民間宇宙飛行
概要[編集]
宇宙時代の最初の数十年間で、アメリカ合衆国のNASAとソビエト連邦設計局は系列政府機関と私企業との共同開発による宇宙技術を開拓した。この後、防衛産業の大企業は、政府のロケットや商業衛星打ち上げ技術から得られた発射設備を開発し、操業を始めた。地球軌道での民間宇宙飛行は通信衛星、衛星テレビ、衛星ラジオ、及び軌道の宇宙旅行を含んでいる。民間宇宙飛行には地球周回軌道を超えるものも計画されており、スペースコロニー、太陽帆、宇宙葬、及び民間の宇宙飛行を含んでいる。民間での宇宙飛行のプロトタイプとしては地球の低軌道を弾道飛行する民間宇宙旅行が既に実現している[1]。
商業打ち上げの歴史[編集]
ヨーロッパのスポンサー[編集]
アメリカの規制緩和[編集]
アメリカ、NASAの宇宙計画は1981年4月12日のSTS-1、コロンビア号の打ち上げから一貫してスペースシャトルが使用され続けたが、1986年1月28日、STS-51-Lでチャレンジャー号爆発事故が発生し、計画は変更された[3]。当初は、NASAは衛星打ち上げに助成金を支給し、スペースシャトルの長期運用による限界費用を引き延ばそうとした。 1984年10月30日、アメリカ大統領ロナルド・レーガンは商業通信衛星の打ち上げに関する条例に署名した[4]。これによってアメリカ企業は使い捨てロケット打ち上げ産業へ参入することが可能となった。 この調印の前に、アメリカ国内での全ての商業通信衛星の打ち上げはNASAのスペースシャトルを使用することに制限された。 1990年11月5日にはジョージ・H・W・ブッシュ大統領が打ち上げシステム購買条例に署名した。この条例は以前のNASAのスペースシャトルによる衛星の打ち上げ事業独占を完全に反故にするもので、NASAの打ち上げ設備を民間企業が必要とするときにはいつでもそのサービスを利用出来るものとし、商業用途で最も大きな積載能力を欲するときにもそれを商業利用出来るものとした。 1997年における民間商業用ロケット発射回数は政府所有のアメリカ東部宇宙ミサイルセンターでの発射回数に数で勝った。ロシアの民営化[編集]
ロシア政府は1994年にRKKエネルギア社の株式の一部を個人投資家に販売した。エネルギアはクルニチェフ国家研究生産宇宙センターと共にロシアの有人宇宙探査計画の大部分を構成しており、1997年にはロシア政府は保有株式の殆どを安く売り払った。2002年現在のRKKエネルギア社の株式保有率は、エネルギア社が60 %を保有、残りの40 %を投資家が保有している[5]。打ち上げ共同事業[編集]
1995年以来、ソユーズロケットはスターセムを通して売り出されているが、クルニチェフのプロトンロケットはインターナショナル・ローンチ・サービスを通して売り出される。エネルギアは、ソユーズロケットを組み立ててウクライナの海上でゼニットロケットで打ち上げるシーローンチプロジェクトの一部を所有している[6]。 2003年、アリアンスペースはボーイング、三菱重工業と共同でローンチ・サービス・アライアンスを締結した。2005年には、アメリカ国内のEELVを求める合衆国政府の小さな商業市場の独占のためにユナイテッド・ローンチ・アライアンス社と呼ばれる合併事業のためにロッキード・マーティンおよびボーイングと提携した[7]。 今日では、多くの商用ロケット打ち上げ企業が世界中の通信衛星企業と政府宇宙機関に対するサービスを提供している。2005年には18の総合商業事業の打ち上げと37の非営利的な打ち上げがあった[8]。このうちヨーロッパでの打ち上げは28 %、ロシアは44 %の商業衛星打ち上げを行ったが、アメリカは6 %に留まった[8]。民間宇宙飛行会社[編集]
宇宙までの輸送業務[編集]
宇宙への輸送業務は主に国家目的のものと民間商業目的のものとに分けられる。2008年時点では、全世界で一年間に80回の衛星打ち上げが行われ、このうち政府による衛星打ち上げが8割で、民間での商業衛星打ち上げは2割の約16機でしかなかった[9]。当時この分野はユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が行うアメリカ合衆国政府が要するペイロードのための打ち上げ業務やアリアン・スペース社によるヨーロッパの衛星打ち上げによって寡占されていた[10]。しかしその後の民間宇宙企業の躍進の結果、2021年には宇宙ベンチャーの代表であるスペースX社が一社で年間31回と打ち上げ市場の多くを奪う状況となっている。
商業軌道輸送サービス[編集]
個人宇宙旅行の実現[編集]
失敗した民間宇宙飛行ベンチャー[編集]
1990年代、通信衛星打ち上げ事業の開始に伴い、需要の高い映像配信プロバイダは多くの商業市場で事業の開発に関心を持った。288の衛星を持つテレデシックネットワークなど、通信衛星事業最大手が開発に失敗したとき、市場の要求は消え失せた。次いで2000年代には数多くのロケットベンチャーが勃興した。しかしスペースXのようなごく一部が大成する一方で、他の大多数の企業は開発に失敗して消えていった。OTRAG[編集]
OTRAGは1970年代から1980年代初頭にかけて西ドイツの民間企業により計画された人工衛星打ち上げロケットである。Common Rocket Propulsion Units (CRPU) と呼ばれる同一の規格化されたロケット(モジュラーロケット)を束ねることによって様々な用途への適用を目指した。地上試験が行われたが、フランスとソ連からの政治的圧力により、政府より計画の中止が命じられた。西ドイツ政府はその後"ヨーロッパ製ロケット"であるアリアン計画の共同出資に加わることとなった。
ビール・エアロスペース[編集]
ロータリー・ロケット[編集]
1998年、ロータリー・ロケット社は有人の単段式宇宙往還機 (SSTO) であるロトンを計画した[21]。1999年、ロトンATVのフルスケールテストで3回の飛行が行われた。2001年、ロトンの開発費は何千万ドルにも膨らんだが、ロータリー・ロケット社は開発着手に値する打上げ契約の獲得に失敗し、計画は中止された。
ロケットプレーン・キスラー[編集]
未来の計画[編集]
多くの近未来の民間宇宙飛行計画が予想されているが、1つの可能性としてスペースシップワンのような低軌道宇宙観光旅行のようなものがある。更に、低軌道宇宙船としてはより速い大陸間の物品配送や旅客便のようなサービスも想定されている。気球による宇宙遊覧[編集]
ロケットより低コストな高高度気球により成層圏から地球を見下ろす﹁宇宙遊覧﹂も計画されている[22]。宇宙ステーション[編集]
軌道上の燃料給油ステーション[編集]
2005年11月15日の第52回アメリカン・アストロノーティカル・ソサエティにて行われたプレゼンテーションで、NASAの管理者であるマイケル・D・グリフィンは軌道上に燃料給油ステーションを確立することが必要であると説き、﹃産業と市場にあるべき企業の形﹄と述べた[24]。 2007年の宇宙技術応用国際フォーラムでは、ボーイング社のダラス・ビーンホッフは燃料給油ステーションに関する詳細な利益のプレゼンテーションを作成した[25]。小惑星採掘[編集]
小惑星に埋蔵されている金属資源に関する鉱業の推測も行われている。いくつかの試算に従うと、直径1キロメートルの小惑星には3,000万トンのニッケル、1,500万トンのコバルト と7,500トンの白金が眠っている[26][27]。
軌道エレベータ[編集]
軌道エレベータは理論上実現可能な打ち上げ用システムで、少なくとも1つの民間宇宙事業で実現の可能性が模索されている[28]。