鹿児島おはら節
鹿児島おはら節︵かごしまおはらぶし︶は、日本国鹿児島県の民謡。おはら節、小原節、小原良節とも書かれる。鹿児島民謡の代表格とも言われ、鹿児島市で行われるおはら祭、東京都渋谷区で行われる渋谷・鹿児島おはら祭などでは、この鹿児島おはら節の旋律にのせて踊り手が踊りを披露する。
﹁花は霧島 煙草は国分 燃えて上がるは オハラハー 桜島﹂の歌い出しで有名であるが、1番以降の歌詞は歌い手により少々の差異がある。
歌詞中に登場する国分。国分平野では古くより煙草の生産が盛んであっ た
昭和初期に鹿児島おはら節をレコード化した新橋喜代三
●新橋喜代三 - 本曲をレコード化し、全国的に有名となるきっかけを作った。
●小林旭 - ﹃鹿児島おはら節/アキラのズンドコ節﹄のA面に収録されており、B面のアキラのズンドコ節などと共に映画﹁海を渡る波止場の風﹂の主題歌となっている。
●くるり - 2011年リリースのベスト盤﹃ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER 2﹄に収録。
●AI - 九州旅客鉄道の﹁鹿児島、沸いてます﹂プロモーションCM曲として2013年3月から使用された[12]。
由来[編集]
おはら節という名称の由来には諸説あるが、最も有力な説に琉球侵攻に従軍した日向国安久村︵現在の宮崎県都城市安久町︶の郷士が戦地で士気を鼓舞するために歌った﹁安久節﹂[1][注釈 1]が、鹿児島近在の原良村の郷士︵現在の鹿児島市原良︶によって歌い継がれ、それらが鹿児島県全体に広がり、発祥地である﹁原良﹂に﹁小﹂を冠称して﹁小原良節﹂と呼ばれるようになったという説がある[2][3]。 その他にも日本各地の港町で歌われていた﹁おはら節﹂や﹁おわら節﹂が伝わり、鹿児島で広がったものであるという説や[4]、およそ700年前︵1950年時点︶から原良を発祥として歌われており、旧暦3月10日を中心に開かれていた花見会の初日に行われていた霧島神宮参拝の際に歌われていたという説がある[5]。歴史[編集]
おはら節の発祥[編集]
おはら節が歌われるようになったのは江戸時代の初期であるとされている。 花は霧島 煙草は国分 燃えて上がるは オハラハー 桜島 — 鹿児島おはら節1番 という歌詞があるが、鹿児島おはら節が歌われるようになった江戸時代初期には鹿児島や国分では煙草が栽培されていたが、その後薩摩藩では煙草の栽培、喫煙などを禁止する動きがあった。 その後も何度か禁止令が出たが、島津家の家中の間でも喫煙をする習慣があり、栽培及び売買禁止令もやがて廃れ、再び国分︵現在の霧島市国分地域︶の地では煙草の栽培が盛んにおこなわれるようになり、煙草の生産地として全国的に知られるようになったとされる[6]。昭和初期の全国的流行から現代[編集]
鹿児島県西之表市出身の歌手及び芸者の新橋喜代三によって1933年︵昭和8年︶から1934年︵昭和9年︶の間に︵発売年には諸説あり︶レコード化されたのがきっかけとなり全国的に流行した[7][8]。その他にも小林旭、くるりなどによってカバーされている。 1949年︵昭和24年︶より鹿児島市制60周年記念として鹿児島市にておはら祭が始まり、祭りの総踊りでおはら節が踊られるようになった。 1988年︵昭和63年︶に鹿児島市原良町の企業が発祥の地である原良町に﹁おはら節発祥の地﹂像を建立したが、2011年︵平成23年︶に企業が移転することとなり、像は犬迫町の個人が企業から譲り受け一時的に保管されることとなったが、2012年︵平成24年︶に原良城西町内会が原良二丁目にある原良第二公園への像の設置を計画し、所有者からおはら祭振興会に像が寄贈され、原良第二公園に移設された[9]。 また、九州新幹線が全線開業した2011年3月12日より鹿児島中央駅終着時及び発車時に流れる車内メロディ[10] や新幹線が発車する際にホームで流れる発車メロディとして鹿児島おはら節のメロディをアレンジしたものが導入された︵アレンジは向谷実が手掛けた︶[11]。鹿児島おはら節を歌唱した歌手[編集]
歌詞[編集]
鹿児島おはら節[編集]
(一)︵ハ ヨイヨイ ヨイヤサ︶ 花はなは霧きり島しま 煙たば草こは国こく分ぶ ︵ハ ヨイヨイ ヨイヤサ︶燃もえて上あがるは オハラハー 桜さく島らじま ︵ハ ヨイヨイ ヨイヤサ︶※ 以下唄ばやし同様 (二)雨あめの降ふらんのに 草そむ牟だ田が川わ濁にごる 伊いし敷きは原ら良らの オハラハー 化けし粧ょの水みず (三)見みえた見みえたよ 松まつ原ばら越ごしに 丸まるに十じゅの字じの オハラハー 帆ほが見みえた (四)おけさ働はたらけ 来でね年んの春はるは とのじょ持もたせる オハラハー よか青に年せを (五)伊いし敷きは原ら良らの 巻まき揚ゃげの髪かみを 髪かみを結ゆうたなら オハラハー なおよかろ (六)雨あめの降ふる夜よは おじゃんなと言いうたに 濡ぬれておじゃれば オハラハー なお可か愛わい (七)桜さく島らじまには 霞かすみがかかる 私わたしゃ貴おは方んに オハラハー 気きがかかる (八)この地ち去さっても 夢ゆめ路じに通かよう 磯いその浜はま風かぜ オハラハー 桜さく島らじま (九)抱だいて 寝ねもせず 暇ひまもくれず つなぎ船ふねかよ オハラハー わしが身みは (十)月つきのひょいと出を 夜よ明あけと思おもうて 主あるじを帰して オハラハー 気きにかかる (11)薩さつ摩ま西せ郷ごさぁは 世せか界いの偉いじ人ん 国くにのためなら オハラハー 死しぬと言いうた (12)可か愛わいがられて 寝ねた夜よもござる 泣ないて明あかした オハラハー 夜よもござる (13)私わたしゃ原はら良らの袢はん纏てん育そだち 長ながい着きも物んにゃ オハラハ― 縁えんがない (14)竹たけにスズメは 仙せん台だいさんの御ごも紋ん 丸まるに十じゅの字じは オハラハー 薩さつ摩まさ様ま (15)おごじょコラコラ 手てぬ拭ぐいが落ちた 持もたん手拭い オハラハー なに落おちんか (16)兵へ児この意い気き地じも おごじょが縋すがりゃ あたら朱しゅ鞘ざや}も オハラハー 抜ぬきゃならぬ ︻唄ばやし︼ ●今いま来きた青に年せどん よか青年どん 相そう談だんかけたら はっちこそうな 青年どん ●どっからからな 鹿かご児ん島まからな つけもやらずに よう来きたさまじゃ ●段だん々だん畑ばたけのさや豆まめが 一ひとさや走はしれば みな走る 私わたしゃお前まんさぁに ついて走る ●エーヤッサヤッサ 大でこ根んのヤッサ 切きらすの高たかさ おかべたかどん 金かねもうけじゃんさお こげなこっつぁ めってなござらん めってござれば からだもたまらんさ ●道みち端ばた大でこ根ん引ひかずばどすかい 好すいたすさまの 袖そで引かずばどすかい ●谷たに山やま下した町まち通とおれば 蛸たこが吸い付く おごが抱だっつく こげなこっつは滅めっ多たにごわはん 滅多ござればからだがたまらん ●ちゃんちゃん茶ちゃ釜がまの 蓋ふた取とる間まもない 可か愛わい男おとこの 袖そで引ひく間もない安久節[編集]
(一)安やっ久さぶ節しなら 尻しる高たこうつぶれ 前まえは泥むた田だで オハラ深ふこうござる ︵ヤッサ ヤッサ︶※ 以下唄ばやし繰り返し (二)武ぶ士しも武ぶ士し武ぶ士し 安やす久ひさ武ぶ士しは 都とし州ゅう島しま津ずの オハラ侍さむらいじゃ (三)見みれば琉りゅ球うきゅうのお城しろのまわしは 尻しるをつぶらにゃ オハラ攻せめられぬ (四)進すすめ進めよ 我われら続つづけ 城しろを落おとすは オハラ安やす久ひさ武ぶ士し (五)安やっ久さ武ぶ士しなら 脇わき差ざしゃいらぬ 精む神ねの刃やいばで オハラ敵てきを切きる (六)安やっ久さぶ節しなら 枕まくらはいらぬ 互たがい違ちがいの オハラ腕うで枕まくら (七)床とこの掛かけ絵えに 小こう梅めと書かいて あなた鶯うぐいす オハラ来きて止とまれ (八)御おご息じ女ょ こらこら 簪かんざし落おちた 持もたぬ簪ゃ オハラ落ちはせぬ (九)好すいたお方かたに 酒さけさす時ときは 金きんの茶ちゃ碗わんに オハラなみなみと (十)武ぶ士しといえども 強つよいが武士か 情なさけあるのが オハラ武士じゃもの (11)船ふねは船でも 島しま津づの船は 丸まるに十じゅの字じの オハラ軍いくさ船ぶね (12)様さまと暮くらせば 唐から芋いもも米こめよ 欠かけた茶ちゃ碗わんも オハラよか茶碗 (13)お方かた持もちゃはんか よか人もんが居おんど 仕しご事ちゃ好すかんとの オハラ朝あさ寝ねごろ (14)お方かたしばし待まて 手ての拭ごいいが落おちた 持もたん手拭いが オハラなぜ落ちた (15)おはんはっちこか 太て鼓こ三ざん味まいゅかろて どこも日ひが照てる オハラ天てんが下もと (16)好すいたそ様さまに 田たの草くさ取とらせ 涼すずし風かぜ吹ふけ オハラ空そら曇くもれ <唄ばやし> ●ヤッサヤッサ コラ 大でこ根んのヤッサ 切きらずにぬそかい 一いっ刀ちょ両りょ断うだん気きも持ちよか ヤッサヤッサ ●ヤッサヤッサ 川かわ端ばた石いしじゃが 起おこせば蟹がねじゃ 蟹の生なま焼やきゃ食しょ傷っしょうの元もとじゃ ヤッサヤッサ ●ヤッサヤッサ お前まえさんの頃ころじゃ 気きのよい頃ころじゃ 髪かみに火ひがつく 覚おぼえん頃ころじゃ ヤッサヤッサ ●ヤッサヤッサ どっからからな 鹿かご児ん島まからな つけもやらんこち よう来きた様さまじゃ ヤッサヤッサ関連作品[編集]
●西郷輝彦のシングル﹁青年おはら節﹂︵1965年1月1日発売︶に鹿児島おはら節のアレンジ曲である﹁青年おはら節﹂が収録されている。 ●森昌子の歌謡集﹁森昌子傑作民謡第二集﹂︵1977年1月21日発売︶に鹿児島おはら節が収録されている。 ●くるりのベスト・アルバムの﹁ベスト オブ くるり -TOWER OF MUSIC LOVER 2-﹂︵2011年6月29日発売︶の中に鹿児島おはら節が収録されている。 ●竹川美子のシングル﹁花しのぶ﹂︵2011年8月24日発売︶の中に美子のおはら節が収録されている。 ●長渕剛のアルバム﹁Keep on Fighting﹂(2004年発売)の中に﹁桜島﹂ が収録している。歌詞におはら節の1節が引用されている。脚注[編集]
(一)^ 安久節 - 宮崎県 2011年9月23日閲覧。
(二)^ おはら節の由来は? - 鹿児島市 2011年9月23日閲覧。
(三)^ 民謡の歴史と文化︵九州・沖縄︶#鹿児島 - 日本民謡協会 2011年9月23日閲覧。
(四)^ 鹿児島おはら節 - Weblio辞書︵大辞林︶ 2011年9月23日閲覧。
(五)^ ﹃伊敷村誌 村制六十周年記念﹄ - 鹿児島縣伊敷村村役場 1950年
(六)^ さつま人国誌 - 南日本新聞 2011年9月23日閲覧。
(七)^ 九州物語#おはら節 - 国土交通省九州運輸局 2011年9月23日閲覧。
(八)^ おはら節 - Kotobank︵デジタル大辞泉︶ 2011年9月23日閲覧。
(九)^ ﹃南日本新聞﹄ 2012年10月13日付21面︵お帰り おはら節像︶
(十)^ 車内メロディについてはJR九州所属車両のみで流れる。また、九州新幹線に乗り入れるJR西日本所属車両は従来通り﹁いい日旅立ち・西へ﹂のメロディを使用している。
(11)^ 九州新幹線全線開業時に新しい発車メロディー・車内メロディーを導入します。 - 九州旅客鉄道ニュースリリース 2011年9月23日閲覧。
(12)^ 鹿児島沸いてます!プロモーションを実施します! - 九州旅客鉄道プレスリリース 2013年3月12日閲覧
- 注釈
関連項目[編集]
外部リンク[編集]