シラス (魚)
シラス︵白子[注 1]、英: Whitebait︶とは、体に色素が乏しく白っぽい稚魚・仔魚の総称。含まれる魚類は多様で、イカナゴ、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、アユ、ニシン、ウナギ︵シラスウナギ︶など。これらの一部は食用とされ、塩ゆでにして干した加工食品はちりめんじゃこ、白子干し︵白子乾し︶などと呼ばれる。
キュウリウオ目シラウオ科のシラウオ︵白魚︶、スズキ目ハゼ科のシロウオ︵素魚︶とよく混同され、シロウオのことをシラスと呼ぶ地方もあるが、ここでは稚魚について述べる。
生シラス
しらすごはん
シラスは、様々な魚の仔稚魚の総称であるが、白子干しなどの形で積極的に食用とされるのは、イワシ︵主にカタクチイワシ︶の仔稚魚がほとんどである。ただ、捕獲方法の都合︵シラス網と呼ばれる網を打って捕獲する︶にもより、様々な魚の仔稚魚が混入することも珍しくない。このため時には魚類だけではなくタコやイカの幼生、エビやカニのゾエア幼生︵動物性プランクトンの一種︶なども混入する[2]。
上乾︵[9]。
それ以外の加工方法として、塩ゆでせず水洗いした生のシラスを板海苔のように加工した畳いわし︵ 成形して乾燥させたもの︶があり、干物としては﹁素干し品﹂に分類されるが[注 4][10][11]、これは水分含有量15%程度[要出典]、現在では高価な珍味となっている[12]。また近年は生食の消費も増えてきている。
かつては関西以西ではちりめんが主流、静岡県周辺は釜揚げが主流、関東以北はシラス干が主流となっていたが、現在は流通事情も変わり昔ほどの地域性はなくなった。
スペインでは﹁アングーラス(angulas)﹂といい、名物料理に なっている
日本において沿岸域に回遊するウナギの稚魚は﹁シラスウナギ﹂あるいは﹁ノウメンコ﹂﹁ソウメンコ﹂という。それ以前の、海中を回遊する幼生はレプトケファルス︵葉形仔魚︶と呼ばれる。シラスウナギはいわゆる﹁養殖ウナギ﹂の元として捕獲された後大切に飼育され、十分に育った後にウナギとして食用出荷されるが、シラスウナギそのものはあまり食用とはされない。近年のシラスウナギ漁獲量自体が少ないことに加え、ウナギ養殖業者間での引き合いもあり、1キログラム当たり数万円以上︵2000年頃︶という高値で売れるためである。シラスウナギが豊富に漁獲されていた当時は﹁のれそれ﹂と呼ばれ食用に供されることもあった。
ただ日本国外ではその限りではなく、例えばスペインでは﹁アングーラス(angulas)﹂と呼ばれる名物料理になっているなど、全く食用に供されない訳ではない。
なおレプトケファルスは海中のデトリタスを食べることが20世紀末にようやくわかり、その飼育方法は1990年代末頃に発見されたばかりで、ここからの商業的養殖は依然として発展途上技術である。サメの卵黄を原料とする特殊な飼料を与えるという極めてコストが掛かる方法でもあるために、21世紀初頭の現状ではシラスウナギ養殖が唯一といってよい商業養殖手段である。
ニュージーランドのホワイトベイトのフリッター
イタリア
ビアンケッティ︵リグリア語‥gianchetti、シチリア語‥neonata︶と呼ばれる。ナポリ料理では、チチニエリ︵cicenielli︶、ブリンディジではchumaと呼ばれるなど、各地で別名で呼ばれている。唐辛子に漬けて発酵させたロザマリーナ[15]、サルディッラ︵SARDELLA︶や、ピザや料理のトッピング等に使われる。
ニュージーランド
主にキュウリウオ目ガラクシアス科の稚魚などをホワイトベイトと呼ぶ[16]。高級食材の一つで、オムレツやフリッターにして食す[17]。
概要[編集]
加工品[編集]
あまり食用に適さない混在物を除き、食用に適するものを塩茹でにして干したものがいわゆる白子干しとして販売されている。よく見ると明らかに形の違う生物が混じっていることもある。大抵の場合は食べても問題ない。毒魚であるフグの仔稚魚が漁獲時に混じることもあり、一匹程度なら致死量には遠く及ばないと考えられるが、混入させたままの販売は禁じられており、消費者が見つけて食べる場合もフグは取り除くことが望ましい[3][4]。 幼魚はまだ骨格があまり発達しておらず、白子干しなどは様々な食品にまぶして丸のまま食べられる。ごはんの上にふり掛けたり︵しらす丼︶、大根おろしと和えて醤油で味付けしたりして食べられる。蛋白質やカルシウムが豊富な食品である。また一部地域ではシロウオのように、生きたままのシラスを酢醤油など調味料にくぐらせ、そのまま食べる﹁踊り食い﹂と呼ばれる食べ方も好まれる。 塩茹でして加工されるものがほとんどだが、水分含有量の違いで区別され、茹で上げ後、水きりされて製品となるものが釜揚げと呼ばれ85%前後の水分含有量となる[5]。 塩茹でを半乾燥品としたものが︵広義上の︶﹁しらす干し﹂だが[6]、狭義ではやわらかめ︵水分率50-85%[5]︶に乾燥されたのものを﹁しらす干し﹂︵関東干し︶といい[注 2]、固め︵水分率30-50%弱程度[5][9]︶になるまで乾燥させたちりめん︵関西干し︶と区別される[注 3]。 関東の軟らかめの﹁しらす干し﹂は、関西では﹁やわ干し、やわ乾﹂[9]や﹁太白[要出典]﹂とも呼ばれ、ちりめんじゃこは、関西では﹁漁獲[編集]
漁場は主に太平洋沿岸で、瀬戸内海、伊勢湾、駿河湾、相模湾などでも多く漁獲される。現在の北限は東日本大震災の復興支援の一環として解禁された宮城県南部とされ、閖上では﹁北限のシラス﹂とPRしている[13]。 2016年の日本におけるシラス漁獲量は、62900トンである。県別に見ると、兵庫県が12300トン (19.6 %) で第1位、以下に静岡県︵8900トン、14.1 %︶、愛知県︵8400トン、13.4 %︶と続く[14]。シラスウナギ[編集]
各国にみられる稚魚の呼称と料理[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
(一)^ トリーター‥伊藤 (2017年3月15日). “2017/03/15 シラスサイエンスオープン”. えのすいトリーター日誌. 新江ノ島水族館. 2018年7月30日閲覧。
(二)^ しらす干しに混入する生物 静岡県水産・海洋技術研究所
(三)^ フグ毒 食中毒を考える しらす干しやチリメンのフグの稚魚は?? 大日本水産会︵2023年11月7日閲覧︶
(四)^ ﹁ちりめんにフグの稚魚?混入 愛知・尾張旭のスーパーが自主回収﹂朝日新聞デジタル︵2022年6月11日︶2023年11月7日閲覧
(五)^ abc黒木 (2014), p. 606.
(六)^ 坂田 (1989), p. 24.
(七)^ ab海野 (2014), pp. 22.
(八)^ ab海野 (2014), pp. 25.
(九)^ abc岩佐隆宏﹁4)ちりめんじゃこ成分の製造時期による変化﹂﹃平成6年度兵庫県但馬水産事務所試験研究室事業報告﹄1994年、96-98頁。
(十)^ 清水, 桂一﹃たべもの語源辞典﹄東京堂出版、1980年、118頁。
(11)^ 海野 (2014), pp. 21, 23.
(12)^ 海野 (2014), pp. 24.
(13)^ ︻見上げてごらん︼北限のシラス/永山悦子﹃毎日新聞﹄夕刊2018年9月10日︵特集ワイド面︶2018年9月12日閲覧
(14)^ 農林水産統計 平成28年漁業・養殖業生産統計 農林水産省︵2017年6月12日︶2017年12月11日閲覧
(15)^ La cucina del Bel Paese ISBN 9788836529575 431p
(16)^ McDowall, R.M. (1984). The New Zealand Whitebait Book. Wellington, New Zealand: Reed. ISBN 0 589 01533 8
(17)^ ﹃るるぶニュージーランド 2017年版﹄p.12
参考文献[編集]
●海野未樹﹁用宗のシラス加工 : 加工会社のこだわり﹂﹃静岡市・用宗地区. - (フィールドワーク実習調査報告書 ; 平成26年度)﹄、静岡大学人文社会科学部社会学科文化人類学コース、2014年12月、20-28頁。
●黒木隆一﹁日本の伝統食品(第18回)しらす干し﹂﹃食品と容器﹄第55巻第10号、缶詰技術研究会、2014年、606-614頁、ISSN 0911-2278、NAID 40020228451。
●坂田由紀子﹁市販しらす干しの品質調査﹂﹃日本家政学会誌﹄第40巻第5号、日本家政学会、1989年、335-339頁、doi:10.11428/jhej1987.40.335、ISSN 0913-5227、NAID 130003705346。
関連項目[編集]
- ちりめんじゃこ
- どろめ:イワシの稚魚を指す土佐(高知県)の方言
- しらす丼
- しらすの沖漬け
- しらす隊
- シラウオ(キュウリウオ目シラウオ科)
- シロウオ(スズキ目ハゼ科)
- たたみいわし
- 仔魚‐稚魚‐未成魚(幼魚)‐成魚