケ 属 , ヤ マ ブ キ シ ョ ウ マ 属 , コ ゴ メ ウ ツ ギ 属 な ど が 含 ま れ る 。 ︵ 2 ︶ バ ラ 亜 科 子 房 は 上 位 ま た は 周 位 で , め し べ は 通 常 数 個 か ら 多 数 , 胚 珠 は 普 通 1 個 , 果 実 は 瘦 果 , ま た は 集 合 果 ︵ バ ラ 状 果 , イ チ ゴ 状 果 , キ イ チ ゴ 状 果 ︶ を つ く る 。 シ ロ ヤ マ ブ キ 属 , ヤ マ ブ キ 属 , キ ジ ム シ ロ 属 , イ チ ゴ 属 , チ ョ ウ ノ ス ケ ソ ウ 属 , ダ イ コ ン ソ ウ 属 , ヘ ビ イ チ ゴ 属 , キ イ チ ゴ 属 , ワ レ モ コ ウ 属 , シ モ ツ ケ ソ ウ 属 , バ ラ 属 が 含 ま れ る 。 ︵ 3 ︶ サ ク ラ 亜 科 子 房 は 上 位 で , め し べ 1 個 , 胚 珠 は 2 個 で あ る が , 成 熟 す る の は 1 個 , 果 実 は 核 果 ︵ モ モ 状 果 ︶ 。 サ ク ラ 属 の み 含 ま れ る 。 ︵ 4 ︶ ナ シ 亜 科 子 房 は 下 位 で , め し べ ︵ 心 皮 2 ~ 5 個 で 合 生 ︶ は 1 個 , 果 実 は ナ シ 状 果 。 サ ン ザ シ 属 , ビ ワ 属 , ボ ケ 属 , ク サ ボ ケ 属 , ナ シ 属 , リ ン ゴ 属 , テ ン ノ ウ メ 属 , シ ャ リ ン バ イ 属 , カ ナ メ モ チ 属 , ナ ナ カ マ ド 属 , ウ シ コ ロ シ 属 , ザ イ フ リ ボ ク 属 が 含 ま れ る 。
バ ラ 科 に は 有 用 植 物 が 多 く , 果 実 が 食 用 と さ れ る 重 要 な 果 樹 に , ア ー モ ン ド , サ ク ラ ン ボ 類 , キ イ チ ゴ 類 , ウ メ , ア ン ズ , ス モ モ , ネ ク タ リ ン , モ モ , イ チ ゴ , リ ン ゴ , ナ シ , ビ ワ や , 多 く の 野 生 種 が あ る 。 観 賞 用 の 花 木 に は , い ろ い ろ な サ ク ラ や ウ メ , バ ラ の 園 芸 品 種 を は じ め と し て , ボ ケ , シ ャ リ ン バ イ , カ リ ン , ピ ラ カ ン サ , コ ト ネ ア ス タ ー , ヤ マ ブ キ , ユ キ ヤ ナ ギ , コ デ マ リ , ナ ナ カ マ ド な ど が あ る 。 山 草 と し て , キ ン ロ バ イ , ウ ラ ジ ロ キ ン バ イ , チ シ マ キ ン バ イ な ど が 栽 培 さ れ る 。 ま た , 薬 用 と し て , ク サ ボ ケ , サ ン ザ シ , ハ マ ナ ス , ワ レ モ コ ウ な ど , 多 く の も の が 利 用 さ れ て い る 。
執 筆 者 ‥ 鳴 橋 直 弘
バラ borough
イ ギ リ ス の 自 治 都 市 。 も と も と は 防 備 を 施 さ れ た 場 所 な い し は 市 場 の 開 か れ た 取 引 の 中 心 地 が バ ラ と 呼 ば れ て い た 。 カ ウ ン テ ィ の 役 人 の 支 配 下 に あ っ た が , ア ン グ ロ ・ サ ク ソ ン 時 代 か ら な ん ら か の 特 別 の 法 , 裁 判 所 , 特 権 を 有 し て い た 。 ノ ル マ ン 人 の 征 服 ︵ 1 0 6 6 ︶ 以 後 と く に 12 , 13 世 紀 に は 漸 次 こ の 独 立 面 が 強 ま り , 中 世 ヨ ー ロ ッ パ 特 有 の 自 治 都 市 の 特 徴 を も つ よ う に な る 。 し か し 大 陸 の 場 合 と 異 な り , イ ギ リ ス の 都 市 は 最 盛 期 で も 王 権 の 強 い 支 配 下 に あ り , 自 治 の 程 度 が 劣 っ て い た 点 が 特 徴 的 で あ る 。 13 世 紀 こ ろ か ら カ ウ ン テ ィ と と も に そ の 代 表 が 議 会 に 召 集 さ れ る こ と が 多 く な り , ま も な く 両 者 で 下 院 を 構 成 す る よ う に な っ た 。 そ れ ゆ え バ ラ と は こ の 下 院 議 員 選 出 権 を も っ た 都 市 を 意 味 す る こ と に な っ た 。 こ の 古 く か ら の バ ラ が 産 業 構 造 が 変 わ っ た 後 ま で も 下 院 議 員 選 出 特 権 を も っ て い た た め に 腐 敗 も 多 く ︵ 腐 敗 選 挙 区 ︶ , 1 8 3 5 年 の 都 市 自 治 体 法 で 都 市 機 構 と 議 員 選 出 権 が 改 革 , 統 一 さ れ , バ ラ と 議 員 選 出 権 の 直 結 的 結 び つ き は な く な っ た 。 バ ラ は 都 市 内 部 の 統 治 に 関 し て 法 人 化 さ れ て い る 都 市 を 指 す よ う に な っ て い く の で あ る 。 し か し 1 9 7 4 年 に は , バ ラ は 大 ロ ン ド ン 内 の バ ラ を 除 い て な く な り , 地 方 統 治 機 能 を カ ウ ン テ ィ の 下 級 区 分 で あ る 新 設 の 地 区 d i s t r i c t に 完 全 に 譲 っ た 。 も ち ろ ん , こ れ に よ り か つ て バ ラ が 有 し て い た 特 権 も 同 時 に 奪 わ れ た わ け で は な い し , ま た 特 別 の 場 合 に は 地 区 に バ ラ の 資 格 を 与 え る こ と も 認 め ら れ て い る が , 原 則 と し て バ ラ は 以 後 , 人 口 と 経 済 の 中 心 地 と い う 実 質 的 意 味 の み も ち 続 け て い る 。
→ ブ ル ク
執 筆 者 ‥ 小 山 貞 夫
バラ Lorenzo Valla 生没年:1407-57
ルネサンス・イタリアの代表的人文主義者。ローマに生まれ,若年でキケロ,クインティリアヌス論を書いて古典学の才を現す。パビア大学教授となり,《快楽論》(執筆1430-33)を著してエピクロス的幸福論を唱え,世の注目を浴びる。つづいて《真なる善》(執筆1433),《真なる善と偽りの善》(執筆1434-41)を著す。地上的快楽に対する天上的幸福の優位性を認めるが,所論の進め方はきわめて合理的である。37年以後アルフォンソ王の書記となりナポリに赴く。39年に完成した《自由意志論》は,近代的理性のあり方を表明した先駆的作品として評価される。また同じころ著した《“コンスタンティヌスの寄進状”の偽作について》は,ローマ教皇の土地領有権の正当性の根拠とされる《コンスタンティヌスの寄進状 》が,実は後世の偽作であることを文献学的に実証して,革命的物議をかもした。ほかに多くの文献学的研究があるが,なかでも《ラテン語の優雅さについて》6巻(1444)は古典的言語論として広く名声を得た。また《ナポリ史》3巻(執筆1445ころ)は,フェルディナンド王治下の十数年のみを扱ったにすぎぬが,すぐれた歴史記述の書である。時代を先駆するバラの見解には,激しい非難も浴びせられ,《弁護》(執筆1435-40)を著してこれにこたえねばならなかったが,晩年(1448)には教皇庁に招かれて,そこで死んだ。 執筆者:清水 純一
バラ James Hamilton Ballagh 生没年:1832-1920
ア メ リ カ の 改 革 派 教 会 宣 教 師 。 1 8 6 1 年 ︵ 文 久 1 ︶ 来 日 , 横 浜 の 高 島 学 校 で 英 語 を 教 え た が , 70 年 ︵ 明 治 3 ︶ こ ろ に 私 塾 を 開 設 , こ こ で 聖 書 を 学 ん だ 学 生 た ち の な か に バ ラ か ら 洗 礼 を 受 け て 信 者 と な る 者 が 出 , 彼 を 仮 牧 師 と し て 72 年 日 本 最 初 の プ ロ テ ス タ ン ト 教 会 で あ る 日 本 基 督 公 会 が 設 立 さ れ た 。 半 世 紀 以 上 に わ た り 日 本 の 各 地 で 宣 教 に あ た っ た が , 帰 国 の 途 中 で 没 し た 。 な お 72 年 に 来 日 し た 弟 の ジ ョ ン J o h n C r a i g B a l l a g h ︵ 1 8 4 2 - 1 9 2 0 ︶ も 長 く 英 語 教 師 と し て 活 躍 し た 。
執 筆 者 ‥ 波 多 野 和 夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」 改訂新版 世界大百科事典について 情報
バラ
バ ラ と い え ば 園 芸 植 物 の 女 王 だ け に 、 世 界 中 で 数 多 く の 品 種 が つ く り だ さ れ て い ま す 。 た だ 、 効 果 を 期 待 す る な ら 、 ガ リ カ 種 、 カ ニ ー ナ 種 な ど 、 か ぎ ら れ た 品 種 だ け 。
花 壇 で よ く 見 か け る 園 芸 用 品 種 の 大 半 に は 期 待 で き ま せ ん 。
ち な み に 、 日 本 で も ノ イ バ ラ ︵ 野 バ ラ ︶ の 実 が 利 尿 、 緩 下 ( か ん げ ) 、 消 炎 な ど の 目 的 で 、 漢 方 薬 と し て 使 わ れ て い ま す 。
バ ラ の も つ お も な 作 用 に は 殺 菌 、 消 炎 、 胆 汁 ( た ん じ ゅ う ) の 分 泌 促 進 ( ぶ ん ぴ つ そ く し ん ) 、 け い れ ん 止 め 、 収 斂 ( し ゅ う れ ん ) 、 鎮 静 な ど が あ り ま す 。
具 体 的 症 状 と し て は 、 の ど の 痛 み 、 鼻 づ ま り 、 胃 腸 炎 、 胃 け い れ ん 、 消 化 不 良 、 吐 ( は ) き 気 ( け ) 、 下 痢 ( げ り ) 、 虚 弱 体 質 に 効 果 を 発 揮 し ま す 。
○ 外 用 と し て の 使 い 方
精 油 の ア ロ マ 効 果 と し て は 、 ス ト レ ス 、 不 眠 症 な ど に 有 効 。
ま た 、 ハ ー ブ テ ィ ー を 用 い て 腟 ( ち つ ) 洗 浄 を 行 う と 、 お り も の や 不 正 出 血 ( ふ せ い し ゅ っ け つ ) に も 効 果 が あ り ま す 。
○ 食 品 と し て の 使 い 方
ハ ー ブ と し て の バ ラ は 、 花 弁 を ハ ー ブ テ ィ ー や ジ ャ ム の 材 料 と す る の が 一 般 的 で す 。
花 弁 を 酢 に 漬 け た ロ ー ズ ビ ネ ガ ー も 、 薬 効 と 風 味 を 料 理 に 生 か せ る 利 用 法 と し て 人 気 が あ り ま す 。
こ の ほ か 、 バ ラ の 実 も テ ィ ー の 材 料 に 使 わ れ ま す が 、 こ の 場 合 、 種 と 毛 を き れ い に 取 り 除 い て か ら 使 っ て く だ さ い 。
出典 小学館 食の医学館について 情報
バラ borough
イ ギ リ ス の 特 権 都 市 , ま た は 国 会 議 員 選 出 資 格 を も つ 都 市 。 ボ ロ と も 表 記 さ れ る 。 バ ラ の 原 意 は , 城 塞 , ま た は 城 壁 に 囲 ま れ た 集 落 を 意 味 し , 9 世 紀 後 半 バ イ キ ン グ の 侵 入 に 対 抗 し て , イ ン グ ラ ン ド 王 が 各 地 の 軍 事 的 拠 点 に 建 設 し た 城 市 に 始 る 。 10 世 紀 に は 数 十 の バ ラ が つ く ら れ , 同 時 に 市 場 ま た 貨 幣 鋳 造 地 と し て 機 能 し , 独 自 の 法 廷 を も つ 特 別 な 地 区 で あ っ た 。 1 0 6 6 年 の ノ ル マ ン ・ コ ン ク ェ ス ト 後 は , 全 ヨ ー ロ ッ パ 的 な 商 業 の 復 活 に 伴 い , 国 王 ま た は 領 主 か ら , 市 場 開 設 権 , 通 行 税 免 除 権 , 商 業 管 理 権 な ど の 商 業 的 特 権 の ほ か に , 裁 判 , 行 政 , 財 政 な ど に つ い て あ る 程 度 の 自 治 権 を 認 め ら れ た 特 権 ( 自 治 ) 都 市 と な っ た 。 14 世 紀 後 半 以 後 は , 上 記 の 特 権 の 有 無 と は 無 関 係 に , 議 会 に 代 表 を 送 る 都 市 も バ ラ と 呼 ば れ 選 挙 区 と し て の 性 格 を も つ に い た っ た 。 近 代 以 降 で は こ の 意 味 で の バ ラ が 重 要 で あ る 。 17 世 紀 末 に は 約 2 0 0 の バ ラ が 下 院 議 員 の 約 8 割 を 選 出 し て い た が , 18 世 紀 後 半 に 始 る 産 業 革 命 の 進 行 に よ り 人 口 の 大 幅 な 変 動 を 生 じ た た め , 1 8 3 2 年 の 選 挙 法 改 正 の 際 , 56 バ ラ が 議 員 選 出 権 を 失 い , 36 バ ラ が 議 員 数 1 名 に 制 限 さ れ た 。 35 年 の 地 方 自 治 体 法 に よ り , バ ラ は 新 し い 地 方 自 治 制 に よ る 地 方 政 治 の 一 単 位 と な っ た が , 85 年 の 議 席 再 配 分 法 に よ り 選 挙 区 と し て の 資 格 は 失 っ た 。
バラ Ballagh, James Hamilton
[生]1832.9.7. [没]1920.1.29. アメリカの改革派 (カルバン系) 教会宣教師。文久1 (1861) 年伝道のため来日,日本最初のプロテスタント教会である日本基督公会を横浜に創立した。主として神奈川県で伝道活動をした。
バ ラ
B a r a , T h e d a
[ 没 ] 1 9 5 5 . 4 . 7 .
ア メ リ カ の 映 画 女 優 。 1 9 1 5 年 に デ ビ ュ ー し た 。 最 初 の 妖 婦 役 ス タ ー 。 主 演 作 品 ﹃ サ ロ メ ﹄ ( 1 9 1 8 ) 。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
バラ
没年:1920.1.29(1920.1.29)
生年:1832.9.7
幕末明治期のアメリカ・オランダ改革派の宣教師。ニューヨーク州生まれ。文久1(1861)年,妻M.T.キネアと来日,慶応1(1865)年に日本語教師の矢野隆山(元隆)に授洗し,日本最初のプロテスタントの洗礼式を行う。横浜居留地167番に「神聖なる犬小屋」とも呼ばれた小会堂を献堂,聖書,英語を教えた。禁教下の明治5(1872)年3月,学生のなかから9人の受洗者を得,日本最初のプロテスタント教会,日本基督公会(横浜海岸教会)が組織され,仮牧師となる。同12年稲垣信に牧師職を譲ったのちは,静岡,長野,東北など各地で直接伝導。その熱誠なる祈祷,友愛の情は多くの人の感動を呼んだが,時に激して理性を失い,同僚を驚愕させた。弟,妹,子も伝道に従事。妻に《Glimpses of Old Japan》の著書がある。恐妻家でもあった。<参考文献>佐波亘編『植村正久とその時代』1巻
バ ラ
生 年 ‥ 1 8 4 2 . 9 . 2 5
明 治 大 正 期 の ア メ リ カ 長 老 教 会 の 教 徒 , 教 育 者 。 明 治 5 ( 1 9 7 2 ) 年 , 兄 の J . H . バ ラ の 招 き で 来 日 。 横 浜 の 高 島 学 校 で 教 え た の ち , 同 8 年 に ア メ リ カ 長 老 派 ミ ッ シ ョ ン に 宣 教 師 と し て 雇 用 さ れ , ヘ ボ ン 塾 男 子 部 の 教 育 を 担 当 。 塾 は 同 13 年 築 地 に 移 り , 築 地 大 学 校 と な り , 同 16 年 に 先 志 学 校 と 合 併 し て 東 京 一 致 英 和 学 校 と な り , さ ら に 同 20 年 に 東 京 一 致 神 学 校 と と も に 白 金 に 移 っ て 明 治 学 院 と な っ た 。 こ の 間 , バ ラ は 一 貫 し て 教 育 に 従 事 , 明 治 学 院 で は 数 学 , 天 文 学 , 簿 記 学 を 担 当 し た 。 大 学 を 出 て お ら ず , 按 手 礼 も な い バ ラ は , ミ ッ シ ョ ン 内 部 で は 重 鎮 た り え な か っ た が , 熱 心 な 教 育 者 と し て , 多 く の 人 び と の 信 頼 を 得 た 。 静 養 先 の 鎌 倉 で 没 。 最 初 の 妻 リ デ ィ ア は 有 能 な 婦 人 宣 教 師 で , そ の 死 は 桜 井 女 学 校 付 属 看 護 学 校 設 立 の 契 機 と な る 。 <参考文献> 秋 山 繁 雄 ﹃ 明 治 人 物 拾 遺 物 語 ﹄
( 小 檜 山 ル イ )
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版 朝日日本歴史人物事典について 情報
バラ
英 国 の 自 治 都 市 。 言 葉 の も と の 意 味 は 城 壁 を め ぐ ら し た 場 所 , そ れ に 市 場 の 開 か れ る 場 所 が 加 わ っ て 成 立 し た 。 12 , 13 世 紀 以 降 , 国 王 な い し 領 主 か ら 自 治 の 特 権 や 法 人 格 を 与 え ら れ て 次 第 に 周 辺 か ら 独 立 し た 性 格 を 強 め た 。 ま た 同 時 に そ の 代 表 が 議 会 に 召 集 さ れ る よ う に な り , カ ウ ン テ ィ の 代 表 と と も に 下 院 を 構 成 す る と , バ ラ は 下 院 の 議 員 選 出 権 を も つ 都 市 を 意 味 す る よ う に な っ た 。 し か し 英 国 の 産 業 構 造 と 人 口 の 分 布 が 変 わ っ た の ち も こ の 議 員 選 出 権 は 否 定 さ れ な か っ た た め , 腐 敗 選 挙 区 ︵ ロ ッ ト ン ・ バ ラ ︶ は 非 難 の 対 象 に な っ た 。 1 9 7 4 年 の 地 方 行 政 改 革 に よ っ て , 大 ロ ン ド ン を 除 い て バ ラ は す べ て 廃 止 さ れ , 新 設 の デ ィ ス ト リ ク ト に そ の 権 限 を 譲 っ た 。 → 中 世 都 市
バ ラ
に 空 間 と 形 態 の 運 動 の 問 題 を 追 求 し て い た が , 速 度 と 運 動 感 覚 を 熱 烈 に 称 賛 す る 未 来 派 の 主 旨 に 賛 同 し , 参 加 す る 。 代 表 作 ︽ 鎖 に つ な が れ た 犬 の ダ イ ナ ミ ズ ム ︾ ︵ 1 9 1 2 年 ︶ は , 犬 の 脚 と 鎖 の 動 き , ま た 飼 い 主 の 足 先 の 動 き を 同 時 的 運 動 と し て 画 面 に 収 め , 未 来 派 的 絵 画 様 式 の 代 表 的 作 例 と な っ た 。
バラ
イタリアの人文学者。ローマ教皇の所領支配の正当性の根拠とされてきた〈コンスタンティヌスの寄進状〉が偽書であると証明したことで有名。エピクロス主義再興の書《快楽論》,実証的古典語研究《ラテン語の優雅さについて》,優れた歴史叙述《ナポリ史》など多くの著作がある。 →関連項目偽イシドルス教会法令集
バ ラ
米 国 の 改 革 派 教 会 宣 教 師 。 1 8 6 1 年 来 日 , 以 来 50 年 滞 在 し て 伝 道 , 教 育 に 尽 力 , 1 8 7 2 年 日 本 最 初 の プ ロ テ ス タ ン ト 教 会 で あ る 日 本 基 督 公 会 を 設 立 し た 。 植 村 正 久 ら を 入 信 さ せ た 。
出典 株式会社平凡社 百科事典マイペディアについて 情報
バラ Ballagh, John Craig
1 8 4 2 年 9 月 25 日 生 ま れ 。 明 治 5 年 ( 1 8 7 2 ) 兄 J . H . バ ラ の 招 き で 来 日 。 横 浜 の ヘ ボ ン 塾 で 教 育 に あ た る 。 ヘ ボ ン 塾 は 築 地 大 学 校 , 東 京 一 致 英 和 学 校 を へ て 20 年 明 治 学 院 と な る が , こ の 間 , 数 学 , 天 文 学 な ど を 担 当 し た 。 明 治 学 院 理 事 , 教 授 。 大 正 9 年 11 月 15 日 鎌 倉 で 死 去 。 78 歳 。 ニ ュ ー ヨ ー ク 出 身 。 チ ェ リ ー - ア カ デ ミ ー 卒 。
バ ラ B a l l a g h , J a m e s H a m i l t o n
1 8 3 2 年 9 月 7 日 生 ま れ 。 J . C . バ ラ の 兄 。 文 久 元 年 ( 1 8 6 1 ) 夫 人 と と も に 来 日 。 慶 応 元 年 矢 野 元 隆 ( も と た か ) に 授 洗 。 明 治 5 年 日 本 初 の プ ロ テ ス タ ン ト 教 会 で あ る 日 本 基 督 ( キ リ ス ト ) 公 会 ( の ち 横 浜 海 岸 教 会 ) を 設 立 し た 。 大 正 8 年 帰 国 。 1 9 2 0 年 1 月 29 日 死 去 。 87 歳 。 ニ ュ ー ヨ ー ク 出 身 。 ニ ュ ー ブ ラ ン ズ ウ ィ ッ ク 神 学 校 卒 。
出典 講談社 デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
知恵蔵
「バラ」の解説
バラ
バ ラ 科 の バ ラ 属 の 木 本 。 大 属 で 4 亜 属 に 分 け ら れ 、 園 芸 上 重 要 な の は バ ラ 亜 属 で あ る 。 分 類 は や や 複 雑 だ が 、 約 1 2 0 種 の 変 種 や 自 然 交 雑 種 が あ る と さ れ て い る 。 北 半 球 の 亜 寒 帯 か ら 熱 帯 に か け 広 範 囲 に 分 布 し 、 日 本 に も サ ン シ ョ ウ バ ラ や ハ マ ナ ス 、 ノ イ バ ラ な ど が あ る 。 園 芸 の 分 野 で は 古 く か ら 熱 帯 ラ ン と 共 に 高 級 な 趣 味 と し て 世 界 各 国 に 愛 好 家 が 多 い 。 こ こ 数 年 バ ラ へ の 関 心 は 高 く 、 戦 後 2 度 目 の ブ ー ム の 感 が あ る 。
( 森 和 男 東 ア ジ ア 野 生 植 物 研 究 会 主 宰 / 2 0 0 7 年 )
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」 知恵蔵について 情報
バラ borough
中 世 の イ ン グ ラ ン ド で , 国 王 か ら の 特 許 状 に よ っ て 自 治 法 人 と し て 認 め ら れ た 都 市 地 域 の 制 度 上 の 呼 称 。 裁 判 権 , 徴 税 請 負 権 な ど の 特 権 が あ り , 13 世 紀 末 か ら は 議 会 へ の 代 表 選 出 権 を 認 め ら れ る バ ラ も あ ら わ れ た が , 制 度 上 の 改 編 が な か っ た た め に , 近 世 に は ﹁ 腐 敗 選 挙 区 ﹂ の 温 床 と も な っ た 。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」 山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の バラの言及
【市】より
… 前 者 は 定 期 市 が 発 展 し て 常 設 店 舗 の 市 場 に な っ た 場 合 で あ る 。 イ ス ラ ム 都 市 は 生 活 空 間 , 行 政 単 位 と し て , い く つ か の 街 区 ( ハ ー ラ , マ ハ ッ ラ ) に 分 け ら れ て い た が , そ の 地 区 を 東 西 南 北 に 走 る 小 路 の 辻 で 定 期 市 が 開 か れ , こ れ が 常 設 店 舗 に 発 展 し た も の が 多 い 。 こ れ は 流 通 範 囲 の 限 ら れ た 小 市 場 で あ っ た 。 …
【シャイフ】より
… シャイフという称号は部族社会以外の社会でも使われている。都市の街区([ハーラ])のシャイフ,農村(むら)のシャイフ(シャイフ・アルバラド),[ギルド]のシャイフなどである。これらのシャイフは部族のシャイフと基本的には同じ性格をもっていた。…
【ダマスクス】より
…政治的な混乱に加えて,1069年の火災はモスクや市街地に大きな被害をもたらしたが,この間に生活自衛のための新しい街づくりが進められていった。直線の道路に代えて曲がりくねった小路がはりめぐらされ,これを基礎にモスクや市場(スーク),あるいはパン焼がまや公衆浴場などを共有する街区([ハーラ])が成立した。各ハーラはシャイフ(長)によって統率され,街の若者を中心に編成された任俠的な武力集団(アフダース)を擁していた。…
【コンスタンティヌスの寄進状】より
… 内 容 は , コ ン ス タ ン テ ィ ヌ ス 1 世 ( 大 帝 ) が 癩 病 を 時 の ロ ー マ 司 教 シ ル ウ ェ ス テ ル 1 世 ( 在 位 3 1 4 ‐ 3 5 ) の 洗 礼 に よ っ て 治 癒 し て も ら っ た こ と に 感 謝 し て , ロ ー マ 司 教 と そ の 後 継 者 が ア ン テ ィ オ キ ア , ア レ ク サ ン ド リ ア , コ ン ス タ ン テ ィ ノ ー プ ル , エ ル サ レ ム の 四 主 教 座 の 上 に 支 配 権 を 有 す る こ と , ま た ロ ー マ 市 を 含 む 全 イ タ リ ア , 西 方 属 州 , 地 区 お よ び 都 市 を ロ ー マ 司 教 の 支 配 に ゆ だ ね る こ と を 述 べ て お り , 教 皇 権 の 世 俗 権 , 皇 帝 権 に 対 す る 優 越 を 主 張 し た も の と さ れ る 。 そ の 偽 書 た る こ と は 15 世 紀 に ニ コ ラ ウ ス ・ ク サ ヌ ス お よ び 最 終 的 に は バ ラ に よ っ て 論 証 さ れ た 。 ︻ 今 野 国 雄 ︼ 。 …
【区】より
… こ う し た 区 画 を 通 常 , 区 と い う が , そ の 形 式 は 法 人 格 を も つ 自 治 区 , 行 政 区 , た ん な る 行 政 区 画 な ど 多 様 で あ る 。 ニ ュ ー ヨ ー ク 市 に は , マ ン ハ ッ タ ン , ブ ロ ン ク ス , ブ ル ッ ク リ ン , ク イ ー ン ズ , ス タ テ ン 島 の 5 区 ( b o r o u g h ) が 設 け ら れ て い る 。 区 長 は 公 選 で あ り 道 路 , 下 水 道 な ど に 行 政 権 限 を も つ と と も に , 市 長 , 助 役 , 収 入 役 と 並 ん で 市 理 事 会 B o a r d o f E s t i m a t e の 構 成 員 と し て 市 の 立 法 と 行 政 に 関 与 し て い る 。 …
【地方自治】より
… こ の 点 は と も あ れ , 以 下 で は , ア ン グ ロ ・ サ ク ソ ン 型 に 属 す る イ ギ リ ス と ア メ リ カ 合 衆 国 , な ら び に 大 陸 型 に 属 す る フ ラ ン ス と ド イ ツ の 地 方 自 治 の 歴 史 を 概 観 す る こ と に よ っ て , 両 類 型 の 差 異 を 検 討 し て み る こ と に し よ う 。
﹇ ア ン グ ロ ・ サ ク ソ ン 型 の 地 方 自 治 ﹈
イ ギ リ ス に は , 中 世 以 来 , バ ラ b o r o u g h , カ ウ ン テ ィ c o u n t y , パ リ ッ シ ュ p a r i s h ( 教 区 ) , タ ウ ン t o w n と い っ た 多 様 な 地 域 社 会 が 存 在 し た 。 バ ラ は 王 な い し 封 建 諸 侯 が 発 し た 憲 章 に よ っ て 特 権 を 享 受 し て い た 自 治 都 市 で あ る 。 …
【ブール】より
…ラテン語のブルグスburgusに由来するフランス語で,ドイツ語の[ブルク],英語のバラboroughに対応する。西欧中世の集落史上特異な性格をもつ。…
【地方自治】より
… こ の 点 は と も あ れ , 以 下 で は , ア ン グ ロ ・ サ ク ソ ン 型 に 属 す る イ ギ リ ス と ア メ リ カ 合 衆 国 , な ら び に 大 陸 型 に 属 す る フ ラ ン ス と ド イ ツ の 地 方 自 治 の 歴 史 を 概 観 す る こ と に よ っ て , 両 類 型 の 差 異 を 検 討 し て み る こ と に し よ う 。
﹇ ア ン グ ロ ・ サ ク ソ ン 型 の 地 方 自 治 ﹈
イ ギ リ ス に は , 中 世 以 来 , バ ラ b o r o u g h , カ ウ ン テ ィ c o u n t y , パ リ ッ シ ュ p a r i s h ( 教 区 ) , タ ウ ン t o w n と い っ た 多 様 な 地 域 社 会 が 存 在 し た 。 バ ラ は 王 な い し 封 建 諸 侯 が 発 し た 憲 章 に よ っ て 特 権 を 享 受 し て い た 自 治 都 市 で あ る 。 …
【ブール】より
…ラテン語のブルグスburgusに由来するフランス語で,ドイツ語の[ブルク],英語のバラboroughに対応する。西欧中世の集落史上特異な性格をもつ。…
※「バラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」