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'''インフレーション'''︵{{lang-en|inflation}}︶とは、一定期間にわたって[[物価]]の水準が上昇し続けることである<ref>{{Harvnb|Wyplosz|Burda|1997}} (Glossary)</ref><ref>{{Harvnb|Blanchard|2000}} (Glossary)</ref><ref>{{Harvnb|Barro|1997}} (Glossary)</ref><ref>{{Harvnb|Abel|Bernanke|1995}} (Glossary)</ref>。略称として'''インフレ'''とも呼び、日本語では'''通貨膨張'''︵つうかぼうちょう︶とも呼ぶ<ref>{{Cite Kotobank |word=通貨膨脹 |encyclopedia=精選版 日本国語大辞典 |hash=#E7.B2.BE.E9.81.B8.E7.89.88.20.E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.9B.BD.E8.AA.9E.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E5.85.B8 |access-date=2024-06-16}}</ref>。[[経済学]]において物価が上昇すると、1単位の通貨で購入できる財やサービスの数が減る。その結果、インフレーションは1単位の通貨あたりの[[購買力]]の低下、つまり経済における交換手段や会計単位の実質的な価値の低下を反映する<ref>[http://www.sedlabanki.is/?PageID=195 Why price stability?] {{Webarchive|url=https://web.archive.org/web/20081014031836/http://www.sedlabanki.is/?PageID=195|date=October 14, 2008}}, Central Bank of Iceland, Accessed on September 11, 2008.</ref><ref>Paul H. Walgenbach, Norman E. Dittrich and Ernest I. Hanson, (1973), Financial Accounting, New York: Harcourt Brace Javonovich, Inc. Page 429. "The Measuring Unit principle: The unit of measure in accounting shall be the base money unit of the most relevant currency. This principle also assumes that the unit of measure is stable; that is, changes in its general purchasing power are not considered sufficiently important to require adjustments to the basic financial statements."</ref>。対義語は[[デフレーション]]であり、財やサービスの一般的な価格水準が持続的に低下することである。インフレーションの一般的な指標は'''インフレ率'''で、[[物価]]︵通常は[[消費者物価指数]]︶の長期的な変化率を年率換算したものである。
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経済学者は、非常に高いインフレ率や[[ハイパーインフレーション]]は有害であり、[[マネーサプライ]]の過剰な増加が原因であると考えている<ref>Robert Barro and Vittorio Grilli (1994), ''European Macroeconomics'', Ch. 8, p. 139, Fig. 8.1. Macmillan, {{ISBN2|0-333-57764-7}}.</ref>。一方、低・中程度のインフレ率を決定づける要因については、より多様な見解がある。低・中程度のインフレは、財・サービスに対する実質的な需要の変動や、物資が不足しているときなどの供給可能量の変化に起因すると考えられる<ref>{{Cite web|url=http://research.stlouisfed.org/fred2/series/MZMV|title=MZM velocity|accessdate=September 13, 2014}}</ref>。しかし、長期的に持続するインフレは、マネーサプライが経済成長率を上回るスピードで増加することによって起こるというのが共通の見解である<ref name="Mankiw 2002 pp=81–107">{{Harvnb|Mankiw|2002|pp=81–107}}</ref><ref>{{Harvnb|Abel|Bernanke|2005|pp=266–269}}</ref>。
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経済学者は、非常に高いインフレ率や[[ハイパーインフレーション]]は有害であり、[[マネーサプライ]]の過剰な増加が原因であると考えている<ref>Robert Barro and Vittorio Grilli (1994), ''European Macroeconomics'', Ch. 8, p. 139, Fig. 8.1. Macmillan, {{ISBN2|0-333-57764-7}}.</ref>。一方、低・中程度のインフレ率を決定づける要因については、より多様な見解がある。低・中程度のインフレは、財・サービスに対する実質的な需要の変動や、物資が不足しているときなどの供給可能量の変化に起因すると考えられる<ref>{{Cite web|url=http://research.stlouisfed.org/fred2/series/MZMV|title=MZM velocity|accessdate=September 13, 2014}}</ref>。しかし、長期的に持続するインフレは、マネーサプライが経済成長率を上回るスピードで増加することによって起こるというのが共通の見解である<ref name="Mankiw 2002 pp=81–107">{{Harvnb|Mankiw|2002|pp=81–107}}</ref><ref>{{Harvnb|Abel|Bernanke|2005|pp=266–269}}</ref>。
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インフレは、経済に様々な良い影響と悪い影響を与える。インフレの負の影響としては、お金を保有することによる[[機会費用]]の増加、将来のインフレに対する不確実性による投資や貯蓄の抑制、さらにインフレが急速に進んだ場合には、消費者が将来の価格上昇を懸念して買いだめを始め、商品が不足することなどが挙げられる。ポジティブな効果としては、[[名目 |
インフレは、経済に様々な良い影響と悪い影響を与える。インフレの負の影響としては、お金を保有することによる[[機会費用]]の増加、将来のインフレに対する不確実性による投資や貯蓄の抑制、さらにインフレが急速に進んだ場合には、消費者が将来の価格上昇を懸念して買いだめを始め、商品が不足することなどが挙げられる。ポジティブな効果としては、[[名目硬直性]]による[[失業]]率の低下、中央銀行の[[金融政策]]の自由度の拡大、お金をため込むのではなく融資や投資を促すこと、デフレに伴う非効率性の回避などが挙げられる。
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今日、大半のエコノミストは、低位で安定したインフレ率を支持している<ref name="econjournalwatch.org">Hummel, Jeffrey Rogers. "Death and Taxes, Including Inflation: the Public versus Economists" (January 2007). p. 56</ref>。インフレ率が低い(ゼロやマイナスではなく)と、景気後退の際に労働市場の調整が迅速に行われるため、[[景気後退]]の深刻さが軽減され、[[流動性の罠]]によって金融政策が経済を安定させることができなくなるリスクが軽減されるのである。インフレ率を低く安定的に維持する任務は、通常、金融当局に与えられている。一般的に、これらの金融当局は[[中央銀行]]であり、金利の設定、[[公開市場操作]]、銀行の預金準備率の設定を通じて金融政策をコントロールする。 |
今日、大半のエコノミストは、低位で安定したインフレ率を支持している<ref name="econjournalwatch.org">Hummel, Jeffrey Rogers. "Death and Taxes, Including Inflation: the Public versus Economists" (January 2007). p. 56</ref>。インフレ率が低い(ゼロやマイナスではなく)と、景気後退の際に労働市場の調整が迅速に行われるため、[[景気後退]]の深刻さが軽減され、[[流動性の罠]]によって金融政策が経済を安定させることができなくなるリスクが軽減されるのである。インフレ率を低く安定的に維持する任務は、通常、金融当局に与えられている。一般的に、これらの金融当局は[[中央銀行]]であり、金利の設定、[[公開市場操作]]、銀行の預金準備率の設定を通じて金融政策をコントロールする。 |
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[[File:Zimbabwe 100000000000000.png|thumb|220px|right|100兆[[ジンバブエ]]・ドル紙幣。[[ジンバブエの紙幣]]]] |
[[File:Zimbabwe 100000000000000.png|thumb|220px|right|100兆[[ジンバブエ]]・ドル紙幣。[[ジンバブエの紙幣]]]] |
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戦争や産業構造破壊により、供給が需要を大幅に下回ることによって発生するインフレ。第二次大戦終戦 |
戦争や産業構造破壊により、供給が需要を大幅に下回ることによって発生するインフレーション。第二次大戦終戦後の日本では、1945年の水準からみて1949年までに約70倍︵約6900 %︶という[[ハイパーインフレーション]]<ref group="注釈">ただし伊藤は[[:en:Phillip D. Cagan|Cagan]](1956)によるハイパーインフレーションの定義に依拠せずに﹁ハイパー・インフレ﹂と記述していることに注意。</ref> となった<ref>[http://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/02-J-35.pdf 戦後ハイパー・インフレと中央銀行] 伊藤正直、Discussion Paper No. 2002-J-35、p.1︵1.はじめに︶、日本銀行金融研究所、2002年11月</ref>。
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また、[[ジンバブエ]]では、政策により白人農家が国外に追い出され農業構造が破壊されたところに旱魃が追い討ちをかけたことにより極度の物不足が発生、最終的に2億3000万%という超ハイパーインフレーションとなった<ref>三橋貴明 ﹃高校生でもわかる日本経済のすごさ!﹄ 彩図社、2009年、65頁。</ref>。
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=== 需要 === |
=== 需要 === |
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需要側に原因があるインフレーションで、'''需要超過インフレーション'''︵需要牽引型インフレーション、ディマンドプル・インフレーション、demand-pull inflation︶とも呼ばれる。需要の増大︵需要曲線の上方シフト︶により、価格が高くても購買意欲が衰えないので物価は上昇する。この場合、供給曲線が垂直である︵すなわち |
需要側に原因があるインフレーションで、'''需要超過インフレーション'''︵需要牽引型インフレーション、ディマンドプル・インフレーション、demand-pull inflation︶とも呼ばれる。需要の増大︵需要曲線の上方シフト︶により、価格が高くても購買意欲が衰えないので物価は上昇する。この場合、供給曲線が垂直である︵すなわち価格の変動によって供給量が変化しない︶場合を除いて景気はよくなる。
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1973年から1975年にかけての日本のインフレ要因は、[[オイルショック]]に注目が集まるが、[[変動相場制]]移行直前の短資流入による過剰流動性、﹁列島改造ブーム﹂による過剰な建設需要も大きな要因である{{要出典|date=2020年8月12日}}。
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1973年から1975年にかけての日本のインフレ要因は、[[オイルショック]]に注目が集まるが、[[変動相場制]]移行直前の短資流入による過剰流動性、﹁列島改造ブーム﹂による過剰な建設需要も大きな要因である{{要出典|date=2020年8月12日}}。
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供給曲線の上方シフトに原因があるインフレで、'''原価上昇インフレーション'''(コストプッシュ・インフレーション、cost-push inflation)とも呼ばれる。多くの場合、景気が悪化し[[スタグフレーション]]か、それに近い状態になる。通常[[為替レート]]が下落すると、輸入物価が上昇してインフレを引き起こすと同時に、企業が抱える外貨建ての債務の返済負担が膨らむ<ref>三和総合研究所編 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、258頁。</ref>。 |
供給曲線の上方シフトに原因があるインフレで、'''原価上昇インフレーション'''(コストプッシュ・インフレーション、cost-push inflation)とも呼ばれる。多くの場合、景気が悪化し[[スタグフレーション]]か、それに近い状態になる。通常[[為替レート]]が下落すると、輸入物価が上昇してインフレを引き起こすと同時に、企業が抱える外貨建ての債務の返済負担が膨らむ<ref>三和総合研究所編 『30語でわかる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2000年、258頁。</ref>。 |
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原価上昇は総供給が上方にシフトするので、'''実質GDP'''は減少する<ref name="zakzak2014531">[ |
原価上昇は総供給が上方にシフトするので、'''実質GDP'''は減少する<ref name="zakzak2014531">[https://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20140531/dms1405311100002-n1.htm 政治・社会 【日本の解き方】岩田日銀副総裁の本音を読む 財政政策求めるメッセージか]ZAKZAK 2014年5月31日</ref>。一方で、需要超過は総需要が上にシフトするので、実質GDPは増加する<ref name="zakzak2014531" />。つまり、実質GDPの動きで原価上昇か需要超過かは判別できる<ref name="zakzak2014531" />。[[景気]]の過熱によって物価が上昇しているのかどうかを判断するには、[[消費者物価指数]]ではなく'''[[GDPデフレーター]]'''を見なければならない<ref>森永卓郎 『「騙されない!」ための経済学 モリタク流・経済ニュースのウラ読み術』 PHP研究所〈PHPビジネス新書〉、2008年、96頁。</ref>。 |
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; 原価インフレーション(コストインフレーション) |
; 原価インフレーション(コストインフレーション) |
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: 産業によって成長に格差がある場合、生産性の低い産業の物価が高くなり発生する。例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金が上昇したとする。これに影響を受けてサービス業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス料を上げざるを得なくなるため、インフレーションを招く。
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: 産業によって成長に格差がある場合、生産性の低い産業の物価が高くなり発生する。例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金が上昇したとする。これに影響を受けてサービス業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス料を上げざるを得なくなるため、インフレーションを招く。
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; 輸出インフレーション |
; 輸出インフレーション |
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: 輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量が結果的に減って発生する。 |
: 輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量が結果的に減って発生する。幕末期に生糸などの輸出が急増し、インフレーションが発生している。このパターンは[[乗数効果]]で総需要が増大しているため、需要インフレの側面もある。
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; 輸入インフレーション |
; 輸入インフレーション |
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: 他国の輸入を通じて国外のインフレーションが国内に影響し発生する。例えば穀物を輸入していた国が、輸出元の国の内需が増加したり輸出元が他の需要国へ輸出を振り分けた場合などに穀物の輸入が減少し、穀物価格が上昇するといった具合である。実際に中国が穀物純輸入国に転じた際、トウモロコシ市場で価格急騰が起きたことがある。
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: 他国の輸入を通じて国外のインフレーションが国内に影響し発生する。例えば穀物を輸入していた国が、輸出元の国の内需が増加したり輸出元が他の需要国へ輸出を振り分けた場合などに穀物の輸入が減少し、穀物価格が上昇するといった具合である。実際に中国が穀物純輸入国に転じた際、トウモロコシ市場で価格急騰が起きたことがある。
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; キャッチアップインフレーション |
; キャッチアップインフレーション |
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: 賃金や物価統制を行っている体制が、市場経済に移行する際に発生することが多い。米国および日本で |
: 賃金や物価統制を行っている体制が、市場経済に移行する際に発生することが多い。米国および日本で1970年代にかけて発生した。欧州では[[冷戦]]の終結および[[欧州中央銀行]]︵ECB︶拡大による東欧諸国の自由主義諸国への経済統合により、低賃金諸国での賃金・サービス価格の上昇によるキャッチアップインフレが発生している<ref>[https://web.archive.org/web/20120618102724/http://www.murc.jp/shimanaka/monthly/2002/eur0207.pdf][https://web.archive.org/web/20120618111222/http://www.murc.jp/shimanaka/weekly/2002/eur020624.pdf]</ref>。
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=== 貨幣的要因 === |
=== 貨幣的要因 === |
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=== 世界最古 === |
=== 世界最古 === |
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記録に残る世界最古のインフレーションは[[マケドニア王国]]の[[アレクサンドロス3世]]の死去直後、 |
記録に残る世界最古のインフレーションは[[マケドニア王国]]の[[アレクサンドロス3世]]の死去直後、紀元前323年のことであると言われている<ref name="dobson">{{Cite news|title=How Alexander caused a great Babylon inflation |newspaper=[[インデペンデント]] |date=2002-1-27 |author=Roger Dobson |url=https://www.independent.co.uk/news/world/europe/how-alexander-caused-a-great-babylon-inflation-9213402.html |accessdate=2019-03-28}}</ref>。[[マサチューセッツ工科大学]]教授ピーター・テミンの研究によると、当時の[[バビロニア]]には既に[[市場経済]]があり、農産物の供給不足などに対して[[アケメネス朝]]など征服地から接収してもたらされた過剰な財宝(主に銀)の在庫がある中で、大王の死によって人々の不安感が増大したことが引き金となって、インフレーションが発生した<ref name="dobson"/>。 |
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=== 古代ローマ === |
=== 古代ローマ === |
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=== 価格革命 === |
=== 価格革命 === |
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[[フランシスコ・ |
[[フランシスコ・ピサロ]]による[[インカ帝国]]征服後、[[ポトシ]]銀山などから大量の金銀が[[スペイン]]に運ばれた。1521年から1660年までの間にスペインに運ばれた金銀の量は金200トン、銀1.8万トンと言われる。これらの金銀は主に貨幣となったため、欧州全域で貨幣価値が3分の1になった。つまり物価が3倍になるインフレが起こったわけで、これを「[[価格革命]]」と言った。貨幣供給により商工業の発展が起こり、地代の減少のために[[封建領主]]層が没落するなどの社会的変化をもたらした。 |
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=== ロシア革命 === |
=== ロシア革命 === |
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[[ロシア革命]]後に[[ウラジーミル・レーニン]]率いるボリシェヴィキ政権が誕生したが、共産主義化のための諸政策(穀物の強制徴発・産業の国有化等)で、ロシアはハイパーインフレに陥り、ルーブルの価値は第一次世界大戦前の500億分の1になった<ref name="名前なし">[[冨田俊基]]『国債の歴史 金利に凝縮された過去と未来』2006年 P.310</ref>({{仮リンク|ソビエト初期のハイパーインフレ|en|Hyperinflation in early Soviet Russia}}も参照)。経済学者[[ジョン・メイナード・ケインズ]]によれば、レーニンはこのインフレについて「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ。政府はインフレを継続することで、密かに、気づかれることなく、国民の富のうち、かなりの部分を没収できる。」と述べたという<ref>[[ジョン・メイナード・ケインズ]] [[山岡洋一]]訳『ケインズ 説得論集』「インフレーション(1919年)」2021年</ref>。その後ルーブルは、1924年4月までに3回のデノミが行われ、ロシアのインフレは沈静化した<ref name="名前なし"/>。 |
[[ロシア革命]]後に[[ウラジーミル・レーニン]]率いるボリシェヴィキ政権が誕生したが、共産主義化のための諸政策(穀物の強制徴発・産業の国有化等)で、ロシアはハイパーインフレに陥り、ルーブルの価値は第一次世界大戦前の500億分の1になった<ref name="名前なし">[[冨田俊基]]『国債の歴史 金利に凝縮された過去と未来』2006年 P.310</ref>({{仮リンク|ソビエト初期のハイパーインフレ|en|Hyperinflation in early Soviet Russia}}も参照)。経済学者[[ジョン・メイナード・ケインズ]]によれば、レーニンはこのインフレについて「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ。政府はインフレを継続することで、密かに、気づかれることなく、国民の富のうち、かなりの部分を没収できる。」と述べたという<ref>[[ジョン・メイナード・ケインズ]] [[山岡洋一]]訳『ケインズ 説得論集』「インフレーション(1919年)」2021年</ref>。その後ルーブルは、1924年4月までに3回のデノミが行われ、ロシアのインフレは沈静化した<ref name="名前なし"/>。 |
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=== イラン === |
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[[イラン]]では経済制裁の影響で2014年頃からインフレが進み、2024年には野菜価格が数十倍になっている<ref name=":0">{{Cite web |title=想定外な展開も!?イラン街角中継 ビール飲んだら悪魔崇拝? {{!}} NHK {{!}} WEB特集 |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240625/k10014491391000.html |website=NHKニュース |date=2024-06-25 |access-date=2024-06-25 |last=日本放送協会}}</ref>。インフレの影響で現金で買い物をすると札束が必要になるため、[[デビットカード]]による[[キャッシュレス決済]]が浸透し、現金を付け付けない店もある<ref name=":0" />。
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=== 局地的 === |
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== 脚注 == |
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* [[インフレリスク]] |
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* [[スタグフレーション]] |
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* [[グリードフレーション]](強欲インフレーション) - 物価上昇を利用して必要以上の値上げを行う造語。 |
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* [[デノミネーション]] |
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* [[インフレ連動債]] |
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![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/6c/World_Inflation_Rate_2019.png/380px-World_Inflation_Rate_2019.png)
分類[編集]
実物的要因[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/a7/Zimbabwe_100000000000000.png/220px-Zimbabwe_100000000000000.png)
需要[編集]
需要側に原因があるインフレーションで、需要超過インフレーション︵需要牽引型インフレーション、ディマンドプル・インフレーション、demand-pull inflation︶とも呼ばれる。需要の増大︵需要曲線の上方シフト︶により、価格が高くても購買意欲が衰えないので物価は上昇する。この場合、供給曲線が垂直である︵すなわち価格の変動によって供給量が変化しない︶場合を除いて景気はよくなる。 1973年から1975年にかけての日本のインフレ要因は、オイルショックに注目が集まるが、変動相場制移行直前の短資流入による過剰流動性、﹁列島改造ブーム﹂による過剰な建設需要も大きな要因である[要出典]。供給[編集]
供給曲線の上方シフトに原因があるインフレで、原価上昇インフレーション︵コストプッシュ・インフレーション、cost-push inflation︶とも呼ばれる。多くの場合、景気が悪化しスタグフレーションか、それに近い状態になる。通常為替レートが下落すると、輸入物価が上昇してインフレを引き起こすと同時に、企業が抱える外貨建ての債務の返済負担が膨らむ[15]。 原価上昇は総供給が上方にシフトするので、実質GDPは減少する[16]。一方で、需要超過は総需要が上にシフトするので、実質GDPは増加する[16]。つまり、実質GDPの動きで原価上昇か需要超過かは判別できる[16]。景気の過熱によって物価が上昇しているのかどうかを判断するには、消費者物価指数ではなくGDPデフレーターを見なければならない[17]。 原価インフレーション︵コストインフレーション︶ 賃金・材料等の高騰によって発生する。原油価格の高騰によるインフレーションや消費増税によるスタグフレーションが典型的な例である。 構造インフレーション 産業によって成長に格差がある場合、生産性の低い産業の物価が高くなり発生する。例えば効率の良い製造業で生産性が上がり賃金が上昇したとする。これに影響を受けてサービス業で生産性向上以上に賃金が上昇するとサービス料を上げざるを得なくなるため、インフレーションを招く。 輸出インフレーション 輸出の増大により発生する。企業が製品を輸出に振り向けたことにより、国内市場向けの供給量が結果的に減って発生する。幕末期に生糸などの輸出が急増し、インフレーションが発生している。このパターンは乗数効果で総需要が増大しているため、需要インフレの側面もある。 輸入インフレーション 他国の輸入を通じて国外のインフレーションが国内に影響し発生する。例えば穀物を輸入していた国が、輸出元の国の内需が増加したり輸出元が他の需要国へ輸出を振り分けた場合などに穀物の輸入が減少し、穀物価格が上昇するといった具合である。実際に中国が穀物純輸入国に転じた際、トウモロコシ市場で価格急騰が起きたことがある。 キャッチアップインフレーション 賃金や物価統制を行っている体制が、市場経済に移行する際に発生することが多い。米国および日本で1970年代にかけて発生した。欧州では冷戦の終結および欧州中央銀行︵ECB︶拡大による東欧諸国の自由主義諸国への経済統合により、低賃金諸国での賃金・サービス価格の上昇によるキャッチアップインフレが発生している[18]。貨幣的要因[編集]
貨幣の供給量が増えることによって発生する。貨幣の供給増加は、他のあらゆる財・サービスに対する貨幣の相対価値を低下させるが、これはインフレーションそのものである。さらに、貨幣の供給増加は貨幣に対する債券の相対価値を高めることになり名目金利を低下させる。このため通常は投資が増大し、需要増大をもたらす。そのプロセスが最終的に、需要インフレに帰結することでもインフレーションに結びつく。公開市場操作などの中央銀行による通常の貨幣供給調節以外に、貨幣の供給が増える特段の理由がある場合には、﹁財政インフレ﹂﹁信用インフレ﹂﹁為替インフレ﹂などと呼んで区分けることもある。速度別[編集]
クリーピングインフレーション ゆるやかに進むインフレーション。インフレ率は年数%で、好況期に見られる。経済が健全に成長していると見なされ、望ましい状態と言われることが多い。﹁マイルド・インフレ﹂とも呼ばれる。 ギャロッピングインフレーション 早足に進むインフレーション。馬の早足を表す﹁ギャロップ﹂から。インフレ率は年率10%超-数十%程度を指すことが多い。スタグフレーションに伴って生じることがある。 ハイパーインフレーション経済への影響[編集]
対策[編集]
インフレの阻止や解消のため様々な対策が行われている。例[編集]
- 中央銀行の政策金利の引き上げ
- 金利の引き上げによる通貨高[43]
- 中央銀行の公開市場操作による資金吸収オペレーション
- 中央銀行の預金準備率引き上げ操作
- 中央銀行の新通貨発行と預金封鎖にともなう新通貨への切り替え
- 政府が財政支出を削減
- 政府が増税をして消費を抑える
- インフレターゲット(物価水準目標)
例[編集]
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/3/3d/Allegory_of_inflation_during_the_Bakumatsu_era.jpg/300px-Allegory_of_inflation_during_the_Bakumatsu_era.jpg)
世界最古[編集]
古代ローマ[編集]
軍人皇帝時代の古代ローマでは兵士への給与を増やす必要に迫られ銀貨の改悪を繰り返した結果、インフレーションが起こり市民生活に影響が出てていた。ディオクレティアヌスは通貨改革を敢行したが効果が無かったため、301年に物品やサービスの最高価格を定めた勅令﹃最高価格令﹄を出した。これらは実施された形跡が無く効果は薄かったとされるが、日用品の価格や各職業の給与が詳細に定められており、現代では貴重な歴史資料となっている[45]。価格革命[編集]
フランシスコ・ピサロによるインカ帝国征服後、ポトシ銀山などから大量の金銀がスペインに運ばれた。1521年から1660年までの間にスペインに運ばれた金銀の量は金200トン、銀1.8万トンと言われる。これらの金銀は主に貨幣となったため、欧州全域で貨幣価値が3分の1になった。つまり物価が3倍になるインフレが起こったわけで、これを﹁価格革命﹂と言った。貨幣供給により商工業の発展が起こり、地代の減少のために封建領主層が没落するなどの社会的変化をもたらした。ロシア革命[編集]
ロシア革命後にウラジーミル・レーニン率いるボリシェヴィキ政権が誕生したが、共産主義化のための諸政策︵穀物の強制徴発・産業の国有化等︶で、ロシアはハイパーインフレに陥り、ルーブルの価値は第一次世界大戦前の500億分の1になった[46]︵ソビエト初期のハイパーインフレも参照︶。経済学者ジョン・メイナード・ケインズによれば、レーニンはこのインフレについて﹁資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ。政府はインフレを継続することで、密かに、気づかれることなく、国民の富のうち、かなりの部分を没収できる。﹂と述べたという[47]。その後ルーブルは、1924年4月までに3回のデノミが行われ、ロシアのインフレは沈静化した[46]。イラン[編集]
イランでは経済制裁の影響で2014年頃からインフレが進み、2024年には野菜価格が数十倍になっている[48]。インフレの影響で現金で買い物をすると札束が必要になるため、デビットカードによるキャッシュレス決済が浸透し、現金を付け付けない店もある[48]。局地的[編集]
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