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生涯
沈璞の子として生まれた。沈氏は元来軍事で頭角を現した江南の豪族であるが、沈約自身は幼いときに父を孝武帝に殺されたこともあり、学問に精励し学識を蓄え、宋・斉・梁の3朝に仕えた。南斉の竟陵王蕭子良の招きに応じ、その文学サロンで重きをなし、﹁竟陵八友﹂の一人に数えられた。その後蕭衍︵後の梁の武帝︶の挙兵に協力し、梁が建てられると尚書令に任ぜられ、建昌県侯に封ぜられた。晩年は武帝の不興をこうむり、憂愁のうちに死去したという。このため諡は、当初﹁文﹂とされるところを武帝の命により﹁隠﹂とされた。
著作・文学作品
歴史書では﹃宋書﹄および﹃晋書﹄﹃斉紀﹄を編纂した。詩の分野では同じ﹁八友﹂の仲間である謝朓、王融らとともに、詩の韻律・形式美を自覚的に追求し、﹁永明体﹂と呼ばれる詩風を生み出した。その理論として四声︵平・上・去・入︶・八病の説を唱えた。南朝の同時代の文壇において最も重きをなし、無名であった劉勰が﹃文心雕龍﹄を世に出そうとした時には、沈約に見せて評価を求めたという。﹃梁書﹄本伝によると彼の文集は100巻あったというが散逸し、現在伝わる文集は明代以降に再編集されたものである。
文献
- 『梁書』巻13、中華書局。
- 『南史』巻57、中華書局。
日本語書籍
●興膳宏編 編﹃六朝詩人伝﹄大修館書店、2000、原典訳注、大著。
●興膳宏編 編﹃六朝詩人群像﹄大修館書店︿あじあブックス﹀、2001、列伝。
●網祐次﹃中国中世文学研究―永明文学を中心として―﹄新樹社、1960年。
●興膳宏﹃乱世を生きる詩人たち―六朝詩人論―﹄研文出版、2001年。
●今場正美﹃隱逸と文學―陶淵明と沈約を中心として―﹄朋友書店、2003年。
●稀代麻也子﹃宋書のなかの沈約 生きるということ﹄汲古書院、2004年。